その頃目標地点の基地の中では…
「横須賀基地が潜水艦を出して来た‼︎」
「横須賀基地の潜水艦と言えばタナトス級…」
「マズイな…反感を買う前に丁重にもてなしてお帰り願おう。もしタナトス級ならば、この基地は一隻で終わる…」
「来たか、マーカス…」
周りが慌てふためく中、不敵に微笑む男が一人…
その男は基地内の人間が気付かぬ間に何処かへ姿を消した…
「お疲れ様です。貴方のお名前は‼︎」
「マーカス・スティングレイだ‼︎」
基地に足を降ろす
異様な雰囲気だ…
何故迎えが男一人しかいない…
それとも、あの銃座の群の影に潜んでいるのか…
「此方へ‼︎」
基地内に案内され、三歩遅く着いて行く…
《反応しなくていいでち。銃座、トーチカの内部やら死角に山程いるでち》
やはり勘は当たった
食堂に案内され、椅子に座る
「今、飲み物をお持ちしますね」
男が飲み物を取りに背を向けた
「この辺りで行方不明になった味方の捜索を依頼されたんだ」
「深海の仕業では⁇」
「輸送船団ごと消えたんだ。その中に国会議員もいる」
「…此方を」
飲み物を出されたが、口を付けないまま話を続ける
「横須賀からの令状だ。ここを調査させて貰う」
横須賀から預かった令状を机を滑らせるかの様に見せる
「丁重にお断りします。我々は貴方方の管轄下ではない」
「疑わしい事がないならここを視察しても構わないハズだ」
「…」
「悪いな。此方も味方が行方不明になって躍起になってる。アンタの気も分かるが、こっちの気も分かってくれ」
「…此方へ」
何かに怯えた顔を見せながら、男は案内を始める…
「何故ここが疑わしいと⁇」
「この近くで輸送船団ごと反応が消えたからだ。そんな事有り得るか⁇」
「確かに…まずは此方へ」
案内されたのはデータ管理室
「…申し訳ありません」
いざPCに手を伸ばそうとした時、入り口を固められたのに気が付いた
「いつもの事だ。慣れてる」
そう言いつつ、PCを弄りながら男の方に少しだけ目を向ける
「…死にたくないなら一歩前に出ろ」
そう呟くと、案内してくれた男は一歩前に出て俺に寄った
それを見て男を引き寄せ、反対側で抱き留める
次の瞬間、集中砲火が始まる
「よし、もういい」
五人余りから喰らった集中砲火の矛先は勿論俺
しかし、その間には案内をしてくれた男がいた
こいつごと巻き込んで俺を消す腹積もりだったのだろう
「痛いじゃないか」
「ば、化物が…」
「いつもなら足で済ますんだが…今虫の居所が悪くなった」
二度と悪さをしない様に、今回は手を撃ち抜く
「大丈夫か⁇」
案内をしてくれた男に手を差し伸べる
「何で助けた…」
「目を見れば分かる。アンタ、根っからの悪人じゃない。それに、さっき手が震えてた」
「…私を助けたとしても、何も語らないぞ」
「それでもいい。名前は⁇」
男の名前を聞きながら手を取り、立ち上がらせる
「坂元だ…」
「坂元、何でアンタはここに⁇」
「…言えば私は消される」
「消されるのはあっち、アンタじゃない」
そう言うと、坂元は何かを決した顔を見せた
「…妻を人質に取られたんだ」
「その人は何処にいる」
「海堂の側にいる…」
「分かった」
「救ってくれるのか⁇」
「どうだか⁇まぁアンタが命を賭けてまで護りたい人だ。大層な美人さんなんだろ⁇そのお顔を拝んでから決めても遅かない」
坂元は鼻で笑いつつ、口角を上げた
「マーカス、と呼べばいいか⁇」
「マーカスでいい」
「私は君に何も言っていないし、教えてもいない」
そう言いながら、坂元の目線の先には基地内の見取り図がある
地下一階の施設に大きく赤い丸がしてある
