「2年で貫と徹をものにするか」
美由希と莉瑚の手合わせを見ながら、よくぞここまでと感心してしまう。
莉瑚は、全てではないがその鍛えた先にある業を認識し、焦らずおごらず坦々と基礎を繰り返してきた。
基礎訓練メニューは、美由希と同じように俺が作成し父さんに見てもらっている。
いくら美由希という前例があるからといってもしては小学生だ。
このくらいの年だと飽きたり辛かったりしそうだけど、と一度聞いてみたことがある。
「焦ったらいいことなんてないって、知ってますからね」
と俺の膝を指していう。
幼い頃無茶した結果、俺は膝を壊してしまった。
転生者である莉瑚は、当然そのことも知っていて理由も知っている。
今では魔法に力とはいえ、治癒のクオーツを借り受け、完治に向かっている。
そんな莉瑚に嫉妬や焦りを美由希が感じないかと思ったが、いい姉弟子として手本になっている。
完成に至らない俺をすぐに追い抜くと思っていたが、まだまだ俺はやれそうだ、教えることはまだたくさんある。
「それに、才能はないかもしれませんが期待には答えたいですからね。精神年齢は、父様達と同じくらいありますけど、それでも私は、まだ小学生ですからね!」
そんな容姿に合わない大人ぶった態度に度肝抜かれたことを覚えている。
「こちらの恭也兄様がどこまでいけるかわかりませんけど、あっちの恭也さんは膝に爆弾を抱えたまま、奥義ノ極、閃にたどり着きましたよ」
その言葉にすごく興奮した覚えがある。
莉瑚の話だと去年から今あたりまでにはできているのではないかと考察できると言っていたが、焦ることはない。
急がなくても俺自身強くなってきている実感もあるのだから。
そんなことを気づかせてくれた少女をみる。
大学受験のために忍共々、彼女にお世話になってしまった。
時々俺を含めた家族に見た目相応に甘えてくるが、俺も父さんもなのはの手本になってくれていることがわかっているから、とても感謝している。
そんな彼女でも俺の3人目の妹だと難しく考えることではないと思っている。
ふと後ろに気配がしたから振り返ると父さんがいた。
「恭也、今晩ちょっと付き合ってくれないか?透から面白いものを預かってきた」
透とは、莉瑚の父親のことだろう。
莉瑚を呼ばないのは、ジュエルシードに集中させるためなのか、はたまた内緒で進めたいのか?
のんびりしているかと思いきや冗談や不意を突く言動をする彼は、ウマが合うのか父さんとかなり仲がいい。
「お前が今思った通り、莉瑚ちゃんを驚かせたいらしい。因みにこの件に関してはすずかちゃんも関わっている」
ふむ、であればやはりびっくりさせたいのか?
「わかった。あ、そうだ父さん。莉瑚にそろそろ小太刀を送ろうと思っているのだが」
「あー、その辺は任せた。反対はせんよ。性格に技術、ともに所持しても良いと判断するよ。所持、携帯についてはこちらでやっておく」
「ありがとう、父さん」
「なに、問題ないさ」
それから、少し稽古を見た後、忙しいからと翠屋に戻っていった。
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普段はあまり来ることがない山の中の開けた場所までやってきた。
人が来ることもなく、修行にもってこいの場所だが、ちょっと遠いのだ。
「ほれ、恭也!」
俺は、透から借りたものを恭也に渡す。
「これは?」
「力場発生装置だそうだ」
「力場?」
「そうこんなことができる」
恭也から少し離れ、装置を起動する。
地面から1mくらいの高さに力場を作り、そこに飛び乗る。
「これは・・・そういうことか」
恭也がニヤリと笑う。
すぐに使い方がわかったのか、何もない空間を壁上りするかのように上っていき、途中から走り出す。
追いかけていこうと瞬間、上からの気配に横に跳ぶ。
あれは飛針か。
小太刀をすぐに抜き、飛んでくる飛針を薙ぎながら俺も上空へと走り出す。
