艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、302話が終わりました

今回のお話と、次のお話は1話だけです

晩ごはんの為にキッチンに立つ横須賀

親潮の手引きとワシントンのお手伝いを貰いながら料理をするが…


303話 まみーとおやちおのおりょうり

ある日の横須賀…

 

「おりょうり⁇」

 

「そうよ〜⁇パピーを喜ばせるのよ⁇」

 

横須賀がキッチンに立っている

 

カウンターの向こうには、物珍しさに着いて来たワシントンが座っている

 

「ジェミニ様、今日は此方にしましょう‼︎」

 

親潮がレシピが書かれた書類を持って来た

 

「ワシントンさんもしてみますか⁇」

 

「ぱぴ〜、うれすぃ⁇」

 

「嬉しいわよ‼︎」

 

「ん」

 

ワシントンはカウンターの前に座りながら、親潮が切った具材を使って行く事になった

 

「まずは野菜を切りましょう」

 

「よいしょ…よいしょ…」

 

「にんじんさ、とん、とん、と」

 

ワシントンに見て貰いながら、横須賀と親潮は野菜を切り進める

 

「次は鶏肉です。一口大に行きましょうか」

 

「切りにくいわね…」

 

「とりにくさ、とん、とん、と」

 

親潮側のまな板で軽快に切られて行く食材を見て、ワシントンは軽く首を振りながら眺めている

 

「いいですかジェミニ様。ここからは落ち着いて、です」

 

「えぇ」

 

「ワシントンさんは、親潮の分を一緒にしましょうね⁇」

 

「ん」

 

親潮曰く、問題のパートに入る

 

「では、牛乳を1カップ入れます」

 

「1カップね‼︎」

 

「かっぷ」

 

「このカップの、ここまでミルクを入れて下さい」

 

「ん〜」

 

やる時はちゃんと黙るワシントン

 

ちゃんと親潮に言われた分量のミルクをカップに注ぐ

 

「いれた」

 

「ありがとうございます。ジェミニ様‼︎それはカップの分類に入りますがジョッキです‼︎」

 

横須賀が注いでいたのは計量カップではなく、ビールジョッキ

 

しかもそれを今まさにボウルに入れようとしている

 

「多いですってぇ‼︎だぁーっ‼︎」

 

「だぁ〜」

 

「レイは沢山食べるわ‼︎」

 

時既に遅し。ボウルに大量のミルクが注がれた

 

「ここまではセーフにしましょう。では、鍋に移し替えて加熱して行きます」

 

「料理は火力よ‼︎」

 

「まずは中火で‼︎だぁーっ‼︎」

 

「だぁー」

 

開幕早々、中華料理屋並の火柱が横須賀側の鍋から上がる

 

「おー。ぼーぼーぼわー」

 

「よいしょ…中火でゆっくり、です」

 

「分かったわ‼︎」

 

親潮は横須賀のコンロを中火に戻し、棚から塩を取り出す

 

「お塩をひとつまみ入れましょう。熱いので気を付けて下さいね⁇」

 

「ぱらぱらおしお」

 

ワシントンはちゃんとひとつまみ入れる

 

「ジェミニ様‼︎それはひとつかみ‼︎だぁーっ‼︎」

 

「だぁー」

 

横須賀は塩を鷲掴みにし、鍋に放り込んだ

 

「レイは味が濃い目が好きなの‼︎」

 

「…」

 

親潮は一瞬哀れな物を見るかの様な物凄いジト目で横須賀を見たが、すぐに視線を鍋に戻す

 

「最後にとろみを付ける為に片栗粉を入れましょう‼︎」

 

「かたくりこっこ」

 

「ここにあるわ‼︎」

 

「ではグラムを計りましょう‼︎」

 

「開けるわね‼︎」

 

親潮は思った

 

あぁ、ジェミニ様にどうして粉系を任せたのだろう…

 

親潮よ…普段のジェミニ様の行動パターンを予測するのです…

 

執務室でポテチの袋を開ける時、34%の確率で破裂させます…

 

ジェミニ様の今の開け方で中身が破裂する確率は…

 

「そ〜れ〜‼︎」

 

「ジェ〜ミ〜ニ〜さ〜ま〜‼︎」

 

「か〜た〜く〜り〜こっ〜こ〜」

 

親潮の時間が緩やかに流れる

 

袋の中がぶち撒けられるのもスローモーション

 

そして、勢い良く飛び出た片栗粉が落下する先には横須賀の鍋が

 

