リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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はい、長かった3部ももう終了デス。
しばらくは夏休み編かな?
現実世界では、終わったけど……


ごめんね?もう、無理なんだよ

有る日曜の日。

正確には天峰が卯月と出かけた次の日。

夕日は一人ホームセンターに来ていた。

 

「…………♪」

鼻歌を歌いながら上機嫌で、文房具コーナーに並べられたカッターナイフを見る。

100円で2本付いてくる安い物や、逆に替えの刃だけで3000円以上する高価な物までさまざまだ。

共通するのはどれも『切る』という事に機能の重点が置かれている事。

 

「!!……良い……」

偶然一本目に留まった、カッターを手に取ってみる。

 

「……む……」

しかし上機嫌なのはその一瞬だけ、すぐに残念そうな顔をして元の場所に返してしまう。

形や、サイズは気に入ったのだが重さが気にくわないらしい。

手にフィットしそうなだけ、残念に思えた。

 

「……まぁ……いい……」

文房具コーナーを後にして、今度は併設されているペットショップのコーナーに向かう。

少しずつ、動物特有の騒がしさがしてくる。

 

「キャン!!キャン!!」

 

「アン!!アン!!」

 

「zzz……」

 

「にぃ……」

ガラスケース越しの子猫や子犬が元気に自身の存在をアピールしている。

 

「かわいい……」

子犬の姿をみて思わず、頬がにやける夕日。

 

「あおーん!?」

夕日の視線の気が付いた子犬が、ガクガクと震え始める!!

後ろ足の間に、尻尾を巻き付けケースの端に座り込み、ついには粗相をしてしまう!!

怯える子犬をみて、夕日が再び不機嫌になる。

 

「……負け犬……に……用はない……の……」

その場から悔しそうに、踵を返すと後ろに見知った顔が有った。

 

「玖杜?」

玖杜が、買い物かごをもって歩いていた。

 

「!?  あ、ああ……この前の……」

視線を合わせず、露骨に目をそらして話す。

 

「……それ……どうしたの……?」

買い物かごに入った、大型犬のリードを指さす。

 

「こ、これは……家の犬用のリードだよ、古くなったから」

それだけを早口で話すとその場からそそくさと逃げる様に、走っていったしまった。

しかし最後に、少しだけ振り返って手を振り笑った。

 

「バイバイ、夕日ちゃん」

 

「…………うん?」

夕日は玖杜の、前とわずかに雰囲気の変わった後ろ姿を見送った

一抹の不安を抱えながら……

 

 

 

 

 

深夜の野原家にて……

割れた伊達眼鏡を握りしめ、玖杜がホームセンターの袋をおく。

 

「揃った……」

自室のテーブルの上に集まった道具を見て、玖杜が小さくつぶやいた。

その目は暗く、生気というモノが全く感じられない。

 

「あとは……時間を待つだけ」

そう話すと、玖杜はテーブルの上にある一つのビンを手に取った。

 

 

 

 

 

テストも終わり、夏休みのカウントダウンに入った志余束高校の面々。

帰って来るテストの点数に不安のあるメンバーをのぞけば、ウキウキ気分である。

天峰もその『ウキウキ』サイドの人間である。

今日の授業も終わり、駅前で夕日と一緒に本屋に入っていく。

 

「ねぇ、夕日ちゃん。夏休みの予定ってなんか有る?」

旅行ガイドなどが書かれた、本を取ってパラパラとめくっていく。

 

「……無い」

 

「なら、何処か温泉とかどう?日帰りなら、何とか手が出そうだよ」

そう言って、観光地の温泉のチラシを指さす。

最寄りの駅から、専用の長距離バスが出ていると説明が有る。

 

「……温泉?……嫌……傷……見せたくないから」

この言葉と共に、夕日は瞳を伏せてしまった。

上手く隠しているが、夕日には未だに多くの傷跡が体に残っている。

時が経つにつれ消えていく物も多いが、結局は傷は目立つ目立たないに限らず残るし、何よりも夕日の心に付いた傷は治りはしない。

 

夕日の右の眼もそうだろう……

 

唇をかむ夕日、その様子を見た天峰が小さく頷いた。

 

「えい」

 

「!!!?!!!!!?」

指を伸ばし、夕日のカッターシャツを軽く引っ張る。

白い布地がめくれ、それと同じくらい白い夕日の肌が僅かに空気に触れる!!

