【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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041 反乱鎮圧

ロンダルグ連邦。

総帥執務室、バルコニー。

 

そこには1枚の絵画が飾られていた。

 

白い女神が光を放ち、争いを続ける人間達の武器を焼き払う様子を描き出した、宗教画だ。

第99管理世界ロンダルグには、神の怒りによって戦乱が終結したという伝承がある。

 

「『白亜の女神』によって双方の軍勢は滅ぼされ、その戦争の大儀は失われた」

 

1人の男が言った。

背広姿の、ロンダルグ連邦総帥である。

 

「なぜか?

それは間違った大義を掲げていたからである!」

 

目下には大衆。

これはロンダルグ全軍、そしてその他の民衆へ向けた演説であった。

 

「しかし、今の我々は違う!

外敵、時空管理局などと名乗り、次元世界に圧政を敷く彼等を討ち果たすという、正しき大義がある!」

 

広場に集められた大衆は静まり返っている。

当然だ、ここで騒ぐ者は射殺すると、作ったプログラムに書いてあるのだから。

 

「既に我々は再三に渡り、彼等に向けて警告、及び攻撃を仕掛けてきた。

だが、『白亜の女神』は現れない!

これが意味するところは、正しき大義が我々ロンダルグにあるということである!!」

「「オオー!!」」

 

一斉に雄叫びが上がった。

 

ロンダルグでは、『戦争』が過去数百年、起こっていない。

白亜の女神を、皆が恐れたのである。

しかし、水面下においては激しい抗争が繰り広げられていた。

 

銃や魔法の乱射事件が頻発し、政府要人の暗殺、果ては一般市民の思想弾圧まで、情けも容赦もなく行われてきたのだ。

敵対する勢力に対して行われるのは、戦争ではなくテロである。

戦争にならない、戦争と呼べないギリギリの線で、一部の人間のために、戦争よりも多くの人々が犠牲になってきた。

 

中には、『白亜の女神』の名の下に虐殺が行われたこともある。

そういうとき、ロンダルグの民衆は『天罰』と同じ意味で、『女神の目が黒くなる』と言ったそうだ。

これは、宗教画に描かれる『天罰』のシーンにおける『白亜の女神』の目が、昔からなぜか黒いことに由来する。

 

今も、『白亜の女神』の名の下に、ミッドチルダを征服する戦争が行われようとしていた。

 

 

 

演説後。

 

「『死神の歌(レクイエム)』の方はどうか?」

「順調であります。あと10時間ほどで連続爆撃が可能になるでしょう」

「襲撃者は?」

「現在、基地より5キロメートル地点にて自動兵器(オートスフィア)と交戦中であります。

撤退戦を繰り返しているようですが、殲滅も時間の問題でしょう」

「『エンジェル』は投入したのか?」

「いえ。自動兵器(オートスフィア)の数で押し流す予定です。

3名、狙撃兵を投入はしておりますが、いずれも撃破されております」

「そうか。捕縛できれば、ミッドチルダが滅ぶところを特等席で見せてやれ」

「はっ!」

 

背広の男、総帥は軍服の男に命じ、その後煙草(シガレット)に火をつけて、煙を吐く。

 

 

 

数分後。

 

その部屋のモニタが反応した。

 

「なに?」

『お初、お目にかかる。あー、確か総帥閣下、だったよな?』

 

映し出されたのは、若い男。

管理局員の制服姿で、妙に馴れ馴れしい。

 

「なんだ、貴様は?」

『『イーノック』と言えば解りますかね?』

「『エンジェル』の裏切り者か!」

 

特殊部隊『エンジェル』には、それぞれ伝承にある天使の名が用いられる。

『イーノック』とは、『エノク』つまり後の『メタトロン』のことである。

 

ロンダルグでは、行方不明になった『エンジェル』の1員の名前でもあった。

とっくに死んだとされていたのだが。

 

