【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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今回は平和です。


033 シェオール雑談

「じゃあ、結界張るよー」

 

ユーノがフェイトとなのはに声をかける。

何をやるのかというと、模擬戦だ。

 

「負けないよ、なのは」

「うん、私もなの」

 

主に休みの日、何人かが集まり、こうやって模擬戦を行う。

日々の訓練でもあり、高町家と八神家の交流の場ともなっている。

 

「フェイトお姉ちゃん、がんばってー!」

 

今日はそこに、フェイトと同じ金髪の少女、アリシアが加わっていた。

 

プレシアが退院するまで、アリシアも海鳴に住むことになったのである。

住まいは一応、管理局地球支部兼、ハラウオン宅だ。

『闇の書』事件で臨時指令所として借りられたマンションが、名義を変えてそのまま残っていた。

 

フェイトの妹で、現在6歳。

姉と違って快活で、やんちゃ盛りだ。

魔力資質や人格を含めてオリジナルのアリシアに近いが、オリジナルにはなかった電撃の魔力変換資質を持っている。

 

好奇心旺盛で、色々と悪戯をしてはリンディやクロノを困らせていた。

オリジナルはそこそこ大人しかったことから、ここでも違いが出ていることになる。

 

もっとも、プレシアにとっては最早違いなどどうでもよかった。

アリシアという名の娘がいて、フェイトという名の娘がいる。

その両方が自分を母と慕ってくれる。

それだけでよかったのだ。

 

そのプレシアの容態だが、集束器官変異症を長く放置していたせいで、治療に時間がかかるようだ。

ピュアの強力な回復魔法によって半ば無理矢理命を繋ぎ止めていた代償と言えるかもしれない。

その代わり、体力的にも問題はなく、半年ほど入院した後は様子を見ながら通院ということになるだろうとのこと。

 

 

 

模擬戦は、移動砲台と化していたなのはに対し、フェイトは徹底した高機動戦を展開。

 

狙いを定められないように動きつつ魔力砲台を展開、弾幕でプレッシャーをかけつつ隙を見て一撃離脱戦術で挑んだフェイトが勝利した。

なのはの攻撃魔法は威力が高いが、動作が重いため避けられやすいという、弱点が露呈した形だ。

 

逆に、フェイトは防御力が低く、ほぼすべての攻撃を避け切らなければ勝利はない。

そのために防御をより薄く、速度を極限まで追求した『ソニックフォーム』を開発している。

外見は体のラインがはっきり見える、ボディスーツのような形になっていた。

 

「誘導弾が全然当たらなかったの」

「なのはもバリアジャケットを変えて戦いやすくすればいいと思うよ」

「あ、そっか」

 

早速、それまでずっと同じだった魔法衣(バリアジャケット)の改造案を考えていく。

 

「なのはは多分、逆にもっと防御力を上げて照準速度や予測射撃の精度を高めた方がいいと思うぜ」

 

そこにヴィータが口を出す。

主であるはやて、それにピュアと共に、2人の訓練を見に来ていたのだ。

 

特に決まりごとではないが、守護騎士の誰かが家にいるときは、こうやってはやてやピュアと一緒に2人の訓練を見ることになっていた。

たまにユーノやアルフについても稽古をつけることがある。

 

「そういえばピュアちゃんはバリアジャケットとか、ないん?」

 

模擬戦の後の戦術検討を始めた3人を眺めつつ、はやてが展望台のベンチに座るピュアに聞く。

 

アルフ、ユーノはアリシアと雑談中だ。

 

「直接射ち合うことって、まずないさ。だから防御は球形防御陣(スフィアプロテクション)くらいしかないさ」

「へぇー、そうなんや」

「シェオール魔法ほど動作の重い体系は無いと思うさ」

 

簡単な翻訳魔法でさえ1分かかるのだ。

機動戦ができるほどの高速運用は最初から想定されていない。

 

「その代わり、シグナムさんが言ってたみたいな、術式阻害とかは発達してるさ」

「術式阻害って、魔法が使えなくなるん?」

「相手だけ使えなくするのが普通さ」

「なにそれこわい」

 

ピュアははやての言い方にクスクスと笑う。

一方的に攻撃できる状況にするのが普通だとかいう、シェオールの常識についていけないようだ。

 

「シェオール魔法同士だと、場の支配権の奪い合いに勝った時点で勝負が決まるから、バリアジャケットはあんまり意味が無いさ」

 