 

「な……なにするの!!」

珍しく夕日が声を荒げ、天峰を糾弾する。

誰か見ていてもおかしくない場所で、シャツを捲られたら誰でもこうなるだろうが……

 

「夕日ちゃん?俺は夕日ちゃんに、何が有ってもどんな傷が有っても味方だから。

だから、夕日ちゃん。自分で自分を敵にしない――」

ドゴッ!!

天峰の顔に夕日渾身の右ストレートがめり込む!!

 

「夕日ちゃん!?今、せっかく良い事言ってたのに!!」

 

「……うるさい……公共の……場で……妹の……服を捲る変態は……制裁……する!!」

夕日の手の入れた、ポケットの中からカチカチカチとカッターの音がする!!

天峰の義妹はご機嫌斜めの様だ。

明らかに本気だ、本気と書いてマジと読むレベルでの殺気を飛ばして来る!!

 

「ゆ、夕日ちゃん?お、俺が悪かったから、悪かったからそのカッターをしまってくれないカナ!?」

ガクガクと震えながら、天峰がじりじりと追い詰められていく。

 

「ダメ……制裁……するから……」

遂に天峰が壁際まで追い詰められる!!

丁度死角になる位置であるため、店員は居ない!!

 

「うぇ、うぇい!!ちょっと――ウェイ!!」

両手を上げて降参のポーズをする天峰の、左腕と頬の間を何かがすさまじいスピードで通り過ぎる!!

 

ビィィン……

 

本屋の壁にカッターが突き刺さりわずかに揺れる。

 

「次は……無いから……」

 

「わ、解りましたぁああああ!!」

容赦のない目でこちらをを見上げる夕日に、天峰が必死で謝ったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『楽しい時間はいつか終わる』

 

知っている。

誰でも、何でもそうだ、良い事も悪い事も無限に続く、なんて事は絶対ない。

 

手に持つ本の、最後の一文を読み終える。

また一つ『楽しい時間』が終った。

 

「はぁ、そっかぁ……」

数年前から、読み続けていたシリーズ物の本。なんと本日遂に完結。

実は結構楽しみにしていた、だけど読み切ってしまえばそれはタダの物語。

ヒロインと主人公が抱き合ってキスして幸せに成って終了。

ありがちなハッピーエンド。

 

けど私には、届かない世界のハッピーエンド。

 

「あの、そろそろ閉館の時間でして――」

申し訳なさそうに職員の女の人が、『私』に話しかけてくれる。

 

丁度いい、今読み終わったところだ。

 

『私』はその言葉に反応をして、本を閉じ立ち上がる。

 

「あ、何時もみたいに貸りていく?」

 

「いい、もう読み終わったから」

本を渡し、家から持って来たリュックを手にし図書館から出ていく。

 

さて、何処に行こうか……夜まで時間が有る。

けど食事や飲み物を口にする訳にはいかない、せっかくの準備が無駄になるから。

 

「公園に行こうかな」

 

『私』は誰に言うでもなく、その言葉を呟いた。

本当は、誰かに聞いてもらいたかった。

 

『こんな時間に何処に行くの?』って。

 

『私』に無関心な人の波をかき分け、公園に向かっていく。

 

こんなにも、辛い人生を『終わらせる』為に…………

 

 

 

 

 

用意する物。

1適度な高さの物(人を一人抱えても崩れないほど)

2丈夫なロープ(手に入り難ければ大型犬用のリードがおすすめ)

