艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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特別編 ウクライナ奪還作戦〜治療と報復〜

数分前…

 

「えっほ、うっほ」

 

「えっほ、あいっ!!」

 

「これは??」

 

二人で頭上で抱えて何かを持って来た

 

「こえ、お〜よろえぷちぅ〜ん!!」

 

「むちゃつよぼんば〜!!」

 

ひとみといよが持って来たのは小型化された地対艦ミサイル、ネプチューン

 

横須賀に所属する"博士"がひとみといよに持って行って欲しいと持たせた物だ

 

「こ〜あってもつ!!」

 

「こうかい??」

 

「そう!!」

 

ひとみ、いよ、ウクライナの兵士が3基のランチャーを肩に構える

 

「ここおちたあ、うつ!!」

 

「いくれ!!」

 

「おりぁ!!」

 

「いけ!!」

 

「い、いけ!!」

 

ひとみといよに追従して、ウクライナの兵士もネプチューンを放つ

 

ミサイル艦一隻に三発着弾し、ミサイルにも誘爆し始める

 

「おっしぁ!!」

 

「つぎいくれ!!」

 

「す、凄い…!!」

 

ひとみといよはもう二隻目の撃沈態勢に入っている

 

「うってくうまえにつぶすれ!!」

 

「あかった!!」

 

「センテヒッショーか…よし!!」

 

「「「おりぁ!!」」」

 

こうして、二隻目も大破まで追い込む…

 

「きぅ〜け〜!!」

 

「しょのままもっててえ!!いくれ!!」

 

「よ、よし!!」

 

感知されると分かっているのか、二発放ってそそくさとその場を離れる

 

「君達がヨコスカから来た子達かい??」

 

「そう!!」

 

「ひとみちゃんといよがくえば、も〜だいじぉ〜ぶれす!!」

 

「我々は女神を味方に付けたみたいだな…感謝するよ!!」

 

「おしぁ。つぎここにすう」

 

「ちぉっときぅ〜け〜しあす」

 

ひとみといよが選んだのは、港に建てられた建物の中

 

「かうえてて!!」

 

「しゅぐもどう!!」

 

「了解した。ここで待ってる」

 

そしてマーカスの所に行き、一旦補給をしてまた戻って来た

 

 

 

ビスケットと紅茶を補給し、三隻目への攻撃態勢に入る

 

「おっしぁいくれ!!」

 

「あいっ!!」

 

「装填よし!!」

 

三人が窓から構えた先には、ミサイル艦ともう一隻確認できた

 

「く〜ぼいう!!」

 

「といあえず、みしゃいるのあつねあう!!」

 

「了解した!!」

 

「「「おりぁ!!」」」

 

三隻目は撃沈出来た

 

問題は空母だ

 

「しゅき〜のあつついてう…」

 

「あえく〜ぼか??」

 

「あれはアドミラル・クズネツォフだ…何でこんな所に…」

 

「ひこ〜きだせう??」

 

「あぁ…出せる…報告しよう!!」

 

「てったい!!」

 

「さいなあすう!!」

 

三人はランチャーを置き、その場から離れる…

 

 

 

 

「えいしゃ〜ん!!」

 

「たいへ〜ん!!」

 

「どうしたどうした!!」

 

「ヨコスカの兵隊さん!!く、空母が!!」

 

「空母だと…」

 

「あいっ!!」

 

ひとみから双眼鏡を貸して貰い、海の方を見る…

 

「アドミラル・クズネツォフじゃねぇか…何でこんな所に…」

 

「隊長、今自分達は戦闘機が!!」

 

「らんちぁ〜あるれ!!」

 

「ぼか〜んできう!?」

 

「ファランクスに撃墜されると位置を把握される…考えろ…空軍に連絡は入れられるか!?」

 

「はい!!セバストポリ国際空港が死守されています!!」

 

「すぐに連絡を入れて迎撃機を寄越すように言ってくれ!!」

 

「はっ!!」

 

「涼平、園崎!!対空砲に着け!!」

 

「了解しました!!」

 

「了解!!出番だ!!」

 

「ひとみといよちゃん、ねぷちぅ〜んもってくう!!」

 

「もひとつあるれ!!」

 

いよが急にもう一つあると言い出した

 

「とってくう!!」

 

「まっててえ!!」

 

数分後…

 

「えっほ、うっほ、あいっ!!」

 

「ぱとりおっろ!!」

 

小型化されたパトリオットミサイルランチャーを頭の上に抱えて持って来た

 

「こえはいっぱつこっきりれ、これっきりら」

 

「お〜よろしゃんとくしぇ〜だかあ、しゅっごいつおいお!!」

 

「大淀の武器か…」

 

博士の正体は大淀博士

 

あの人の造る武器の火力はヤバい…

 

良く狙って撃たねば…

 

一発こっきりとか言いつつ、四発も入ってやがる…

 

《隊長!!配置に着きました!!》

 

《こっちも着きました!!》

 

「ひとみといよは隠れてるんだ!!」

 

「きおつけてくらしゃい!!」

 

「まってうで!!」

 

ひとみといよはステルスを使い身を隠しつつ何処かに隠れた

 

俺は一番近くにある高めの建物の屋上に向かう…

 

 

 

 

背中にランチャーを背負い、はしごを登り、屋上に来た

 

「クソッ…聞こえるか!!発艦を始めた!!各自迎撃態勢に入れ!!」

 

《了解しました!!》

 

《了解っ!!》

 

「来るぞ…」

 

ランチャーを構え、サイトを覗く…

 

Su-33が2機発艦している…

 

落とすなら今の内だな…

 