だから、どちらかといえば、防御魔法の存在意義は他の体系、ベルカ魔法やミッド魔法を意識したものなのである。

 

それも、全力で防御し、仲間の援護を待つためのものだ。

そのためシェオール魔法には珍しく、高速展開可能で燃費が悪い。

術式の内容を弄って防御力を劣化させたものでなければ、ピュアの体力では数分も展開できないほどである。

代わりに完全な形で展開すれば、なのはのSLB(スターライトブレイカー)すら、防ぎ切ってしまうだろう。

砲撃の照射時間によっては、消耗のために戦えなくなってしまうかもしれないが。

 

「なんか、両極端やな」

「お、シェオール魔法の話か?」

 

再度模擬戦に突入したらしく、ヴィータが戻ってきた。

仮組みした魔法衣でどの程度やりやすくなるかという、確認をするための軽いものだ。

 

「あ、シェオールの話、聞きたい」

 

聞きつけたアリシアが走り寄ってくる。

 

どうも最近、失われた体系であるシェオール魔法について興味津々な様子だ。

ピュアがぶっ倒れるまで質問攻めにしていたこともある。

 

 

 

「シェオール魔法の戦術理念みたいな話かなー」

「ベルカも一時期は大概尖ってたけどよ、シェオールのは行き着くとこまで行ってるもんな」

 

そりゃ確かに極端だ、とヴィータ。

一度、シェオール祈祷師が主になったことがあるそうだ。

 

資質だけを元に転生する『闇の書』の悲劇である。

いや、喜劇かも知れないが。

 

「アタシ達守護騎士が『山師』とかについて知ったのも、そのときの主から聞いた話なんだ」

「そんなことがあったんか」

「ま、もう何百年も昔の話だから、『山師』のこと以外はアタシはほとんど覚えてねーけどな」

 

シェオール魔法は近接戦闘が得意なベルカ式と同じように、超遠距離狙撃が得意である。

これも術式阻害が発達したからだそうだ。

術式阻害が届かない遠方から狙わなければ、魔法攻撃など不可能だったのだ。

 

「普通、遠距離狙撃って言ったら射撃魔法とか、なのはみたいな砲撃を思い浮かべるだろ?」

「それはまあ、そうだね」

 

ユーノは頷く。

 

「シェオール式の遠距離狙撃は『神の光』って魔法で撃ち抜くんだ」

 

遥か上空からの遠距離狙撃は、祈祷師の平均で50kmもの射程を誇った。

ちなみに、なのはのディバインバスターで最大10km程度である。

それ以上は空気の揺らぎのせいで、デバイスの補助があったとしても正確な射撃が難しくなる。

 

詠唱に時間はかかるものの、そこまで遠方になるとミッド魔法やベルカ魔法では探知できない。

そして気付かれないままに目標の急所を極小範囲のレーザーで撃ち()く。

あるいは警告として手足を撃ち(つらぬ)く。

 

それゆえに、一般の祈祷師に対しては『神の光』の習得が禁じられていた。

ピュアが使えるのは、母親がシェオールの重職に就いていたからである。

 

 

 

「あー!ヴィータちゃん、ちゃんと見ててよ~!」

 

軽い模擬戦を終えたなのはが、話し込んでいた皆のところへ飛んできた。

フェイトも少し遅れてやってくる。

 

「わりぃ」

 

ヴィータは頭を掻いて謝った。

 

「何の話してたの?」

 

なのはと一緒に魔法衣(バリアジャケット)を解いたフェイトが尋ねる。

 

「シェオール魔法での戦闘で何が主流だったかって話だよ」

 

アルフが答えた。

 

一通り、遠距離狙撃が主流だったことを話す。

 

「そういえば、『道士』になる試験って確か、中堅くらいのベルカ騎士と1対1で戦って、そこそこいい勝負することだってリインが言ってたよね?」

「ああ、そうだぜ」

「それって、シェオール祈祷師が達成しようとしたら、物凄く大変なんじゃ……」

 

遠距離狙撃が主流だったせいで、接近戦は苦手だったはずだ。

 

「中堅って言ってもアタシらから見ればヒヨッコだぜ?なんせ、全体の平均くらいって話だからな」

 

時空管理局に所属する魔導師の中で、総合ランクAAAに至る者は5%に満たないという。

大半は最高でもランクAかBで留まっており、平均するならばB程度だろう。

ヴィータが言うには、古代ベルカでは強弱の差がもっと激しく、上はSSSランクがいるが、平均は今の管理局よりもやや低いランクB-程度だったとか。

 

