【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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捏造イベントです。


038 ロンダルグ

第99管理世界『ロンダルグ』。

 

「チッ」

 

ヴィザード・リックスは舌打ちした。

 

任務の応援に遣された戦力が、小型の次元航行艦1隻に過ぎなかったのだ。

 

『AAAランクの魔導師を2人というのは、破格だと思いますが?』

「その程度で何とかなるなら応援なんて呼ばねえよ。ちゃんと反乱の可能性を話したんだろうな?」

『ええ。強奪された古代遺失物(ロストロギア)『雷鼎』(ミュッセンブルーク)の奪還作戦ですから、大人数は逆にロンダルグを刺激するかと……』

「馬鹿野郎!管理局員がもう2人撃たれてんだぞ!」

『しかし、それについては国内の犯罪組織が行ったと、ロンダルグ政府から回答がありました』

「それを信じたのかよ!?」

 

ヴィザードは頭を抱える。

 

次元航行部隊、いわゆる『海』だけの問題ではない。

たまにいるのだ。

敵の、明らかな嘘を信じて騙される、現場能力のないキャリア組が。

 

ミッドチルダでは少なくなってきているが、経歴に箔をつけるためだけに入局し、ろくに役にも立たずに辞めていく局員がいるのである。

しかも、政府の高官の御曹司など、親が持つ強権で現場を引っ掻き回していく。

大抵は現場のリーダー格が姦計に陥れられて、ただでさえ少ない貴重な人材を削って、去っていく。

滅多にいないが、10年に1人くらいはそういうボンクラが出るのだ。

 

運悪く、そういうケースに遭遇してしまったらしい。

 

そう。

運悪く。

帰りたくもない故郷付近で古代遺失物(ロストロギア)の盗難事件が発生し、故郷に詳しい人間だということで、調査に回された。

そしてこの体たらくである。

 

どう考えても仕組まれている。

邪魔な人間を始末するために、『ロストロギア』の情報を流すなどの情報操作が行われたに違いない。

 

「とりあえず、1人でも戦力が欲しいのは確かだ。2人をこっちに下ろせ」

『命令される謂れはありませんが、まあいいでしょう』

「チッ」

 

思わず舌打ちする。

 

 

 

 

 

 

 

「八神ヴィータ二等空曹です」

「嘱託魔導師、高町なのはです。よろしくお願いします」

 

ツインテールの少女が丁寧に頭を下げた。

 

「ヴィザード・リックス三等陸尉だ。応援感謝する(嘱託の子供までターゲットかよ)」

 

ヴィザードは内心毒づきながら、冷静に分析する。

 

高町というのは確か、例の少女の友人と同居人だったはずだ。

となるとグレアム系、ギル・グレアムの弟子達、本局で極秘に戦闘機人事件を捜査しているチームは外れる。

あそこは確かに食わせ物揃いだが、最低限の倫理を外れるような外道はやらないはずなのだ。

 

同時にヴィータは『闇の書』の元主、八神はやての身内である。

そうなると、彼女にアプローチをかけている教会の線も消える。

教会も一枚岩ではないが、八神はやての件に関しては意見が一致していたはずだ。

 

最後にヴィザード本人は管理局の暗部、最高評議会の直属の部下出身であり、最高評議会が絡んでいる線も消える。

現在の地上本部の長官オズ・グンナルをいきなり敵に回すような真似はするまい。

ヴィザードに手を出すくらいなら、ドゥーエに命じてグンナルを直接暗殺させるはずだ。

 

それでも黒幕の幅は広いが、少しは絞り込める。

それよりも、今はどうやって生き残るかだ。

 

 

 

「早速、状況を説明したい」

「挨拶より先にしてもらいてーくらいだ」

 

ヴィータの言には苦笑するしかない。

 

転送室から応接室に移動する最中、何人か頭や腕に治療の跡がある管理局員とすれ違ったのである。

 

「彼等は強奪された古代遺失物(ロストロギア)の捜査中に、何者かの襲撃を受けた」

「強奪ですか?」

 

なのはは戸惑う。

中々しっかりした少女のようだが、さすがに子供だ。

血を見るかもしれない状況に少し当惑している。

 

