艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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309話 憧れの恋、ため息一つ(2)

「ヴィンセント。私、ちょっと行って見たい場所があるのですが…」

 

「行きましょう」

 

今日だけはヴィンセントはカトリの男

 

ヴィンセントの腕に、カトリは自身の腕を絡める…

 

「ここです」

 

カトリが来たのは牧場

 

その一角のアヒルさんエリア

 

「かとりせんせー」

 

「かとりせんせいだ‼︎」

 

「こんにちは。アヒルさんの面倒見てくれているのですね⁇」

 

柵の向こうには、ワシントンとたいほうがいた

 

「が〜が〜さ」

 

「がーがーさんもあさごはんなんだよ‼︎」

 

アヒル達は朝ごはんの真っ最中

 

まだ小さめのアヒル達がワシントンとたいほうの手からキャベツを食べている

 

「可愛い‼︎見て下さい‼︎」

 

ヴィンセントは微笑みを返し、可愛いと言ったのは何方か探っていた

 

「おっとと…」

 

ここのアヒルはよく脱走する

 

その度にパイロット達や艦娘に捕まえられるが、今日はヴィンセントの足元に一羽来た

 

「よいしょっ…カトリ、行きましょう‼︎」

 

「はいっ‼︎」

 

脱走アヒルを持ち上げたヴィンセントは、カトリと一緒に柵の向こうに入る

 

「きゃべつさ」

 

小さめのアヒルがワシントンの手からキャベツを食べているのを見て、カトリはちょっとしたくなる

 

「ワシントンさん、私にも出来ますか⁇」

 

「んっ」

 

「ありがとうございます」

 

ワシントンから数枚のキャベツを受け取り、カトリはそれを与えてみる

 

すると、小さめのアヒル達はすぐに寄って来て、カトリの手からガツガツキャベツを食べる

 

「ちょっと触っても大丈夫ですかね…」

 

「こう」

 

ワシントンはキャベツに夢中なアヒルの背中を指二本で優しく撫でる

 

「かわい〜あひるさ」

 

相変わらず感情の起伏が分かりにくいワシントンだが、口角が少し上がっているのをカトリは見逃さなかった

 

「ふふっ…フワフワですね⁇」

 

「ふわっふわあひるさ」

 

カトリもワシントンを真似てアヒルを撫でる…

 

「よしよしっ‼︎よく食べる子は育ちます‼︎」

 

「すごいね‼︎がーがーさんすごいかず‼︎」

 

「あら…」

 

「ぼわ〜」

 

空母の艦長である為に鳥に好かれやすいのか、ヴィンセントの周りにはこれでもかとデカいアヒルが集まる

 

「あひるさ、うんどう」

 

「食べたら運動ですね⁇」

 

「わしんとんもうんどう」

 

ワシントンは後ろに小さめのアヒル達を着け、柵の中をグルグル歩く

 

その横をカトリも歩く

 

「かとりせんせー」

 

「どうしました⁇」

 

「が〜が〜さ、おねむ」

 

「まあっ…ふふっ‼︎」

 

ワシントンが見ている先には、何羽かうつらうつらしながら着いて来ていた

 

その姿は堪らなく可愛い…

 

「食べて寝たら牛になりますよ‼︎もう少しです‼︎」

 

すると、うつらうつらしていたアヒル達は目を覚まし、カトリとワシントンに再び着いて来た

 

「かとりせんせー、つよつよ」

 

「ふふっ、可愛い子はいつの時代も手が掛かるのですよ⁇あらっ‼︎」

 

ワシントンはようやく笑う

 

さっきの様にちょびっと口角を上げただけでなく、誰が見ても笑っていると取れる

 

アヒル達は小屋に帰り、少しおやすみ

 

「ためぃご」

 

「んふっ…」

 

ワシントンが手に取ったのは、アヒルのタマゴ

 

発音は絶対違うのだが、ワシントンはちゃんとカゴを使ってタマゴを集めている

 

「ワシントンさん、このためぃごはどうするのですか⁇」

 

「ほっかほかごは」

 

「なるほど…」

 

「ちいさいが〜が〜さ」

 

「なるほど…分けているのですね⁇」

 

「うん」

 

ワシントンは孵化する為の台に数個のタマゴを乗せ、残りはカゴに乗せて峯雲に渡す

 

「おねがします」

 

「はいっ、ありがとうございますっ‼︎」

 

「あらっ…ふふっ‼︎」

 

ワシントンはタマゴを渡した後、ごく自然にカトリの手を握る

 

いつも誰かにそうして貰っているのだろう…

 

それがカトリからすれば、可愛くて堪らない

 

「手を洗って戻りましょうね⁇」

 

「てておてて」

 

水道に向かうまで、カトリはふと考える

 

もう随分“家族”と言う関わりから離れた気がする…

 

妹は新しい家族を持った

 

私は新しい家族を持つ事を、この仕事に就く時に捨てた

 

でも、ほんの少し…

 

ほんの少しだけ、今、家族を持ちたくなった…

 

…そう言えば、少し前に大尉に関するレポートを目にした

 

大淀博士が書いたレポートだ

 

大尉の周りにいる人、艦娘は母性に目覚めるのが早くなる

 

…私もその範疇に居たって事なのかしら⁇

 

「せっけ」

 

考えていると、ワシントンは石鹸で手を洗い始めている

 

参った…この私がこんな小さな子にこんな感情を抱くなんて…

 

カトリも手を洗いながら、ワシントンの顔を見る

 

相変わらずへの字口だけど、心なしか、やっぱり笑っている

 

「かとりせんせー」

 

「どうしました⁇」

 

「たいほーちゃ」

 

「たいほうさん⁇」

 

ワシントンの目線の先には、ヴィンセントと手を繋いで来たたいほうがいる

 

「ゔぃんせんとさん‼︎ありがとうございます‼︎」

 

「此方こそ、やはり触れ合いは大切ですね⁇」

 

「かとりせんせー、ありがと」

 

「…いえっ、私も楽しかったです‼︎」

 

たいほうとワシントンは次の遊びでもするのか、牧場を離れた

 

「私達も行きましょう」

 

「そうですね。とても楽しめました‼︎」

 

 

 

 

横須賀基地は色々な施設がある

 

休日になれば丸一日暇を潰せるレベルで娯楽施設もある

 

だが、行き着く先は大体おなじ、遊戯場

 

「ビリヤードでも如何です⁇」

 

「あら、私強いですよ⁇」

 

ヴィンセントはカトリの目が変わるのを見て微笑む

 

「分かりました。もし負けたら、後で何か差し上げましょう」

 

「私もそれで」

 

いざビリヤードが始まる…

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