【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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039 反乱勃発

『ロンダルグの反乱』と呼ばれる事件が勃発した。

 

古代遺失物(ロストロギア)『雷鼎』(ミュッセンブルーク)の輸送中に、輸送艦が襲撃され、『雷鼎』(ミュッセンブルーク)が強奪された事件に始まる。

その調査のために現地、第99管理世界『ロンダルグ』出身である、地上本部長官の副官が派遣された。

 

この点に、理由としては少し不明瞭な部分がある。

確かにその副官、ヴィザードは捜査官の資格を持っており、優秀な魔導師でもあるのだが、本来の管轄は本局である。

現地の情勢に明るいからといって、地上本部の人間を1人で派遣することはありえない。

 

それもそのはず、この任務について、本局へは報告が上がっていなかったのである。

本来、小型次元航行艦の艦長ヒラノ・エビックスが報告することになっていたのであるが、彼は故意に反乱の可能性についてどうとでも取れるような言い回しを使い、現地の犯罪組織襲撃に必要最小限の人員しか用意しなかった。

これは彼の上司であるミクター・フォン・ロナルディオの指示である。

 

このミクターという男、時空管理局のスポンサー企業の出身で、評議員でもある。

このたび『闇の書』事件の遺族から依頼を受け、既に裁判が終わった『闇の書』事件の再審を求めていた。

だが、『伝説の三提督』の力には、一介の評議員では手出しできない。

そのため、自分の息がかかった管理局員を少しずつ動かし、例えば本局の案件に地上本部の人間を潜り込ませたりといったようなことを重ね、今回の事態へ発展するように誘導したのだ。

 

これは、一介の評議員といえど、その意見を無視すればどうなるかを示す、一種の見せしめ(デモンストレーション)であった。

自分の意見を無視した老人達への意趣返しという意味を含んでいることは言うまでもない。

 

「右舷被弾!」

「くそっ!話が違うぞ!」

 

ヒラノ・エビックスが部下の目の前だということも忘れて毒づいた。

 

彼が艦長を務める小型の次元航行艦は、ロンダルグ連邦の艦艇から攻撃を受けていた。

あちらは型落ちしているとはいえ、中型の高速艦。

逃げて逃げ切れる相手ではないし、何より火力が違いすぎる。

 

「ロンダルグ艦より通信!」

「……回線開け!」

 

言われて、ヒラノは戦闘停止を呼びかけるのを忘れていたことに気付いた。

 

「(まさか、私が乗っていることに気付いていなかったのか?)」

 

ヒラノは考える。

 

ロンダルグ連邦とは、評議員ミクターが裏取引をしていたと聞いている。

『雷鼎』(ミュッセンブルーク)の情報を漏洩する見返りに、今回送り込んだ人員は皆殺しにすること。

それと、ロンダルグ連邦が管理局よりの独立に成功した際には、ヒラノを外交大使に指名すること。

 

ロンダルグの大使館の長に任命される。

それは親のコネで入局、出世したヒラノにとって、躍進の機会でもあった。

外交大使として実績を上げ、いずれは評議員になるというのが彼の野望である。

 

モニタに映し出されたのは、ロンダルグ連邦秘密艦隊の司令官、フォルク・ヤゲロン。

顎ヒゲの中年男性だ。

 

「ヤゲロン少将!私です、ヒラノ・エビックスです!どうか攻撃をお止めください!」

『おお、ヒラノ殿か』

「未来のロンダルグ外交大使ですぞ。こんなところで撃ち殺されてはかないません」

 

ヒラノは抗議の意を示す。

 

「私が来ることについて、話を通してあるとミクター議員がおっしゃられていたはずですが」

『君こそ聞いていないのかね?

我がロンダルグ連邦は、本日正午を以って時空管理局に対し、宣戦布告したのだよ』

「……宣戦布告は明日のはずでは?」

『半年も前より、今日のために準備を進めてきたのだよ。間違いなどあろうはずがなかろう』

「し、しかし……」

『そうそう、宣戦布告の内容だが、時空管理局に対し、我々は無条件降伏を突きつけた』

「は?」

 

間の抜けた声が出た。

 

ミクターから聞いた話では、ロンダルグが行おうとしているのは独立戦争であったはずだ。

管理局が独立を認めれば、戦争は起こらない。

そのために、ミクターも準備してきたはず。

 

しかし。

無条件降伏。

つまり、時空管理局の支配領域、ミッドチルダのすべてを寄越せと言うのである。

そんなことを、受け入れられるはずがない。

ミクター1人がそれを受け入れようとも、そう、最高評議会が許すはずがない。

 

『やれやれ、頭の悪い男だね。つまり我々はミッドチルダの勢力圏をすべて征服しようと言うのだよ』

「ほ、本気でそんなことを?」

『そのための『雷鼎』(ミュッセンブルーク)でね。

あれを使えば、次元空間に船を浮かべずとも他の世界を爆撃することも可能なのだ。

そうやってシェオールを滅ぼしたくせに、言われるままに『雷鼎』(ミュッセンブルーク)を提供するのだものなあ。

まさかあれがどういう物かも調べずにこちらに渡す阿呆がいるとは、私も思わなかったよ』

 

ヒラノはここでようやく、騙されたのだということに気付いた。

 

「で、では、私の外交大使の話は……」

『ははははは!この期に及んで出世の心配とは、随分と余裕があるじゃないか!』

 

ヒラノは呆然と立ち尽くす。

 

出世どころではない。

細かく調べられれば、戦争幇助、つまり罪が発生する。

隠蔽するにしても、最早誰の口を封じれば良いのか、そもそもそんな機会があるのかどうかすらわからない。

 