3簡単に倒せる足場

 

その他、なるべく後を汚したくない人へ。

3日ほど、食べるのを抜きましょう。極端な話、出る物が無ければある程度キレイに逝けます。心配なら下剤も併用しましょう。

眼球が飛び出る可能性もあるので、ネクタイ等で目を押さえましょう。

 

便利な世の中だ。パソコンを利用すればこんな事まで、すぐにわかる。

 

 

 

人の少ない夜の公園、適当な木に登り虫の声を聴く。

持って来たリュックの中の、イヌのリードを木の枝に巻き付けていく。

注意の様に、食事も抜いた、下剤も飲んだ、ネクタイも準備した。

最後の仕上げだ、自身が抵抗しない様に簡易だが自身の手を後ろでに縛る。

この、町の光景も今夜で最後だ。

 

さて、そろそろ――逝こうか。

ネクタイを目にキツク巻き付け、首にかかるリードの強度も確かめる。

 

「ゲーム・オーバー、だね」

 

「……ダメ!!」

木から飛び降りようとする時声が掛かる。

不審に思い、ネクタイの目隠しを外して相手を見る。

 

「あ……」

この前会った、夕日だった。

此方を射殺すかのようなすさまじい視線で見て来る。

 

「……こんな事……して……なんになるの?」

責め立てる様な視線が、玖杜に投げかけられる。

 

「何にもならない。何にも成らないからこそ、こうするの」

視線に怯えながらも、何とか言葉を絞り出す。

その答えに夕日が辛そうな顔を一瞬だけする。

 

「……私は……アナタに……生きてほしい……とは……思わない

正直……どうでもいい……」

 

「じゃあ何で止めたの!?時間を掛ければ私が心変わりすると思うの!?」

 

「言ったハズ……アナタの……生き死に……興味は無い。

けど……アナタに……死んでほしくない人が……要るハズ……」

そう話す夕日はさっきまでの感情はなりを潜め、非常に平坦な声だ。

まるで感情の無い人形が、人間のふりをして話している様な錯覚にさえ引き込まれ始める。

薄っすらと、不気味な物を感じさせる。

 

「前にも言ったよね?アンタなんかに解らないって。

私はもう疲れたの……出来る兄たちと比較される事に、辛くても苦しくてもヘラヘラ笑って『辛い事なんてありませーん』って感じで振る舞うのも!!全部もう疲れたの……」

 

「………………………で?」

 

「『で』って……アンタが聞いて来たんでしょ!?アンタが知りたがったんでしょ!?」

玖杜が感情を爆発させる。

偽りでも、フリをしたものではない本物の『怒り』をあらわにする。

 

「自分を可哀想がるのは、もう終わりぃ?ねぇ?悲劇のヒロインごっこはもう終わりぃ?ねぇ?ねぇ?勝手に自分を追い込んで、一人で死ぬのって、どんな気持ちぃ?」

ニヤァッと効果音の出そうな、笑みを顔に引っ付けて夕日がケタケタ笑う。

バカにして嘲笑う笑みを一切の遠慮なく向けてこちらを笑いものにする!!

さっきとは180°違う、別の狂気に再び玖杜が震えあがる!!

 

 

 

「わ、私は――来ないで!!来ないでってば!!」

玖杜が怯えて後退しようとする。その時、体がバランスを崩し転びそうになる、通常なら木の枝の上から落ちても軽いケガで済む。

しかし、今は枝と首にリードが絡みついてる、後ろに下がれば落ちて首のリードが絡まり死んでしまう!!

咄嗟に、木の枝を強く握りしめる。

 

「なんだ……死ぬの……怖いんじゃ……ない」

5メートルほど前で、夕日がこちらをじっと見ている。

 

「あ、当たり前じゃない!!私だって!!私だって死にたくはないわよ!!」

その言葉に玖杜が咄嗟に反論する。

 

「……なら……家に……帰ろう?