「行けっ…!!」

 

ランチャーのトリガーを引く

 

「えっ」

 

一回引いただけなのに、四発全部出て行った

 

二発はすぐさま二機のSu-33に向かう

 

残った二発は発艦準備中の別のSu-33に向かっている

 

そして…

 

「うっ!!」

 

一瞬空が光り、その後すぐ衝撃波が来る

 

「くっ…なんちゅう威力だ!!」

 

《何ですか今のは!!隊長!!園崎!!無事ですか!?》

 

《な、何だ何だ!?スゲェ衝撃波だ!!》

 

「す、すまん!!俺のランチャーだ!!」

 

《跡形も無く消し飛んでますよ!!》

 

《ぼが〜なった!!》

 

《しぉ〜めつ!!》

 

各方面から連絡が入る

 

《マーカス!!マーカス!!聞こえますか!?》

 

「サイクロップスか!!聞こえる!!」

 

《あぁ…良かった。空母が急に爆発したので、貴方方も巻き込まれてしまったのかと…》

 

「大丈夫だ…はぁ、ビックリした…」

 

《対艦用の爆弾を積んで来たのですが、取り越し苦労のようで》

 

「はは…まさかこんな威力とは思わなかったさ…」

 

《ではマーカス、近々また》

 

「すまないサイクロップス。ありがとう!!」

 

エドガーはそのまま引き返して行った…

 

 

 

 

これで港に補給が届きはじめる

 

タナトスもいるからな…

 

しばらくは海は大丈夫だ

 

空になったランチャーを背負い、はしごを下る

 

「ヨコスカの兵隊がやってくれたぞ!!」

 

「ははは!!やったな!!」

 

「女神はどうした!!あの子達もやってくれたぞ!!」

 

セバストポリの街は少し活気を取り戻している

 

戦争でもなんでも士気は大切だ

 

「えっほ!!」

 

「うっほ!!」

 

「ヨコスカの兵隊さん、ありがとう!!」

 

ひとみといよも帰って来た

 

ちゃんとランチャーを担いでいる

 

「しゅき〜のく〜ぼ、ぼが〜なった!!」

 

「あえく〜お??」

 

「ロシアの主力空母さ!!大手柄だ!!」

 

「よく見つけてくれたな!!ありがとな!!」

 

ウクライナ兵の足元でランチャーを担いだまま話すひとみといよの頭を撫でる

 

「「くふふっ…」」

 

「名前を聞くのを忘れていた。私はボリス、少佐だ」

 

隊長より若く、俺より年上の感じがする…

 

「マーカス・スティングレイ、大尉だ」

 

「マーカス!?君か!!昇進しない大尉は!!」

 

「国を跨いで有名になってるとは…」

 

「ヨコスカから聞いたんだ。昇進しない大尉がいると。彼は必ず貴方方に手を差し伸べてくれるから、手助けをしてあげて欲しいと!!」

 

ボリスの言葉に、彼の目を見て頷く

 

「必ず救う。約束だ」

 

「よろしく頼む、マーカス」

 

ボリスと握手を交わす

 

「隊長!!空母に乗っていたロシア兵が港に運ばれて来ます!!」

 

「ウクライナサイドに被害は??」

 

「先手を打ったので今の所ありません。どうしますか??」

 

「初仕事が喧嘩を売って来た側とは皮肉なもんだな…よし、治療に当たる。涼平、ウクライナの兵士に傷病者が出たらすぐに教えてくれ!!」

 

「了解です!!あ、自分は綾辻涼平です!!少尉です!!」

 

「ボリスだ!!少佐だ!!よろしく頼むよリョーへー!!」

 

涼平とボリスも握手を交わし、涼平は傷病者のチェックに向かった

 

「ボリス、頼みがある」

 

「なんだ??」

 

「ロシアを恨むのは俺にも分かる…ただ、患者は患者だ。暴れたら抑えて欲しい」

 

「勿論だ!!」

 

俺とボリスは簡易病院に着き、器材を持ち出す…

 

 

 

「クソ野郎が!!」

 

「触るんじゃねぇ!!」

 

「黙ってて下さい!!血が出ますから!!」

 

「テメェが撃ったんだろうが!!」

 

港では涼平と園崎が必死に応急処置に当たっている

 

「くたばれ…」

 

ロシア語でそう言われた

 

反応したのは俺ではなく、涼平

 

罵声を吐いたロシア兵は左足に怪我を負っている

 

「触るな豚野郎!!」

 

涼平は怪我をした左足に消毒液を吹きかける

 

「お前を助けようとしてるんだ…黙ってろ!!お前のトップはここまでしてくれるのか!!」

 

「!!」

 

ロシア語で返した涼平に少し安堵したのか、罵声を吐くのを止めた

 

「死にたくなければっ…黙ってろ!!国に肉壁にされて終わっちまうぞ!!」

 

「…」

 

涼平を睨みさえするものの、罵声と抵抗を抑え、大人しく応急処置を受ける

 

「涼平、ありがとう。代わるよ」

 

「ありがとうございます!!もう大丈夫ですよ…」

 

涼平と代わろうとした瞬間、そのロシア兵は涼平の胸倉を片手で掴んで引き寄せた

 

耳元に口を寄せ、ボソボソと呟き、涼平は少し目を見開く

 

「隊長…」

 

「どうした??おーい!!もう心配するな!!絶対助けてやるからな!!」

 

「助けてくれ…と、言ってました…」

 

「よし…これでお前は大丈夫だ、少しここで休め。すぐ戻って来るからな」

 

「もう大丈夫ですよ!!」

 

