リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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最近忙しくて投稿が遅れ気味です。
その代り今回は、あまり表に出ない設定が一部見れますよ。


もらってくれてありがとうね?

Z県X市の山の奥……地元の猟師すら滅多に入ってこない山の奥の奥。

そんな場所にその村は有った――その村の名は奥淵村。

名前の通り、山々の奥、そして小さく出来たスペースにひっそりと佇んで居る村。

 

「はぁい。みんなお疲れ様。

今日は私が腕によりをかけて料理するからね」

長い髪に、サマーセーターとスカートを美女?が笑って家の中を進んでいく。

 

夕日の家族もそれに黙ってついて行く。

 

「……天峰……あの人……男の人?」

 

「ん、そうだけど?俺のおじさんに当たる人――」

そこまで言って、天峰が目の前の人物が不機嫌そうにしている事に気が付く。

 

「ノンノン、天峰君。私の事はハジメさんって呼んでっていつも言ってるでしょ?」

指を振るい小さく天峰を注意する。

その振る舞いは完全の女性の物だ。

かさねて言うがとても男性とは思えない。

 

「…………」

さっき胸を触った夕日がなぜ、こんな格好をしているのか一瞬だけ考える。

ひょっとしたら、何か訳が有るのでは?心は女の人なのか?そんな考えがよぎる。

 

「あ、そうだ、夕日ちゃん。

最初に言っておくけど、別に私、心と体の性別が合ってない訳じゃないのよ?

普通に女の人が好きだし、エッチな本も読むし、体もいじってないわよ。

竿と玉触る?」

そう言ってからかう様に、自分のスカートに手を伸ばす。

 

「いい、いい!」

首を横に振るって、夕日が否定の意を見せる。

クスクスとハジメがその姿を見て笑った。

どうやらからかわれた様だ。

 

「そういやアニキ、親父とお袋は?」

助け船を出す様に、後ろに居た夕日の義母 天唯が尋ねる。

 

「パパとママは出かけてるわ。

え~と、たしか……そう!

ブランド牛のステーキを食べに、オーストラリアに行ってるわ」

 

「!?」

さらりと流されるまだ見ぬ祖父の異様なアグレッシブさに夕日が目を見開く。

始めは冗談だと思ったが、他の人が特に慌てる様子もない事から「割とよくある」事態の様だ。

 

「またか?前行った時は、医者にもらった風邪薬を英語で何か聞かれて大変な事に成ったんだよな……」

今度は、天唯が笑って話す。

思いで話を語る家族の光景だ。

 

「……何が……有ったの?」

興味を持った、夕日がハジメに尋ねる。

その時丁度目的の部屋に着いたようで、はじめはふすまを開けて座布団を配り始める。

 

「失敗談なんだけどね?そこで、お父さんテンパちゃって!

クスリって英語でなんて言うか忘れちゃったのよ、で。

果物はフルーツ屋、下着はランジェリーショップ、的な具合でクスリを買う場所を英語でいう事にしたのよ。

で、その薬を売ってる店は()()()()ストアって言うでしょ?

もー、税関の人、すごい集まって来て!すごい大変だったんだって~」

ケラケラとハジメが笑い出した。

なかなかないであろう失敗談を話し終ると、手早くお茶と茶菓子を配った。

 

「おおぉ、これこれ。コレが有ると実家って気がする」

天唯が湯呑を手の中で転がして、ホッと一息つく。

 

「ハジ兄!コレ、うまいな!!」

その横では天音がぼりぼりとせんべいを食べていく。

天音の様子を見て、ハジメは小さく眉を歪める。

 

「天音ちゃん?まだ、そんな男勝りな口調してるの?

ダメでしょ?そんなんだと好きな男の子に嫌われちゃおうわよ?」

 

「ええ?別にいーじゃねーか?俺はこの方が慣れてるし。

っていうか好きな男自体いねー、全員軟弱なんだよ」

尚もぼりぼりいいながら、せんべいを口に運び続ける。

その様を心配そうに、ハジメが見ている。

小さくため息を付いて今度は、天唯に向き直る。

 

「ほら、天唯ちゃんがいつまでもそんなしゃべり方だから、移っちゃったのね。

はぁ……

こんなしゃべり方じゃ、何時まで経ってもお嫁にいけないわよ?

もっと、男の人を喜ばせられる様にならないと……

蒼空さん、本ッ当!に天唯ちゃんをもらってくれてありがとうね?

貰ってくれなかったら、今頃一人寂しく生活していたかもしれないのよね」

ハジメが今度は、天峰の父親に話す。

父は、気まずそうに後頭部を掻いて笑った。

 

「うっし!腹も膨れたし、遊びに行ってくる!!」

あらかたのせんべいを食べ終わると、天音が勢いよく走り出し襖の向こう側、縁側から飛び降りて何処かに走って行ってしまった。

 

「……逃げた……」

小さく夕日がつぶやいた。

確かに自分の義母とは、到底兄妹とは思えない人物だった。

天音が苦手とするのも解る気がしないでもない。

 

「私は、自分の部屋に行ってる。

蒼空、付き合え。アニキに鼻の下伸ばした罰な」

 

「天唯ちゃん!!何を言ってるんだい!!

