一体に向かって走り出し、飛び掛かる様に跳ねた後、鳥海は主砲を構える
「ぐっ…」
ダンッダンッ
飛び掛かり、海上に倒れた量産型加賀を容赦無く主砲の接射で仕留める
最後の一体に振り向こうとした瞬間、風切り音が鳥海の耳に入る
「くっ…」
風切り音の正体は、最後の一体が放った、航空機になる前の矢
鳥海はそれを右手でギリギリ受け止める
「終わりよ」
「…しまった‼︎」
瞬間、鳥海の右手から大爆発が起きる
量産型加賀が放ったのは特攻機
直接では敵わないと判断した最後の一体は、鳥海に向けて特攻機を放ち、刺し違えを狙った
「痛い…痛い痛い‼︎」
鳥海は海上に膝から崩れ落ちた
右手は吹き飛び、右の腹も抉れ、出血を起こす
鬼神の様に暴れた鳥海は、ここに来て普通の少女の様に涙を流す
「そんな物なのね」
量産型加賀が近付く…
「殺してやる…この模造品が‼︎」
「終わりよ」
先程仲間内をやった様に、鳥海の頭に力一杯引かれた弓矢が来る
「今です‼︎」
鳥海の合図で、海中から何かが飛び出す
「くあえーっ‼︎」
「ばいばいっ‼︎」
後頭部と膝裏を同時に砕かれる量産型加賀
放たれた矢は一番最悪のポジションである、ウィリアム、エドガー、リチャードの三機の前に弾き出され、一瞬で爆散させられる
「うふふ…この程度、すぐに修復可能ですから」
鳥海がやられていたのは確かだが、これ位の怪我なら鳥海は自分で修復出来る
しかし、それにはほんの少しだけ時間が必要だった
そんな時、量産型加賀の背後の海面からひとみといよが一瞬顔を出し、鳥海に笑顔を送った事で鳥海は合図を出し、修復の時間を得る事が出来た
「貴方…もしかして…」
「冥土の土産に教えましょうか⁇」
「えぇ…」
ダンッ
倒れた量産型加賀に容赦無く主砲を撃つ
「嫌ですっ」
今のが最後の一体
「状況確認に移ります」
鳥海は目標を仕留めた後、必ず追い打ちを掛ける
少しでも動こうものなら、再び至近距離での主砲を当てる
「…いないみたいですね」
残っているのは、上空で追い掛け回されて今も正に数を減らしている加賀の艦載機を減らすだけ
「上空の皆さん‼︎海上は私達がどうにかしました‼︎後は制空権をお願いします‼︎」
《了解した。ありがとうな、鳥海》
《鳥海‼︎鳥海⁉︎》
「司令官さん‼︎」
《損傷を受けたと報告を受けた》
「司令官さんを護るのなら、この鳥海、この身を捨ててでもこの場を死守します‼︎」
《鳥海、帰投して欲しい》
「はい、司令官さん‼︎」
鳥海はトラックさんの言う事を絶対に聞く
「かえいあすか⁇」
「えぇ。お二人共、ありがとうございました‼︎」
「いっちょにかえいあしぉ‼︎」
鳥海を護る様に、ひとみといよは横須賀まで両脇に着きながら泳ぐ…
量産型加賀撃退の数分前…
《こんな規模の空戦、久々だな》
《鈍いのぉ‼︎こんなもんかえ⁉︎》
アレンの乗る刑部からの無線が入る
《横須賀から一機離陸した。アンノウンだ》
隊長の無線が入り、気が引き締まる
「来たか…」
《マニュアルに切り替えるよ》
「頼む」
グリフォンの操縦がマニュアル操作に切り替わる
《此方ワイバーン。アンノウン機との接触は俺に任せてくれ》
《イカロス、了解》
《サイクロップス、了解。今しばらく狩りを楽しませて頂きます》
《サンダース、了解。サンダース全機、隊長の所にライトニングIIを行かせないように‼︎》
《そっちは任せたぞ‼︎個々は弱いが、数が多い‼︎》
無線には余裕がある奴しか返答が無かったが、俺がアンノウン機と接触する事は伝わった
《マーカスさん…》
反応はまだアンノウンだ
互いに発砲出来ない
刻一刻と、互いに近付いて行く…
「今ならまだ引き返せる」