「隊長!!隊長ー!!助けてくれ!!こいつヤバい!!」

 

「よしよし!!涼平、通訳頼む!!」

 

「了解です!!」

 

園崎が応急処置していたロシア兵の治療に当たる

 

「母さん!!母さん!!助けてくれ!!」

 

「もう大丈夫だからな!!しっかり気を持て!!」

 

「すぐにお母さんの所に帰れますから!!ジッとしていて下さい!!」

 

腹部からの出血が酷いが、これ位何とかなりそうだ

 

後はコイツが"安心しなければ…"

 

「あぁ…天使がいたんだ…母さん…」

 

「ダメだダメだダメだ!!起きて!!」

 

「起きろ!!家に帰るんだろ!!」

 

すぐに心臓マッサージを始めるが、ギリギリのラインかも知れない…

 

「隊長!!電気ショック行きます!!」

 

「頼む!!涼平、離れろ!!」

 

園崎が持って来たAEDで蘇生を試みる

 

「呼吸回復しました!!」

 

「心拍確認…よし、成功だ!!」

 

「良かった…」

 

その後も何十人と治療に当たる

 

途中で意識を失った奴

 

安心して心拍停止を起こした奴

 

感謝を述べて治療された奴

 

罵声を吐き続けた奴

 

皆、何とか救う事が出来た

 

だが、まだ安心は出来ない

 

治れば暴れる奴も出て来るだろう

 

「マーカス」

 

「ありがとう、ボリス」

 

「なに、礼を言われる事じゃないさ。それより、また女神に礼を言わなければ…」

 

「そう言えば何処に!?」

 

「じっとしとけあほ!!」

 

「おるぁ!!」

 

「へげぇ!!」

 

暴れるロシア兵に二人がかりでモルヒネシレットをつむじに打っている

 

※良い子は絶対にマネしないで下さい

 

「ひとみ!!いよ!!それはここに打つんだ!!」

 

「ここちあう??」

 

「しずかになりあした!!」

 

「次からはここに打つんだ」

 

ひとみといよ、そしてボリスの前で、もう一人いたロシア兵の太ももの裏にモルヒネシレットを打つ

 

「スパシーバ…スパシーバ…」

 

感謝の言葉を述べ、安心したかの様な深い息を吐いた

 

熱を見た後、肩を叩いて立ち上がる

 

「暴れていたのを3人ほど仕留めてくれたんだ」

 

「あそこでグデってるのか…」

 

3人疲れ切った様に眠っているロシア兵がいる

 

「あばえうほうがわうい!!」

 

「ちぁんとやりあした!!」

 

「次からは太ももの裏に打とうな??ありがとうな??」

 

「ふとももおぼえた!!」

 

「ここ!!」

 

二人共しっかりと打つ場所を覚え、ひとみが自身の体でちゃんと打つ場所を指差している

 

「マーカス、本当に少しでもいい、休んでくれ」

 

「そうだなっ…ん〜っ!!少し休もうか!!」

 

いつの間にか夜になっている

 

先程の焚き火の場所に戻り、タバコに火を点ける

 

「少し待っててくれ!!今温かい物を淹れてくる!!」

 

「ありがとう」

 

焚き火に当たりながらタバコを吹かす…

 

「こえでがいばうで〜のけつにひ〜つけうか??」

 

「いきてうかあ??」

 

焚き火を見てガリバルディを思い出し、そして勝手に殺しているひとみといよ

 

「二人共、ガリバルディ好きか??」

 

「けつにひ〜つけたいらけ!!」

 

「あちゃちゃちゃいう!!」

 

笑っている所を見ると、ガリバルディの事を心配はしているみたいだ

 

…勝手に殺してるがな

 

「隊長、戻りました!!」

 

「戻りました!!そこで晩飯貰いましたよ!!」

 

「おっ!!どれどれ!!」

 

園崎と涼平がトレーに乗せて来たのは、カーシャと数本のソーセージ

 

「マーカス!!酒はどうだ!!紅茶もあるぞ!!」

 

「紅茶にする!!二人に酒あげてくれ!!」

 

「頂きます!!」

 

「頂きますっ!!」

 

6人は小さいながらも、一日の終わりの祝杯をあげる…

 

 

 

 

次の日…

 

「これで良しっ…」

 

「スパシーバ…」

 

朝から傷の処置の続きをしている

 

やはり浮かない顔ばかりだ

 

「マーカス。ロシア兵の措置は此方に任せてくれないか??」

 

「頼む。俺はからっきしなんだ!!」

 

「隊長、そろそろお腹に物入れませんか??」

 

「もうそんな時間か…よしっ、何か食うか!!」

 

涼平に誘われ、白衣を脱いで席を立とうとした

 

俺より先に、ボリスと涼平が銃を構えた

 

軽症で済んでいたロシア兵の一人が急に診察室に入って来たからだ

 

ただ、そのロシア兵はすぐに両手を上げる

 

「頼む、銃を下げてくれ…」

 

「何の用ですか??」

 

涼平がロシア語で返答を返す

 

「そこの医者に用がある」

 

「だったらそのまま仰って下さい」

 

数回言葉を交わした後、涼平もボリスも銃を下げる事は無かったが、ロシア兵は敬礼をした

 

「涼平、敬礼は無しだと伝えてくれ」

 

「ここは病院です。敬礼はしないで頂きたい」

 

「無礼を済まない…敬意を表すのには、これしか見当たらなかった…」

 

ロシア兵はすぐに敬礼を下げた

 

「我々を救助して頂いた事、感謝を述べます、異国の医者」

 

「隊長に感謝を述べています」

 

