【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
火花が散る。
比喩的な表現ではなく、剣と斧がぶつかり合い、激しい火花が瞬いた。
「くっ……!」
赤髪ポニーテールの女性シグナムは、バランスを崩しながらも相手の一撃を弾く。
今日の模擬戦の相手は金髪ツインテールの幼い少女、フェイト・テスタロッサ。
シグナムほどではないが、模擬戦好きな少女であった。
元は
今回は、防御力を犠牲にしてさらに高速機動に特化した
ただ、最初のテストではない。
何度目かのテストだ。
『ソニックフォーム』のデザインは、黒いボディースーツである。
二の腕と太股のところで切られたウェットスーツと言ってもいいかもしれないデザインだ。
体にぴったりとしていて、女性らしい丸みが出始めているフェイトの体の線を、くっきりと浮かび上がらせていた。
シグナムは一瞬、目に映ったフェイトの顔を思い出す。
西欧系の堀が深い顔立ちの、美少女である。
その顔は、どことなく嬉しそうだったように思う。
「(スピード狂の
などということを内心で呟きながら、次の一撃を剣で弾いた。
模擬戦の相手であるフェイトの得物は、3種の形態を持つ、それ自身が武器としても活用できる
発動体や、単に杖などと呼ぶこともあるが、一生、あるいは永遠の付き合いとなる、魔法使いの相棒である。
フェイトが持っているのは
この方式を祈祷式という。
ただ、この祈祷式というものは、処理が煩雑になる分、速度が遅い。
とはいえ、それも搭載されているAIが経験を積み、成長することで先読みが上達するため、速度においては
フェイトの『バルディッシュ・アサルト』は、
魔力で刃を形成する大鎌形態と
大剣形態は、シグナムが持つ『レヴァンテイン』と比べても遜色のない攻撃力を誇る。
一方、シグナムの『レヴァンテイン』は、
武器としての性能に魔法の杖としての能力を付与したようなものであり、強度においては人格型を上回る。
また、魔力を詰め込んだ弾丸によって、一時的に魔力の瞬間最大出力を水増しするカートリッジシステムが搭載されており、攻撃防御ともに優れた性能を持っている。
ただ、『バルディッシュ』のように高度なAIを搭載しているわけではない。
そのため、高速機動戦に必要な祈祷式ではなく、
これは、特定の動作をコマンドとして設定しておく方式で、音声命令の方式を拡大したものである。
この方式の利点は、特定の動作を覚えるだけで、魔法を発動できるところにある。
敵に魔法の種類を知られる危険を減らしながら、状況に応じて、あるいは他の方式よりも速く、楽に命令を入力することができるのだ。
一々声に出さなければならないのは、直感力を必要とする近接戦闘においては動きを遅らせる害にしかならない。
近接戦闘に強いベルカ式だからこそ発達した方式と言えるだろう。
さて。
模擬戦である。
シグナムは、初めて敗北を喫するかもしれないと思っていた。
対戦相手であるフェイトのスピードが、目に捉えるのが難しい段階にまで来ているのだ。
目に頼らない、心眼というものも不可能ではないのだが、それにしても実力が近い者同士では働かないこともある。
心眼とは、要するに経験の集大成だ。
どういうタイミングで打ち込んでくるか、自分ならこうするという心理を、相手に当てはめるのである。
結局、戦闘とは最適化すれば、極単純な選択肢に絞られるのだ。
その基本は、相手の位置を特定すること、すなわち間合いである。
心眼を極めるために目を閉じるなどというのは、結局目以外の情報によって間合いを測ることに他ならない。
つまり何が言いたいかというと、経験していないようなスピードには、心眼では対抗しきれない可能性があるのだ。
ある点を捉え、そこから相手の行動を予測しても、予測が終わる頃には、相手はさらに先にいる。
そんなことは普通はできないのだが、魔法というものがそれを可能としていた。
「そこ!」
「ふっ!」
シグナムが辛うじて身を捻ってフェイトの攻撃を避け、反撃する。
“
フェイトの姿が金色の筋となって視界から消えた。
シグナムも瞬間的に加速し、死角に回り込まれるのを回避する。
これで仕切り直しだ。
互いを見失うため、距離を置いて相手を探す分、時間がかかる。
中近距離戦を得意とする者同士の戦いは、魔法使い同士では
今回も、その例に漏れていなかった。
「紫電一閃!」
“
シグナムの、剣を鞭状に伸ばす攻撃をかいくぐり、フェイトが肉薄する。
その魔力で編んだ刃を持つ大鎌による攻撃を、シグナムは鞘で受け流した。
盛大に火花が散る。
そしてフェイトが駆け抜けた後を追う。
2人の魔力光が織り成す軌跡は蛇のように、互いの頭に食らい付かんとうねる。
交差するたびに、空に火花が瞬いた。
結局、決着は付かなかった。
互いに譲らないまま、時間経過によって引き分けとなる。
「そろそろ、土をつけられるかも知れんな」