更に放ってくる鋼糸を切りつける。
く、ここまで上空を取られるとやりづらいとは。
すぐ見上げると6,7m先にいる。
移動してもピッタリくっついてくる。
くっ、もう一つ借り受けたものを起動し、振り上げる。
切っ先からエーテルの刃が飛出し、恭也を襲う。
少し驚いたようだが器用に足場とは別の力場をを発生させて相殺させる。
「今のは?」
同じ目線まで下りてきて尋ねてくる。
「ほれ、もう一つの借り物だ」
持っていた小太刀とは別のものを恭也へ放り投げる。
「なんでもオーバルスタッフっていう魔導師の杖の応用だそうだ。発案はすずかちゃんで、効果はご覧のとおり、剣士の憧れ、飛ぶ刃さ」
そう言って、剣を横に振り上げる。
「へぇ、結構面白いな。しかも、この力場と同じように力の消費が多いほど幅が広くなったり強度になるんだな」
「理解が速いな。依頼は耐久実験を含めた検証実験だ。この戦術オーブメントも借りてきた。莉瑚ちゃんによって、オーバルアーツがなのはの魔法にもほぼ有効であることがわかってきている。力場やこの飛ぶ刃で防いだり切ったり。また、戦闘に耐えられるものかってところが気になるらしい」
「ふむ、使った感じでは十分戦闘に使えそうだ。父さん、アーツを使ったことは?」
「いや、身体強化しか使ったことない。だけど支援を頼んである。もう来てるはずだから最初の場所に戻るぞ」
下のほうに力場を作り、地面へと降りていく。
しかし、力場も飛ぶ刃も便利だが、消費が激しい気がするな。
莉瑚ちゃんの話だと、俺はもともとエーテルが少ないって話だから、底上げしないと使うだけで疲れるな。
表情が変わらず余裕な恭也を横目に、ゲストがいる広場へと向かった。
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「透小父さん、本当にここなの?誰もいないけど」
「士郎からはここだと聞いているけどね。力場の装置を貸し出してるから、上空にいるんじゃないかい?」
空を見上げると、何か近づいてくるのが見える。
「あっ」
「うん、やっぱり2人ともいたね」
最初は暗くてよく見えなかったけど、こちらに近づいてきているのがわかった。
遠いと思ってたけど、2人は一足飛びで近づいてきた。
「こんばんわ。アリサちゃん、透」
昼間になのはが変身したのを見たけど、軽やかに空中を走ってくる2人ほど、びっくりなことじゃないのかもしれない。
空中にいたのが何でもなかったように降りてくる。
「こんばんわ。今日はお誘いありがとうございます」
「こちらこそ遅い時間にありがとう、アリサちゃんが来るとは思ってなかったよ」
「えっと、的ありで修行してみないかと誘われたのですが」
私の言葉を聞いた瞬間、恭也さんが士郎さんに鋭い視線を送る。
んー、やっぱり聞いてなかったのかしら?
「恭也君に士郎がどこまで説明しているかわからないけど、一応説明させてもらうね。先に渡しているオーブメント、僕が作った足場形成ユニット、それからすずかちゃんが作った魔導剣だね。その耐久や使用感の実験を手伝ってもらう予定だよ。アリサちゃんのほうは、練習も兼ねているけど、時空幻属性のアーツはしない方向で。魔法の種類によるけど、空間を切り裂くことはさすがに難しいと思うからね」
「確かに、今日昼間に見せてもらったアーツは、空間圧縮系の魔法だったか?知覚は何とかできそうだったが、避けるのはかなり難しい気がする」
ダークマターのことね。
あの時は、とっさに使っちゃったけど、結構自身がついたのよね。
「非殺傷となっているけど、最初は範囲攻撃はしないでね。あ、そうそう、防御系のアーツについても検証したい。そっちは士郎のほうにお願いしようかな。渡した戦術オーブメントは補助系に調整してあるから、アリサちゃんの魔法を受けてほしい。無理だと判断したら避けてね。そこは判断できると信じているよ」
透小父さんは、そんなこと言ってるけどできるのかしら?
