執務室を出ると、ニコニコした鹿島がコーヒーを持って来てくれていた
「あ…レイ。もうお出掛けですか⁇」
俺の顔を見るなり、シュンとしてしまう
今廊下にいるという事は、もう基地から出るからだ
「急ぎの要件が出来た………ちょっと、時間が掛かりそうだ。ありがとうな」
鹿島の手から少しぬるめのコーヒーを取り、一気に飲み干す
相変わらず、飲んだ後に甘いナッツの味がする
鹿島のコーヒーだけはブラックで飲めるんだよな…
「行ってらっしゃい‼︎」
後ろ姿で右手を上げ、タナトスに向かう…
「目標地点を設定します。到着まで、1時間28分」
「潜行状態のまま当該地点まで航海を頼む」
「了解しました。んで⁇加賀が駆け落ちでちか⁇」
タナトスが目標地点を設定した後、すぐにいつものゴーヤに戻る
「どうだか…もし駆け落ちならそれでいいんだがな…」
「ま〜ぁ⁇創造主の悪い予感は大体当たるでち。加賀も隅に置け通信が入りました。モニターに出します」
「ふ…ありがとう」
ゴーヤが何か言おうとした途端、通信が入りタナトスに戻る
《レイ、親潮からデータを貰った》
通信先は隊長
何か焦っている顔をしている
「隊長、どうしたんだ⁇」
俺にとってはいつも通りの確認に行くだけ
ただ、何となく航空機で行くのはマズイと直感が言っている
その予感は、ゴーヤの言う通り当たる…
《そこは少し前に武蔵が破壊した敵基地なんだ》
「ここがか…」
今から行く基地は、貴子さんが武蔵だった頃に破壊した敵基地
データや書類でしか見た事はないが、そこそこの規模のハズ
《今からそっちに当時のデータを送る。何かの役に立てばいいが…》
「助かるよ。後、大雑把でいい、どんな兵装があった⁇」
《無数のトーチカ、固定銃座、高射砲、護りに徹するには申し分ない設備だ。それとな、あの基地には艦娘や深海を狂わせる音波装置の様な物があった》
「音波装置…」
《あの時破壊したのが最初で最後ならいいんだが…レイ、今一つ言えるのは、グリフォンで行かなかった事は正解だ》
「俺の直感は当たるからな‼︎よし、ちょっくら様子を見て、晩飯までには帰るよ‼︎」
《何かあったらすぐに言うんだぞ。エドガー引っ張り出して助けに行く》
「了解っ‼︎」
隊長との通信が終わり、メインモニターの前に座りなおす
「隊長からデータを受け取ったでち」
ゴーヤがモニターに受け取ったデータを表示する
そのデータには、当時何処に何があったのかが事細かに書かれていた
そして、気になる事が一つ…
「離島棲姫、か…」
兵装の羅列の中に離島棲姫との名前が一つ
今は確信が何も持てないが、俺の中でそれに近い物が持てた…
「目標地点まで、後20分。退艦の準備を始めて下さい」
「よし…」
タナトスのアナウンスが入り、装備品を見る為に兵装庫に向かおうとした
「通信を受信しました。繋げても宜しいですか」
「こっちの位置は把握されてるか…よし、繋げてくれ」
《所属不明潜水艦に警告する。貴艦は当基地の領海に進入しようとしている。直ちに反転せよ》
「此方横須賀分遣隊。現在、行方不明になった味方の捜索の最中だ。連絡をくれたお礼に、そちらの基地に挨拶に行きたい。構わないか」
通信はしばらく返って来ず、背後で何か小声が聞こえる
しばらくして、返答が返って来た
《了解した。港を開けておく》
「ありがとう」
通信が終わり、兵装庫に向かう…
「よし…」
《手荒な真似しなくて良かったでちな》
兵装庫で準備をしていると、ゴーヤが部屋のマイクを使って話し掛けて来た
「暴れたかったか⁇」
《そりゃあ暴れれるなら暴れたいでち。スカッとするでちよ、悪人爆破は‼︎》
「まだ悪人と決まった訳じゃないさ。それとっ、爆破チャンスは恐らく来る」
《そんときゃ創造主ごと爆破してやるでち‼︎》
「困った娘だっ…」
《あっ…》
急にゴーヤが黙る
「どうした⁇」
《…まぁ創造主の爆破はやめとくでち‼︎》
「どうしてだ⁇」
《創造主のクソさは爆破しても治んないでち‼︎》
「ほ〜ん⁉︎言ってくれるじゃねぇか‼︎」
マイクの向こうのゴーヤは笑っている
それに釣られて俺も笑う
少し固くなっていた気持ちが、少し解れた
《ピンポイントで爆破してやるでち。何だっていいでち。邪魔な奴がいたら、タナトスに言って欲しいでち‼︎》
「了解したよっ」
《当該地点に到着しました》
いざタナトスを降りる…