「だぁ〜〜〜っ‼︎」

 

「だぁ〜〜〜」

 

コンロに触発され、引火する片栗粉

 

軽く粉塵爆発が起こる

 

「ぶへっ‼︎」

 

「ぼわっ‼︎」

 

「ぼがー」

 

怪我人が出なかったのが幸いだが、三人は粉まみれ

 

「ジェミニ様…次からは粉系列は親潮が…」

 

「そうね…任せるわ…体洗いま…ワシントン‼︎ごめんね‼︎粉まみれじゃない‼︎」

 

「こなこなかたくり」

 

一番酷い有様になっていたのはワシントン

 

横須賀と親潮は顔とエプロンに被害を受けた位だが、ワシントンは全身真っ白になっていた

 

「どうした‼︎大丈夫か‼︎」

 

「レイ‼︎」

 

爆発音を聞き付けたレイが来てくれた

 

「片栗粉が引火しまして…」

 

「怪我は無いか⁉︎」

 

「親潮は大丈夫です。ジェミニ様は⁇」

 

「大丈夫よ‼︎粉落としたいの。レイ、先にワシントンお願い出来る⁇」

 

「分かった‼︎ワシントン、パピーとお風呂行こうな⁇」

 

「おふろしゃわー」

 

「そうだっ。こなこな落とそうな⁇」

 

レイと手を繋ぎ、ワシントンは先にお風呂に向かった

 

 

 

「ぱぴー。まみーおりょうりしてた」

 

「頑張ってたか⁇」

 

「うん」

 

ワシントンの頭を洗いながら、先程の話を聞く

 

「まみー、ぱぴーうれすぃて」

 

「そうだなっ。パピーは、マミーの作るお料理が好きだ‼︎」

 

「おやちお、だぁ〜いってた」

 

「親潮がか⁇」

 

「お〜いですて、だぁ〜」

 

「ははは‼︎また分量間違えたんだな‼︎よしっ、後はあそこに浸かろうな⁇」

 

「あひるさ」

 

アヒルのオモチャが浮かんでいる湯船に浸かるワシントン

 

「ぱぴーはいる⁇」

 

「パピーはまた後でだな⁇」

 

「あひるさ、ぶくぶく」

 

「あら、これは大尉」

 

香取先生が大浴場に来た

 

マズイ…出なければ…

 

「お気になさらず。香取で良ければ是非…」

 

「…あの人は香取先生だな⁇」

 

「かとりせんせー」

 

「ふふっ、話は伺っています。ごゆっくりと、ワシントンさん‼︎」

 

香取先生は少し離れた場所で体を洗い始めた

 

「お子様ですか〜大尉⁇」

 

「足柄か‼︎」

 

今度は足柄が来た

 

「新入りなのです‼︎」

 

「マーカスさん、横須賀さんと…」

 

足柄が連れて来たかのように、雷電姉妹も来た

 

「まぁ、そんな所さっ‼︎もうそんな時間か…」

 

大浴場は引っ切り無しに艦娘達が来る

 

考えてみれば、もう夕方

 

皆風呂に入って、ご飯を食べて、後は寝る準備をするだけだ

 

「大尉、のぼせないでね⁇」

 

「のぼせたらキャーキャー言うのです‼︎」

 

「よく考えてみれば堂々と覗きだわ‼︎」

 

「今更気付いたのか…」

 

雷電姉妹はケラケラ笑う

 

三人は俺の後ろで体を洗い始める

 

「そうだ大尉、この間のお会計の時に釣り銭を渡しそびれちゃったの。後で持って行くわ⁇」

 

「今度ワシントンが駄菓子を買いに行った時に割り引いてやってくれ。それに、湯冷めすると風邪引くぞ⁇」

 

「ふふっ…堂々と覗きをして、私の体の心配⁇」

 

「降参だっ」

 

「冗談よ冗談‼︎」

 

俺と足柄は笑う

 

ここまで何の抵抗も無しに女湯に入れる俺もどうかと思うが…

 

普段真面目にしているからと思っておこう‼︎

 

「よしっ、あがろうな‼︎」

 

「からだふっき⁇」

 

「そっ‼︎体ふっきして、ご飯食べような⁇お邪魔したな‼︎」

 

「いつでも乱入するのです‼︎」

 

「変な事したらその時は返り討ちにするわ‼︎」

 

大浴場を出て、ワシントンの体を拭く

 

「ぱぱぱぱぱぴぴぴぴ」

 

