【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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何事も無い日常の一幕。


043 勉強会

回復結界展開(キレテナーイ)

「う~ん、手強いもんやなぁ……」

 

はやては唸る。

 

“回復結界はそこそこランクの高い魔法だったはずです。長期戦は覚悟しておいた方がよいかと”

 

現在、はやて、ピュア、リインフォース・(アイン)で、シェオール魔法の術式をデバイス用に変換している最中である。

 

シェオール魔法は魔力素操作(エーテルコントロール)の技能を前提としており、それができない人間が扱うのを前提とした、デバイスというシステムには不向きなのだ。

そのため、比較的簡単な魔法から術式を分解し、魔力素操作(エーテルコントロール)が必要ないように組み直す作業を行っている。

 

ただ、この組み直し作業というのが難しい。

 

学校へ行きながら、暇を見つけては行っているのだが、日本では誰かに見られてはいけないということもあり、基本的に八神家内でしか行われていなかった。

 

管理局本局の技術員マリエルは、その方がいいと言う。

四六時中、その手の設計図やプログラムと睨み合っていると、気が滅入ってくるのだそうだ。

まだ入局もしていない、幼い子供にそんなことをさせるわけにはいかない。

だから、小学生が二足の草鞋を履ける程度でいいようだ。

 

「それでも、結局シェオール適性のある人とか、探す方法がまだないんやろ?」

「古代シェオール魔法の適性は難しいさ。

でも、ミッド式ベースの近代シェオール式なら、マリエルさんが何とかするって言ってたさ」

「ふーん?」

 

現在、古代シェオール魔法の使い手は、ピュア・フィエリアーナ・グレアムただ1人である。

 

しかし、魔力(エーテル)素操作(コントロール)の技能が必須で、それを発現させる確実な方法というのをピュア自身は知らない。

 

知っているのは、3つある条件の内、2つを満たせばいいというだけである。

その条件の内、意図して満たすことが難しいものが2つあるのだ。

 

1つ目の『祈祷師が魔力を込めた血を飲む』は、血を極少量水に溶かし、それにピュアが魔力を込めればいいため、実現は簡単である。

 

2つ目は臨死体験。

仮死状態をどの程度維持すればいいのか、どの程度危険な状態であればいいのかを判断する術がなく、結局臨死体験者のところへ行って血を飲ませるくらいしか、今は方法がない。

臨死体験するほどの重傷を負った魔導師は、『リンカーコア』が傷ついていることも珍しくなく、大半は前線を退いているらしい。

現在調査中だが、判明しているだけでそういう者は管理局を離れ、民間の会社などに入っており、シェオール適性の覚醒を望む者はいなかった。

 

これはむしろ、シェオール適性が出れば、一時的にもその職場を離れることになるという状況が引き起こしているのだろう。

 

3つ目は修行である。

ピュアは1つ目と2つ目の条件を満たして祈祷師となっており、具体的な修行内容を教わっていないため、条件を満たしようがない。

 

そのため、リインフォース・(ツヴァイ)の作成時、翻訳された接続魔法を何とか利用し、近代式シェオール魔法の技術を確立しようと、マリエルは研究を続けているのである。

 

「明日、定期検査やな。リイン姉妹もメンテナンスしてもらわなあかんね」

「はぅ~、呼びましたですかぁ?」

 

30cmほどのミニチュアサイズの銀髪少女が、蒼天の(リインフォース)(アイン)から出てきて寝ぼけ眼を擦った。

まだ生まれたばかりで、1日に数時間ほどしか起きていない。

人間と同等の膨大なデータを整理するために、活動を停止してその作業に専念する必要があるのだ。

その作業に慣れてくれば、起きている時間も増えていくだろう。

 

「お、起きてきたな。丁度ええ時間やし、おやつにしよか」

「わーい、おやつですー!」

「こいつ、おやつって聞いた瞬間、急に元気になりやがった」

 

様子を見に来たヴィータが、満面に笑みを浮かべてバンザイするリイン妹を見て呆れる。

 

 

 

翌日、本局にて。

 

ギル・グレアムも、裁判が終り数ヶ月が経つと、ピュアの定期検査に合せて休暇を取り、本局に来るのが定番となっていた。

 

「ロンダルグの反乱に関して、グンナル中将も色々と調べているようだ」

 

現在は、地上部隊に入ってくる情報を伝えてくれる、貴重な情報源としても働いている。

 

「やはり、遺族の方々は、はやて達を危険視しているようですね」

「とはいえ、一部の強硬派の感情でしかない。その一部が多数派工作まで行っているそうだ」

「その行動の一端が、先のロンダルグ事件の一因、ですか……」

 

聖王教会系の評議会議員ジョージ・グラシアは腕を組み、クロノやグレアムの話に耳を傾けていた。

 

教会としても、ピュアの話はシェオールの実情を知る上で貴重であるし、シェオール人唯一の生き残りにして希少技能(レアスキル)保持者であるため、保護対象でもある。

グレアムほどではないが、定期的に様子を見に来ていた。

 

今回のロンダルグの話は、聖王教会としても無視できない話である。

あろうことか、遺族の強硬派は『最後の夜天の主』である八神はやてや守護騎士だけではなく、その周囲の人間、『闇の書』の破壊に協力しただけの少女すら巻き込んだのだ。

 

最早、感情に配慮するとかいう話ではない。

これはれっきとしたテロ行為である。

 

『闇の書』事件の遺族の大多数は、グレアムやはやての決断を容認しているのだ。

その意思を踏みにじるような行為は許されるべきではない。

 

