【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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本来の主人公、なのはサイドです。


005 アースラ

茶髪ツインテールに白い魔法衣(バリアジャケット)の少女、高町なのはは疑問を感じていた。

夜の臨海公園で『ジュエルシード』を取り込んだ植物が暴れ出したのを、得意の砲撃魔法で仕留め、『ジュエルシード』の封印を完了した。

 

しかし、フェイトという、金髪の少女は姿を現さない。

あれほど『ジュエルシード』に執着していたのに、姿を現さない。

 

「何かあったのかな……?」

「奪い合いにならなくなったのはいいことだけど……」

 

薄茶色の小動物フェレットのユーノも、何か釈然としないものを感じているようだ。

 

「少し、話を聞きたいんだが、いいか?」

「!」

 

なのはは驚いて声をかけてきた少年の方に振り向く。

全身を覆う黒い魔法衣(バリアジャケット)を身に纏った、なのはよりも幾分年上に見える少年だった。

思わず身構える。

 

警戒というよりも、びっくりしたという感情の方が大きい。

そこにいることに気付かなかったし、魔法衣(バリアジャケット)の装着中は認識阻害が働き、一般人に姿を見られることはほぼ無いからだ。

 

「君はだれ?」

「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラウオンだ」

「時空管理局!」

 

ユーノは驚いた。

 

なぜなら、今の『ジュエルシード』探しのきっかけである輸送船の事故で、次元世界の警察機構である管理局が動くのは、もう少し先だろうと思っていたからだ。

ユーノ自身は事故後、直接この地球へ来たため、管理局で何があったのかは知らない。

 

「あ、私は高町なのはです」

「僕はユーノ・スクライアです」

「ああ、スクライア一族の人間か」

「先日の事故でこの世界に落ちた『ロストロギア』、『ジュエルシード』を集めています。

彼女は現地の協力者です」

「なるほど、観測した次元震はそれか」

 

クロノは目的を聞いて納得した。

同時にユーノもなんとなく察する。

 

おそらく、偶然付近を航行していた次元航行艦が次元震を観測したために、急遽原因を調べに来たのだ。

それならこの対応の早さも納得できる。

 

「済まないが『アースラ』で詳しく事情を聞きたい。次元震が起こった以上、民間人だけに任せるには危険だ」

「……はい」

 

仕方ない、とユーノは思った。

既に、事態は自分の手で収拾できるレベルを超えてしまった。

 

「ユーノ君、次元震ってなんなの?」

「説明していなかったのか、君は」

「いや、説明したじゃないか。この前のフェイトとの戦いで『ジュエルシード』が暴走した、あれだよ」

「次元震っていう呼び方は聞いてないの」

 

そういえばそうだったか、とユーノは思い返した。

 

「こんなところで立ち話もなんだ、一度『アースラ』へ来てくれ」

「あ、はい」

 

ユーノとなのはは従う。

 

 

 

『次元震』とは。

ある一定以上のエネルギーの集中で、空間が崩壊し始める現象である。

一定以上といってもそのエネルギー量は膨大で、未知の技術が使用されている『ジュエルシード』のようなものがなければ、個人で引き起こすことは不可能とされている。

また、空間そのものを振動させる性質上、地震に似た揺れが起こることもある。

 

今回の次元震は小規模なもので収まったが、もっと規模が大きくなると次元断層が発生し、虚数空間への穴が出現し始める。

その穴が大きくなれば、最悪世界が崩落してしまう危険性があった。

それが次元災害と呼ばれるものの最終形である。

 

「それってもしかして、地球崩壊の危機だったりするの?」

「もしかしなくてもそうだよ」

 

次元航行艦『アースラ』の通路を歩きながら、クロノは言った。

ユーノがフェレットモードから人間の姿になったとき、何やら意見の相違からの騒ぎがあったようだが、喧嘩は後回しにしてもらった。

 

ブリッジに着くと、クロノは艦長席に座っていた水色の髪をした女性に、ある程度の事情を報告する。

 

なのはは、報告の内容よりも緑茶に砂糖をスプーン大盛り3杯投入して、『おいしい』と感想を言ったことが気になってしょうがなかった。

いや、実は欧米で緑茶に砂糖を入れて甘くする飲み方が実在するらしい。

(※ 作者の近所のコンビニで売っていた『スウィート・グリーン・ティー』という商品の説明に書いてあった)

 

しかし、たいして大きくもない湯飲みに、スプーン大盛り3杯の砂糖、というのはいかがなものだろうか。

 

 

 

やけに日本風の応接室に場所を移した。

畳が敷き詰められ、囲炉裏の周囲には竹を加工した質素な装飾具や障子、『鹿威(ししおど)し』まで完備されている。

これはミッドチルダというところの流行なのだろうか?