「へぇ~、そうなんだぁ」

 

なのはは感心した声を上げた。

 

「そうは言っても、『道士』の数は一時期1万人を割ってたりして、シェオールの王の治世が一貫して優れたものじゃなかったら、とても治安維持はできなかったみたいだよ」

 

ユーノが説明するが、リインフォースから聞いた話だ。

元々警察組織が必要ないほど治安のいい世界だったからこそ、兵士の数もそれほど必要なかったのである。

とはいえ、惑星1つに警官1万人と考えれば、治安維持どころではない、とんでもなく無茶な話だが。

 

もっとも、これは一般向けの説明だった。

 

年に一度行われる、最高位『山師』に挑戦するための試験の内容が凄まじく、飛び抜けて高難度な超遠距離狙撃を成功させるというものであるため、それを成功させる『山師』となった者には逆らっても無駄であると知ることになる。

他世界からの侵攻についても、『山師』を『道士』がサポートするだけで、たとえミッドチルダの大軍勢を相手にしたとしても、戦力の質で圧倒できたのだ。

 

 

 

「そんな凄いシェオールがどうして滅んじゃったの?」

 

アリシアがそんなことを言い出す。

 

「アリシア……」

「ごめん、ちょっと気になっちゃって」

 

フェイトに窘められると、アリシアはハッ、と気付いて謝った。

 

「別に気にすることはないさ。シェオールは、後ろ盾のベルカが滅んだ時点で、もうどうしようもなかったさ」

 

つい、ポロリと出てしまったが、皆は気付かなかったらしい。

 

シェオールがベルカの後ろ盾を失った時点で滅亡が確定していたというのは、聖王教会などの様々な機関から当時の情勢について教わったゆえに出てきた結論である。

ベルカがシェオールの鎖国を望んだ際の理由が、シェオール魔法の技術拡散防止だったのだから。

 

当時シェオールとミッドチルダは敵対していた。

その上にシェオール魔法はミッド魔法の天敵だ。

それゆえに、普通に攻略したのでは、シェオール魔法がいずれ次元世界の管理できない場所に拡散してしまい、将来、シェオール魔法を発展させた集団が反乱を起こした際、高確率でミッドチルダが敗北を喫する。

天敵であるシェオール魔法を消滅させなければ、安心しておちおち眠ることもできないような状況になっただろう。

そしてシェオール魔法を消滅させるには、鎖国している今の状態のまま、全土を一瞬で焼き払うのが一番手っ取り早い。

 

ミッドチルダにとってシェオールを滅ぼすのは、当時としては理に叶った行動だったのである。

 

 

 

「上手くいってるじゃねーか。これなら、アタシくらいのスピードなら連射で捉えられるかもしれねーな」

 

模擬戦の戦闘データを見返しながら、ヴィータは評価を下す。

実験的に軽く流した最後のものは、なかなか上手くいったようだ。

 

「この砲撃の誘導性って考え方もいいかもしれないね。これのときだけ避け難かったよ」

「うん、あとは最適化するだけなの」

 

フェイトもなのはも、満足そうに頷いた。

 

「みんなー、そろそろ帰るで~」

 

はやてが熱心に話し合う3人に声をかける。

そろそろ、夕食の時間だ。

 

その号令をきっかけに、ぞろぞろと家に帰り始めた。

 

「またなー」

「うん、またねー、みんな」

「また明日ね」

 

この中から管理局のエースオブエースが誕生するのは、もう少し先の話である。

 

 

 

 




第33話でした。
アリシアの魔力資質について補足。
フェイトはかなり高い資質を持っていますが、これはオリジナルのアリシアにはなかった才能です。
大体、フェイトがAAAならアリシアはAくらいの資質しかありません。
そこまで細かい設定が探しきれなかったので、ランクについては捏造ですが。

シェオール魔法の利点とリスクについて。
一番苦労した点ですね。
ミッド魔法の天敵にしようと考えて、行き着いた結論が行動阻害でした。
結界で連携を阻害して、術式阻害で魔法の使用を阻害します。
ちなみに、シェオール魔法にも普通の誘導弾(シューター)みたいな攻撃魔法はあります。
ピュアに適性がないってだけで。
まあ、Sts本編まで出さないつもりですが。

それでは。
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