……辛い事は……胸の奥に……しまって……いつか……無くなるまで……

隠して……おくの……そうすれば……きっと……」

 

「ごめん、そうだよね。うん、そうすれば良かったんだよね?

けど、ごめんね?もう、無理なんだよ」

 

玖杜が素早く顔にネクタイを巻き付ける。

そして……

両手に力をかけ、枝から飛び降りる!!

 

一瞬誰かがこちらに走って来るような空気を感じた。

夕日だろう。

けどもう無駄、この距離じゃ間に合うハズが無い。

直ぐに自身の首に力が掛かり、血の流れを押さえ『私』がこの世から消える。

目隠しによって画面の向こう側が消え、さらにこちら側も消え、最後に自分が消える。

 

 

 

ハズだった……

 

「……ダメ!!」

堕ちる『私』に誰かが飛びつく!!

目隠しをしているので相手がだれか解らない。

だが、誰かが私を受け止めようとしている。

 

「が、ハッ!?」

落下の衝撃で首の骨が折れる事を期待したが、そうもいかないらしい。

仕方ない、もう少し苦しもう……

『私』は首に掛かる圧力を感じながら薄れる意識の中で、そう考えた。

 

「夕日ちゃん!!」

 

「わかってる!!」

ふわっとした一瞬の浮遊感、首に掛かる圧力が楽に成った。

次にネクタイが取り払われ、私を覗き込む二人の男女が視界に入った。

 

「お、おにーさん……?……」

呆然としながら、二人を呼んだ。

夕日の手には、カッターナイフ。

どうやら、ソレでリードを切った様だがすさまじい切れ味だな、なんてことを考えていた。

 

「クノキちゃん!!なんでこんな事したんだよ!!」

 

「玖杜…………」

二人が本当に真摯な声音で、玖杜を叱りつける。

相手の事を思った真摯な、言葉は荒んでいた玖杜の心に深く深く響いた。

その瞬間、死を回避したことを理解し体が震えだした。

 

「あ……ごめん、なさ……い。

けど……なんで?」

 

「最初から俺はクノキちゃんの後ろに居たんだよ。

夕日ちゃんが考えてくれたんだよ、『イザという時の為に、後ろから近づいて』って。

ちなみにだけど、自殺を予測したのも夕日ちゃんだよ?」

 

「……様子が……おかしかったから……だから天峰に……聞いた。

八家の家は……犬を飼ってるのか……って」

夕日が天峰を見ながら話す。

その言葉を、天峰が引き継ぐ。

 

「飼ってないよね?八家のお兄さん、七喜(ななき)さんが犬アレルギーのハズだからね」

 

「……そこから……私が……アナタの行動を……予測した」

 

「まぁ、最悪のパターンとしてだったけどね?しそうな日でもあったし」

尚も真剣な顔で天峰が、じっと睨んで来る。

 

「しそうな日?」

 

「月3回図書館にラノべ、読みに行くんでしょ?本屋で調べたら、今日が前クノキちゃんの呼んでいた本の発売日だったんだよ。

死ぬ前に読みたがると思ってね?

まぁ、今日いきなりだとは思わなかったから、内心かなり焦ったよ」

 

意とも簡単に自身の行動パターンを読む二人に、玖杜が驚きの声を上げる。

それ以上に、自身の出したメッセージを受け取ってくれる二人が嬉しかった。

意識などしていない、小さな小さな自分のサイン。

この二人はそのサインを受け取り、自分の為に、玖杜の為だけに動いてくれたのだ。

 

「あ、ああ……私……一人じゃ、ないんだ……ちゃんと……『私』を見てくれるんだ……

玖杜を見てくれる人が、居た」

ボロボロとその場で、涙を流す玖杜。

 

遠く、見るだけだった世界。

レンズの向こうの、遠くて近い世界。

そんな世界を超え、現実の存在が、今、玖杜を救うために来てくれたのだ!!