『ま、本物はもう死んでますがね』

「なんだと!?」

『『死神の歌(レクイエム)』は制圧させていただきましたぜ。

劣化ガジェットの大軍も、もうすぐ片付くそうで』

「ハッタリだ!援軍にしては早すぎる!」

『今から『死神の歌(レクイエム)』を『雷鼎』(ミュッセンブルーク)ごと爆破します。

ハッタリかどうかはその後で判断すりゃどうですかね?』

「ば、爆破するだと?脅しのつもりか!」

『いえいえ、本当に爆破できるってんだからこっちも困っちまいまさあ』

「そんなことをして、貴様、どうやって生き延びるつもりだ?

1つの世界を滅ぼした兵器だぞ?爆破などすれば、貴様も助からん。

無論、地上で戦っておる者どももな!」

 

背広の男はできるだけ冷静に返した。

既に1500もの自動兵器を投入したのだ。

相手の戦力は割れている。

次元転送魔法により転移してきた増援が多少増えたようだが、大した人数ではない。

 

これはハッタリだろう。

 

『ま、言うだけ言いましたんで。後は降伏するなり適当に考えてくだせえな』

 

その言葉を残し、モニタは消えた。

 

「ふざけたことを……」

 

言って、現場の指揮官に繋げる。

 

『はっ、総帥殿!』

「先程、管理局の犬から無様なたれ込みがあった。まさかそれが真実だなどということはあるまいな?」

『そ、それが……突如『白亜の女神』が現れ、その従者達が自動兵器(オートスフィア)を次々に撃滅しております!

先程『エンジェル』を投入したばかりであります!』

「『白亜の女神』だと!?馬鹿を言え!あんなものは俗物どもを納得させるための方便ではないか!」

『大佐!『エンジェル』21名、全滅しました!』

『なんだと!?』「なんだと!?」

 

指揮官の男と総帥と、同時に声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

死神の歌(レクイエム)』開発基地周辺。

 

「これで最後!」

 

金髪黒衣の少女が最後の劣化ガジェットを真っ二つにした。

 

転位魔法で魔力をギリギリまで消耗したユーノとシャマル、アルフと一緒に、ミッド式の結界内で休んでいるのは、なのは、ヴィータ、他の管理局員達。

結界を貼って彼女等を守っているのは、リインフォース(ツヴァイ)融合(ユニゾン)したはやて。

融合(ユニゾン)したことで髪の毛が白っぽく、瞳が青くなり、黒い服に白いジャケットを羽織った騎士甲冑姿である。

 

結界の外で戦っているのはフェイトとザフィーラ、それに2人をサポートするピュア。

 

「あっという間に倒しちゃった……」

 

ユーノは目を丸くして呟いた。

 

「数だけの連中だったから、祈祷師が加わればこんなもんだろ」

「ピュアちゃんってホンマに凄かってんな……」

 

救援が到着したのは、戦闘が始まって3時間が経過した頃である。

 

はやてが結界を貼って、疲労でまともに戦えなくなっていたヴィータ達を保護。

魔法衣(バリアジャケット)もボロボロで、銃弾がなのはの右腕を掠って血が出ていたのだが、応急処置は済んでいる。

救援が到着して安心したのか、今はユーノの腕の中で寝息を立てていた。

 

ヴィータはこの手の荒事に慣れているためか、ほっとした様子だが、その実周囲の警戒は怠っていない。

 

「今のがロンダルグの特殊部隊だったんだ?なんか、動きが全然……」

 

フェイトが戻ってきて首を傾げる。

はやても首を傾げる。

 

「調子悪かったんやろか?」

「いや、おそらく高くてランクA程度だからだろう」

 

ザフィーラが降りてきて言った。

 

“やはりか”

 

蒼天(リインフォー)の書(ス・アイン)が納得する。

もし人の姿ならば、頷いていただろう。

 

