【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

29 / 54
ここから空白期です。


空白期編
026 急報


木漏れ日と共にある記憶だった。

 

山奥の寂れた集落で、老夫婦に拾われた時のこと。

 

そこは平和な村だった。

余所者である自分のことも、皆笑って受け入れてくれた。

 

心の底から善人ばかりであった。

日々のきつい仕事に文句1つ言うことなく。

体が弱く、作業ができない自分にも、文句1つなく。

養ってくれた。

体の弱い自分のために、山に入り、滋養強壮に良い薬草を取ってきてくれたりもした。

 

自分はそれらを、木陰で見ているだけ。

 

ただ養われていることが申し訳なく。

ある日、自分は魔法を使った。

自分にできるのはただ1つ、回復魔法だけである。

このときは、回復魔法くらいしかまともには使えなかった。

 

自分を養ってくれていた老夫婦の体力を回復させた。

だが、それが不幸を呼び込むことになった。

 

翌日、集落から1人、人がいなくなった。

 

 

 

6日後、大勢の兵士が村を襲った。

 

彼らは異端審問官と名乗った。

魔法は宗教上、悪魔の力として禁じられていたらしい。

知らなかったでは済まない。

そんな理不尽な世界だったのだ。

 

彼らは異様に真っ白な容姿の、最近拾われた少女(自分)を魔女、悪魔の手先として捕らえた。

そして、残りの人々を奴隷として連れて行った。

一通り清めた後、釈放するらしい。

 

 

 

拷問された。

何か言おうとすると殴られた。

体が弱いため、不衛生な場所ではすぐ病気になった。

すぐに、悲鳴を上げる元気もなくなった。

1日くらいでそうなったため、拷問官は不機嫌になった。

 

村で唯一人若かった女性が連れて来られた。

彼女は口に猿轡を噛まされ、腕を縛られて裸だった。

彼女は結婚していて、1児の母となり、幸せに暮らしていたのを覚えている。

 

そして、目の前で何人もの男達に慰み者にされた。

自分は『やめて』と掠れて痛む咽喉で叫んだ。

それを、異端審問官は満足そうに(あざけ)笑いながら眺めていた。

 

村人達は、聖勤と称して大寺院を建造する労役に回されているそうだ。

働かせて働かせて、疲労しても休むことは許されず、倒れれば聖水(冷水)をかけられ、十字架で起こされる。

そんな労役が終わることはないそうだ。

つまり、ただ殺すのはもったいないので、枷をつけて働かせる。

 

衆人はそれを見て、石を投げつける。

聖勤は衆人には明かされておらず、罪人と説明されているからだ。

労役を課せられている人には、石を受けることで罪が浄化されていくのだと説明されていた。

 

自分1人、拾ったがために。

宗教が抱える歪みのはけ口にされる。

 

自分が、偶然集落の近くに出てしまったがために。

自分のような、悲劇の残骸が存在しているがゆえに。

 

 

 

自分は人を不幸にする。

 

身体は転生すれば元通り。

しかし、自分の行いは消せない。

消えてくれない。

 

多くの人々を死なせた烙印は、心の傷として残り続ける。

 

自分が死ねないから。

人を不幸にする。

 

自分が存在しているから。

人は不幸になる。

 

なぜ、自分は死ねないのだろう?

 

思い出した。

自分は罪を犯したのだ。

母から、幸せを奪った。

だから、他の人々を巻き添えにして、不幸になる。

 

どうせ、母にはもう、遭えない。

どうせ、母にはもう、逢えない。

 

どうやって遭えばいいのかわからない。

どんな顔をして逢えばいいのかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

『さて、次じゃ』

『次はやはり『山師』の娘じゃのう』

『我々にとって最大の懸案じゃな』

 

水槽の中で言葉が交わされる。

3つの水槽に浮かぶ3つ『脳』が、議論を行なっていた。

 

『色々と予想外なことをしでかしてくれる娘じゃが、『山師』となれば監禁は無駄じゃろう』

『それどころかほとんどの手は通用せんな。既存の技術で封印する手は無いからのう』

『AMFも無駄じゃ』

『一応、出力リミッターという形で封印はさせておこう。外にはそれで構わんじゃろう』

『シェオール魔法には旧共和国時代、散々苦しめられたものじゃ』

『古代ベルカすらその拡散を恐れた』

『だから大量破壊兵器で世界1つ丸ごと焼き払ったのではないか』

『だが、再びその使い手が現れた』

『しかも、『山師』と同等の実力者がのう』

 

しばし、沈黙が降りる。

 