「そう言えば、一週間前にクールな女性をこの基地で見かけました」
「加賀か…」
「加賀…はて、私は女性を見ただけです」
男の顔は笑っている
「私は今から部屋を出ます」
「…」
「それだけです」
俺は坂元の背後を着いて行く…
その部屋には監視カメラがあったのに二人共気付いており、小声で話してはいたが、その仕草は尋問を受けているだけの姿
坂元は要所で声を荒げ、自分は尋問されてはいるが何も話していないアピールをしていた
地下一階に向かうエレベーターに乗り、少しだけ体を休める
「坂元、一つだけ聞かせてくれ」
「何です⁇」
「加賀で何をするつもりなんだ」
坂元はすぐに答えを言った
「量産型を製造し、各基地を襲撃させるのです。ずっと欲していましたからね、100%自国生産の艦娘を」
「まだ間に合うか⁇」
「海堂が余計な事を考えていなければ、ですが…」
エレベーターが着く…
「止まれ」
着いた瞬間、またしても出口を塞がれる
「おっ…」
坂元をスイッチのある死角に追いやる
「や〜だね〜‼︎フンッ‼︎」
一番近い男の顔面に右ストレートを当て、小銃を奪う
「死ぬぞ」
「構わん‼︎撃て‼︎」
「そうか。なら、残念だ…」
10秒もしない間に、ドサドサと倒れる男達
「急ぎましょう」
坂元と共に加賀の元に走る
「二度救われましたね‼︎ここです‼︎」
「気にするな‼︎これでチャラだ‼︎」
ドアを蹴破ると、中にはカプセルが設置されているのがすぐに見えた
それもかなりの量だ
「坂元…裏切りやがって…」
総理に貰ったデータの中にあった写真の男、海堂がカプセルの前にいた
中心には巨大なカプセルがあり、そこに加賀が入っている
これで確信が持てた
「元から貴様の言う事を聞くつもりなぞない‼︎」
「ならばお前の妻はどうする」
「妻はそれ位の覚悟は出来ている‼︎」
「それはお前のエゴだろう⁇必死に懇願していたよ、助けて下さい、何でもしますからとな‼︎」
「…海堂‼︎」
「次はアンタが助けて下さいの番だな」
「いつの間に…うぐっ‼︎」
坂元が海堂と話していた隙に横に回り込み、海堂の口を塞ぐ
「脇腹は痛いか」
「ううっ‼︎」
海堂の左脇腹にはナイフが刺さっている
「二つ質問に答えろ。そうすれば治してやる。いいな」
流石に命の危機が迫ると折れたのか、すぐに頷いたので、口の手を離す
「一つは加賀で何をするつもりだ」
「かっ、加賀のデータを使って、量産型を造り、各所の基地を奪還しようとしているんだ‼︎」
「二つ、坂元の妻は何処にやった」
「へっ…言えんな…あれは良い女だ。こいつの女にするのは勿体ない‼︎」
海堂の左脇腹に刺さっているナイフを抉る
「分かった言う‼︎言います言います‼︎横の部屋だ‼︎」
「坂元」
「あぁ‼︎」
坂元を向かわせ、俺は尋問を続ける
「簡単に死ねると思うな。お前には生き地獄を味わって貰わねばならん」
「は、話しただろう‼︎」
「お前のエゴのせいで何人が苦しんだ」
「弱者は強者に、喰われる‼︎それが、自然の摂理だろ‼︎」
「弱肉強食⁇は…机の上で居眠りこいてるお前が言えた立場か」
反論して来たので再びナイフで抉る
「うぐぐ…」
「こんな時なんて言うんだ」
「頼む…後生だ…」
「子供でも出来るぞ」
「ご、ごめんなさい…反省します…」
「良く言えました」
「ぬぐっ‼︎」
ナイフから手を離す
「見せな」
「ひぃ…ひぃ…」
海堂からナイフを抜き、塗り薬を塗る
「痛みが…」
「お前を横須賀に連行する」
「分かった…」
海堂は力無く両手を出した
手錠を付け、一旦柱に括り付ける