 

ともあれ。

ユーノとなのはは艦長であるという女性リンディに事情を説明する。

 

ユーノが『ジュエルシード』を集める目的は、彼がそれの発見者だからだ。

ユーノの家族であるスクライア一族は考古学的な調査を目的とした遺跡発掘を生業としている。

その際、危険な古代遺失物『ロストロギア』が発見されることもよくあり、発見された場合はミッドチルダの保管機関に送られることになっていた。

 

しかし、輸送中の事故により輸送船は大破し、『ジュエルシード』は地球にばら撒かれてしまった。

発見者であるユーノは、あるいは『ジュエルシード』の封印が甘く、また何かのきっかけで発動してしまったのかもしれないと考えて責任を感じ、管理局の出動を待たずに1人でこの地球へやってきたのだ。

 

ところが『ジュエルシード』は思念体を取り込んで発動してしまっており、取り押さえるべく戦うも撃退するに留まった。

この戦闘でユーノは手傷を負い、いるかどうかもわからない近くの魔導師に向けて救援を求める念話を送った。

その念話を聞いたのが、偶然近くに住んでいた、高い魔導師の素養を持ったなのはだったというわけだ。

 

ちなみに、地球の魔力素はユーノの『リンカーコア』と相性が悪く、少しでも魔力を節約するために地球ではフェレットモードになっていた。

今は『アースラ』内部に相性の良い魔力素が豊富にあることもあって、民族衣装に身を包んだ少年の姿になっている。

 

なのはがそれを手伝うのは、『ジュエルシード』が自分の住んでいる周辺に被害を与えかねない危険物だからである。

最初はそれほど乗り気ではなく、ただ成り行きで手伝っている感があったが、連日捜索の疲れから人が拾った『ジュエルシード』を見逃してしまい、結果的に街に大きな被害が出る大事件に発展してしまった。

それに責任を感じて、今では毎夜積極的に『ジュエルシード』を捜しに出歩いている。

彼女の認識では『ジュエルシード』は『風変りな高性能爆弾』であった。

 

もう1つ、最近になって現れたのが、長い金髪ツインテール、黒い魔法衣(バリアジャケット)の少女だ。

 

『ジュエルシード』が発動したのを察知してやってきて、強引に封印して持って行った。

それ以降も異常とも思える執念で、『ジュエルシード』が発動した現場にやってきては強引な手法で奪っていったり、一方的に『ジュエルシード』を賭けた勝負を吹っかけ、奪っていったりした。

事情を聞こうとしても耳を貸さず、たびたび戦闘になっている。

 

『アースラ』が観測した次元震が起きたときも、どちらが『ジュエルシード』を手に入れるかで戦闘していた最中に、魔力弾の流れ弾が『ジュエルシード』に直撃したために発生したのだ。

そのときは普通の封印魔法が通じないと知ると、手掴みで暴走を押さえ込むという無茶なこともやっている。

 

なのはとしてはなんとか事情を聞き出し、できれば『ジュエルシード』集めに関しては協力していきたいと考えていたのだが。

つい先程の発動では、フェイトは現れなかったのである。

 

どう考えても不可解だった。

何かがあったのは確かだろう。

 

 

 

「これより、危険遺失物(ロストロギア)『ジュエルシード』の捜索、及び回収については時空管理局が全権を持ちます」

 

リンディは告げた。

 

「はい」

 

ユーノは頷くしかない。

 

「あなた達は今回のことは忘れて、それぞれの世界へ戻って元の生活に戻るといいわ」

「でも、それは!」

 

叫ぶような声を上げたのはなのは。

 

「これは次元災害に関わる話よ。この世界だけの話ではないの。個人の我侭を通していい状況ではないわ」

 

それで納得などできるはずがない。

自分には戦う力があるのに、手を出すことはおろか見ていることもできないと言われたのだ。

 

「まあ、急に言われても気持ちの整理も出来ないでしょう?

