【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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冒頭にセクハラ発言あり。


046 夏休み

はやてが1人で歩けるようになった。

 

とはいえ、まだ杖でバランスを取らなければならないが、それでも大きな前進だ。

 

「やっぱりプールが良かったんかな?」

 

などと言っていると、シグナムとシャマルは無意識に胸を隠す。

プールへ行くたびに触られるのだ。

はやてにとってはスキンシップの一環なのだが、そのたびに異性の視線が集まるのは、少し恥ずかしい。

なぜか貧乳のピュアも被害者の1人である。

 

最近はピュアも、子猫クリアを肩に乗せなくとも転倒しなくなってきた。

元々の運動神経の悪さゆえに予断を許さないが、下半身に筋肉をつければ、それなりに歩けるようにはなるらしい。

人間は歩く動物なので、麻痺してもいない限りは歩くことができて当然なのだが。

 

ともあれ、2人ともそれなりに移動に不自由がなくなってきた。

喜ばしいことである。

 

 

 

 

 

 

 

地球では夏休みの真っ最中。

 

高町なのはとフェイト・テスタロッサは、時空管理局本局武装隊の訓練学校に通うことになった。

今までも学校に通いながらの自主鍛錬は怠らなかったが、これからは本格的に、現場での礼儀作法や一般的な戦闘方法を学ぶのである。

それは、より難易度の高い任務を受けるための必須条件でもあった。

 

2人とも、ロンダルグ事件に巻き込まれた経験から、現状の自分達の力に限界を感じていた。

魔法使用における体力的な限界について、はじめて危機感を伴って実感したのである。

 

そこで、いつもは古代ベルカ式の守護騎士達の助言を受けるのだが、同じミッド式の魔導師から助言を受けた方がいいと、シグナム達に言われた。

だから、その手の専門家、専門家のたくさんいる、訓練校への短期入学を決めたのである。

 

第四陸士訓練校。

そこで2人は、AAランク魔導師では最強と言われた教員に出逢うことになる――。

――のだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

シェオール式デバイス開発計画の方は、難航しながらも進展があった。

 

ピュアが行っていた、シェオール魔法のベルカ式への変換作業がまた1つ、完了したのである。

 

「回復結界の方はまだ時間がかかるさ」

「無理だけはしないでね。ピュアちゃんが倒れたりしたら、結局作業が遅くなっちゃうから」

「はいさ」

 

データを受け取ったマリエルは、どこか嬉しそうだった。

 

データの方に向いた、情熱、悦楽、期待、欲求、自制。

 

「???」

 

ピュアは内心首を傾げた。

彼女では、それが何を意味するのか、理解できなかったのだ。

 

とはいえ、大した意味があるようでもないし、特に指摘するようなことでもないと思い、放置することにした。

 

 

 

シェオール式デバイス開発計画プロジェクトチーム。

マリエルはその一員なのだが、実は派閥の人間からはこのプロジェクトの参画は敬遠されていた。

 

ピュアに関わると犯罪に手を染めることになるという、ジンクスができていたのだ。

実際、彼女に近しい人間の中では、犯罪に手を染めていない人間の方が少ない。

それがたとえ不可抗力であろうとも、レジアスが勘違いしたように、犯罪者と見る人間は多いのである。

 

だから、長期間ピュアに関わることになるであろうこのプロジェクトへの参加者の中に、派閥関係者は極少ない。

教会系の技術者くらいだろうか。

 

そんなジンクスをものともしない、気合の入った者だけが、現在はプロジェクトチームに残っていた。

通称『チーム・シェオールタイプ』。

 

いずれ劣らぬ変態的発想の持ち主達である。

もちろん、マリエルもその1人だ。

 

彼女の場合、デバイスに可能な限り便利な機能を詰め込み、ありえない組み合わせでも完璧の調整して見せる。

その作業過程が好きで、難度が高い方が燃えるため、この『チーム・シェオール』にはうってつけの人材であった。

実験と称してロマンを追求できるのも、彼女からすればポイントが高い。

 

「(うフフフフフ、今度はどんな問題が出てくるのかしら)」

 