シグナムは嬉しそうに言った。
フェイトは模擬戦でも全力でかかってくる。
模擬戦でも真剣勝負をやりたいシグナムとしては、そんなフェイトの実力が自分に近付いてくるのが嬉しいのだ。
さらに、フェイトをサポートする『バルディッシュ』も、手を合せるごとに経験を積み、反応速度を上げている。
今回の引き分けは、フェイトと『バルディッシュ』が上手く連携した結果でもあった。
この主従はシグナムにとって良きライバルとなるだろう。
そんな予感がしていた。
次の対戦は、クリアとザフィーラ。
ザフィーラは『盾の守護獣』と名乗っている、シグナムと同じ魔導プログラム、『夜天の書』の
盾と名乗っていることからわかるように、高い防御力を誇る。
反面、一点突破の攻撃力や、相手をかく乱するような機動力にはやや乏しい。
それを補って余りあるのが、『鋼の
面攻撃というのは、機動戦においても砲撃戦においても、有効な武器である。
一方、クリア。
こちらはシェオール魔法による儀式により作成された、生まれて半年くらいの、ピュアの使い魔である。
2つ名のようなものはまだない。
攻撃手段も、肉弾戦か誘導しない魔力弾分散数の撃ち分け程度である。
そして。
思考回路としては、同じ使い魔のアルフやザフィーラよりも、より本能的で動物的である。
つまり、非常に勘がよく、状況に応じて変幻自在な即席戦法を駆使するのだ。
戦闘センスで言えば、ザフィーラよりも上かもしれない。
ただ、やはりまだまだ経験不足で、特に手加減を知らず攻撃が大味なため、持久戦に持ち込まれるとその燃費の悪さがネックになる。
特に、ザフィーラが防御、回避を優先した戦法を使ったりすると、無駄の大きい攻撃を繰り返してしまい、すぐガス欠に陥る。
雷球散弾による面制圧力という点では、ザフィーラに負けていないのだが。
「テオラァァァァ!!」
「にゃっ」
クリアは地面から突き出る巨大な棘を、『子猫フォーム』になることで回避する。
歴戦のザフィーラでも、変身魔法で逃げ回るクリアを捉えるのは容易ではなかった。
『猛獣フォーム』の白兵戦能力は桁違いで、ザフィーラといえど近付くのは危険である。
しかし、正直言って中距離の撃ち合いでは勝負が付かない。
猛獣形態と子猫形態を使い分け、チョロチョロ逃げ回りながら攻撃してくるクリアの隙を突くには、近付くしかない。
かといって、ザフィーラが隙を見せれば。
「うがー!」
『猛獣フォーム』になり、体を丸め、縦回転しながら突っ込んでくる。
「くっ!」
芯をずらして防御し、受け流す。
普通に防御するだけではザフィーラとしても消耗が激しくなるため、逸らすという受け方をせざるを得ない。
この攻撃は受け損ねると接触しただけで弾き飛ばされてしまうほどの威力を誇っており、その判断をミスしただけで、模擬戦なら勝負が決まってしまう。
肉弾攻撃ながら、砲撃級の威力があるのだ。
それを上手く、雷球散弾に混ぜてくるため、回避に関しても一筋縄ではいかない。
中々に厄介な手合いであった。
ザフィーラも上手く立ち回るため、最後にクリアがガス欠になるのは変わらないわけだが。
『猛獣フォーム』では燃費が悪く、『子猫フォーム』では火力が足りない。
力加減を覚えるまでは、その中間となる人間形態を教えるのが必須と言えた。
今回も、持久戦を制したのはザフィーラである。
「燃費の問題もそうだが、変身を多用するなら、変身速度の方も問題になってくるな」
模擬戦を見ていたシグナムが言った。
「確かに」
『子猫フォーム』のクリアを背中に乗せたザフィーラも同意する。
もしも変身抜けと変身攻撃の隙が小さければ、幾ら燃費が悪いとはいえ、ザフィーラも短期決戦を挑まなければならなくなるだろう。
それだけクリアの攻撃が激しくなるということなのだ。
砲撃クラスの威力を受け流すのは、回数が増えればミスも出てくる。
「変身に関しては、質量変化のせいで遅れているように見える。
子猫形態の時に質量を高くしておくわけには行かないのか?」
「にゃ?」
クリアは首を傾げた。
「『どうやるの?』って言ってるさ」
ピュアが通訳する。
「なるほど」
ザフィーラは溜息をつく。
まだまだ、教えることは多そうだ。
第45話でした。
デバイスの説明は、頑張って調べました。
情報源はNANOHA@wikiです。
あそこ、結構頼りにしてるんですが、過去の不確定時の意見も残ってたりして、うっかりそっちを設定として採用してしまったりするミスもやっちゃったりします。
クリアは生まれて1年経ってないため、まだまだ子供です。
攻撃力は高いのですが、冷静に見切られると燃費の悪さという欠点がもろに出るという感じですね。
素体であるラージャンが攻撃的な生物なため、性格も攻撃に偏っています。
ちなみに質量変換云々は捏造です。
本当に原作にそんな裏設定があるのかどうか知りませんが、少なくとも私は見たことがありません。
それでは。