“おそらく、質を揃えるという点で、ミッドチルダほど広域に手が届かないのだろう。

それに加えて、シェオールの術式阻害まで使われれば、差が開くのは当然だ”

「そうなんだ」

 

フェイトはちゃんとしたランク試験は受けていないが、魔力資質から総合ランクはAAAとされている。

シェオール祈祷師のサポートがあるとはいえ、地力が違ったのだ。

 

「じゃあ、『ロストロギア』を宇宙に飛ばすんやけど、ピュアちゃん大丈夫?」

「平気さ」

「ホンマにー?」

「来るときは皆に送ってもらったし、大魔法撃ったりしてないし、大丈夫さ」

 

はやては疑いの目を向けるが、半分はじゃれ合いである。

 

「ほんなら、ヴィザードさんも待ってるし、行こか」

「うん、クリア、『猛獣フォーム』」

 

ピュアが肩に乗っていた使い魔に命じると、子猫クリアは角の生えた巨大な猛獣に変化した。

クリアはゴリラを思わせる手で器用にピュアの体を掴むと、背中に乗せる。

はやても狼の姿のザフィーラに跨った。

 

「みんなー、ちょっと行ってくるでー」

「はい、こちらは任せて」

「いってらっしゃい」

 

シャマルとユーノが手を振る。

 

「ザフィーラ、気をつけろよ」

 

ヴィータはザフィーラに注意を促した。

狙撃兵の件である。

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

ザフィーラは返し、先に走り出したクリアの後を追う。

フェイトも一緒だ。

 

狙われるとすれば、転送魔法を使うあちらだし、ユーノとシャマルにアルフも、しばしの休息のおかげで、攻撃されても少しは持たせることができる程度には回復している。

ヴィータ自身も、動けないほどではない。

 

 

 

死神の歌(レクイエム)』開発基地。

 

「見つけたさ」

 

これから、詠唱が完了するまでの間、基地からの攻撃から護衛するのだ。

 

こちらのフェイトとザフィーラ、それに猛獣クリア。

はやては先程と同じく結界を貼ってピュアと共に、『死神の歌(レクイエム)』の爆破処理のため長い詠唱を行う。

ただし、今回はピュアのサポートがない。

その分、温存していたクリアが戦力に加わる。

 

「みんな、ここが正念場やで!」

「うん!」「うむ」「にゃあ」

 

巨大な魔法陣が展開された。

ベルカ式魔法陣を2つ重ね合わせたような、シェオール魔法特有の魔法陣。

 

魔法によっては無展開無詠唱も可能で、魔力素の密疎を操作する術式阻害、サポートは術式すら必要ではない。

とはいえ、長距離転送などの大きな魔法は、基本的に長い長い詠唱が必要である。

だから、今回は転送に20分も時間のかかるシェオール魔法ではなく、はやてが希少技能(レアスキル)『蒐集行使』を使う。

 

何をするのかというと、『死神の歌(レクイエム)』を『雷鼎』(ミュッセンブルーク)ごと宇宙に飛ばすのである。

ピュアが対象物の座標指定を精密制御し、同時にはやての詠唱、術式をサポート。

大気圏外に対象物を飛ばし、そこで照射範囲の狭い『神の光』を用い、破壊するのだ。

 

『ロストロギア』を破壊などすれば大爆発を起こすだろうが、宇宙空間ならば大きな被害は出ない。

分厚い大気の層がバリアの代わりを果たし、爆発は大気圏の外を滑るように逸れ、地上までは届かないはずである。

 

長距離転送魔法で5分。

狭範囲の『神の光』で20分。

 

詠唱は同時に行うため、20分。

その間、ピュアとはやてを敵の攻撃から守り切る必要があった。

 

 

 

緊張の20分だった。

 

なぜか敵の部隊は顔を見せず、劣化ガジェットばかりだったが、遠距離からのライフルによる狙撃に気を配らなければならず、特に防御面で難のあるフェイトは、気の抜けない時間を過ごすこととなった。