僕は、天唯ちゃん一筋だよ。

それは君が一番知ってるハズだろ?」

後ろからベタベタと蒼空が天唯にくっつく。

満更でもないといった顔で、天唯が笑うと二人で出て行ってしまった。

 

「あらら、みんな忙しいのね」

小さくため息を付いて、その場に残った天峰と夕日を眺める。

長い眉毛と、弾力のある唇。全身から女性的なオーラがあふれている。

何度見ても、本当にきれいな人だな。と夕日は思った。

 

「ハジメ兄さん、そう言えば天尊さんは?」

夕日はその名に聞き覚えがあった。

確か、義母である天唯の弟らしい。

 

「ああ、タケルね。タケルはお仕事が忙しくて来れないって。

残念よね、せっかくみんな集まろうって話なのに、結局天峰君たちしか来てくれなかったわね」

 

「う~ん、仕方ない部分もあるかな?此処って来にくいし……」

困ったような顔をして、天峰は自身も頬を掻く。

 

「所で、二人とも――――――――()()()()()()()?」

 

「!?ゲホ!!ゲッホ!!」

 

「ハジメ兄さん!?なにを突然!?」

夕日と天峰両人が驚き、夕日に至っては飲んでいたお茶を噴き出してしまった。

 

「え~、だって夕日ちゃん普通に天峰君の隣に座ったでしょ?

年頃の中学生は、普通男の子を苦手にする――までも行かなくても普通は同性の天音ちゃんの隣に座るわよね。

けど、夕日ちゃんが座ったのは、天峰君の隣。

それと困ったら天峰君の方を無意識に向くクセが有るわね」

ペラペラと、二人の事情を言い当てていく。

まるで探偵の様な洞察力に夕日が小さく驚く。

 

「……付き合ってない……天峰とは……兄妹……」

夕日が否定して、天峰が少しだけ悲しそうな顔をする。

その様子をみて、ハジメが笑みを強める。

 

「ふーん、そっか。まぁいいや。

これからどう転ぶかはお楽しみかな……

どうなろうと、私は応援するよ」

最後にそう言って、空っぽになった湯呑を持って台所へ行ってしまった。

 

「…………」

まるで嵐が去った後の様に夕日が沈黙してしまう。

 

「……なんで……あんな事……言ったの?」

不思議そうにつぶやく夕日。

それを見た天峰の中に、昔聞いた事件を思い出す。

 

「幻原ってさ、母さんの苗字なんだよね」

 

「?」

突然話し始めた天峰の言葉に、夕日の頭に疑問が浮かぶ。

今まで気にしなかったが、確かにそうだ。

義父は母方の苗字を使っている。

婿入りしたのだろうか?

 

「父さんのもともとの苗字は俺も知らないんだけどね?

結構大きな一族だったらしいんだよ。

此処までは別に普通、そんなに珍しい事じゃないんだ。

けど、結婚しようってプロポーズした母さんが若いからって、父さんの実家が猛反対したらしいんだ。

けど、父さんは母さん以外に興味はもう無かったらしくて、実家に離縁してこっちに来たんだって。

んで、その補助に一番力を入れてくれたのがハジメさんなんだよ。

きっと、そう言う意味でも「応援する」って言ってくれたんじゃないかな?」

 

「……ふーん」

なるべく興味なさそうに、夕日がそっぽを向く。

しかし心中では穏やかではなかった。

 

前に聞いた両親の出会い。その後はかなりの困難があった様だ。

しかし、それをのり超えたから、こそ。

天峰と天音が居るのだろう――幸せな家が有るのだろう。

 

しかし、自分の家族はそうではなかった――こうしてみると本当に対照的だと夕日が思う。

父の顔も名も知らない、手切れ金替わりにもらったアパートも近寄ってはいない。

母は今も意識不明で、叔父の霧崎に面倒を見てもらっている。

 

そんな対照的な人生を歩んだが今、こうして隣同士でいる事が酷く不思議に思えた。

 

「よし、夕日ちゃん。これから少し村をみて回ろうか。

せっかくだし、楽しもうよ」

そう言って、天峰が夕日に手を伸ばす。

この手は、自分を連れて行ってくれる手だ。

知らない場所、新しい友人、感じた事のない感情、そして恋も。

それらを連れて来てくれる手だ。

 

「……行く」

そう言って今日も夕日は天峰の手を取る。

 

 

 

「あら、二人でお出かけね。

天唯ちゃんがいきなり引き取ったって聞いてびっくりしたけど――

良い子みたいね……」

家の窓から、ハジメが二人が手を繋いで仲良く遊びに行く様子を見て小さく笑った。

 

「大学時代の後輩から、話を少し聞いた。

どうやら、辛い事が有ったみたいだ……

話はしないけど――天峰は優しい奴にそだったな」

 

「天唯ちゃんと僕の子供だからね」

その後ろで天唯が話し、蒼空が後ろからか声をかける。

どうか、皆夕日の幸せを願う者達だった。

今確かに、夕日を思う者達が集まっている。

 

「ねぇ、夕日ちゃんって――何時、幻原苗字になると思う?」

 

「あ?前の苗字を捨てるって事か?それとも――」

 

「天峰君の奥さんになるって事」

ハジメが楽しそうに笑った。

 

「さぁな。案外近いかもしれないし、ひょっとしたらそんな日は来ないかもな。

なんにせよ、そこは二人次第だな」

 

「天唯ちゃん、自分の息子なんだから――」

 

「いいんだよ。

お前と私が引き合った様に、きっと夕日にも天峰にも引き合う奴がいる。

そんな奴を連れて来るのを待つだけさ」

異を唱え得る夫を妻が笑って制止した。




皆さん、来年もよろしくお願いしますね。
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