「加賀の頭に付いてる装置、あれは何だ」
「あれは此方の命令を聞く様に付けられた装置さ。簡単に言うなら、洗脳装置さ」
「アンタらが造ったのか」
「いや、ここにあったんだ」
「ワタシガツクッタノヨ」
突然聞こえた、か細い少女の声
「ズットマッタワ。コノシュンカン」
「離島棲姫…」
黒いゴシック調の服に身を包んだ少女、離島棲姫
彼女は何処からともなく現れた
「アラ、ゴゾンジナノ⁇ウフフ‼︎ウレシイワ‼︎」
「こいつが造ったんだ‼︎」
離島棲姫は海堂に目を向けたかと思うと、一瞬で海堂の腹に穴が開いた
「アンタハモウヨウズミ。タノシメタデショウ⁇」
「お前…」
「ワタシガヨウガアルノハアナタ」
俺がPCを弄る前に座り、離島棲姫は俺の頬を撫でる
「オスガタノシンカイ…トッテモキチョウ…ネ、ワタシトコドモヲツクリマショウ⁇」
「加賀‼︎」
離島棲姫の誘いを無視し、加賀をカプセルから出す
「ありがとう、大尉」
「さ、帰ろう」
「チョット‼︎ワタシガサソッテルノヨ‼︎」
「大尉。私の複製が横須賀に行ったわ」
「何だと…」
「恐らくそこに…」
「ワタシガサキヨ‼︎」
離島棲姫は敵だ
本当はやりたくないが、仕方ない…
「アグゥッ‼︎」
メインモニターの下にあるキーボードの上に、離島棲姫の肩を掴んで押し倒す
「貧乳に興味はない‼︎分かったかこのガキ‼︎」
「ハァ…ハァ…ス、ステキ…タクマシイワァ…モットシテ‼︎」
「うっ…」
今の所、手を出されてはいないので敵とも味方とも取れない
だが、何だか嫌な予感はする…
「マーカス‼︎ありがとう‼︎」
「ありがとうございます‼︎」
「なるほどっ…助けたくなる訳だっ…」
坂元が抱えているのは自分の妻
俗に言う普通に美人な女性だ…
「…」
離島棲姫が此方を見ている
「加賀、二人をタナトスまで連れて行けるか⁇」
「えぇ。任せて頂戴。行きましょう」
「マーカス、君は⁇」
「ガキとはいえ、レディの誘いは受けるんだ」
「すぐに会おう。君には恩が出来たからな」
坂元を見て頷くと、加賀は二人を引き連れてタナトスまで走り始めた
「お前、ずっと一人だったのか」
「ンフフ、イワナ〜イ」
やはり見た目同様クソガキが入ってやがる…
今の反応を見て、もう一度試したくなった
「離島棲姫」
「ンフ。ワタシハナンニモオシエテアゲナ…」
もう一度離島棲姫を押し倒す
「ヒヒヒヒトリデスゥ‼︎」
押し倒した瞬間、離島棲姫はすぐに口を割る
「何故洗脳装置を造った」
「ハァ…ハァ…オトモダチガホシカッタンデスゥ‼︎」
「いいか」
「ハヒィ」
離島棲姫を座らせ、目線を合わせる
何故か離島棲姫はヨダレを垂らしている
「人を操って出来た友達なんて、友達とは言わない」
「ダッテ…コウデモシナイト、ダレモミテクレナ…」
今度は離島棲姫の頭を寄せ、顔を近付ける
「ワワワワカリマヒタァ‼︎」
「そんな事しなくても、俺がお前を一人にさせない場所に連れて行ってやる」
「エ…」
「悪さしないと誓え」
「シマセン‼︎」
離島棲姫の答えを聞き、右手を差し出す
「行こう。ここはじき終わる」
「ハ、ハヒッ…ヒウッ‼︎」
離島棲姫が手を取った瞬間、彼女の軽い体を抱き上げ、エレベーターに向かう
その瞬間、基地が揺れる
「ナニナニ‼︎ナンナノ‼︎」
「外で君を助けようとしてくれてる人がいる」
「ナンデ…」
「利用されてたんだろ」
「…」
黙ってしまったので、離島棲姫を少しだけ強く抱き寄せる
「ニニニンゲンニイロイロツクレトイワレテマヒタ‼︎」
「良い子だ」
「ハァ…ハァ…モ、モットシテクダサヒィ…」