【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
地球で、動きがあった。
第97準管理世界『地球』。
最近、地下社会で魔法が存在するらしいことが判明し、魔法を受け入れるだけの土壌があるということで準管理世界入りを果たしていた。
そんな地球で動きがあったのである。
管理局と月村家の交渉窓口、月村すずかが拉致され、彼女を拉致した哀れな誘拐犯が猛獣クリアに張り倒されたとか、そんな話ではない。
一応説明しておくと、すずかがアリサと共に拉致されたのは事実である。
だが、普通に考えて、ミッドチルダの科学技術になど、対応できるわけがないのだ。
すずかが持つ携帯電話の電波から位置を割り出すのは、通報から5分でエイミィはやってのけた。
月村家の姉妹、姉忍と妹すずかが持つ携帯電話の周波数は、許可を得て登録しておいたのだ。
まさか衛星もなしに細かい位置を割り出せるとは、月村忍も思っていなかったようだが。
誘拐犯を刺激するわけにはいかない。
だから、意表を突く戦力の投入が考えられた。
高町一家、士郎、恭也、なのはは、突撃する気満々だったが。
クロノが一計を案じ、上空からクリアを投下することが決まった。
クリアが上手く手加減できるかどうかがネックだったが、これに関しては月村忍の方でOKが出た。
彼女が調べたところによると、犯人が夜の一族だったのである。
人間を遥かに超えた身体能力の持ち主である彼らならば、クリアの一撃を受けても死にはしないだろう。
阿鼻叫喚の地獄絵図だった、と後にアリサとすずかは語った。
壁や天井に犯人達が
野獣の怪物であるラージャンにとって、
ちなみに。
クリアが肉弾攻撃しか行わなければ、一般人への魔法使用禁止という管理局の法律には触れない。
今回は相手が犯罪者のため、特に制限はなかったが。
閑話休題。
動き、というのは、そのような殺伐としたものではなく。
月村忍と高町恭也の結婚、である。
恭也は婿入りで、月村家が担う管理局との外交についてはこれまで通りだが、忍とすずかが所用の際は、彼が交渉を引き受けたりすることになる。
「悪いですね。本当は、夜の一族の中の有力者がこういう位置に来るべきなんですが」
外から来た管理局と名乗る魔法使い達。
外来人、外法の者、魔法使い。
様々な呼び方をされているが、夜の一族からは敬遠されていた。
関わるべからず。
それが、月村家以外の夜の一族の、管理局への関わり方である。
彼、月村恭也にも、それは判らないではないのだ。
夜の一族の中には、すずかを誘拐したような、強硬派が存在する。
つまり、まだ20歳前後の当主とその妹しかいない月村家に、夜の一族を任せてはおけないとする一派である。
それが管理局などと名乗る得体の知れない連中と付き合いを持つなど、看過できるはずがなかった。
だから、すずか誘拐に走ったとも考えられる。
一応、夜の一族でも大きな勢力を誇る獣人種の当主が後ろ盾になってくれているが、今回の決定に不満を持つ者は多かった。
それが、例の誘拐事件によって黙らされてしまったのである。
実行したのは若くとも、それなりに実力のある、名の知れた面々。
しかも、イレーヌという戦闘用自動人形の最高傑作まで投入されていたのだ。
それが。
たった1時間で拠点を突き止められ。
投入された1匹の子猫によって、一方的に制圧されてしまった。
情報力においても、夜の一族が最も頼みとしていた直接戦闘力においても、完全な敗北を喫したのである。
しかも。
管理局の本部には、1人で同じことができる者達が万人単位で存在している。
そんなことを聞かされては、逆らう気が起きようはずもなかった。
まあ、万という数字については、実を言えば獣人種の長のハッタリなのだが。
さすがにクリアと同じ戦闘力となると、管理局といえど万は厳しいのだ。
「体よく押し付けられたんでしょう?」
「そうとも言います」
恭也が苦笑いで返す先にいるのは、深緑色の長い髪をした女性、リンディ・ハラウオン。
今回は地球にある、
「結論から言えば、これは装置の一部ですね。
他にエネルギーを発生させるものとセットで使うことで、本来の威力を発揮できるものです」
「ということは、そのエネルギー源の方が失われてしまっていて、今は使えないということですか?」
「そういうことになります。
ただ、エネルギー源があれば、本当にハリケーンくらいなら作り出すことができるようですね」
ストームブリンガーと呼ばれるその剣は、剣の形をした天候制御装置であった。
兵器として使用され、呼び寄せた嵐の中、使用者もろとも海中に沈んだとされている。
もっとも、世間ではエルリック・サーガという小説の方で有名だ。
同名の剣が実在していたことなど、表の人間は誰も知らない。
剣として使用されたことがないため、それも当然かもしれないが。
