彼が疑いやすい性格だと知っていたはずだった。
武術なんてしたことがないからわからないけど、たぶん殺気ではないと思う。
だけど、子供の私に向けていいレベルのプレッシャーじゃないと思うけどね。
「莉瑚ちゃん、話は以上かい?」
「はい・・・」
胃がキリキリなりそうなところで、何とか返事をすると、高町恭也さんは私をジッと見つめながら考え黙ってしまった。
私が恭也さんと話すのは今日が初めてだ。
昨日、海鳴市に引っ越してきた私は、さっそく今日喫茶翠屋に足を運び、恭也さんと会うことができた。
私の名前は、菊池莉瑚(きくちりこ)、5歳の女の子だ。
所謂、神様転生をえて、この魔法少女リリカルなのはの世界へやってきた。
転生特典として、1つ神様から得点をもらった。
≪誰に説明しているんだろう・・意外と私余裕あるなー≫
恭也さんからのプレッシャーは、ほとんど無くなっているものの、緊張感がまだ漂っている。
店内は、ちょうど忙しい時間が過ぎた時間だったようで、客がちらほらいるようだ。
一番奥の席で私と恭也さん
「君の話してくれた内容は、確かにあっている。家族構成はもちろんだが、御神流のことをそれだけ知っているとなると、話半分以上信用できるよ・・・。それで?」
全てを信じてくれるとは思っていなかったけど、私が思った以上に理解が早い。
二次創作ででてくるいろんな恭也さんの中でもかなり物わかりがいいのかもしれない。
「転生特典として頂いたものの一つに、転生前に遊んでいたゲームのとある技術の生産・製造技術をいただきました。その現段階での成果がこれです」
私がポケットから、大きめのキーホルダーを取り出す。
戦術オーブメント
軌跡シリーズに出てくる、身体強化やオーバルアーツと呼ばれる魔法を使用することができる導力機。
これにクオーツと呼ばれる回路を加えることでさらなる身体強化や強力な魔法を使用することができる。
今手元にあるのは、空の軌跡FCで出てきた最初の戦術オーブメントで、6つのクオーツ穴には、それぞれ【HP1】が2つ、【HP2】、【精神1】、【EP1】がそれぞれ1つずつ填め込まれている。
「これは、戦術オーブメントといって、身体強化や魔法を使えるようにしてくれるアイテムです。ここに青い結晶が複数填め込まれています。これは、水属性のクオーツと言って、体力の上限アップや魔法を使う際に作用される精神力が向上される特性を持っていますが、何より回復魔法を使用することができるのです」
私はオーブメントを恭也さんの目の前に置くと、頂いたオレンジジュースを飲み、一息入れる。
恭也さんは私のオーブメントを手に取ると、ジッと見つめて固まってしまった。
恭也さんに話した内容は、私がとある物語によく似た世界に転生してきたということだ。
「なるほど、これで父さんを治すってことだな・・・。見返りは・・?」
さすが、話が早い。
「先程話した通り、私はとある物語を題材にした世界に来ています。基本的に物語に介入したい気持ちがあるわけではないのですが、俗にいう修正力や私がこの世界に来てしまったことによるイレギュラーが発生するかもしれません。となると、はっきり言って生きていく自信がありません」
なのはシリーズって、非殺傷の割に死亡フラグたくさんあるんだよね。
「私に、御神流を教えてください」
そう言って、私は頭を下げる。
「・・・君は御神流が何だか知っているのか?」
「はい、大切な人を守ることを信念に置いた殺人術であること・・・不破についても理解しているかはわかりませんが、どういったものが知っています」
永全不動八門一派・御神真刀流・小太刀二刀術。通称御神流。
そして不破は、御神流のさらに裏、暗殺に特化したんだっけ?
アニメではその存在は出てこないけど、二次創作内では割と有名な戦闘術だ。
「ふむ・・・。話は変わるがその物語には誰が関わってくるんだ?」
「い、言えません。その、弟子入りを許可していただくまでは・・」
微妙にプレッシャーがまたかかってきているけど、ここは譲れない。
私にとっても死活問題になるかもしれないし。
ふと、次は何を言ってくるかと恭也さんを見上げると、突然棒手裏剣みたいな物を取り出して、自身の左手中指の先を切りつけた。
あまりの突拍子な行動に一瞬頭がついていけなかったが、深くはないが浅い傷でもなかったようで、傷から血がテーブルへと滴り落ちている。
一瞬と時間はかかったがすぐに頭が再起動すると、ポケットからハンカチを取り出す。
右手で恭也さんの傷へハンカチを当てて、左手で戦術オーブメントをつかむ。
「テ、ティア!」
一寸、青白い光が私の体から恭也さんの体へと移り、初級回復魔法ティアが発動する。
ハンカチを取ってみると、血はついているものの、傷は塞がったようだ。
恭也さんは傷跡を見た後、傷を抑えるためにテーブルの上で前のめりになってしまった私の頭を右手で優しく撫でてくれる。
「君を信じて、君を受け入れよう!」
それが、私、菊池莉瑚が恭也さんの弟子になった瞬間でした。