「どうした⁇」

 

頭を拭いていたので、ワシントンの声が震える

 

「あたい、は〜すごい」

 

「ははは‼︎朝霜は歯ギザギザだな‼︎」

 

「がじがじ」

 

ワシントンは朝霜の歯が好きなのか、歯を噛み合わせて、朝霜の歯が如何に凄いかを俺に伝えてくれる

 

「さっ‼︎ご飯食べような‼︎」

 

体を拭き終わると、ワシントンは手を繋いで来た

 

「どりあちがった」

 

「何だろうなぁ⁇」

 

爆発があったので内心怖いが、親潮側がどうやら基礎に従った料理らしい

 

いざ、キッチンに戻る…

 

 

 

「いただきますっ」

 

「いただきます」

 

横須賀に来ても、座る場所はやっぱり子供の横

 

右にワシントン、左に清霜がいる

 

「これはシチューだ」

 

「しちゅー」

 

どうやら横須賀が作っていたのはシチュー

 

見た目は美味そうだが、果たして…

 

「おいすぃ」

 

「…」

 

「美味しい‼︎」

 

ワシントンも清霜も美味しそうにシチューを食べる

 

二人はあっという間にシチューを平らげ、執務室に戻った

 

「どうでしょうか⁇」

 

「美味いな…優しい味だ」

 

「ありがとうございます‼︎」

 

この反応を見る限り、今食べているのは親潮のシチュー

 

「親潮、横須賀のシチューも入れてくれないか」

 

「畏まりました」

 

キッチンには俺と親潮の二人

 

「どうぞっ」

 

親潮がよそってくれたシチューを見る

 

具材は無骨な切り方

 

シチューも片栗粉を入れ過ぎたのか、所々塊になっている

 

…あいつらしいな

 

「…」

 

一口運んで、ゆっくり飲み込む

 

「親潮」

 

「はい」

 

「横須賀はどうだった⁇」

 

「随分と楽しそうでした。創造主様に食べて貰うのだと」

 

「そっかっ…」

 

きっと、あいつなりに真面目に作ったのだろう

 

あいつなりに、喜んで貰おうとしてくれたのだろう

 

このシチューを見ればすぐに分かった

 

「どんだけあるんだ⁇」

 

「えと…その…塩が大量に入ってしまったので、それを薄める為に…」

 

親潮の目線の先には、鍋にミチミチに入ったシチュー

 

「親潮のシチューはもうないのか⁇」

 

「親潮のは皆さんが食べて頂いたのでもう…」

 

「そっかっ。親潮はもう寝るのか⁇」

 

「いえ、執務室で少し作業をしてから…」

 

「俺はもう少し食べてるよ。行っておいで」

 

「ありがとうございます」

 

親潮がエプロンを外し、執務室へと向かう

 

俺は一人、キッチンにあるテレビを見ながら深夜までそこにいた…

 

 

 

 

「おはよう、レイ」

 

「おはよう…ふぁ…」

 

執務室で親潮とソファで寝ていたが、横須賀が来て目が覚めた

 

「昨日のシチューはどうだった⁇」

 

「美味かった。まぁ、もう少し煮込むんだな⁇」

 

「あら、親潮に失礼よ⁇」

 

「…」

 

「親潮⁇どうした⁇」

 

「創造主様には勝てません…」

 

「どうしたの⁇」

 

「こ、これが愛…」

 

「あっ‼︎思い出した‼︎朝からうどん食うんだった‼︎じゃあな‼︎」

 

親潮に勘付かれたので、急いで執務室を出た

 

「ジェミニ様、創造主様の腹内で消化音が聞こえました」

 

「よっぽど親潮のシチューが美味しかったのよ‼︎」

 

「分量が違いました…」

 

親潮は絶句している

 

「何か夜につまんだのよ‼︎ちょっとキッチンで飲み物飲んでくるわ‼︎親潮は何がいい⁇」

 

「では牛乳を‼︎」

 

横須賀がキッチンに向かう

 

「さてとっ…あら⁇」

 

横須賀は気付いた

 

昨日自分が作ったシチューを入れた鍋が綺麗に洗われていた

 

中身は捨てられた形跡が無い

 

つまり、誰かが食べてくれたしか考えられない

 

鍋の中には紙が一枚

 

「レイ…ありがとっ…」

 

その紙に書かれた文字を見て、横須賀は微笑む

 

 

 

“次はもう少し塩辛くないのを頼む。ありがとう”

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