艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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マーカスの悩みを解決するのは横須賀ではなく…


295話 サンフランシスコからの贈り物(2)

横須賀に着き、アークロイヤルbisから物資が降ろされて行く

 

「僕はカプセルが降りるまで近くにいるよ」

 

「頼んだ。横須賀に報告して来る‼︎」

 

きそが積み降ろしの近くに待機し、俺は執務室に来た

 

「お疲れ様。どうだった⁇」

 

「カプセルのチェックは済んだ。これが報告書だ」

 

「ありがとっ」

 

横須賀は早速報告書の確認に入る

 

「何か望みはある⁇」

 

「ヲ級の親子が初仕事してくれた。美味い物でも食べさせてやってくれ」

 

「それはするわよ。アンタは無いの⁇」

 

「お前の淹れたコーヒーが飲みたい」

 

「仕方ないわね…」

 

横須賀はすぐに椅子から立ち上がり、キッチンに向かった

 

「親潮は調べ物か⁇」

 

いつもの横須賀の隣の席に座り、PCを操作している親潮

 

今はアークロイヤルbisの荷降ろしのチェックをしながら、何か調べている

 

「ジェミニ様に少しお話をお聞きしました。創造主様の帰る場所を少し見学しています」

 

親潮の後ろに回り、PCを見る

 

PCには実際にその場に立っている様な地図が表示されている

 

「よしっ、これで可能なはず…創造主様、此方を装着して下さい‼︎」

 

「どれどれ…」

 

「目を閉じていて下さいね」

 

「分かった」

 

親潮に渡されたきそヘルメットを着ける

 

「クラーケン、起動」

 

クラーケンが起動され、親潮がキーボードを叩く音が数回聞こえる

 

「よしっ…これでっ‼︎創造主様、目を開けて下さい‼︎」

 

親潮に言われ、目を開ける…

 

「…」

 

「如何でしょう⁇」

 

「…」

 

「何も見えませんか⁇」

 

「…」

 

親潮のPCには、今のヘルメットの中の状態が中継されている

 

何も無いならば動かないはずだが、PCの画面の中では視点が右往左往している

 

「創造主様⁇」

 

「感無量なのよっ」

 

お盆にコーヒーを置いて持って来た横須賀が戻って来た

 

執務室の中心に投射されたクラーケンの中心に、辺りを挙動不審に見回す俺がいるのを見て、横須賀はすぐに勘付いた

 

「何か探してるわ」

 

「創造主様。左腕だけ接触の際の感触があります。何かに触れて確認して見て下さい」

 

「…」

 

親潮のPC、そしてクラーケンの中で俺は街の中心に立つ

 

「どうしたのかしら…」

 

「止まってしまわれました…」

 

懐かしい光景が目の前にある

 

親潮は左腕だけなら何かに触れられると言っていたが、もう既に感じている

 

懐かしい風、懐かしい空気が左腕に当たっているからだ

 

「動いたわ」

 

「ツーテン・カークを見ています」

 

街のシンボル、ツーテン・カークもある

 

帰りたい…この街に…

 

いや、まだ帰れない

 

今はまだ、時折行くだけでいい

 

今は、それでいい…

 

あるはずもない、感じる事も出来ないが、俺はヘルメットを取る前に深く息を吸った…

 

何と無くだが、懐かしい空気が肺一杯に入った気がした…

 

「ありがとう、親潮」

 

ヘルメットを取り、親潮に返す

 

「少し気は紛れましたか⁇」

 

「随分楽になったよ」

 

「ふふっ‼︎優しい顔んなったわ‼︎ほら、コーヒー淹れたわ‼︎」

 

横須賀からコーヒーを貰い、それを口にして現実に戻る…

 

苦い…

 

めちゃくちゃ苦い…

 

「あ、砂糖とミルク入ってないわよ。自分で入れて」

 

「にゃろう…」

 

砂糖とミルクを入れ、飲みやすくなったコーヒーを飲みながら、書類の再確認に入る

 

「この後最終チェックに入って明日の朝カプセルから出す、でどう⁇」

 

「そうだな。最後に一日安定させてからの方が良いな」

 

「なら話は終わり‼︎お疲れ様‼︎」

 

《レイ‼︎カプセルが降りるよ‼︎》

 

「よし、行こう‼︎」

 

「親潮も来なさい‼︎」

 

「親潮はここで連絡の受けを致します」

 

「助かるわ‼︎明日、一緒に行きましょうね⁇」

 

「はいっ‼︎」

 

「ありがとうな、親潮」

 

「親潮も少し試してみました。親潮も良い街と思います」

 

親潮を見て無言で小さく数回頷いた後、カプセルが降りる現場に向かう…

 

 

 

「工廠に搬入してくれ」

 