当然ながら、こんなことは誰にも言っていない。

情動(エモーショナル)感応(レセプション)』を持つピュアにすら隠し通している辺り、かなりの演技派であった。

 

ピュアが理解できていないだけとか、言ってはいけない。

 

 

 

シェオール魔法をミッド式に変換するというのは簡単なことではない。

シェオール式デバイスというものが存在していないのだ。

 

だから今現在は、シェオール式に理解があり、ピュアの魔法を『蒐集』したことのあるリインフォース(アイン)、『蒼天の魔道書』が、再現できるだけの術式を再現し、シェオール魔法の唯一の使い手であるピュアが、欠損部分を補填する作業を行っていた。

 

「作業用のデバイス、機能更新しておいたから、説明するわね」

「はいさ」

 

未知の魔法のために、こうしたプロジェクトチームが組まれることはまずない。

しかもそれが年単位で存続するとなると、管理局始まって以来ではなかろうか。

 

それも、『無限書庫』に行けば、それらに関する大抵のことが見つかるからである。

未知の魔法についてもデバイス化する方法が、『無限書庫』には割とあったりするのだ。

 

しかし、シェオール式デバイスの情報は存在しない。

なぜならば、シェオール魔法にはデバイスが存在しないからである。

存在しないものを解説するデータも、当然ながら存在するわけがない。

存在するとしても、著しく信憑性を欠くことになる。

 

マリエルはピュアへ、医療補助用のデバイスとは別に、作業用のデバイスを渡していた。

以前は『蒼天の魔道書』で作業を行っていたが、リインフォース・アインが構築したソフトウェアでは、少々使い勝手が悪かったのである。

 

リインフォース・アインは優れたデバイス管制人格だが、暴走を防ぐために自発的な魔法の開発は行うことが出来なかった。

そのため、欠陥魔法の補填作業などについては、経験値が低かったのだ。

 

そこで、作業をやりやすいように、ソフトウェアの構築をマリエルに依頼していた。

その依頼を受け、マリエルは『蒼天の魔道書』に接続する、専用の外付けデバイスを作ったのである。

ほぼ一昼夜で。

 

完全な形のデバイスを作るわけではないため、作業は簡単だった。

と、マリエル自身は思っている。

 

以上が、シェオール式デバイス開発計画の途中経過である。

 

ピュアによる術式の補填、翻訳に頼り切っているのが現状だが、以前に大学教授が『不可能』と太鼓判を押したのに比べれば、たった1歩でも大いなる前進であった。

 

ちなみに。

この『チーム・シェオールタイプ』。

メンバーの大半が後に課長や部長となる、粒揃いの人材ばかりであった。

 

つまり、後にこの高性能(変態)チームが解散し、本局技術部の幹部級になるのである。

よほどの人物をトップに据えなければ、大変なことになるのは目に見えていた。

 

そこはまあ、この物語では語らないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

地球、月村邸。

最近は魔法戦の模擬戦や訓練などを行う際、事情を知っていて充分な敷地のある、この月村邸で行うのが定番になってきた。

 

ただ、今回は地味である。

 

「魔力負荷?」

「ああ、普通は魔法を使い込んで、制御と一緒にやってくもんなんだが。

資質が高過ぎて、それじゃ追いつかねえことがあるんだよ」

 

ヴィータが説明する。

 

最近ではすっかり、なのはとフェイトのコーチ役が板についてきた。

最初は渋っていたのだが、慣れると早いものである。

 

「なんか、シェオール魔法にその系統の魔法があるらしいんだ。

そんなに難しい術式じゃなかったんでな、構造だけ聞いてリイン姉がミッド式で組んでくれた。

負荷の段階とか微調整はそっちで決めてくれ」

 

ヴィータのデバイスから術式データを転送し、受け取った2人、いやユーノを含めて3人は早速使ってみる。

 

最近は防御や拘束魔法の練習のために、ユーノも参加するようになっていたのである。

資質的に攻撃力こそ低いものの、彼も普通に比べれば高い才能を持つ魔導師なのだ。

 