「理由があったのだろう。感謝してくれるなら、俺達に理由を話してくれないか??」

 

俺が言った事を、涼平はそのままロシア語で通訳し、返答する

 

「分かった…救われた命だ、ここで使う」

 

「マーカス…涼平…すまない!!」

 

ボリスは銃を降ろし、ロシア兵に近寄ると、いきなり頬に一発、右フックを入れた

 

「この場は一発で済ませてやる…」

 

「すまない…こうするしかなかったんだ…」

 

「お前は今からロシアの裏切り者だ。ただな…我々ウクライナの人間は、降伏した人間を丁重に扱う」

 

「よく聞いている…」

 

「マーカス…すまない…」

 

「よく一発で済ませた。そうだ涼平、飯だったな??」

 

「あ、はいっ!!美味しいのが出来ました!!」

 

「コイツの分も頼むよ」

 

「了解ですっ」

 

涼平はようやく銃を降ろし、診察室を出た

 

「ま…座ってくれ」

 

「すまない…」

 

「まず名前を教えてくれないか??」

 

「ニコラス。少将だ」

 

「俺はマーカス。大尉だ」

 

「私はボリス、少佐だ。よろしく頼む」

 

ニコラスは被っていた帽子を脱ぎ、胸に置いて一礼した

 

「この度は重ね重ね、船員の救助を敢行して頂き、誠に感謝する…」

 

「全員を救えた訳じゃない…それに、俺は感謝を言われる筋合いはない」

 

「…」

 

「ボリス…申し訳ない。言い訳にしか聞こえないだろうが、我々も来たくてここに来た訳ではないんだ…」

 

「それを聞きたいんだ。是非話して欲しい」

 

「持って来ました!!」

 

「おっ!!すまんな!!」

 

涼平はトレーにポトフとパンを置いて持って来た

 

「熱い内にっ!!さっ、ボリスさんもっ!!」

 

「ありがとう、リョーへー!!」

 

「えっと…お名前は??」

 

「ニコラス。少将だ」

 

「ニコラスさん。自分は綾辻涼平、少尉です。さ、どうぞ…温まりますよ??」

 

「ありがとう、頂くよ…」

 

ニコラスはポトフにがっついた

 

余程何も食べていなかったのか、俺達が見入ってしまう程、美味そうに食べている

 

そんなニコラスを見て、口を開いたのはボリス

 

「ロシアは…そんなに食料事情が危険なのか??」

 

「若い者はほとんど食べれていない。私が知っている限り、栄養失調の状態で戦場に出されて…」

 

「出されて…何ですか…」

 

涼平のスプーンが止まる…

 

「帰って来なくなる…」

 

俺とボリスは余所を向き、ため息を吐く

 

「我々がここに来たのは、大統領命令で行かざるを得なかった…断れば家族を殺される…そう脅しを掛けられて、船に乗ったんだ…」

 

「宣戦布告をしたのもロシアの大統領でしたね…」

 

「そんな内部事情なのか??」

 

「あぁ。行くも地獄、残るも地獄…家族を救うには、行くしか道は残されていなかった…」

 

「まだ…戦いますか??」

 

涼平の問いに、ニコラスは頭を横に振る

 

「空母も失った…今帰ればどの道殺される…なら、最後に救われた貴方方に従うべき…いや、恩を返すべきだと私は考えている」

 

「いいのか??俺達がここに来たのは、最終的にアンタの国の頭を執るつもりだぞ??」

 

「頼む。奴の暴走を止めてくれ!!」

 

ニコラスのその目に濁りや企みはなかった

 

悲しみと怒りに満ちている目だ…

 

「分かった。なら、そうさせて貰う。代わりに、アンタには生きて貰うからな」

 

「恩に着る、マーカス」

 

「今のロシアに必要なのは、アンタみたいな愛国心のある奴だ」

 

「私の愛国心??」

 

「治療の最中に聞いた…ニコラス、部下に相当好かれているな??」

 

「どうだろうか…地獄に引っ張り出してしまったからな…」

 

「まだ意識がある奴は口を揃えて言っていた。艦長がまだ残ってる、ニコラス艦長の手当てを、と」

 

「自分も聞きましたよ…」

 

「私も聞いた…」

 

三人からそう聞き、ニコラスは下を向く

 

床に涙が数滴落ちているのが見える…

 

「マーカス…ボリス…リョーへー…私は今から国を裏切る…」

 

「ウクライナはアンタの味方だ」

 

ボリスがそう言うと、ニコラスは内ポケットから革のケースを取り出した

 

「ここに、ロシアが計画している侵攻地図が入っている…頼む"キーウの亡霊"に何とか連絡を取って、これを止めてくれ!!」

 

「キーウの亡霊??」

 

「あぁ…今キーウ上空にロシアの航空機が侵入出来ないのは奴が存在するからだ」

 

「私が何とかしよう。ニコラス、よく話してくれた」

 

「すまない…私にはこれ位しか恩を返せない…」

 

「もういい…よく戦った…戦士として敬意を表す…」

 

ボリスがニコラスの肩に手を置く

 

「マーカス、リョーへー、私はこれを何とかキーウに伝える。そうだ!!ボルィースピリ国際空港が生き残ってると聞いた!!そこなら何とかしてくれるハズだ!!」

 

「頼んだ!!」

 

「任せてくれ!!」

 

ボリスが診察室を出てすぐ、ニコラスに目線を戻す

 

「ニコラス、少し休んでくれ。話してくれてありがとう」

 

「何かあったら言ってくれ、マーカス」

 

「隊長、自分は病棟を見てきます」

 