 

 

 

「おい、屑!!こんな所で何をしてるんだ?」

公園の入り口、息を切らせながら八家が走って来る。

つかつかと近寄ったかと思うと、玖杜に対して右手の拳を振り上げる。

 

「このッ!!愚図が!!」

しかし、その拳が振り下ろされる事は無かった。

 

「おい、ヤケ」

天峰が八家の手を掴んで止めていた。

 

「おまえは……天峰?なんでここに?」

玖杜に気を取られていたのか、此処で初めて天峰の姿に気が付いた様だった。

 

「歯ぁ!!食いしばれぇ!!」

逆に天峰の拳が、八家に叩きこまれる!!

バランスを崩し、八家が倒れる。

 

「痛てぇな……何するんだ!!」

 

「今のは、夕日ちゃんの変わりの一発……そんでコレが!!クノキちゃんの分!!」

更にもう一発、八家を殴りつける!!

パシィ!!

今度は、八家が天峰の拳を受け止める!!

 

「なんども、殴ってんじゃねーよ!!ロリコン野郎!!」

遂に切れた八家が、天峰を殴り返す!!

 

「ああん!?見境なしの変態野郎が!!活きがってんじゃねーよ!!」

夜の公園で二人の男が喧嘩を始める。

 

 

 

「何でお前が、家の妹に関わっているんだ!!」

 

「お前が!!クノキちゃんを追い込んだからだろ!!」

突きと蹴りがお互い交互に、繰り返される!!

防御など無視の削り合いだ。

 

「追い込んだ?何のことだよ!!」

 

「夕日ちゃんからッ!話は聞いてる!!」

 

「コイツが引きこもっている事をか?我が家の恥じという事をか?」

 

「違う!!お前が追いこんだから!!追い込んだからこんなことに成った!!」

八家の眼前に切れたリードを持ち出す。

そのリードをみて、八家が動きを止める。

 

「なんだソレ?なんで片方が木に?なんでもう片方が玖杜の首に……?」

何をしようとしていたか、何となく察した八家が愕然とする。

 

「何も知らないのか?兄妹なのに?」

 

「俺は……追い詰める気なんて無かった……!!

ただ、いつまでも、出てこないコイツを思って――」

ガクガクと今度は八家が震えだす。

 

「伝わってなかったんだよ、ヤケ。

お前、一度でもクノキちゃんとしっかり話した事はあったのかよ!?

理解してあげようとしたのかよ!!」

天峰が八家の首を掴む。

自身のしたことを理解し始めた八家の体から力が抜ける。

 

「お兄ちゃん……私……お兄ちゃんが怖かった……いつもイライラしてて、私にだけ厳しいし……」

玖杜が八家に優しく話しかける。

 

「俺は、お前に前みたいになってほしかったんだ!!兄さん達みたいに成らなくても良い!!立派じゃなくてもいいんだ!!ただ、一緒に話がしたかったんだ!!

すまない。お前の気持ちを汲んでやれなかった!!」

地面に座り込み、八家が玖杜に許しを請い始める。

 

「お兄ちゃん……」

 

「良かったね、クノキちゃん。ヤケはちゃんとクノキちゃんの事を考えてくれてたんだよ?」

呆然とするクノキの肩に手をのせ、八家の方に向かって優しく押し出す。

玖杜と八家が、何かを語り始めた。

その様子をみて、天峰が公園の出口に夕日を連れて向かう。

 

「何処行くの?」

 

「ココからは、家族の話だよ。俺たちに出番はもうないよ。

後は、二人が他のお母さんやお父さん、みんなと話して解決する問題さ」

 

「私も……いつか……いつかまた、お母さんと話せるかな?」

尚も眠り続ける自身の母を思い出し、夕日が天峰に尋ねる。

 

「絶対話せるよ。何が有っても家族の絆は消えないんだ

あ、もちろん俺と夕日ちゃんは家族だからね?」

にこやかな笑みを浮かべて、天峰がほほ笑みかける。

 

「うん、解ってる」

 

 

 

 

 

そんな、二人の目の前にパトカーが停止する。

「はーい、そこの不審者4名!!止まりなさい!!近隣の住民から、喧嘩が有るとの通報があった!!全員その場で両手を上げなさい!!」

青い制服を着た警察官が、公園内の4人を呼び止める!!