『数少ない『アルハザード』よりの生還者』

『できれば禁忌とされた技術を引き出したいものじゃが』

『さてはて、どうしたものかのう』

『力で脅す』

『それに屈するようなら、『闇の書』の眼前に飛び出すような真似はするまい』

『人質を取る』

『『神の光』の脅威は惑星全土に及ぶ。

それに元々シェオール魔法は次元転移が得意じゃ。おそらく追跡もできるじゃろう』

『薬を使う』

『却下じゃな。自白剤などを使って生き延びられる体力はしておらん』

『それもそれで問題じゃの』

 

再び沈黙が降りた。

 

『人をやって聞き出すのが無難か』

『最低、あの娘に使われておる技術くらいは聞き出したいものじゃ』

『おぬし、報告書を読んでおらんのか』

『肉体に埋め込まれた『ロストロギア』が偶然じゃと?そんなものを信じるのか?』

『だが、封印都市ではそんなものじゃろう。もっとも、そうと決まったわけではないがな』

『誰に聞き出させる?』

『ドゥーエ』

『心を読まれれば、そこから『無限の欲望』に辿り着かれる。却下じゃ』

『では、最悪潰すことになっても構わぬ者ということじゃな?』

『レジアスはどうじゃ?』

『悪くはないの。確かにあの程度の小僧ならすげ替えは利こう』

『あの『山師』の口車に感化されはせんかの?』

『その時はすげ替えればよい』

『それもそうじゃな』

『では決まりじゃ』

 

 

 

 

 

 

 

暖房の効いた部屋で、1人の少女がソファに座り、うたた寝していた。

 

真っ白な髪は肩口まで伸び、白黒2つのリボンで髪をまとめ、お下げにしている。

髪だけでなく、肌も真っ白である。

 

服は暖かい白と水色の横縞模様のセーター。

特に冬場、体の弱い彼女にとっては必需品だ。

 

下は薄い灰色のロングスカートである。

今は見えないが、その内側に白のニーソックスを穿いている。

 

「?」

 

ぱちりと目を開く。

 

目の前には水性マジックを片手に持った茶髪少女の姿があった。

何が愉快なのか、ニヤニヤと顔が笑っている。

 

「あー、起きてもうたー」

 

残念そうに言う茶髪少女の名は、八神はやて。

この八神家の家主であり、同一の保護者を持つ姉か妹のような存在である。

弱冠9歳にして家主としての貫禄を発揮する、リーダーとしての強力な資質を持った末恐ろしい少女なのだが。

そういう年齢だからか、ことあるごとにこうやって悪戯してくるのが(たま)(キズ)であった。

 

……一応、手鏡で確認する。

 

この手鏡は、少しはオシャレを気にするべきだという、金髪の同居人シャマルによって持たされている。

シャマルは家事をそつなくこなし、気の弱いところはあるものの、それなりの人格者。

それと医術の心得があることから、何度となくお世話になっていた。

唯一にして重大な欠点は、たまに砂糖と胡椒を間違えることだ。

 

幸い、今回は猫のようなヒゲが描かれているだけで済んだ。

顔を洗いに行く。

 

 

 

ピュア・フィエリアーナ・グレアム。

もうすぐ、こういう名前になる予定である。

 

ピュアが里親にと希望した男性は、刑事裁判の最中で、現在は時空管理局本局に拘留されていた。

裁判が終わってから保護責任者の手続きが始まることになっている。

それを思うと少し複雑な心境だった。

男性が裁判を受けているのは、ピュアとはやてを庇っての部分も少なからずあるからだ。

 

最後の『闇の書』事件によって、史上最悪の古代遺失物(ロストロギア)は破壊された。

ただ、その際に内部の管制人格を救出したのだが、そのために男性は管理局の保管庫から、そのために必要な『ロストロギア』を盗み出したのである。

既存の技術では破壊できないとされていた『闇の書』を破壊することに成功したこととこれとは別の話であった。

彼は管理局内部の人間なのだ。

懲戒免職は当然として、数年間投獄される可能性も多いにあった。

彼のこれまでの功績と今回の罪状がどれだけ相殺するか。

どこまでそうするべきか、現在議論の真っ最中なのである。

 

彼はあらかじめ業務引継ぎに必要な資料を用意していたため、引継ぎは速やかに終了しており、今は拘留室に入っている。

 

 

 

ピュアははやてに文句を言って、それからテレビゲームで遊んでいる同居人ヴィータの様子を見た。

やっているのはRPGだった。

レベル上げの真っ最中である。

 

ピュアはよく、はやてやヴィータと一緒に遊ばされる。

シューティングやアクションゲームなど、反射神経が物を言うようなゲームは苦手だった。

代わりに、頭を使うボードゲームやパズルゲーム、カードゲームの類は無類の強さを誇っている。

得意不得意が極端なのだ。

 

