【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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出オチ注意。


035 訓練風景

「じゃあ、術式阻害かけるさー」

「うん、お願い」

 

いつも通りの休日での展望台における訓練。

ピュアがAMFより高精度な術式阻害を使えるというので、体調と相談しながらだが訓練に取り入れることにしたのだ。

ピュアの方も、適度に肉体に負荷をかけ、体力を増強するという意味で、有意義なトレーニングとなっている。

 

術式阻害結界展開(ウエカラクルゾキヲツケロ)

 

皆、思わず空を見上げる。

そして互いの顔を見て苦笑した。

詠唱がそう聞こえるだけだとわかっていても、やってしまうのだ。

 

この現象は、最近は『シェオール反応』と呼ばれている。

なぜか、別の言語圏の人間でも、ついつい反応してしまうらしい。

 

「わ、凄い、本当に威力が弱くなってるの」

「強度は5から6程度、ガジェット・ドローンが使うAMFのレベルとほぼ同じくらいだな」

 

シグナムが言った。

 

彼女は現在、首都航空防衛隊のゼスト隊に所属している。

集積器官(リンカーコア)を損傷して魔力、瞬間最大出力が大幅に低下してしまったクイントの穴を埋めるために、隊長のゼストが希望したのだ。

 

彼も襲撃事件には不信感を持っていて、できるなら実績を積んで隊長格に昇進するまでは、自分の隊で匿っておきたいという思惑があるようだ。

実は、AMF環境下の戦闘機人に初戦で対応してのけたシグナムに対し、地上部隊では疑いの目を向ける者も少なくないのである。

レジアスの秘書の死体の第一発見者が、同じ『闇の書』の守護騎士の一員であるヴィータだということもあって、様々な方面から疑いの目を向けられていた。

 

ただ現場では、いつ出てくるかわからないガジェットのAMFに対応できる数少ないストライカーということで、頼られているのだが。

 

今も嘱託魔導師として登録し、休日には訓練を重ねているなのはとフェイトに対して、様々なアドバイスを行っていた。

 

「魔力放出に関しては高町の方が上手いな。収束砲(ブレイカー)を使う関係で、魔力散布は慣れているのか」

“分析するのはいいが、アドバイスはいいのか?”

「む……」

 

リインフォース・アインに指摘され、シグナムは言葉を詰まらせる。

動きがいいかどうかを見るだけならまだしも、口下手な彼女は何かを教えることが苦手なのだ。

咄嗟の判断力は確かだし、守護騎士(ヴォルケンリッター)の将としては何ら問題ないのだが。

 

 

 

「高町、頑張るのはいいが、魔力消費量が多いぞ。

戦闘で勝っても、その場で動けなくなれば危険だということを忘れるな」

「はーい」

 

シグナムは指摘する。

以前から、なのはは少しでも事件を早く解決するために強くなろうとし、結果として疲労を溜め込む傾向があった。

 

同居しているユーノの話では、『ジュエルシード』事件でフェイト達と出会う以前、自分の見落としで『ジュエルシード』を見逃し、海鳴の街の破壊を許したことがあったらしい。

それからというもの、決して弱音を吐いたりせずに、魔法の練習に打ち込むようになったのだそうだ。

 

そのおかげで、以前から訓練していたフェイトを凌駕しようというほどの実力を身に付けている。

そして今なお、自分の体が傷むことを省みず、訓練に励んでいるのだ。

それがどれほど危険なことか、気付いていない。

 

それに加え、代々剣士の遺伝子を引き継いでいるためか、肉体的には恐ろしく頑丈だ。

『スターライトブレイカー』ほどの砲撃を撃つと、普通は9歳くらいなら神経が耐え切れずに気絶してしまうものなのである。

その頑丈さが、逆に周囲の認識を甘くし、蓄積し続ける肉体疲労に気付くのを遅らせていた。

 

もし、ピュアがなのはの心の焦りを指摘していなければ、シグナム達も気付かなかっただろう。

気付かないままに訓練を続け、いずれ大きな失敗(ミス)に繋がり、大怪我、最悪再起不能になっていたかもしれない。

 

心を読まれるのは気分的に良くないが、ピュアは無闇にそれを口に出さない。

その奥に潜む危険を察知して、必要な行動を取るだけだ。

今回のなのはの場合、教えている立場のシグナムやヴィータに、そっと相談しただけである。

何か行動を起こす場合、シグナム達に相談するように言われていたのも効いているのかもしれないが。

 

それに危ういという点では、ピュアも大して違わない。

例えば、レジアス・ゲイズ中将が逃亡の末、死体で発見された際、自分は気付けたはずだと酷く落ち込んでいた。

そしてミッドチルダで広域探査魔法を使えば、犯人を捜し出すことができるかもしれないと言い出したのである。

 

しかし、相手は魔力反応のないサイボーグ、戦闘機人だ。

『山師』並みの索敵能力といえど一般人は見分けられないため、高確率で空振りに終わるだろう。

さらに聖王教会から、ピュアには動かないでほしいという要望があったとも伝え、何とか宥めて説得したのである。

 

その後、夜に寝付けなくなったと訴え、シャマルが魔法で寝かしつけたり。

落ち着くまでは色々と、本当に大変だった。

 