《私の役目は、あの人の道を作る事…もし、これで恩を返せるなら…私は喜んでこの身を差し出す‼︎》
「分かったっ…なら…」
アンノウン反応から、敵性反応に変わる…
「お前は敵だ。イェーガー…」
ヘッドオン状態で機銃を放ちながら、イェーガーが突っ込んで来た
互いに交差し、回避行動を取る
《分かってます…分かっているんです…だけど…もう…》
「…」
《イェーガー、落ち着いて‼︎レイなら助けてくれるってば‼︎》
《あの人の暴走を止めるには、貴方を倒すしかないんです…》
グリフォンが説得に入る
AI同士の会話が続く中、空戦は続く…
《お願いです、マーカスさん…落ちて下さい》
《力を見誤っちゃダメだよ‼︎思い出してよイェーガー‼︎君は戦いが嫌いなんでしょ‼︎》
「グリフォン、もういい。お前の気持ちは十二分に伝わった」
《レイはいいの⁉︎イェーガーは味方なんだよ‼︎》
「戦いが嫌いなあいつが望んだ道だ。分かってやれるのは、俺達しかいない」
《はっ…そっか…そうだよね‼︎》
何かに気付いたグリフォンは、全火器のコントロールのロックを外した
イェーガーと会敵してから機銃しか使わなかった
火器コントロールが外れたと言う事は“今から本気で殺す”との合図だ
「イェーガー、遊びは終わりだ。本気で行かせて貰う」
《手を抜くつもりは最初からありません》
数十秒ドッグファイトが続いた後、イェーガーの背後を取る
《ごめんなさい、ありがとう…》
「…謝るのは、こっちだ」
トリガーを引いた瞬間、世界から音が消える
ロックオンの音…
ミサイルが発射された音…
アラートの音…
俺が何かを呟いた声…
何もかも、音が消えた…
次に耳に入った音は、イェーガーが爆散する音
《レイ、大丈夫⁇》
「まだ一人残ってる」
《レイ、聞こえる⁉︎航空機一機、戦闘空域に向かってるわ。恐らく手練れよ》
横須賀の無線が聞こえ、少しだけ我に返る
「了解した。俺に任せろ。隊長達はどうだ⁇」
《粗方片付いて来たわ。レイ、無茶しちゃダメよ⁇》
「心配するな。来る奴は分かってる。IFFを敵機に切り替えてくれ」
《分かったわ。交戦を許可するわ》
皆が戦っている空域に戻る…
《よしっ、残りは疎らだ‼︎》
《バッカス、オルトロス、私の横に着いて下さい。一気に行きます》
あれだけいたF-35も、もう疎らにしかいない
《愚か者めが‼︎》
目の前で親父のF-14が遊んでいるかの様にF-35を落として行く
《来たか、マーカス》
異様なF-35が一機、こっちに猛スピードで向かって来る
《お前を狩るには丁度良い代物だ》
「パピヨン、一度だけ言う。イェーガーに謝れ」
《決着と行こうか、マーカス》
高山は俺の言った事を聞かず、イェーガーと同じヘッドオン状態で向かって来た
《被弾⁇この俺が⁇》
すれ違い様に放たれた機銃が、高山のF-35の左主翼に穴を開ける
《は…ここまでしても、敵わんか…》
「終わりだ」
背後からミサイルを二発、F-35に叩き込む
《瞬殺…あれが、隊長の本気…》
俺の姿を横目で目にした涼平
生唾を飲む音が無線から聞こえた
《ベイルアウトしたよ》
「あいつを狂わせた奴だけ壊せば、それでいい。誰か救助に向かってくれないか‼︎」
《レイさんに手出す奴なんか助けたくないのです‼︎》
すぐに電から無線が返って来たが、答えは救助拒否
「後で駄菓子買いに行こうか‼︎」
《今回だけなのです‼︎オラ‼︎来るのです‼︎》
高山の救助は何とかなった
《こいつでラストだ》
最後の一機のF-35が落ちる
《量産型加賀及び、艦載機の撃退成功‼︎各員、帰投して‼︎》
横須賀の無線を聞き、全員がそれぞれ《了解‼︎》と返す
俺を除いて…