【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
苦手な方はご注意ください。
ことの始まりは、勉強会での出来事だった。
八神はやての家に集まり、全教科満点のアリサ、理科と図工で後れを取っているピュアが皆に教えている最中。
参加者ははやて、ピュア、アリサ、すずか、なのは、フェイト。
アリシアはアルフと一緒にプレシアのところへお見舞いに行っていた。
「いつも思ってたんだけど、ピュア」
「はいさ?」
アリサがピュアに聞く。
「その『~さ』っていう語尾、どこの訛りなの?」
この一言が始まりだった。
「えっ?」
真っ白な容姿の少女は物凄い勢いで顔を青褪めさせていく。
「ど、どうしたの?」
「え、私、変なこと言った?」
予想外の反応に、すずかもアリサも慌てる。
はやて、なのは、フェイトの3人も驚いていた。
「わ、わたし……変な語尾、今まで、ずっとさ?」
「え、うん」
ピュアの搾り出すような問いに気圧されて、アリサは頷く。
「!!」
ピュアは絶望的な顔をして慌てて立ち上がり、2度、3度ほど転倒しかけては手すりに掴まりながら、はやて、ヴィータと共用している寝室に入り、鍵を閉めて篭った。
「ちょ、ちょっと、どうしたってのよ!?」
アリサは慌てる。
数分後、ピュアは寝室から出てきた。
はにかみながら、恥ずかしそうに。
「ごめんにゃさい。ちょっと取り乱したにゃ」
「なんか、余計に酷くなってる気が――」
そのとき
ピュアを抱えて、一瞬で走り去ったのである。
皆、急展開に頭がついていけない。
「すずか!?」
「すずかちゃん!?」
「ええっ!?」
唖然としていたのが数秒とはいえ、外に出ると、すずかの姿はすでにどこにもなかった。
「落ち着いて、行き先はわかってるわ。今車を呼ぶから!」
アリサはすぐに携帯電話で執事を呼び出す。
一方、すずか宅、月村邸。
「お姉ちゃん!」
「にゃ、にゃにしてるにゃ?」
「……ノエル、ファリン、多分追っ手が来るわ。撃退の準備を」
すずかをそのまま大人にしたような容姿の美女、月村忍は事態を把握し、鼻血を啜りながら2人のメイドに命じた。
「は、はいです!」
「い、いいんでしょうか?」
ノエルが常識論を出そうとしたが、当然ながら当主は黙殺する。
月村邸には、当主
準備といえば、それのスイッチをONにするだけだった。
それだけで、普通の人間はシャットアウトできる。
ただ、これから来る中には普通でない人間が含まれている。
1人はフェイト・テスタロッサ。
すずかに匹敵する身体能力の持ち主で、動きを見てもそれなりに訓練されているように見えた。
もう1人は高町なのは。
裏の社会でも名を馳せる剣士を輩出した御神流の道場を持つ高町家の末娘である。
あの年齢で御神流を修めているとは思えないが、継承者として修行を積んでいる兄や姉を呼んで来られると、少々厄介だ。
それに、アリサ・バニングスも忘れてはいけない。
外資系世界規模のバニングスグループ代表取締役デビット・バニングスの愛娘。
強力な護衛を雇っていても不思議はない。
十分後。
「やっぱり、こうなる運命だったのね。所詮は夜の一族と人間の差がある以上……」
「意味がわからん!?」
木刀を持ったなのはの兄、高町恭也と、月村忍は壮絶な戦闘を繰り広げている……ように、見えた。
実際は恭也は自分から攻撃しておらず、忍が一方的に攻撃を仕掛けているだけなのだが。
「さあ、いきますよー!」
「私だって負けないの!」
自動人形のファリンとなのはは、割といい勝負をしていた。
ファリンの動きが早くて照準が絞れないのだが、なのはの防御力と照準の早さが半端でないため、迂闊に飛び込めない。
「ふふふ、さあ、決着をつけましょう」
「えっと……」
すずかは無駄に白熱し、フェイトは魔導師でもない親友を攻撃できず、戸惑いながら回避に専念するばかり。
「ごめんなさいね、美由紀様」
「いえいえ、稽古つけてもらうのも久しぶりですし」