「輸送船が大破し、乗組員の遺体には銃創があった。状況からして間違いない」

「犯人のアテはあるのか?」

「調査中だ。このロンダルグには無数の犯罪組織が乱立しているからな」

『だが、管理局に正面から喧嘩を売るほど力のある組織はねえ。ロンダルグ連邦を除いてはな』

「ロンダルグ連邦の方には?」

『国家が相手だってのか?』

 

ヴィザードに合せて、ヴィータは念話で返す。

 

「問い合わせたが、調査中だとさ」

『十中八九な』

「マジかよ……」

 

ヴィータは頭を抱えた。

 

ヴィザードの方も頭を抱えたい状況である。

だが、手を抜くわけにもいかないのは辛いところだ。

 

「しばらくこの支部の中で待機していてもらう。

だが、なにしろ盗まれた物が物だからな。明日には所在が掴めるだろう」

「あ、あの、盗まれたものって一体何ですか?」

 

ヴィザードは驚きの表情でヴィータに視線を送った。

 

「任務の事前説明は要求したんだけどな」

 

彼女は肩を竦める。

 

信じられないことに、奪還する物の説明を移動中に受けなかったらしい。

どうやらあの艦長、ヴィザード他を謀殺する計画に必要なエージェントかと思ったら、本当に仕事もまともにできないボンクラだったようだ。

 

大方、これから死ぬ者に説明しても無駄になるだけだと思ったか、より確実に死に近くなるようにと思ったのかもしれないが、隠蔽に失敗したときのことを考えていないのだろう。

ロンダルグは本局からそう遠く離れていないとはいえ、次元航行艦で7、8時間はかかる。

普通はそれだけの時間があれば、任務の内容、奪還するものの性質くらいは説明されるはずなのだ。

 

『雷鼎』(ミュッセンブルーク)といってな、エネルギー貯蔵型の古代遺失物(ロストロギア)だ。

電気エネルギーを蓄積する、解りやすく言えば蓄電池(バッテリー)だな。貯蔵量と出力は桁違いだが」

 

ヴィザードは画像を示しながら説明する。

 

古代遺失物(ロストロギア)としては、機構が簡単で構造を再現することは難しくない。

ただ、魔法金属が使用されているのと、加工精度が桁違いであるため、現在のミッドチルダの技術では再現不能とされている。

ただし利用するのが電力であるため、電波探知によって容易に所在を突き止めることが出来るのだ。

 

これ利用することで、高出力の砲撃を容易に行うことができるため、第2級指定で厳重に封印が施され、管理されていたはずなのだが。

なのはは気付いていないようだが、どう考えたって、そんなものが迂闊に動かされるわけがないし、強奪されるほど薄い警備で輸送されることもありえない。

ということは、強奪も含めて罠に嵌められたと見るのが自然である。

 

しかし。

厭らしいことに、ヴィザードの故郷であるため、捜査官でもある彼が捜査に送り込まれるのは確実だった。

そして、後は何も知らされていないなのはにヴィータを付けて送るだけで、この状況は完成する。

後のことを考えなければ、よく出来た謀略と言えなくもない。

本局上層部と最高評議会が勝手に仲違いを起こし、同士討ちになるとでも思っているのだろうか?

 

『黒幕にアテはあるのか?』

『絞込みはできるが、本部に戻らないことには詳しいことはわからん』

『逆に言えば、地上本部ならなんとかなるってことか?』

『上司の頭に期待するだけだ。9割9分は当たる』

 

念話でやり取りするのは、口に出しては言えない話である。

 

なのはもそうだが、他の局員は管理局内に渦巻いている陰謀のことなど、知りもしない。

特にこんな、辺境ともいえる世界の支局に勤めていればなおさらだ。

 

今不安になっているのは解るが、身内の陰謀絡みだと話してしまえば、反感を募らせて敵側に寝返ってしまう危険性があった。

今そんなことになれば、寝返りが成功するにせよ、行動に出た人間はただでは済まない。

もっとも、ロンダルグ連邦のやり方についてはヴィザードが説明してあるため、そう簡単に離反に走ったりはしないだろうが。

ロンダルグでは情報を得るために尋問などは行わず、即拷問か自白剤の後、死刑である。

 

管理局ロンダルグ支局の人間にとっては、現在は極限状況なのだ。

圧倒的な軍事力を前に、どうなるかわからない状況で、しかも孤立無援であるなどと知れば、逃げ出す局員も出るかもしれない。

 