「長年、先代がこれの扱いに悩んだらしいので、もし本当に危険なら、封印してもらおうと思っていたんですが」
「第三種指定ですから、そのまま保管していて構わないですよ。一応、封印処理は行っていますが」
「ありがとうございます」
誰も、好き好んで危険物を自分の身近に置いておきたいとは思わない。
だが、現状のままではそれほど危険がないのならば、保管しておくくらいは引き受けるべきだろう。
天候操作となると、どんな影響が出るかわからないため、積極的に使用したいとは思わないが。
雨を降らせる装置を作り出したという話の中には、作る雨雲が強すぎて大洪水を引き起こしてしまったという話もあるのだ。
それに、現在ではエネルギー源の方も工面する必要がある。
そこまでするのなら、兵器として運用するのなら直接攻撃した方が早いし、天候制御で適度な雨を降らせるのなら、航空機などで直接水を運んだ方が早い。
ちなみに、第三種指定の
質量兵器以下、と言い換えても構わない。
夜の一族と管理局の関係は、さして悪くはない。
少なくとも、厄介ごとを持ち込み合う程度には、両者の関係は良好だった。
「この猫は?」
仮想敵シュミレータのデータを見ていたトーレが声を上げる。
「あー、確かピュアの使い魔って言ってたっけ。ドゥーエ姉が送ってきたやつにあったんだって」
セインが答えた。
「それか」
眼帯をつけたチンクがやってきた。
「誰が設定を組んだのか知らないが、打撃力が半端じゃない。
油断すると私達でも一撃でノックアウトされるぞ」
「この可愛い子猫が?」
「多分、設定ミスだとは思うんだが、今ウーノが確認している」
仮想敵シュミレータとは、擬似実体で想定される敵の動きを再現し、訓練するシステムである。
管理局の本局にも似たようなものがあるが、あちらは動いたり攻撃したりする標的に対して回避や防御の判断力を重点的に鍛えるだけの、ホログラフのようなものである。
こちらはエネルギーを投射して、擬似的に実体として再現できるようにしてあった。
とはいえ、魔法ダメージや物理ダメージを完全に再現することはできないため、それぞれの攻撃に対してダメージが点数として割り振られる、本局のものよりやや進歩したものが設置されている。
「ということは、動き自体はそのままか」
トーレが唸ると、それに声をかける者がいた。
「いえ、契約してすぐに採られたデータだから、それより強くなってるはずよ。
ちなみに、最初の戦闘ではAA相当の使い魔を一発KOしてるわ」
長い金髪の、皆と同じ青い服の女性。
「ドゥーエ姉!」
「帰ってきてたのか」
「おかえり」
「ただいま」
思わずドゥーエはいいところにあったチンクの頭を撫でた。
「い、妹の前ではやらないでくれ、これでも恥ずかしいんだ」
「あら、ごめんなさい」
少女体形のチンクが声を上げると、ドゥーエは手を引っ込める。
だが、顔は楽しげに微笑んでいた。
「ところで、この子猫は?」
長身の女性トーレが戦闘データについて聞く。
「セインには言ったけど、例の子の使い魔よ。現状で彼女に会ってはいけない理由の一つね」
「そんなに強いのか?」
「素体がオーバーSランクの危険生物なのよ。子猫なのは待機形態ね」
「ということは、この異常な攻撃力は変身後か」
トーレが唸った。
「いや、それよりドゥーエ姉。推定AAの使い魔を一発KOってどういうことなの?」
これはセイン。
「例の子、体内にエネルギー蓄積型の『ロストロギア』を埋め込まれてるそうよ。
それのエネルギーを
「マジ?」
「嘘吐いてどうするのよ」
「デスヨネー」
セインはうなだれる。
「しかし、契約して日が浅いということは、実戦経験もほとんどないはずだ。勝機があるとすればそこか」
「私達にとって一番痛い弱点だな」
「言っていても始まらん。逃げるにせよ倒すにせよ、備えておいて無駄になるということはないだろう」
「あたしは無駄になってほしいんだけど」
当然、そんな泣き言は黙殺された。
第50話でした。
よくあるすずか誘拐の話です。
魔法バレに絡むことも多いのですが、この話では分割しています。
クリアが夜の一族と戦うとこうなります。
ちなみに、なぜクリアなのかというと、明らかに言葉が通じないからです。
言葉が通じる相手だと、敵がすずかを人質に取ったりする危険がありますからね。
あと、夜の一族は人間を嘗めてるところがあるので、圧倒的な戦力差を示すためにも最適でした。
なのはやフェイトでは油断する危険がありますし、クロノはやり方がスマート過ぎます。
守護騎士がいればよかったのですが、出払っていたってことにしています。
要は、クリアを出したかったのです。
後半のナンバーズもそんな感じでクリアの話題にしています。
ここでストックが尽きてしまったので、しばらく更新は停止します。
伏線を張りまくってて、回収が大変なんですよね。
同じく伏線だらけの禁書目録の作者さん、マジで尊敬します。
それでは。