一度家に帰って、今晩ゆっくり2人で話し合うといいわ。

その上で、改めてお話ししましょう」

 

 

 

 

 

 

 

実際に相談することなど何もなかった。

ユーノは『ジュエルシード』に関する専門家としても協力するつもりでいたし、なのははフェイトの件がある。

 

もう一度会って話をしたい。

それが偽らざる彼女の本心だった。

 

ゆえに、なのはが行なったのはユーノとの相談ではなく、家族との相談だった。

しばらく学校を休みたいことと、その間外泊すること。

 

「それは、どうしてもなのはがやらなければならないことなのか?」

「うん」

「そうか。じゃあ、後悔だけはするな」

「うん、ありがとうなの。お父さん」

「あと、身体に気をつけてな。手に負えなくなったらいつでもお父さんに言いに来なさい」

 

兄は心配していたが、父は特に反対することもなく承諾した。

 

 

 

「私、もう一度フェイトちゃんに会いたいんです。だから、『ジュエルシード』探しに協力させてください」

「僕も協力させてください。ただ見ているだけなんて、絶対に後悔するはずですから」

 

リンディがその話を聞いたとき、自分の想像を遥かに超えた返答に驚いた。

家族の了解を得ることなど、必要な手続きをすべて済ませ、しかしユーノとはほとんど言葉を交わしていなかったのだ。

2人にとっては何をどうするべきかなどわかりきったことで、そのために必要な手続きを済ませるためだけに、一度地球に戻ったに過ぎないのである。

その覚悟の決め方は、リンディ達管理局員と較べても遜色無い。

 

危険だと思った時は強制的に下がらせるため、『アースラ』側の指示には従ってもらうことなど、安全確保のためのルールを守ることをリンディは2人に約束させたが、おそらく必要ないだろうと思った。

リンディやクロノにできることは、2人の邪魔をしないことだけだと、否応無く感じさせられたのだ。

 

 

 

数日後。

 

「艦長、どう思います?」

 

執務官補佐である茶髪の少女エイミィ・リミエッタが尋ねる。

『アースラ』は、別な意味での奇妙な現実に直面した。

 

地球から『ジュエルシード』の反応がなくなったのだ。

すべて回収し終えたということである。

それでも14個。

その間フェイトは一度も姿を現さなかった。

地球に出てきた痕跡もない。

 

ということは、最初にフェイトが確認された後、姿を消すまでの10日ほどの間で、7個もの『ジュエルシード』を集めていたということになる。

なのはが『アースラ』に搭乗してからの回収数は、10日間で8個。

 

7個集めていた以降は姿を現していないとはいえ、捜索用の設備が整った次元航行艦に匹敵する数字である。

個人で叩き出すには、『特殊能力(レアスキル)』か相当な経験が必要になるだろう。

そうでなければ、組織的なバックアップしか考えられない。

 

しかし。

最後にフェイトの姿を確認した時、魔力放出によって無理矢理『ジュエルシード』を発動させるという荒業を行なっていた。

特殊能力(レアスキル)』があるのならそんなことをする必要はない。

同様に組織のバックアップがあるのなら、自分でそんな無茶をする必要はない。

 

また、見た目だが、なのはと同じくらいの年齢らしい。

その外見を信用するなら、高い経験値を持っている可能性も消える。

 

「正直、わけがわからないわ」

 

リンディは思わず呟いた。

何か、異常が起きているのは明らかだ。

何が起きているのかは全くわからないが。

 

ともあれ、『ジュエルシード』の反応が消えた以上、いつまでもなのはとユーノを『アースラ』に留めておくわけにもいかない。

誘導するような言い方で優秀な魔導師であるなのはとユーノから協力の言葉を引き出したとはいえ、リンディも一児の親である。

長く姿を見せない娘を心配する親の気持ちは、よく理解できた。

 

実際になのはは自分の目的である、フェイトという少女との対話のために、よく仕事をこなしてくれていた。

魔力貯蔵量、変換効率、瞬間最大出力の総合点でかなり資質が高く、また戦闘センスや並列思考、魔法の高速展開についてもかなり高い才能を確認できている。

経験不足は否めないが、逆に言えばまだまだ成長するということだ。

ちゃんと鍛えれば、総合ランクでオーバーSもそれほど難しくないだろう。

はっきり言って、10年に1人いるかいないかという、逸材である。

 

それだけに、こんなところで無理をさせたくはないし、ここで余計なことをして心象を悪くしたくない。

何より、これだけ頑張ったのだから、元々の目的を達成させてやりたい。

 

それは他の何よりも、彼女達にとって人生の糧となるはずだから。

 

 

 

 




第5話でした。
クロノとリンディの親子が登場です。
この2人に関しては、大人らしい黒さを描写できればいいなと思っています。

魔力資質の用語については頑張って調べました。
多分合ってると思いますが、何か間違いがあれば可能な限り修正したいと思います。

それでは。
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