「了解です‼︎」

 

銀色の髪の少女が入ったカプセルが工廠に入って行く…

 

搬入はあっと言う間に終わり、俺と横須賀、そしてきそがカプセルを眺める

 

「パースィー投げられないといいね⁇」

 

「齧られないといいな⁇」

 

「大丈夫よ。きっと良い子だわ⁇」

 

俺ときそはそのまま残り、横須賀は執務室に戻って行った

 

 

 

貴子さんに晩御飯は要らない連絡を入れた後、俺はその日の晩、きそと共に工廠にこもった

 

「大丈夫そうだね」

 

「明日の1000にカプセルから出る様に設定した。少し休もう」

 

「ふぁ…僕はここで寝るね…おやすみ〜」

 

きそがPC前の椅子で仮眠を取り始め、俺は大淀博士の椅子に座り、カプセルを見ながらタバコに火を点ける

 

「不安かい⁇」

 

「頼むから気配を消すな」

 

「男女の関係にサプライズは付き物だよ、レイ君」

 

音も無く現れ、俺の首に手を回す大淀博士

 

感覚が冴えていても、ほぼ0距離まで分からないから怖い…

 

「彼女の書類を見させて貰ったよ。素体は戦艦らしいね」

 

「らしいな。それと、知識が恐らく0の状態だ」

 

「いつも通りでいいよ、レイ君。肩を楽にして…ねっ⁇」

 

大淀博士は俺の肩を軽く揉む

 

「誰にも言わないから、レイ君の気持ち、吐いてご覧…」

 

「…また、俺から離れて行くんじゃないのか⁇」

 

大淀博士の前では素直になれた

 

こんな事、誰にも言わないはずなのに、大淀博士の前では簡単に自分を出せた

 

「レイ君は立派なお父さんだ。産まれて来る喜びも、手から離れて行く哀しみも全部知ってる。だからこそ、皆レイ君を慕うんだ。大淀さんもそうだよ⁇」

 

「この子に俺は必要なのか⁇」

 

大淀博士はすぐに答えを返した

 

「必要だよ。レイ君は全て理解してくれる。この子の一番の理解者に、もうなってるじゃないか」

 

「そんなつもりは…」

 

「この子の事でこんなにも心を痛めてるんだ。そんな人が、理解してない訳ないよ⁇」

 

その言葉を聞き、タバコの火を消して、首に回された腕に少しだけ体を傾けた

 

「すまない…」

 

「いいよっ…君が誰かに気を委ねるのも必要さっ…」

 

横須賀や貴子さんとはまた違う別格の包容力を、大淀博士は持っていた

 

「ひとみちゃんといよちゃんに聞いたよ⁇レイ君はアトランタちゃんに一度も怒った事がないって」

 

「散々隊長やら貴子さんが叱ってくれてるからな。俺は別に怒らなくていい」

 

「優しいねぇ、レイ君は…」

 

大淀博士は俺が眠るまでこうしてくれていた…

 

「おやすみ、レイ君。また明日っ…」

 

 

 

 

次の日の朝…

 

「レイ〜っ‼︎起きて〜っ‼︎」

 

「んあ…」

 

「朝ごはん行こう‼︎」

 

きそに起こされ、目が覚める

 

「どこ行きたい⁇ふぁ…」

 

「瑞雲で雑炊食べようよ‼︎」

 

「そうだなっ…ん〜っ‼︎」

 

背伸びをし、ようやく完璧に目が覚める

 

昨日は良く眠れた…

 

夢も何も見なかったが、とにかく目覚めが良い

 

きそと一緒に、瑞雲に向かう…

 

 

 

「美味しい‼︎」

 

「半分だけおかわり‼︎」

 

かなり良い睡眠が取れたのか、食欲もかなりある

 

「さっき連絡があったよ⁇アトランタが大人しいんだって‼︎」

 

「大人しいのも怖いな…」

 

アトランタが大人しいのは逆に怖い

 

普段貴子さんに散々釘を刺されても言う事をほぼ聞かないアトランタ

 

俺ときそが居ないと大人しいのだろうか…

 

「食べた食べた‼︎ごちそうさま‼︎」

 

「腹いっぱいだ‼︎ごちそうさま‼︎」

 

「また来てくれ。今度は鍋でも突きにな」

 

日向にお礼を言い、工廠に戻る

 

工廠では既に横須賀と親潮が待っていた

 

「来ました‼︎」

 

「始めましょうか‼︎」

 

「よしっ…行くぞ」

 

一度深呼吸をした後、カプセルを操作する…

 

溶液が抜かれて行き、それと同時に少女も目を覚ます

 

「…」

 

目を開け、口をへの字にして少女は俺達を見回す

 

「おはよう“ワシントン”」

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