【『にじファン』より移転】希望郷の白き魔女【テンプレに喧嘩売ってみた】 作:ひろっさん
『アルハザード魔法』という魔法体系が存在するのだそうだ。
魔法陣で
この原則はミッド式意外にも多くの魔法体系が共有していた。
ピュアの故郷の魔法も例外ではない。
『魔法技術の理想郷アルハザード』にいたと言うだけあって、ピュアはただ1つだけ『アルハザード魔法』を使用することが出来た。
もっとも、ピュアの頭脳をもってしてもそれは複雑難解で、脳にかかる負担も大きいのだとか。
言ってしまえば、知恵熱が出るのである。
ピュアの肉体に埋め込まれている『ウィジャボード』の起動には、それだけの手間がかかるのだ。
ゆえに、使い終われば気が抜けて、しばらく意識を失ってしまう。
それがフェイトに対するピュアの説明だった。
使用する『アルハザード魔法』は、ただの検索魔法である。
『アルハザード魔法』だけあって検索速度が凄まじい。
……はずだが、実際には『接続』完了まで30分もかかった。
さすがにピュア1人では、『アルハザード魔法』の完全再現が難しいのかもしれない。
ともかく。
『アルハザード魔法』の魔法陣は、今までに見た事もないものだった。
そしてすべての魔法の起源と言われれば、納得できるものだ。
円形や2重三角形など、
複雑すぎて何がどうなっているかなど、全く解らない。
ピュア自身も使えることは使えるが、詳しい内容を説明しろと言われてもできない。
なにしろ、母親が死に物狂いで解明したものの、
「“
なぜかは解らないが、フェイトは取り返しのつかないことをやってしまった焦燥感を覚える。
思わず自分が使っている魔法の術式をチェックしようとして、気付く。
既に、すべて動作チェック済みだ。
今まで使っていたままの術式も少なくない。
なぜそんな焦燥感を覚えたのかと首を傾げていると、ピュアから声をかけられた。
「……OKさ」
「う、うん……」
フェイトは事前に説明された通りに魔法陣の中に入り、なのはに念話を送る。
あまり時間をかけては、ピュアが持たない。
『アースラ』食堂。
『え、ええっと、き、聞こえてる?』
「にゃっ!?」
突然響いてきた念話に茶髪ツインテールの少女は驚きの声を上げた。
「どうしたの、なのは?」
「えっと……」
人型モードのユーノに尋ねられ、うろたえる。
そしてどう説明したものか、悩んだ。
『お願い応えて、ちょっと時間が……』
『あ、うん。こちらなのはなの』
『よかった……』
「え、念話?誰から」
「ちょっと待っててなの」
ユーノを軽く制し、なのはは念話に集中する。
『フェイト、ちゃんなの?』
『うん。いきなりだけど、これで多分最後だから』
『え……?』
『決闘。受けてくれる?』
『……うん』
一瞬なのはは考えようとしたが、何も考える内容が浮かばなかった。
彼女にとっても願ってもないことであり、今ここで頷かない理由が何もない。
『海鳴臨海公園の近くの海岸で、待ってる』
『うん。すぐに行くの』
『ありがとう』
念話が切れた。
それ以降、繋がらない。
「誰から?」
「フェイトちゃんから」
「……えっ?」
ユーノは頭を抱えた。
「決闘したいって」
「うん、それはいいけど……『アースラ』の中に直接届いたの?」
「えっと……」
ユーノに問われ、なのはは言葉に詰まった。
そう、2人のいる場所は次元航行艦『アースラ』の内部である。
本来地球からの念話など届くはずがないのだ。
外部からの
この場合はエイミィが取次ぎ、許可を出すわけだ。
だから敵方であるフェイトの念話が直接届くことなど、本来はありえない。
「でも、確かにフェイトちゃんだったの」
「そっか」
なのはが頑なに主張するのを見て、ユーノは反論を止める。
そう長い付き合いではなかったが、なのはがこうなっては事実を見る以外に頑として聞かないだろう。
2人は互いに頷き合い、席を立った。
通路を走っていくと、前方からクロノがやってくるのが見える。
「2人とも、そんなに慌ててどうしたんだ?」
「あ、クロノ君……」
「念話が届いたんだ。なのはだけに、直接」
「気のせいじゃ……ないみたいだな」
クロノは台詞の後半、なのはの目に灯る強い意思の光を見て、自分の意見を否定した。
元より『ロストロギア』の関わる案件である。
常識で考えていては痛い目を見ることを、彼はよく知っていた。
「僕も行く」
