【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】   作:ひろっさん

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この小説でのそのカミングアウトはマイルドです。


007 ウィジャボード

プレシアは目覚めたフェイトに、全ての真実を話した。

 

「あなたはね、フェイト。私が生んだ娘アリシアのクローンなの」

「えっ……!?」

「アリシアに仕立てようとして失敗した、それでも、私の娘だったのよ。

長い間、ずっと意地になって私は認めなかったけれど」

「母さん……」

「馬鹿よね。ピュアに言われるまで、私の目は節穴もいいところだったのよ」

 

思い出したことがある、とプレシアは話す。

それは、『フェイトをアリシアにする』方法。

 

ピュアの『魂』に関するレポートを見ていて、思い出したのだ。

それはアリシアが存命中に調べた方法。

つまり、子育て方法。

子供は最大限に親の影響を受ける。

 

思い通りに育てようとするなら、親がイメージした通りの名前をつけるべし。

そうすれば多少の差異はあれども、その通りに育つ。

天才として育てれば天才に、職人として育てれば職人に、戦士として育てれば戦士に。

つまり、フェイトにもしもアリシアと名付けアリシアとして育てていれば、フェイトはアリシアになったかもしれないのである。

 

「覚えておきなさい。計画とは失敗するべくして失敗するものよ」

 

特に、今回のように生命を扱う場合、失敗した後のことを考えずに実験を行なってはいけない。

あるいは、失敗した後も、限りなく成功に近付くように努力しなければならない。

プレシアの最大の失敗は、フェイトを失敗と決め付け、その後の努力を怠ったことである。

フェイトがアリシアになる可能性を親が否定してしまったら、もう二度とフェイトがアリシアになることはないのだ。

 

しかし、フェイトは母の思う通りになろうと努力していた。

与えられた記憶に従い、アリシアになろうとしていた。

それを察知していれば、まだフェイトという名のアリシアに育てることができたかもしれない。

 

だが。

もう、ここまで来てしまったら、取り返しがつかない。

フェイトはフェイト以外の何物でもなくなってしまった。

他ならぬプレシアが、そうしてしまった。

プレシアのつまらない意地が、フェイトを失敗作にしてしまった。

 

ここまで来てようやく気付いたのは、フェイトが失敗作であれども人形ではないということだ。

プレシアが自分の不始末で育て損ねただけの、プレシアの娘だったのである。

そのことも、プレシアは意地で認めなかった。

 

すべてはピュアがプレシアを言外に諭してくれたから。

 

『このままアリシアを蘇らせても、アリシアは苦しむだけだ』

 

と。

だから、現実から目を背けることをやめたのだ。

涙を呑んで、現実を受け入れることにしたのだ。

 

ただ、アリシアを蘇らせたいというプレシアの想いは変わっていない。

この期に及んで。

 

それは、ピュアのレポートを読んで、自覚してしまった。

ならば、自分にはそう動く義務がある。

どういう結末にせよ、最後に正しく失敗し、諦め切らなければならない。

そうしなければ、自分は前に進むことができない。

 

「だから、フェイト。『ジュエルシード』を持って、管理局へ行きなさい。

これ以上ここにいたら、共犯者になってしまうわ」

「……」

 

フェイトは黙って聞く。

この話を聞いてしまった以上、管理局が踏み込んできた場合、共犯を否定する材料がなくなってしまう。

 

「私はアリシアを蘇らせるわ。

それが気に入らないというのなら、通報しなさい。

この『時の庭園』はここから動かさないから。

あなたにはその権利があるわ」

「そんなこと、できない」

「アリシアを蘇らせたら、あなたがそうしなくても、私は管理局に投降するつもりよ」

「母さん……!」

「罪は罪だもの。償わなければ、あなたやアリシアに顔見せできないわ」

「……」

「それにね。フェイトに止められるのなら、私は納得できると思うの」

 

プレシアはフェイトの金髪を撫でながら続ける。

 

「あなたも、私の娘だもの」

 

 

 

葛藤がないわけではない。

 

フェイトの記憶、行動原理は、生前のアリシアのそれを受け継いでいるのだ。

管理局の法律に背くことには抵抗がある。

しかし、それ以上に母の想いがかけがえのないもののように思えてならない。

 

フェイトが選んだのは、母のことを黙っていることだった。

 

一度だけ『本当にそれでいいんだね』と再確認をしたのはアルフただ1人。

それは使い魔として必要なことであるし、仕方がない。

 