 

「――、――」

 

ピュアの詠唱が周囲に透き通るように響く。

 

「うがー!」

 

猛獣フォームのクリアが放つ電気に変換された魔力散弾は、威力を落とせば30~40もの数に分散させることができるため、非常に頼りになった。

誘導はできないが、回避できない弾幕密度にすることは可能で、それはそのまま範囲攻撃になるのだ。

束ねて1つにすれば、ディバインバスター並みの威力になり、使い勝手が良い。

 

まだ経験不足で小回りが利かないため、それをフォローするのがフェイトとザフィーラの役目になる。

具体的に言うと、クリアが砲台となって最終防衛ラインを張り、フェイトは機動力でかく乱、ザフィーラは防御力で敵を集め、狙いやすくする囮の役目を担う。

 

襲撃してきた劣化ガジェットの数は数百に達していたが、目的は20分持たせるだけだったため、そう難しくはなかった。

 

「転送開始!」

“強制転移”

 

はやてが先に強制転移魔法を発動する。

ピュアの魔力素(エーテル)操作(コントロール)のおかげで、弱い(アンチ)(マギリンク)(フィールド)の環境下でも、特に阻害されることなく術式が発動した。

 

「転移完了!私も戦闘に参加するで!」

“はいです!”

“立てるようになったばかりですので、あまり無茶はしないでください”

「わかってるって。ピュアちゃんに散々言っといて、自分だけ無理なんてできへんもんな」

 

はやてが参戦すると、一気に楽になった。

 

八神はやての資質は広域破壊と遠隔発生である。

多くの大魔法を扱い得る『蒐集行使』も手伝って、主な戦法は後方からの攻性支援だ。

 

「“『デアボリックエミッション』”」

 

本来、自分を中心に純魔力爆発を発生させる魔法だが、はやての資質、遠隔発生によって、任意の地点で発生させることができた。

ただこの遠隔発生、制御が難しく、精密制御は今は(もっぱ)融合(ユニゾン)しているリインフォース(ツヴァイ)に頼っているのが現状だ。

 

劣化ガジェットの群れのど真ん中で爆発が発生したため、十数機の劣化ガジェットが巻き込まれ、誘爆する。

 

フェイトもザフィーラも馬鹿ではないため、敵のど真ん中に飛び込んだりはしていない。

あくまでピュアが守られている結界近くで戦っているのだ。

性能的にフェイトのスピードについていけない劣化ガジェットでは、こうなると包囲すらも難しくなってくる。

 

あと10分ほどを稼ぐなら、これで充分であった。

 

そして、ピュアの詠唱が完成する。

 

「“集束(オキノドクデスガ)光照射《ボウケンノショハキエ》開始《テシマイマシタ》”」

「……」

“魔力が乱れてるですよ?”

 

はやてに、リインフォース(ツヴァイ)が言う。

 

「……やっぱりどうしても、なんちゅーか、背筋がぶるっと来るんよ」

“風邪なのですか?”

「いや、そうやなくって」

 

『どうもこの子は天然さんやな』とはやては呟いた。

 

まだ作られて1年も経っていない融合型(ユニゾン)デバイスならこんなものだと言われているが、それだけではないと、はやてには思えるのだった。

 

夕焼けの空に、一瞬だけ光が瞬く。

 

その瞬間。

ロンダルグ連邦は勝ち目を失い、ミッドチルダへの投降を余儀なくされたのだった。

 

 

 

 




第41話でした。
救援到着です。
反乱を終わらせる標的が確認できたため、当初の作戦を変更しています。

オキノドクデスガ再び。
『神の光』なんて大仰な通称ですが、これは狙われると撃たれるまで気付かない上に、基本的に回避不可能だからです。
魔力攻撃ではありませんからね。
対策はただ1つ、撃たれないことって感じです。

それでは。
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