なのはたちの魔法にはあまりないらしいけど、アーツには手や杖から発生するのではなく、狙った先に発動するアーツもあるけど・・・。
「透、使用にあたっての注意事項はあるか?」
「ある。足場形成ユニットなんだけど、可能な限り消費を抑えるため、最大2m×2mほどの板状の力場及びその強度を形成するものであり、体を覆うようなシールドは無理なんだ。だから、盾との使用は避けるべきだろう。どちらかというと、戦闘での踏込に耐えられるものなのか、あとこのメンバーでは確認できないかもしれないけど、どのくらいの重さに耐えられるものかを知りたい」
「透さん、この力場なんだけど、質感の変更はできるんですか?」
「ん?どういうことだい?」
「今、このユニットを使って高さ数cmで立っているんだけど、通常戦闘でも自身のエネルギーが持てば荒れた場所でも気にせずに走ることができる。それが滑りやすい場所なのか、雪の上なのか、もしくはごつごつしている場所なのか、場合によっては修行にも使えそうだ」
「ほほぅ、面白いことを考えるね。確かに質感は考えていなかった。できるか考えてみるけど、後半の滑りやすい場所や雪の上とかは、別に作ったほうがいいかもね。幻属性を応用すれば、地面だけでなく、森の中や街の中、建物なんかも作れて仮想の修行場ができるかもしれない・・・。これは帰ってからすずかちゃんと相談してみるかな。大がかりなものになるかもしれないけど、手掛かりがまったくないわけじゃない」
ブツブツとメモしながら、突然電話をし始めた。
さっそくすずかに電話してるのかしら?
「それじゃあアリサちゃん、お願いできるかい?恭也、ちょっと離れてくれ」
透小父さんを横目に、士郎小父さんが私と恭也さんに指示する。
「えと、初級の魔法からやっていけばいいのかしら?」
「うん、お願いするね。わかってるかもしれないけど、恭也や素早い。本気で当てに行っていいよ」
私は頷くとオーブメントの一度確認する。
私が得意とする火属性のアーツで固めてあるけど、火属性には単体魔法も多いのでちょうどいいのかもしれない。
「では、さっそく、ファイアボルト!」
手のひらを突出し、火球を打ち出す。
でも恭也さんは魔導剣で難なく切り裂いちゃった。
「どうだ恭也?」
「今くらいだったらまったく問題ないようだ。だけど、普通の剣では、今の熱量くらいまでならいいが、これ以上となるとわからない」
初級のアーツとはいえ、問題としない恭也さんにむきになっていたのは、自分でもわかっていたけど止められなかった。
「ナパームブレス!」
「むっ!」
恭也さんは、足元から噴き出そうとする火炎を一瞬で感知し、横に避けながら力場でふたをする。
力場はあくまでも板状だから、上に突き抜けない火が横へと拡散される。
熱量はわからないけど、防げそうね・・・
「むきー、なんで当たらないのよ!」
「いやいや、アリサちゃん。今のは恭也だから避けられたけど、普通の人は無理だからね。どうしても当てたいならやっぱり範囲攻撃かな。もしくは、目線や仕草に気を付けるといいよ。たとえば、さっきの火球は手の先から出したよね。でもさっきのは、恭也の足元からでた。同じように手を突き出すことで手のひらから出ると勘違いさせるかもしれないし、足元ではなく空を見れば何か落ちてくるとも勘違いさせられるかもしれない」
「えと、フェイントや虚偽を混ぜるってこと?」
うんうん、と士郎小父さんは頷く。
確かに魔法世界の人たちがどれくらい恭也さんみたいな動きができるのかわからないけど、必要なことよね?
魔法なんて打ち出すだけなんても思ってたけど・・・。
せっかくなのでと、士郎小父さんと恭也さんに砲台としての私と近接戦闘が得意とする人と相対した時の立ち回りを一緒に考えてもらった。
待ってなさいよね、なのは!
このまま黙っているつもりなら、こっちで話してもらうんだから!