「待ってくれ、俺も行くよ!!」

 

再び白衣を着直し、三人で診察室を出た…

 

 

 

 

「病棟でもご飯の時間なんですが…」

 

「配膳は誰が??」

 

「園崎がしてくれてます」

 

「どれっ…」

 

病棟の扉を開け、中に入る

 

等間隔でベッドが並べられ、そこに負傷したロシア兵が横になっている

 

「くえ!!」

 

「スパシーバ…」

 

「ぐつぐつのしちぅ〜です!!」

 

「スパシーバ…スパシーバ…」

 

ひとみといよが台車にシチューの大釜と木のボウルとスプーンを乗せ、配膳を手伝ってくれている

 

二人にシチューを貰い、祈るポーズをした後に感謝を述べているロシア兵もいる

 

「食えるか??」

 

「すまない…待て…アンタ、ソノザキじゃないか??」

 

「あ、UFO」

 

「何っ…ぐへぇ…」

 

園崎はその隙にロシア兵の後頭部を小突き、気絶させた

 

「あっぶねぇ…」

 

「気絶させるだけだぞ??」

 

「あ!!隊長!!お恥ずかしい所を…」

 

「ソノザキ??ソノザキって言えば、ニホンのボクサーか??」

 

「はは…こんな所で無敗のボクサーに会えるとはっ…生きてみるもんだっ!!」

 

園崎がボクサーとして名を上げてるのは知っている

 

だが、ここまで有名だと思っていなかった

 

「隊長、全員気絶させても??」

 

「ほら園崎、お前もご飯食べろ!!ひとみ!!いよ!!園崎とご飯食べておいで!!」

 

「いきあしぉ!!」

 

「なくな!!しちぅ〜くえ!!」

 

いよは余程腹が立っているのか、ロシア兵の前にシチューを置いてはキレている

 

「いよちゃん、俺と行きましょう??」

 

「いく!!」

 

園崎が誘うと、ちゃんと手を繋いでご飯に向かった

 

「アンタ…あのソノザキを部下に付けてるのか??」

 

最初に園崎がボクサーだと気付いたロシア兵が話し掛けて来た

 

「俺には勿体無い部下さ。平和になったら、ボクシングでも教えてもらうといい」

 

「そうさせて貰う…それと、シチュー旨かった」

 

「…ロシアの食料事情、危ないのか??」

 

ニコラスに聞いた事と同じ事をもう一度聞いてみる

 

すると、彼は俺の目を見て、小さく何度か頷いた

 

「俺達はニコラス艦長の下にいたから持ったみたいなものだ。今ロシアの食料事情は、子供さえ食べれない状況なんだ…俺達のトップは、その状況を見てウクライナに宣戦布告した」

 

「なぁ、ドクター…」

 

彼の向こう側にいたロシア兵が俺を呼ぶ

 

「なんだ??」

 

「ドクターは腹が物凄く減った時…目の前で美味そうにステーキを食っている奴がいたら…どう思う??」

 

「たまらなく欲しくなるな…」

 

「そうだ…たまらなく欲しくなったんだ…賢い奴は、まずテーブルに座って少しでも良いから譲ってくれと頼む…だが、頭の悪い奴は奪ってしまうんだ…」

 

「そう言う事か…それに巻き込まれたんだな…」

 

「ありがとう、ドクター…そして、すまない…」

 

「いいんだ…お前は悪くない…」

 

彼はそう言うと、ようやく寝息を立てた

 

「休ませてやってくれ…そいつは戦士として立派に戦った…」

 

「鎮静剤が効いてきたんだ。さ、アンタも少し休むんだ」

 

「最初からアンタに着くべきだったな…」

 

「今からでも遅くないさ…」

 

「ありがとうドクター…そう言って貰えるだけで、気が楽になった…」

 

肩に手を置き、別のロシア兵の問診に向かう…

 

 

 

同時刻、キーウ上空

 

「了解しました。座標を送って下さい!!」

 

エドガーの機体に座標が転送される

 

《敵戦車隊の座標だ。地上も対応に当たっているが、数で押されそうだ!!頼めるか!!》

 

「了解、急行します!!」

 

赤黒いSu-57がバーナーを吹かす…

 

 

 

「航空支援はまだか!!」

 

「すぐに到着します!!」

 

「よし!!味方航空機に攻撃目標を転そ…」

 

地上のウクライナ兵が座標レーダーを照射しようとした瞬間、ロシア補給車がいきなり爆発を起こす

 

「なんだ…何が起こった…くっ!!」

 

続いて、連続して戦車が爆発を起こす

 

何の前触れも無く消え去った敵戦車に、味方であるウクライナ兵でさえ驚きを隠せないでいる

 

《まだ戦車はいますか??》

 

「誰だ!!」

 

《申し遅れました、サイクロップスです!!》

 

「隊長!!あれです!!」

 

「おぉ…」

 

雲の合間から垣間見えた、赤黒いSu-57

 

一瞬、ウクライナ兵達の時間が止まる…

 

その姿を目にした地上のウクライナ兵は、まるで自分達が巨大なドラゴンに立ち向かう兵士になった様な、得体の知れない恐怖に襲われる

 

ただ、そのドラゴンが愛国心の塊で、自分達の味方だと気付くまでに時間は掛からなかった

 

「さ…サイクロップスを援護しろ!!座標転送開始!!」

 

「了解!!」

 

「地対空ミサイル!!サイクロップスの周りのハエを叩き落とせ!!」

 

「了解です!!」

 

《座標を受け取りました!!爆撃開始!!》

 

今度は自走砲が爆撃の餌食になる

 