自分の失敗(ミス)で知人が死ぬ場面を、ピュアは何度も何度も経験していた。

自分から進んで危険に身を晒し、自分を度外視し、場合によっては躊躇いなく五体や命を捧げる。

ピュアの行動は、なのは以上に危険な精神状態によるものなのである。

他人の感情を無闇に口に出さないのは、口に出せば止められることを、本人がよく知っているからかもしれない。

自分が危険な精神状態にあることを、誰よりもピュア自身が自覚しているのだ。

 

シグナムは複雑な思いでそんなことを考えていた。

ピュアの事情は、自分達『闇の書』関係者よりも深く重い。

 

『“難しいが、気にしないのが双方にとって善いことだ。我々が気にしすぎると、あの子の負担になる”』

 

念話でリインフォース・アインが語りかけてくる。

単独で念話が使えるのは、生まれたばかりの融合騎ツヴァイが、今は内部で眠っているためである。

融合騎には、主人(ロード)魔力資質(リンカーコア)からコピーした『擬似リンカーコア』が内包されており、単独でも魔法が使えるのである。

 

とはいえ、休眠状態のツヴァイから魔力を引き出すため、あまり派手に魔法を使うわけにもいかない。

使えるのは、精々が念話程度だ。

 

『わかっているさ』

 

シグナムも念話で応える。

主に聞かせたくない話は、念話でするようにしていた。

 

 

 

「うわー、結構凄いのねえ」

「はやてちゃんもあんなことできるの?」

 

今日はアリサとすずかが訓練を見に来ていた。

 

この2人にはある事件の後、魔法のことは説明してある。

非常に間抜けな、それでいてこの世界が準管理世界と認識されるに至った事件だが、大事はなかった。

(※ 番外編1-1、1-2参照)

 

それ以来、たまにこうやって訓練を見に来るようになっている。

結界の中に入ることができているのは、ピュアがシェオール式の変位相結界を展開しているからだ。

変位相結界はリンカーコアを持たない一般人でも、術者が意識することで内部に取り込むことができるのである。

術式阻害結界と併用しているが、変位相魔法は術式を必要としないため、何ら問題ない。

 

「いやいや、私なんて魔法習い始めたばっかりなんよ。

リインの補助があってやっと、とりあえず戦えるようになるかなって感じやね」

 

ベンチに座るはやては首を横に振る。

今は松葉杖の練習も兼ねて、この展望台に登ってきていた。

 

「主はやての資質は広域制圧です。直接戦闘は我々ヴォルケンリッターが担当しますし、問題はありません」

「じゃあ、シグナムはあんな風な射ち合いってできるのね?」

「ええ、まあ。ただ、魔法の体系が異なりますから、私の場合は『斬り合う』と表現した方がいいかもしれません」

「シグナム達の魔法はベルカ式といって、なのは達が使うミッド式とは戦法とかが違うんだよ」

 

口下手なシグナムに代わり、ユーノが説明する。

今は人間形態である。

 

 

 

「慣れてきたか?」

 

シグナムは声をかける。

 

「うん、いけると思う」

「私も大丈夫なの」

 

軽く模擬戦をしていたフェイトとなのはが降りてきた。

 

「それでは、どちらから先にする?」

 

今日の目的はAMF環境下における機動訓練だ。

慣れているシグナムが相手をし、本気気味に叩き伏せることで自分に足りない部分に気付かせることである。

 

口下手なシグナムが教える場合は、大抵は実戦形式だった。

口で説教するよりも、直接体に叩き込もうというのだ。

 

話し合いの結果、フェイトが先に闘うことになった。

 

「シグナムさんって強いの?」

「フェイトちゃんも私も、まだ勝てたことないんだよ」

 

アリサの質問になのはが答える。

 

無茶な訓練に充分な休息を挟むようになったとはいえ、なのはの練習量は相当なものだ。

だが、それでも1対1でシグナムには勝てていない。

ヴィータが相手なら、5本中2本くらいは何とかなるようになってきたのだが。

 

もっとも、シグナムの性格もあるだろう。

彼女は模擬戦でも割と全力で勝ちに来るのだ。

 

「さっきより凄い戦いになるで」

 

 

 

術式阻害の結界内での戦いは、フェイトともなのはとも、シグナムの一方的な勝利に終わった。

 

「もう少し様子を見るべきだったかな」

 

シグナムは言う。

AMF環境下における実戦を経験している彼女は、既に独自の戦法を確立していたのだが。

それでもここまで一方的になるとは思っていなかった。

 

「というよりも、カートリッジシステムがない状態だと、ミッド式は対応するのに手間がかかるんじゃないかな」

 

ユーノが言った。

 

同じ魔力放射を行うにせよ、カートリッジで一時的に底上げできるベルカ式と、全体の出力が上げられないミッド式ではベルカ式の方が有利なのだ。

ただでさえ実力が高いシグナムがベルカ式のため、AMF状況下では余計に実力差が開いてしまうのである。

 

「そうか。管理局の方でもカートリッジシステムをミッド式に最適化して一般化するそうだから、こちらでも導入を考えた方がいいかもしれないな」

 

シグナムは呟いた。

 

「今度メンテナンスするときにお願いしてみるの」

「うん、私も」

 

2人ともやる気だ。

 

 

 

 




第35話でした。
カートリッジシステム導入のフラグです。
ただそのためだけの、現状説明ですね。

『上から来るぞ気をつけろ!』
いわずと知れた伝説のクソゲー、『デスクリムゾン』からのネタです。
ただ、術式阻害という目的にマッチしているかどうかは微妙なので、また変えるかもしれません。

それでは。
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