今日は地球で友人になった4人が遊びに来た。

八神家は部屋もそこそこ多く、リビングも広いので、気兼ねせず集まりやすいのだ。

 

「今日こそは勝つわ!」

「おもしれえ、受けて立つぜ!」

 

アリサとヴィータは遊びにおいてお互いにライバル視しており、何かと勝負するのが通例になっている。

現在ヴィータが押し気味だがなかなかいい勝負になることもあり、手に汗を握りながらそれを眺めるのもいつものことである。

 

その後は、日によって勉強会が開かれたり、別のボードゲームをやったり、クッキーを作ったりして過ごす。

 

そんな、日常になりつつある、ある休日のこと。

 

 

 

「!」

 

ピュアが突然、顔色を変える。

そしてその瞬間に起きたことを全員に念話で告げた。

 

『次元間念話が繋がりかけてたさ』

 

それは、『時の庭園』にて異変が起きたことを示すものだった。

 

 

 

それからが大変だった。

 

魔法のことを知らないアリサとすずかに感付かれないように、ピュアとフェイトを送り出さなければならない。

とりあえず、ピュアとフェイト、それにシャマルが奥の部屋に引っ込む。

 

とはいえ丁度お昼時である。

3人も姿を隠せば、不審に思われるかもしれない。

 

そこで、急遽ピュアはフェイトが住んでいる管理局の地球支部に連絡した。

今は拘留中のリーゼロッテとリーゼアリアを一時保釈してもらい、変身術で身代わりとしたのである。

2人とも、ピュアやフェイトをよく知っている間柄なので、動きや行動をトレースするのはそう難しいことではなかった。

 

特にリーゼアリアは以前、一度だけシグナム達の前に姿を現した、仮面の男である。

その変身術はシグナム達にも高く評価されていた。

 

 

 

次に、『時の庭園』である。

 

慌ててピュアがフェイトを連れて転移する。

非常にのろのろとした動きで、傀儡兵が破損箇所の修理を行なっていた。

2ヶ月ほど前、襲撃を受けたことがあり、その際に多少施設が破損していたのである。

やはり人間がするようにはいかないのか、修理した部分は少々違和感が残っていた。

そんな傀儡兵の様子から察するに、襲撃ではないようだ。

 

作業をする傀儡兵の間を抜けて、ピュアとフェイトは目的の人物がいる場所へと急いだ。

ピュアは体力的な問題で走れないので、使い魔クリアを猛獣フォームにして、その背中に乗って移動している。

 

フェイトが先導する形で内部を進み、目的の部屋に辿り着く。

そこには、限界を超える回復魔法の使用で力尽きたプレシアと、フェイトにそっくりな金髪少女アリシアの姿。

 

「母さん!」

「――」

 

ピュアはすぐに詠唱を開始した。

 

おそらく、ずっと復元を試みてきたアリシアの完成体が目覚めたのだ。

しかし、外に出してしばらくしたところで容態が急変し、救難を発するとともに応急処置を試みていたのだろう。

 

フェイトは気が動転して、とりあえず助けを呼ぶ念話を飛ばした。

『時の庭園』から通信を出すには、次元間念話か、次元通信装置を起動しなければならない。

普通の念話では、地球には届かないのだ。

だが。

 

『すぐに向かう!』

 

応える念話が届いた。

 

フェイトが地球の臨時指揮所に連絡を入れた際、それを聞いていたクロノがピュアの転移を追跡(トレース)し、『時の庭園』の所在を突き止め、尾行していたのである。

一刻を争うこの状況において、このクロノの行動が母子を救ったと言っても過言ではなかった。

 

すぐにクロノが地球のエイミィに連絡を入れ、治療施設と移送態勢が整えられる。

ピュアの回復結界で少し持ち直したプレシアとアリシアは、すぐにミッドチルダの大病院へ搬送された。

 

 

 

 




第26話でした。
ひろっさんは日常の描写っていうのはちょっと苦手です。
逆に戦闘の描写についてはそこそこいけると思ってるんですけどね。
困ったことに、体調やテンションによってかなり違ってくるんですよ。
なんとかその辺が統一されてくれれば、もっとたくさん書けるのですが。

『時の庭園』に行く場面ですが、展開がかなり無理矢理な感があります。
一応言い訳しておきますと、この時点ではどういう理由で緊急事態だったのか、分からなかったんですよ。
なので、大抵の事態に対処できるピュアと、『時の庭園』をよく知るフェイトの2人が確認に向かっています。
それにしても、リーゼ姉妹を呼んでくる必要はなかったかもしれません。

一応、時系列的には番外編での魔法バレの前です。

それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。