「サイクロップス!!輸送車が見えた!!弾薬を積んでる!!」

 

《少し大きい花火を上げます!!隠れていて下さい!!》

 

輸送車に着弾、辺りが一瞬眩しくなり、大爆発を起こす

 

残っていた数両のロシア戦車も爆発に巻き込まれ、使い物にならなくなる

 

「やった!!やったぞ!!サイクロップス!!ありがとう!!」

 

「やったぞーーー!!」

 

《後は任せましたよ、地上の勇者達》

 

「ありがとうサイクロップス!!祖国に栄光あれ!!」

 

《祖国に栄光あれ!!》

 

赤黒いSu-57は、手を振る地上のウクライナ兵の真上を飛び、キーウへと戻って行く…

 

 

 

 

その日の夜、セバストポリ…

 

「お疲れ様だな、マーカス」

 

集合場所になりつつある、焚き火の周りに倒木がある、簡易病院の横にある小さな場所

 

そこで寝転びながら、一日の終わりにマシュマロを焼いていた

 

「ボリスか。すまない、色々動かせてしまって…よいしょっ!!」

 

ボリスが何かを持って来てくれたので、倒木に座る

 

「何言ってるんだ!!マーカス、少し飲まないか!?」

 

「おっ、頂くよ!!」

 

ボリスが持って来てくれたビールを開け、軽く乾杯を交わし、半分程飲む

 

「くぁ〜!!美味い!!」

 

まさに体に染みる美味さ

 

傷に塗るアルコールがあるなら、酒は百薬の長と言われるアルコールなのがよく分かる

 

「気に入ってくれたか??」

 

「いやぁ〜美味い!!」

 

「そりゃあ良かった!!」

 

白い息を吐きながら、ボリスの後ろにある水平線を眺める

 

「はぁっ…ボリス、ウクライナは良い景色だな??」

 

「あぁ。色々観光地もある。ウクライナには城が多いんだ、それとな…」

 

ボリスから色んな観光地を聞く

 

その度に、このボリスがどれだけこの国を愛しているかよく分かる

 

「極めつけはな…トイレの歴史博物館だ!!」

 

「トイレって…あのトイレか??」

 

「そう、最初は少し抵抗があるんだがな、行ってみると意外に良い場所なんだ…これが」

 

「ただいま戻りました!!隊長、これも焼いてもいいですか??」

 

手に数匹の魚を引っ提げて涼平が戻って来た

 

「涼平か!!お帰り、魚か??いいぞ焼け焼け!!」

 

「ただいま戻りました、あっ!!涼平が先か!!」

 

「ぱん!!」

 

「おしゃけとじぅ〜しゅ!!」

 

園崎とひとみといよも戻り、今度はパンと飲み物を抱えている

 

「彼の手伝いをしていた。すぐ戻る…」

 

「待て待て待て、ニコラス!!お前はもうウクライナの一員だろ!!」

 

「いいのか、いても…」

 

ボリスに肩を持たれ、皆と一緒に倒木に座る

 

「今な、ウクライナの観光地の話をしていたんだ!!」

 

「次はニコラスの番だぞ??」

 

「私か…そうだな…」

 

ニコラスは嬉しそうに話す

 

「バイカル湖で釣りかぁ…」

 

「ふふ…良いものだぞ??この先、私が年老いた頃合いに湖の近くに家を建ててみたいもんだ」

 

「くましゃんのちぁりんこは??」

 

「おっと、それを忘れていたな。サーカスもある。女神が言った通り、熊が自転車に乗るんだ」

 

「サーカスで思い出した!!ロシアって言えば、美人が踊る奴もあった気がする…」

 

園崎がそう言うと、男性陣が一気にニコラスの方に向く

 

「ニコラス!!何だそれは!!」

 

「言え!!何だそのパーティーみたいなのは!!」

 

「美人が踊るって何ですか!!」

 

「ば、バレエだよ!!」

 

「バレエか…そう言えばバレエはロシア生まれか」

 

「違う。イタリア生まれだ。ロシアで広まって、伝統舞踊になった。マーカスはニホンから来たな??」

 

「横須賀から来た」

 

「Boom Danceみたいなものさ」

 

「ボンダンス…」

 

「「ちゃんかちゃんかちゃんかちゃんか!!」」

 

「盆踊りか!!」

 

ひとみといよが踊りだしたのを見て、ボンダンスが盆踊りと分かった

 

「ろしあのばえ〜きえ〜なひとおどう??」

 

「とても綺麗だぞ。踊れる審査もとても厳しい。だが…君達二人なら簡単に通るだろうな??」

 

「良かったな、ひとみ、いよ??」

 

「ひとみあ、しぉ〜らいおか〜しゃんになりあす!!」

 

「いよ、よこしゅかしゃんみたいになう!!」

 

「そうかそうか…その夢を忘れないでおくれよ??」

 

ニコラスは娘を撫でるように、ひとみといよの頭を撫でた…

 

そこで気付く

 

ひとみといよがニコラスに敵意を向けていない事を…

 

「…」

 

ひとみといよの頭を撫で、ニコラスは何かを考える…

 

「マーカス、ボリス、リョーへー、ソノ…君達に言わねばならない事がある」

 

 

 

 

 

ここに来てから一週間が経った

 

ロシア兵の面々も回復した者も多く、未だ悪態をついている連中はいるものの、ニコラスとボリスが宥めている現状だ

 

「ソノザキ、あのパンチを見てみたい」

 

「分かったよ…」

 

「あのパンチってなんです??」

 

「まぁ見てなリョーへー、凄いぞ??」

 