ピュアは話を聞き、

『そう』

とだけ言って頷いた。

 

地球での拠点にしていたマンションを引き払う手続きを行い、フェイトは決めていた通りに管理局へ通信を行なおうとする。

単純に気分的な問題で、マンションの屋上から。

 

「あ……」

 

白い魔法衣(バリアジャケット)の少女なのはの姿が頭を過ぎった。

 

どうしよう。

もう一度会いたい。

彼女は地球出身らしいため、下手をすればもう二度と会えなくなる。

その前に。

中途半端に終わっていた決着をつけたい。

フェイトの事情が一応解決したことを、伝えたい。

とても心配していたように思うから。

 

管理局員に事情を話せば、伝言は伝わるだろう。

しかし模擬戦はおそらく無理だ。

どうにか、管理局を介さずに話をしたい。

 

「どうしたんだい?フェイト」

「あ、アルフ……」

 

おそらく、精神リンクでこの迷いが伝わったのだろう。

フェイトはアルフに正直に話した。

 

「そうだねえ……もう管理局が来ててもおかしくないから、念話は届かないかもしれないよ」

「うん、そっか……そうだよね」

 

フェイトはさらに悩む。

 

『ど、どうしよう、ピュア』

 

自分の不用意なひと言でより深い思考の海に没してしまったフェイトを見て、アルフは同じ屋上で空を眺めていたピュアに泣きついた。

 

そしてピュアは1つの方法を提示する。

それは妙案と言うよりも、反則技(チート)であった。

 

ピュアの身体に埋め込まれた魔法具『ウィジャボード』を用いて、フェイトとなのはを『接続』するのである。

そうすれば、なのはがどこにいようとも確実に念話が届く。

要は、魔力爆撃用の『ロストロギア』を、念話のためだけに使用しようと言うのだ。

 

「大丈夫?それって身体にかかる負担が大きいんじゃ……」

 

話を聞いたフェイトはピュアの肉体への負担を心配する。

しかし、当の本人は『大丈夫さ』と言った。

 

「最初に使ってた探査魔法くらいさ」

「大丈夫だって判断していいか微妙なとこだねえ」

「うん」

 

ピュアは広域探査魔法を使うと、その日は寝込み、翌日も昼くらいにならないと完全に回復しないくらい体調を崩す。

また、自分の肉体の負担に関しては無頓着なところがあり、無理を押してでも負担の大きい魔法を使おうとする。

だから、この手の『大丈夫』は、アルフもフェイトも慎重に考えることにしていた。

 

まあ、後はフェイトとなのはの勝負だけである。

管理局が出てくるとしても、敵対する意思はないし、勝負の間はアルフが護衛すればいい。

色々と協力してくれているので、アルフとしてもピュアの護衛に抵抗感はなかった。

 

ただ、問題はピュアに負担をかけてまで望むようなことか、である。

ピュアはフェイトにとっては善意の協力者だ。

ただでさえ弱い体を押して、しかも立場が悪くなることさえ省みず、探査魔法で協力。

さらにプレシアと命懸けの対談を申し込み、最悪だった親子関係に良い意味で変化をもたらした。

既に、感謝しても感謝しきれないほど、世話になってしまっている。

これ以上ピュアに負担を強いるのは、フェイトの良心が咎めた。

 

「わたしは、フェイトちゃんに心を残してほしくないさ」

「でも……」

「なのはちゃんのことで心残りを作ると、それは多分、ずっと残ると思うさ。

わたしのことを気にして、そんな心残りは作ってほしくないさ」

「……うん、わかったよ」

 

ピュアの悲しそうな微笑みを見て、結局フェイトは折れることにした。

 

もしかするとピュア自身にも、そんな苦い思い出があるのかもしれない。

それならば、ピュアの心残りにしないためにも。

と、思うのは。

自惚れだろうか。

 

 

 

 




第7話でした。
チート設定、捏造ロストロギア『ウィジャボード』の登場です。
ネーミングの元ネタはこっくりさんです。
あれはヨーロッパから渡ってきたもので、あっちでは『ウィジャ盤』って呼ばれてたそうです。
『ウィジャ』というのはフランス語で、『イエス(YES)ノー(NO)』って意味だとか。
ま、占いの一種ですね。

決闘への持ち込み方が無理矢理なのは許してください。

それでは。
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