両者、割と適当に手を抜いているなのはの姉高町美由紀と、自動人形ノエル。
「えー!?部隊全滅~!?」
アリサは携帯で連絡を受け、月村家のセキュリティの高さに驚愕していた。
「なんかめっちゃカオスやな」
内輪のことなので、割と呑気なはやて。
お気付きの方もいるだろうが、なのはとフェイトは
皆、特に子供達は自分達の秘密のことになど気が回っていない様子だった。
「で、現在に至る、と」
クロノは眉間に寄った皺を揉む。
あの後、どうやって事態が収拾されたのかというと、ピュアに命じられた猛獣フォームのクリアが
大音量攻撃を命じた
ちなみに大音響攻撃とは、要するにただの大声である。
一線を越えた大声は、人間の三半規管に大ダメージを与えるのだ。
吸血種といえど、例外はない。
現在。
高町家では、なのはとユーノ、それにはやてとピュアが親兄姉に魔法のことを説明している。
月村忍も高町家で、今回の顛末について事情聴取を受けていた。
すずかとアリサは、フェイトがクロノに報告に行くというので、それについてきたのだ。
ノエルとファリンはアリサの護衛の救出と後片付けである。
「すずか、君はピュアの何を見て正気を失ったんだ?」
「その……猫語が可愛かったから……」
「まさか、忍さんも?」
「うん、多分……」
アリサの問いに、すずかは顔を真っ赤にして頷いていた。
「あ、アホらし……」
アリサは頭を抱える。
親友達の、割と重大な秘密が暴露された話の原因が、乙女の欲望を我慢できなかったから、ということらしい。
「いや、あながち馬鹿にできないかもしれない」
「どういうこと?」
「本人は自覚してないらしいんだが。
どうもピュアの母国語であるシェオール言語には、感情の誘導という奇妙な現象が確認されている。
これは僕達ミッドの科学技術でも原因が解明されていないんだが……」
クロノは説明した。
「そ、そうだったんだ……」
「それが、特別な反応が出るのが人種によるものなのか、性格によるものなのか、あまりデータが揃っていないんだ。
今回は夜の一族という、少しだけ違う人種に対して、顕著にその反応が現れたのかもしれない。
1人死に掛けてるから、再現性を確認するわけにもいかないんだが……」
「死に掛けたってどういうこと?」
アリサが反応する。
危険な現象なら、早急に原因を追究しなければならないかもしれない。
「興奮し過ぎて鼻血で失血死しかけたらしい」
「「……」」
あまりに馬鹿馬鹿しい話に、3人は絶句した。
エイミィは知っているようで、苦笑している。
ちなみに、最初、ピュアが慌てたのは、翻訳魔法の失敗に気付いたからである。
本人は常に敬語で話しているつもりだったらしい。
シェオールの翻訳魔法は色々と調整が難しく、しかも自分で失敗していることに気付きにくいそうだ。
よくわからない早口言葉も、失敗していないかどうかを確認する方法として教わったようだ。
だが、今回のように微妙過ぎる違いについては、他人から指摘してもらう以外に方法がない。
やり直して調整しても今回の猫語のように、余計酷くなることがあるという。
日本語は語彙が豊富過ぎて、特に調整が難しいとか。
その後、ピュアの翻訳魔法を見てみたいと言い出したアリサだったが、犬語が出てしまい、危うく暴走しかけたとか。
これが『月村家の黒歴史』と後に称される、事件の顛末である。
これによって地球は魔法を受け入れる土壌がある準管理世界として管理局に認識され、月村家と管理局、ハラウオン家との交流が始まったのだった。
番外編1-2でした。
シェオール語とは一体何なのか…。
シェオール魔法による言語翻訳について、単語を一つ一つ変換する、ミッド式よりも劣る方式としたのは、このエピソードのためです。
というより、翻訳魔法について説明した公式文章って存在しないようです。
ええ、捏造ですとも。
番外編タイトルの超威力っていうのは、翻訳魔法のことです。
かわいいは兵器ですから。
それでは。