言いながら、クロノは
短い茶髪の少女が対応した。
『クロノ君、どうしたの?』
「なのはがフェイトから念話を受け取った。
多分、『ロストロギア』が使用されてる。3人で降りて状況を確かめたい」
『転送ね。艦長、どうします?』
『罠の可能性は……』
『考慮しています』
『よろしい。許可します』
元々リンディも、事態が動かないことに焦っていたのだ。
多少のリスクを勘案しても、何かが起こったというのなら動かすべきだろう。
フェイト側はクロノの存在を知らないため、罠があるのならクロノの存在が重要な
願わくば、これが事件解決への糸口になってほしいところである。
海鳴臨界公園。
磯の香りの漂う、海辺の遊歩道。
「アルフ、お願いね」
「うん。何があろうと必ず、守って見せるよ」
アルフが頷くのを見て、フェイトは頷き返し、割と近くに転送されたなのはに視線を向けた。
他に2人いるが、手を出してくる様子はない。
ピュアは。
やはり『ウィジャボード』使用の負担が大きかったのか、今は意識を失ってアルフの腕の中で眠っている。
「場所、移そうか」
「そうだね」
フェイトが言ってなのはが頷く。
「クロノ君、手を出しちゃダメだよ」
なのははクロノに釘を刺した。
「わかった」
逆らえば攻撃されそうだったので、クロノはとりあえず頷き、見送る。
罠もなさそうなので手は出さないが、一応話を聞いておく必要はあるかもしれない。
しかし何より、もしも決闘が殺し合いに発展するようなことになれば、止めに行かなければならない。
そうなった場合、意識の無い少女がまともに戦えるわけがないため、戦力で言えば3対2で有利だ。
わざわざ手を出してなのはを敵に回すことを考えれば、今は大人しく話でも聞いておくのがいいだろう。
クロノはそう判断した。
「その子は?」
「アタシ達の大切な恩人だよ。絶対に傷1つ付けさせないからね」
アルフは『下手に動けば殺す』とばかりにクロノを睨む。
こんな反応を返すという事は、おそらくフェイトにとってもこの白髪の少女は弱点となりうるということだ。
しかし、逆に言えばそれだけ奪って人質にするのは難しいということになる。
おそらく簡単には渡さないだろう。
「意識を失っているようだが、どうしてだ?」
「っ……今は関係ないだろ!」
アルフが声を荒げる。
聞いてほしくないことらしい。
クロノは質問を変える。
追求すれば、態度を硬化させるだけだろうから。
海鳴市近海の上空では、熾烈な戦いが繰り広げられていた。
直射魔法と誘導弾、あるいは砲撃。
互いに攻撃を叩き込み、回避し、防御する。
射撃はなのはに分があり、スピードや白兵戦ではフェイトに分があるようだ。
ゆえに、なのはは相手を近づけさせないように射撃を絶やさず、フェイトは応戦しつつどうにかして近付こうとする。
互いの得手不得手のはっきりとした戦いとなった。
「どうやって次元航行艦内部にいる、なのはだけに念話を届かせることができたんだ?」
クロノは問う。
できれば答えてほしい、最大の謎だった。
「……後で話すよ」
黙秘、ときた。
いや、正確にはそうではないのか。
あるいは、先に拒否した質問の内容に関わってくるのかもしれない。
また、質問を変える必要がありそうだ。
「どうして今頃になって出てきたんだ?」
「なんだって?」
「しばらく姿を現さなかっただろう?あれがなければ大半の『ジュエルシード』がそちらの手にあったはずだ」
「こっちもトラブルがあったんだよ……そういえばクロノって言ったね?」
「あ、ああ」
急に質問が返ってきて、一瞬対応が遅れる。
「クロノは管理局の局員か何かかい?」
「僕は管理局の執務官だよ」
「ああ、そういうこと」
アルフは納得したとばかりに頷いた。
少し警戒が薄れたように感じる。
「質問の内容に答えてもらってないぞ」
「『ジュエルシード』を集める理由は、アタシ達にはもうないのさ」
「どういうことだ?」
「フェイトの母親が倒れたんだよ。それから人が変わったみたいに優しくなってね……」
「『ジュエルシード』を探すどころじゃなかったのか」
クロノは納得する。
少なくとも、2人が管理局に敵対する理由はなくなったらしい。
「ちょっと待って」
そこにユーノが口を挟んできた。
何を言うつもりだろう。
下手なことを言って刺激してほしくないものだが。
「それって、『ジュエルシード』の力で人格が変わったってこと?」