「わ、重い……!?」

「すごい、体があんまり動かないの」

「さすがにきついかな。魔導師って普段、割と無意識に魔力で筋力を補助してるって言うから」

 

ユーノはこの現象について知っていた。

そんな薀蓄を語るあたり、余裕はありそうだったが。

 

「なのはちゃん、いきなり出力を限界まで上げない方がいいさ。それで動けなくなったら本末転倒さ」

「にゃはは」

 

ピュアの指摘に、なのはは苦笑を浮かべた。

油断も隙もない。

 

何かにつけて無茶をしようとするのはロンダルグ事件以降、状況を見るようになってきただけマシだったが。

逆に言えば、練習など後で休めるような状況で遠慮なく無理をするのは、今までと大して変わっていないのだ。

 

「やっぱり自分で使ってるから、ちょっと効果が強くなってるみたいさ」

 

この術式、実は一種の術式阻害である。

シェオール魔法のものは敵に使用するのが前提のため、完全に効果を発揮するまでに時間がかかったり、術式だけでなく魔力素操作の技能で補助してやる必要がある。

 

しかし、今回は訓練であり、対象は自分自身だ。

だからミッド式で難なく再現できるし、シェオール魔法本来の用法より効果が強く出るのである。

 

「負荷と解放を繰り返すことで、『リンカーコア』の魔力素吸収能力を引き上げようってことだからな。

ずっと負荷をかけてても意味はねえ。特になのは」

「わかってるの」

 

前科があるだけに怪しいが、ピュアなら負荷の具合について感知できるため、誤魔化すことはできない。

 

「魔力負荷をかけての訓練には、魔力増大以外にいくつか意図がある。

まずは疲労状態の擬似再現。

リンカーコアの機能の内、吸収量に制限がかかるから、大きな砲撃なんかを撃つと、すぐ魔力切れになる。

もう1つはAMF環境の擬似再現だ。

こっちは瞬間最大出力に制限をかける。ピュアだっていつもいつも訓練に付き合えねえかもしれねえからな」

 

今までは、もっぱらAMF環境下での模擬線には、ピュアのシェオール魔法による術式阻害に頼っていた。

だがこれから先、シェオール式デバイス開発計画の進捗状況によっては、ピュアは忙しくなってくる。

なのは達の訓練に付き合うことができなくなってくる可能性があるのだ。

 

シェオール魔法の使い手が今のところ1人しかいないため、新たに適正者が出た場合、ピュアが直接教えることになるのである。

そもそも、適正を調べるためには、ピュアが直接会わなければならない。

水で薄めた自分の血に魔力を込め、それを飲ませる必要があるからだ。

 

それに、陸士訓練校に通う間、意図的に魔力資質に制限をかけることで訓練の難度を上げる方法があった方が、何かと便利なのである。

 

特になのはとフェイトの2人は、年齢にしては魔力が高過ぎるのだ。

それに慣れてしまうのは決していいことではない。

 

熟達した戦士である守護騎士(ヴォルケンリッター)と、なのはとフェイト。

この両者の差は、経験の一言に尽きる。

 

その経験の差が一体何をもたらすのだろうか。

 

大きなものの一つは魔力の運用効率である。

最低限の魔力で最大限の威力を発揮させるのはもちろんのこと、そのときに必要な最小限の魔力を見極めることができるかどうか。

1匹の小さなアリを殺すのに、拳銃を持ち出すような非効率をするかどうか。

そこに差がある。

 

単に精神的な余裕の差だけではないのである。

 

 

 

 




第46話でした。
闇の書事件後、初の夏休み突入です。
ここに来るまで、とてもいろいろな事件がありました。
主にひろっさんが時期をミスったせいですが。

なのはの無茶ですが、一時期に比べて多少マシになっています。
ロンダルグ事件で、無闇に無理をすることに懲りたのでしょう。
仲間が救援に来なければ、最悪死んでいましたからね。

チーム・シェオールタイプは、チームRタイプのパクリにしようとして失敗した名残です。
そのせいで、マリエルさんが変態になりました。

それでは。
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