涼平はロシア兵の横に座り、園崎がトレーニングをする姿を見る

 

涼平はここに来てから比較的温和な姿勢を見せるロシア兵に更にロシア語を教えて貰い、段々流暢に話して来ている…

 

「フッ…!!」

 

スパパン!!と、サンドバッグ代わりに木から吊るされた土嚢から音が出る

 

三連撃が目にも止まらぬ速さで当たり、ロシア兵も涼平も拍手を送る

 

「あれがソノザキの必殺技だ。見た事ないか??マルセラ戦」

 

「やっぱり、凄いんですか??」

 

「そりゃあもう!!あれは凄かった…今まで見た試合で、一番最高だったよ!!」

 

「まさかあの伝説のボクサーがここにいるとはな…ほらっ」

 

「ありがとう」

 

「ありがとうございます!!」

 

ボリスが飲み物を持って来てくれたので、3人で倒木に座りながら飲む

 

「どうだ??ウチにはソノザキもいるぞ??」

 

「もう戦う気はないよ…どの道、俺達はニコラス艦長に拾われた、帰る家もない奴等ばかりさ…」

 

「そうか…」

 

「…」

 

涼平は何も言えずにいた

 

自分は隊長や大淀さん、それにあの日のきくづきに拾われ、命を救われ、そして第二の人生を手に入れた

 

この人達はどうなるのだろう…

 

戦争が終われば、どこに行くのだろう…

 

捕虜とはいえ、こんなにも話せたんだ

 

ウクライナの人達も優しい

 

きっと、お互いに良い方向に動くに決まってる

 

「よしっ…こんなモンにしとこう…ふぅ…」

 

「お疲れ様だなソノザキ!!ソノザキはこっちだ!!」

 

「ボリスさん!!ありがとうございます!!」

 

「ウズヴァールだ。疲労回復に良いぞ!!」

 

「頂きますっ!!」

 

「リョーへー、俺はルカだ」

 

「綾辻涼平です!!」

 

ロシア語をずっと涼平に教えていたり、ソノザキに一番最初に気付いて気絶させられたロシア兵の名前はルカ

 

まだ若い青年で、涼平とソノザキと大して歳は離れていないが、屈強そうな体付きをしている

 

「よーし!!一段落だ!!ん〜っ!!」

 

「「隊長!!」」

 

「マーカス!!お疲れ様だな!!ジュースもあるぞ!!」

 

ようやく一段落し、いつもの集合場所に来た

 

段々と、ここが捕虜収容所に近い形になっている

 

建物の建て直しも少しずつ進んでいる

 

比較的温和な兵は監視付きだが、それに従事してくれている奴もいる

 

「ありがとう、ドクター。大分良くなったよ」

 

「ま、もうしばらくの休養だな??ふぅ…」

 

タバコに火を点け、彼の話を聞く

 

「どうだ??ここの暮らしは」

 

「ロシアよりずっとマシさ。もう少し良くなったら、俺も何か手伝うよ」

 

「ふふ…ありがたい。ボリス!!良くなったら何か仕事がしたいらしい!!」

 

「おぉ!!山程あるぞ!!漁師はどうだ!!」

 

《創造主!!》

 

急にタナトスから通信が入る

 

「どうした??」

 

《ロシアから長距離ミサイルが来るでち!!そこから離れてタナトスに入るんでち!!》

 

「了解した!!園崎!!涼平!!タナトスに向え!!ボリス、俺と避難誘導を頼む!!」

 

「了解した!!立てるか!!」

 

「置いて行け。足手まといになるだけだ」

 

ボリスがそう言うと、涼平は彼の肩を持った

 

「行くぞ涼平っ!!」

 

「オッケー!!」

 

「やめろ…お前達まで死ぬぞ…」

 

「タナトス、弾着までどれ位ある!!」

 

《弾着まで3分でち。タナトスが何とか迎撃するでち…でも、量が量でち!!》

 

「了解した。何とかする!!二人共、彼を頼んだ!!」

 

「「了解です!!」」

 

彼は二人に任せ、病院の患者の搬送を急ぐ

 

もう歩ける奴がほとんどだが、数人はまたベッド生活だ

 

「話は聞いたマーカス!!こっちは任せろ!!」

 

残ったウクライナ兵と共に、ベッドの上のロシア兵の搬送する

 

「すまんっ…さぁ、行くぞ!!」

 

「置いて行け!!アンタらまで死ぬ事は無いだろ!!」

 

「黙ってろっ!!よっこらっ!!」

 

「…スパシーバ」

 

《弾着まで2分でち!!数十発落としたでちが、まだ来るでち!!》

 

「何撃って来たんだ!!」

 

「亜音速ミサイルだよ…ロシアの新型ミサイルだ…頼むドクター、置いて行ってくれ」

 

「ダメだ。必ず救う!!」

 

「…」

 

背中で泣いているのが聞こえた

 

このまま喉元を掻っ切られても構わない

 

今俺が背負っているのは、ロシア兵でもウクライナ兵でもない

 

一人の患者の命だ

 

「全員タナトスに避難しろ!!」

 

「さぁ行くぞ!!立って!!もう少しだ!!」

 

避難誘導をしつつ、タナトスへと向かう

 

《弾着まであと1分でち!!創造主!!》

 

タナトスの前に着く

 

「さぁ、行け!!」

 

「ドクター…ドクターはどうするんだ!!」

 

「すぐ行く!!」

 

「よく頑張った!!」

 

ウクライナ兵に中継し、タナトスの中へ避難させる

 

「待ってくれ!!ドクターが!!」

 

 

 

「あと少しです!!」

 