「人間とは、進歩のない生き物ですな。

魔法というものがあろうとも、やることは他人の追い落としばかりだ」

「しかし、その分我々がしっかりしなければ、大人の存在意義が失われます」

「確かに。せめて連中を野放しにすることだけは避けるように動きましょう」

 

クロノの前で、大人達はしみじみと話し合った。

 

 

 

検査室。

 

「順調に数字はよくなってきてますけど、無茶はしないでね」

「はいさ」

「はーい」

 

マリエルから検査内容を受け取るピュアとアリシア。

 

アリシアは完全複製技術(プロジェクトF)によって作られたクローン体である。

そのため、経過を観察するため、こうやってピュアと一緒に定期的に本局で検査を受けていた。

 

基礎的な生体データは、母親のプレシアが管理局に開示している。

そのデータを基に、細かい調整を行うのである。

調整といっても、ホルモン剤や栄養剤を渡す程度のことだが。

 

この定期検査のときに、同時にピュアが持っているメガネ型の医療補助デバイスのメンテナンスも行われる。

また、本職のデバイスマイスターから、術式最適化のテクニックについて勉強会が開かれる。

 

「ここがこうなってるから、こっちはまとめちゃうの。

そうするとここの記述はまとめた部分を参照にすればいいから……」

 

この勉強会にはピュアとアリシア、それにたまにはやてやユーノ、なのはとフェイトも参加する。

 

この勉強会はピュアの術式補填の作業速度を少しでも上げるためである。

だから、彼女以外ははっきり言えばオマケであった。

 

なぜ本命以外の部外者も参加するのかというと。

それは、ピュアがやや自己主張の弱い性格だからである。

素直に解らないところを聞くのが苦手な、面と向かって会話するのが苦手な傾向があるのだ。

 

だから、家族同然のはやてはもちろん、友人達が遠慮なく質問したり意見を言い合ったりすることで、ピュアからの言葉を引き出しやすくしようという意図があった。

元々ピュアは記憶力がいい方なので、一度こういう形で教われば、大抵は覚えているのである。

 

他の子供達についても、一度覚えた内容をプロの視点から復習するという意味では、それなりに有意義ではあるはずだ。

つまり、優秀な魔導師の育成にもなっており、一石二鳥なのである。

 

というのは半分くらいが口実で、ピュアがちゃんと友人達とやっていけているかを観察するのが目的である。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫そうね、今のところは」

 

老女、本局幕僚長ミゼット・クローベルが、録画した映像を見て微笑む。

勉強会について話を聞いた彼女は、そのときの模様を動画で送るように、マリエルの上司に伝えていたのである。

 

これには、我慢強く自分の内面を隠蔽することに長けた、ピュアの治療度合いを探る目的があった。

ピュア本人に直接聞いたのでは、正しい返事が返ってこない可能性が高く、診察としては不適切なのだ。

だから、周囲の友人達がちゃんと仲良くやっているのを見届けることで、診察に代えているわけだ。

 

もちろん、口の堅い知り合いの医師にも、定期的に見てもらう予定である。

 

ミゼットは別のモニタに、提出された報告書に添付されていた戦闘データを開く。

ロンダルグにおける、戦闘の模様だ。

例の反乱における戦闘データは幾つかあるが、これはロンダルグ制圧に同行したクロノが、フェイトのデバイスからデータを借りて作成した報告書に添付されていたものである。

 

唯一、ピュアの戦闘を映していた映像でもあった。

 

「どちらかというと周りの人をサポートする戦い方ね。直接戦闘には不向きだと聞いたけれど」

 

補助魔法で防御力や攻撃力を上げるわけでもなく、直接攻撃したり、仲間の盾になったりするわけでもない。

 

しかし、おそらくフェイトという少女は気付いていないだろう。

自動兵器(オートスフィア)という、この自律攻撃兵器は、(アンチ)(マギリンク)(フィールド)を展開しているのである。

その環境下で、フェイトは何の制限も受けている様子がなく、戦い続けていた。

 

しかも、『エンジェル』の隊員との戦闘では、相手にだけAMFのような、魔力結合を阻害する効果が表れている。

そうでなければ、Aランク以下といえど総勢21人を相手に、さしたる苦戦もせずに勝利などできるわけがない。

 

「まさか、魔力結合阻害の効果を選択的に発揮させられるの?」

 

ミゼットはその想像について、すぐにでも確認したいと思った。

 

どの程度の強度で、何人まで選択できるのか。

なぜAMFを無効化できるのか。

 

それによっては、ピュアの隔離監禁に必要な予算を組まなければならないかもしれない。

 

もしも無制限に魔力結合阻害の効果を自由自在に発揮、無効化できるのだとすれば。

管理局全部隊をぶつけても、あの少女1人に敗北を喫するかもしれないのだ。

 

そんな少女が、死ねばどこか遠い世界に転生する。

その先で犯罪者に拾われ、洗脳などされれば、管理局に敵対する可能性がある。

そんなこと、考えたくもない。

 

だが、自分は管理局の命運を左右する権限を与えられている。

そんな最悪なシナリオについて、考えなければならない。

 

それが、強い権限を持つ者の義務なのだから。

 

 

 

 




第43話でした。
出オチゆえ致し方なし。
リイン妹がかわいいです。

原作でも、八神家を危険視する声は結構あったそうです。
この辺突付くと色々矛盾が出てきたりするんですが。
ひろっさん脳内の細かい話をして行数を潰すのもあれなんで、今回はこの辺で。

それでは。
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