ヴィザードのような潜入調査のエキスパートでもなければ、単独で逃げるのは自殺行為だ。

単体での戦闘力が高いヴィータならある程度は何とかなるかもしれないが、主の親友であるなのはを見捨てるなど論外である。

だから、今は少しでも時間を稼ぎ、応援を待つ以外に方法はない。

 

そして時間を稼ぐために効率的なのは、無茶でも何でも『雷鼎』(ミュッセンブルーク)を奪還することである。

なぜならば、ロンダルグ連邦にとって、対管理局の切り札として作った兵器の要にどうしても必要なものだからだ。

それを盾に時間を稼げば、あるいは異常を察知した次元航行部隊が駆けつけるかもしれない。

 

蜘蛛の糸のように細い希望だが、それに賭けるしか手段は残されていなかった。

 

 

 

「作戦の説明を行う」

 

ヴィザードは、他の管理局員も集めて説明する。

 

「先程、敵のアジトが判明した」

 

モニターに地図を写す。

外からサーチャーで観測した情報だ。

残念ながら、見取り図は入手できなかった。

 

『雷鼎』(ミュッセンブルーク)の反応はここだ。周囲に民家はない。

ここを、外から派手に襲撃してくれ。俺がその隙に潜入し、目標を奪還の後、脱出する」

 

非常に危険な任務だが、これはヴィザードでなければ遂行できる技能を持つ者がいない。

 

なのは達は、そのサポートを行うのである。

 

「超法規的な措置となるが、現在この支局に二曹以上の階級の者がいない。

現場の指揮はヴィータ二曹に任せる。ここまでで何か質問は?」

「あのっ」

 

なのはが手を挙げた。

 

「リックスさんが1人で潜入するんですか?」

「外で暴れるのとはわけが違う。俺以外は足手纏いだ」

 

彼ははっきりと言い切る。

 

一応ヴィータも、長年の戦場経験から少しは潜入捜査の心得があるのだが、彼女は冷静に外の部隊を指揮し、退き際を見定めるという、重要な役割があった。

だから、現時点で取れる作戦はこれしかないのである。

 

「他に無いなら先に進めるぞ」

 

ヴィザードは別のモニタに円筒形の戦闘ポッドを表示させる。

 

「本局からの応援の2人に説明しておく。こいつはおそらくガジェットドローンの簡易量産型だ。

多少小型だが性能も劣化版で、AMFを搭載しているが、『戦闘機人』事件当時のものより出力が低く、魔法を完全に打ち消すことは出来ない。

ただ、とてつもなく数が多い。

この支局が襲撃された時は100機ほど確認された」

「100……」

 

なのはがごくりと唾を飲み込む。

 

カートリッジシステムを搭載したとはいえ、あくまで最初は精々20機ほどを想定していた。

それが、いきなり想定の5倍である。

 

「ただ、すべてを撃破する必要はない。攻撃を撃ち込んだら、即逃げていい。

敵の注意を惹きつけることが出来れば、それだけ俺の危険も減る。

だが、絶対に無理はするな。誰か1人でも捕まれば、俺の危険度は跳ね上がる」

 

皆、黙っている。

 

捕まれば、ありとあらゆる手段で情報を引き出される。

拷問でも何でも、文字通りありとあらゆる手段で、だ。

 

既にロンダルグ連邦は時空管理局に対し、宣戦布告したも同然なのである。

輸送艦の乗組員を皆殺しにして『ロストロギア』を強奪した国家に対して、捕虜の人道的な扱いを求めるのは甘すぎるだろう。

 

「何か質問はあるか?」

 

誰も手を挙げない。

 

「じゃあ、作戦開始だ。後は頼んだぞ、ヴィータ二曹」

「了解」

 

ヴィータは敬礼を返す。

 

呉越同舟、管理局内では敵対している者同士だが、奇妙な縁から、互いに背中を預けることになったのである。

 

 

 

 




第38話でした。
原作にはない、捏造イベントです。
管理世界の1つが反乱を起こす話です。
そのためにロストロギアもチョイキャラも捏造しました。

ヴィータの階級が低いですが、『闇の書』事件が解決して1年経ってないので、こんなもんだと思います。

それでは。
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