「もうひと踏ん張りだ!!」

 

3人で雄叫びを上げながら、彼を運ぶ

 

「よし!!よく頑張った!!入口まで誘導頼む!!」

 

「了解です!!」

 

「了解しました!!」

 

「よーし!!行くぞ!!」

 

彼を抱え、タナトスの入口寸前まで来た

 

「見えました!!」

 

「速い!!すぐ来るぞ!!」

 

《あれはデコイのミサイルでち!!本陣はすぐ来るでち!!》

 

タナトスがデコイ代わりの地対地ミサイルを迎撃している

 

《手が回らんでち!!早く!!》

 

「…」

 

「諦めるな!!」

 

「さぁ!!」

 

「…ありがとう、ドクター…リョーへー!!」

 

「うっ!!」

 

「あっ!!」

 

《防御形態に移行します》

 

「待て‼タナトス!!」

 

「ルカ!!」

 

涼平がルカと呼ばれた青年に手を伸ばす…

 

「ありがとうリョーへー!!最後の最後で…トモダチになってくれて!!」

 

今から死ぬと言うのに、ルカは優しく涼平に微笑んだ

 

その瞬間、タナトスの入口が閉められる

 

 

 

 

「ほえっ!!」

 

「いくれ!!」

 

「待っ…ゴボボ…」

 

「えっ…ガボボ…」

 

タナトスの入口が閉められた直後、何者かによって背中を蹴り飛ばされた二人…

 

 

 

「待って!!そんな!!」

 

外から爆発音が聞こえ、タナトスが揺れる…

 

《船体のダメージを計算中…ダメージ0。レーダーに敵影無し。放射能測定中…放射能汚染0。防御形態を解除します》

 

「隊長…ルカは…」

 

「…すまん」

 

「そんな…」

 

「ーい!!」

 

「誰だ??」

 

外から声が聞こえる…

 

外に出て、まだ熱い風を浴びる…

 

「おーい!!誰か引き上げてくれー!!」

 

「あ!?あっはっはっは!!涼平!!ロープ持って来てくれ!!」

 

「はは!!はいっ!!」

 

「待ってろ!!すぐに助けてやる!!」

 

海面にいたのは、ルカを抱えていたニコラス

 

「ほらよっ!!」

 

「よし…もう大丈夫だぞルカ」

 

「艦長…」

 

「彼等に着こう。我々を殺そうとした祖国より、我々を何度も救おうと命を張ってくれた彼等に」

 

「勿論です、艦長」

 

二人を引き上げ、タナトスの艦内に入れる…

 

「はっ!!ひとみ!!いよ!!」

 

「おるれ!!」

 

「あいっ!!」

 

ニコラスの両肩に乗って海中から上がって来た

 

どうやら、着弾寸前に二人を海へ突き落とし、海中で爆発を凌いでくれていたみたいだ

 

「はぁっ…良かった…何持ってるんだ??」

 

「こえ、ぶっさすあつ!!」

 

「こえ、しぉ〜ろく!!」

 

「そっか…ありがとな??」

 

「ドクター…市民はどうなった…」

 

《ロシアのヘナチョコミサイルは迎撃出来たでち。あの亜音速ミサイルだけ、タナトスにわざと誘導して被害を抑えたんでち》

 

「何なんだ…この戦艦は…」

 

《戦艦じゃねーでち!!一緒にすんなでち!!降りろ!!》

 

「タナトス!!そう怒るな!!ありがとうな??」

 

「タナトス…そうか!!この船が世界最強の潜水艦…」

 

「ほら、褒めてくれたぞ」

 

《今回だけは許してやるでち》

 

「待てマーカス。もしかすると…我々は破壊神を敵に回していたのか??」

 

《褒めても何にも出ないでち!!》

 

「だとさ。傷を見せてくれ」

 

ニコラスの傷を見る

 

どこも傷はなさそうだが、念の為診た方がいい

 

「そ、そうなると魔女を敵に回した事になる…」

 

「ジェミニの事か??」

 

「やめてくれマーカス…怖いんだ…ジェミニは魔女だ。何もかも破壊し、そして再生する…あれだ、昔話の絵本に出て来る魔女だよ…」

 

《だーっはっはっは!!魔女でち!!あーあ!!ニコラスも戦死でち!!》

 

「ふふ…妻が聞いたら怒りそうだ…」

 

「嘘だぁ…なぁ頼むマーカス。もう我々は二度と悪い事はしない。魔女にだけは言わないでくれ!!」

 

「言わないさ。もう仲間だろ??さ!!出来た!!」

 

「ありがとう…」

 

「良い事を教える…魔女は仲間になった奴には手を下さないらしいぞ??」

 

「ううっ…」

 

ニコラスは相当嫌なのか、半泣きで頭を横に振る

 

「だーいじょうぶだ!!な!!」

 

「そうだ。女神を呼んで来てくれないか…またあの二人に救われた。そう言えば、マーカスの娘か??」

 

「そうだ。ひとみ!!いよ!!」

 

「いちついっとくか??」

 

「こっちもあるれ!!」

 

二人が持っているのは、よほど気に入ったのかモルヒネシレット

 

こっちもあるで!!とは言っているが、両方共一緒だ

 

「言われてみればそうだ。目元とか、輪郭とか似ているな??」

 

「せあろ??」

 

「も〜っろほえていいれす!!」

 

「ありがとう。君達の御陰で命を救われた…」

 

「おっ…」

 

敵には容赦なく、触らせる事すらさせないひとみといよが、ニコラスに撫でて貰うために頭を前に出した

 

それは"この人が敵ではない"と認識している証拠だ…

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