 

「天峰……マズイ?」

 

「かーなーり、まずい!!」

夕日の問いかけに対して、天峰が冷や汗を垂らしながら答える。

天峰自身は特に何もないが、隣の夕日はカッターを持ち歩いているし、おそらく公園内の八家は服の下に常にR18の本を持ち歩いている。

それどころか、玖杜は未だに首に大型犬用のリードが付いている!!

カッター、エロ本、幼女に首輪!!どれを見られてもアウト確定!!

どちらも見つかったらやばい!!

 

「ヤケぇ!!全力で走るぞ!!」

 

「おう!!」

天峰が夕日を抱き上げ、八家が玖杜を抱き上げ、それぞれが逆の方向へと逃げ出した!!

 

「あ!!待ちなさい!!」

警察官と夜の追いかけっこスタート!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夏の日光がアスファルトを加熱する。

じりじりと自分が汗に溶けてしまうのではないかとさえ思う。

強い日差しが、嫌になる。

夏を謳歌する運動部員の輝きが、嫌になる。

教室内のにぎやかな声が、嫌になる。

先生の優しい視線が、嫌になる。

今、此処に居る自分さえも、嫌になる

 

だけど、目の前の男だけは嫌に成らない。

 

「やぁ、クノキちゃん!!補習はもう終わり?」

 

「終わってるよ!!最低の意味でサ!!全教科補習ってどういう事なのかな!?コレは陰謀だよ!!インボー!!イン!!ボインボイン!!」

当然だが、テストを受けていない玖杜は全教科分の補習と授業の補講が有る。

夏休みは殆どこれで潰れた様だった。

 

「クノキちゃん、落ち着いて。実はプールに行こうと思って誘ったんだよ」

 

「プール!?あの、監視員成らぬ姦視淫が居るリア充の性地に!?

おニーさん、私の体が目当て!?ロリコンおニーさん逮捕寸前!?」

 

「ちがうちがう、まどかちゃ――知り合いの子が『流し素麺がしたい』ってプールを貸し切ったんだよ。流れるプールで素麺流すんだって、量が多いから友だち呼んで来いって言われてる」

 

「お兄ちゃんは?来るの?」

 

「俺は――あ、ヤケか。行くって、大興奮してたよ?」

 

「なら、私も行く!!」

そう言った玖杜の胸には、八家に買ってもらった伊達眼鏡が紐に吊るされて夏の光を反射していた。




何気に8月31日が日本で一番自殺が多発する日らしい。
人によっては、少し辛い内容だったかもしれませんね。

余談ですが、作者は中学生の頃友人に自殺を仄めかされた事が有ります。
中二だったのか、本当につらかったのか……
放課後の教室で
友「俺生きるの辛い……死のうかって考えてる」
ラム「俺もそんな時有るよ?」
友「なら、一緒に死のうか?」
友人目がマジだったので、コレはやばいと思いましたね。

ラム「しかたねーなー」
学校備品の鉛筆削りで、鉛筆削る。

ラム「えい」
首にブスリ!!

友「おい!?やめろよ!!」

ラム「ん?次はお前の番だろ?」
ぐりぐり……
友「……や……やめろよ!!」

ちなみに指す前に、尖ってない方と変えたので全然刺さってないんですよ。
完璧驚かす専用。
それ以来、彼は自殺を仄めかす事を止めてくれました。
中学卒業した今でもいい友達です。
半分くらいフェイクはいってますがね?

皆さん、命は大切に。
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