「!?」
クロノは目を見開く。
その可能性は考えていなかった。
『ジュエルシード』の性質をよく知るユーノだからこそ、気付くことが出来たと言えるだろう。
「そうか、『ジュエルシード』は願いを叶える『ロストロギア』……」
「違う。それに『ジュエルシード』は関わってないよ」
アルフはユーノの言葉を否定した。
決闘は佳境に差し掛かった。
周囲に連続して出現する魔法陣に惑わされ、なのはがフェイトの
「“『フォトンランサー』、ファランクスシフト”」
毎秒7発の魔力弾を連射し続ける『フォトンスフィア』を38基展開する、フェイトの切り札。
合計1064発の魔力弾を叩き込む。
この数の暴力の前には、どんな防御も砕かれて終わるだろう。
しかし。
無数に浮かぶ直射弾の射出基である『フォトンスフィア』から、拘束されたなのはに向けて猛攻が叩き込まれ、周囲は煙に包まれる。
煙が晴れた時、高い防御力を誇る白い
そして茶色いツインテールの少女の目にも、闘志は未だ健在。
「撃ち始めると、拘束って解けちゃうんだね」
「くっ……!」
その言葉に自分のミスを知ったフェイト。
それでも、あの連射をあのタイミングで避け切るのは不可能、つまり何割かは食らったはずだが。
その何割かに耐えたというのか。
慌てて周囲に浮かぶ『フォトンスフィア』の残骸を集め、1つの大きな誘導弾に纏め上げる。
「今度はこっちの……」
“
「番だよ!」
“
帯を繋いだ環状に展開した魔法陣の内側で、桃色の魔力光が球状に膨れ上がり、一気に放たれた。
フェイトも今しがた作り上げた大きな誘導弾を放ち、迎撃する。
ほぼ溜め無しの砲撃だから、これで相殺できると思っていたフェイトの誤算があった。
黄色の魔力光の大きな誘導弾は、なのはの砲撃によって一瞬で吹き散らされてしまう。
誘導弾を射出したばかりのフェイトに回避する余裕はなかった。
辛うじて
しかしそれでも受けきれない魔力の奔流が、フェイトの黒い
「(あの子も、耐えたんだから――!)」
気力と魔力を振り絞り、フェイトはその砲撃に耐え切る。
これで仕切り直し。
切り札を使ったフェイトの方がやや不利か。
だが。
だがしかし。
上空で膨れ上がる桃色の光が、フェイトの目に入る。
「なっ……!?」
そこにいたのは、巨大な魔法陣を展開し、周囲から魔力を集めるなのはの姿だった。
「受けてみて、『ディバインバスター』のバリエーション……」
“
フェイトは慌てて回避行動を取ろうとする。
しかし、いつの間に仕掛けていたのか、桃色の
「あ……」
今のフェイトにできることは、防御を最大にして備えることだけ。
あるいは、一瞬でも早く拘束が解けることに期待して、高速移動魔法を用意しておくか。
「受けてみて、これが私の全力全開!!
“『スターライト・ブレイカァァァァァッ!!!』”」
放たれる桃色の奔流。
それはまさに大河を髣髴とさせる。
そしてフェイトは回避することを諦めた。
耐えるしかない。
全力で。
「バルディッシュ!」
“リカバリー”
とりあえずではあるが、先の砲撃で損傷した
そして残るすべての魔力を防御魔法に注ぎ込んだ。
高速戦が専門のため、防御はどちらかというと苦手だ。
だが、耐えなければならない。
桃色の『壁』は一瞬でフェイトを呑み込んだ。
辛うじて押し流されなかったのは、僅かな時間の中でもそれなりの準備を整えられたからだろう。
しかし。
ものの2秒かそこらで
次の2秒で完全に砕け散る。
そのあと。
意識が戻ると、なのはの腕に抱えられていた。
負けたのだ。
だが、なぜだろう、嬉しかった。
さっぱりとした、心地良い清涼感がフェイトの体を包んでいた。
第8話でした。
『じゅもんがちがいます』
ギャー!
どこが違うんだッ!
ええと、見間違えそうなところはここで、こうかッ!?
『じゅもんがちがいます』
アッ――!
今では良い思い出です。
フェイトVSなのは。
原作より、ちょっとだけ展開を変えています。
3日間プレシアの看病をしていたとはいえ、原作ほど疲労が蓄積している状態ではありません。
精神状態も安定していますし。
でも、バインドに捕まってSLBでジュッ、は変化ありません。
クロノが情報収集がてら、アルフから色々と聞き出しています。
黙秘の言い方からでも、読み取れることはありそうですね。
もちろん、デバイス越しにリンディも見ています。
それでは。