目の前が暗くなっていくのを感じた。

 

『既に連邦政府は戦時体制に入った。ゆえに、貴艦を拿捕させていただく。よろしいかね?』

「艦長!?」

 

倒れたヒラノに駆け寄る乗組員達に、フォルク・ヤゲロンは無慈悲に告げる。

 

『クルーの諸君、無駄な抵抗はしないことだ。命が惜しければな』

 

 

 

 

 

 

 

『ロンダルグの反乱』において、ロンダルグ連邦が犯した致命的なミス。

後世の人間はそれをこう評した。

 

『『彼女』の情報を掴んでいなかったことが、彼等にとっての最大の不幸であった』

 

と。

 

 

 

準管理世界『地球』。

日本国海鳴市、とあるマンションに設置された、時空管理局地球支部。

 

「ついさっき、ロンダルグ連邦から時空管理局に宣戦布告があった」

「あれ、ロンダルグって確か、なのはとヴィータが任務で行った先だよね?」

 

フェイトの質問にクロノは頷く。

 

「ああ。ロンダルグは情勢が不安定で、犯罪組織も乱立している。

反乱の可能性は低かったはずなんだが、どうやらその犯罪組織というのは、ロンダルグ連邦の傘下だったらしいんだ」

「国家ぐるみで隠蔽してたみたい」

 

エイミィが言葉を引き継ぐ。

 

「なのはちゃんとヴィータが危ない!」

 

はやては言った。

 

「でも、個人転送で向かうには少し遠い場所ですね」

「転送装置を利用して魔力を節約するにしても、向こうに着く頃には消耗で戦闘などできなくなるな」

“目的は救出だ。その方法では戻ってくることができん”

 

シャマル、ザフィーラ、蒼天の(リインフォース・)(アイン)がそれぞれ意見を述べるが、いずれも絶望的だ。

 

「クロノ君」

 

そのとき、それまで黙っていたピュアが口を開いた。

 

「ロンダルグっていう国を制圧(・・)すればいいさ」

「世界を治める国1つを、どうやって制圧すると言うんだ?」

“いいのか?”

 

内容の違う、クロノとリインフォース姉の問い。

 

「放っておけば、たくさん人が死んでしまうさ。わたしは、助かる人は助けたいさ」

 

ピュアは頷いた。

 

『できるもんなん?』

 

はやてがリインフォース・アインに念話で尋ねる。

はやては『山師』の力について、実際に見たわけではない。

それに、ピュアが本当に『山師』ほどの力を発揮できるのかも未知数だ。

 

『“移動面を我々でサポートすれば問題ないでしょう。

誰か1人でも前で戦う騎士がいれば、祈祷師は10倍の戦力を覆します。

彼女の実力なら、1人で制圧することも可能でしょう”』

 

リインフォース・アインは答えた。

はやては頷く。

 

「私も、戦争のことなんてわからへんけど、ヴィータとなのはちゃんを助けに行きたい」

「わ、私も!」

 

フェイトもそれに便乗した。

 

「ピュア、ロンダルグを制圧すると言ったが、方法はあるのか?」

「『神の光』は、範囲と出力を下げれば、1人で撃てるさ」

“最も恐ろしい使い方だ。デバイスといえど、光の速度には反応できない”

「なるほど……制圧するなら、それで脅せば充分か」

 

どちらにせよ、それしか方法がないなら、それに賭けるしかない。

クロノとしても、辛うじてでもなのはやヴィータ、他の管理局員達を救出できるのなら、それに縋りたい気持ちがあるのだ。

 

個人の能力に頼った、万全とは言い難い作戦だが。

ならば、クロノも自分が出来ることをやるだけである。

 

「わかった。帰りはこちらで手配しておく」

「ありがとうな、クロノ君」

 

 

 

 

 

 

 

ヴィザードは警報の鳴る研究所内を、地下へ深く潜入していた。

 

ロンダルグでは、この手の兵器は地下に隠匿される傾向がある。

なんでも、数百年前に神の怒りを買った馬鹿な王が、地上の魔法具をすべて灰にされてしまったという伝承から、兵器は神の目が届かない地下に隠すものとして慣例となっているのだそうだ。

 

「動くな」

「!?」

 

チキリ、と撃鉄を起こす音。

 

ロンダルグで使用される銃などの質量兵器の厄介なところは、よく魔導師が持っていることにある。

この世界では、管理局に対抗するための、質量兵器を装備した魔導師部隊が編成されていた。

 

「貴様は管理局に尻尾を振る犬か、それとも連邦に忠誠を誓う番犬(ケルベロス)か、どちらだ?」

「……」

 

ヴィザードは内心舌打ちした。

 

質量兵器で武装しているとはいえ、ランクで言えば精々B~A程度である。

この状況でなら、戦えば勝てなくはない。

しかし、ここで見つかったという情報は、デバイスを通じて各方面に届いているはずだ。

道中の隔壁を下ろされれば、彼ではどうしようもない。

 

ここで彼が取った行動は――。

 

 

 

 




第39話でした。
ピュアの実力についての説明がどの程度必要か、微妙なんですよね。
そのままの強さを説明してしまうと、後で隔離封印について議論が出てきますから。
なので、ある程度抑えて説明する必要がありました。

だからといってクロノが許可するかどうかという話だったのですが、この時点のピュアは、行動するのに誰かの許可が必要だとかそういう縛りはありませんからね。
本人の意思で勝手にやるだけです。

それでは。
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