艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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329話が終わりました

重たいお話の次は明るいお話です!

横須賀に突如として赴任したリチャード達の教師であった女性

清楚で美しく、そして小さなその女性…

酒瓶を片手にその辺をフラつきます


330話 女と酒瓶、ビール瓶

「よい、しょっと…ふぅっ…」

 

この日、アメリカに行って戻って来たイントレピッドDauから一人の女性が降りて来た

 

「ここがヨコスカ…」

 

重そうなケースの様な物を携え、辺りをキョロキョロする

 

「あっ!!もし!!そこのミスター!!」

 

俺は工廠へ向かう道中、その女性に声を掛けられた

 

「ゲ…ど、どうした??」

 

俺はその女性に見覚えがあった

 

あの日、あの街で別れたきり…

 

あの日あのままのゲルダがそこに居た

 

「リチャード中佐を知りませんか??私、本国から届け物がありまして…」

 

「あ…あぁ!!こっちだ!!」

 

「まぁ、助かりますっ!!」

 

彼女がゲルダであるはずがない

 

ゲルダは母さんのハズだ

 

その母さんは今俺達の基地にいる…

 

なら、彼女は誰だ…

 

「どうされました??」

 

「あ、あぁ!!知り合いに似ててな!!」

 

「そうでしたか!!」

 

横にいる彼女の顔を知らぬ間に見ていたみたいだ

 

見ない様にする為に、彼女の2歩程早く歩く

 

「ちょっと待って下さいっ!!」

 

「うっ…」

 

彼女は急に手を握って来た

 

「こうしていれば、貴方からはぐれませんね!!」

 

この行動力…やはりゲルダでは…

 

いや、そんなはずはない…

 

「そ、そうだな!!」

 

彼女は俺の手を握り、ニコニコしたままパイロット寮の前に着いた

 

「お客さんだ!!」

 

「美人のお客さんだろうなっ!?」

 

親父は雑誌を読んでいた手を止め、エントランスから此方に来る奥では、新聞を見ていたヴィンセントが一瞬此方を見た後、また視線を戻していた

 

「ごきげんよう!!リチャード中佐!!」

 

「今は中将です…"ミス・レンジャー"…」

 

「まぁっ!!ムスタングの様な貴方が…」

 

どうやら彼女は親父の知り合い

 

それも、パッと見た限り若い時からの知り合いだ

 

「リチャード中佐…いえ、中将。本国から此方を」

 

レンジャーと呼ばれた彼女は、持っていた重そうなケースの様な物を床に置き、中を開ける

 

「おぉ!!コーヒーガム!!」

 

あれだけデカいケースから出て来たのは、手の平に収まる位のコーヒーガム

 

「を、2つ」

 

「ありがとう!!ひっさびさに食うなぁ!!」

 

親父は早速コーヒーガムを剥き、口にする

 

「それとリチャード」

 

「んぁ??」

 

「私とお付き合いして下さるの、そろそろ考えて頂けました??」

 

親父は真顔でガムを噛みつつ、レンジャーの顔を見ている

 

対するレンジャーはニコニコ笑顔で親父を見る

 

「「美人の頼みは断らないんじゃないのか??」」

 

俺とヴィンセントの意見が一致し、親指を立て合う

 

「い、いやぁ〜…」

 

「私はウンと待ちましたよ??」

 

「あ!!UFO!!」

 

「リチャード??」

 

視線を外して逃げようとした親父だが、レンジャーにはお見通しの様で、更に近寄られる

 

「つ、妻がいる…」

 

「知ってます」

 

「息子もいる…」

 

「さぞ貴方の様に女落としが上手〜い息子さん何でしょうね??」

 

満面の笑みで、親父の胸板にレンジャーの胸が当たる位に近付く…

 

「おほほっ…相変わらず良い匂い…」

 

「リチャード!!」

 

「はひっ!!」

 

この時、俺とヴィンセントは同じ事を思っていた

 

どこ行ってもリチャード!!って言われるんだな…

 

モテるのは良いが、イントレ、スパイトさん、そしてレンジャーさん…軒並みリチャード!!と言われるのか…と…

 

「息子さんはどちらに??貴方の歳を考えると、彼くらいの年齢で…」

 

レンジャーは俺の方を見た

 

何故かは分からないが、冷や汗が出る…

 

「彼くらいの年齢で、女たらしの男性でしょう!!」

 

「そ、そうですね…貴方のおっしゃる通りだと思います…」

 

親父は他所を向いて棒読みに

 

ヴィンセントは新聞を見ながら肩を揺らしている

 

「ですが、きっと貴方に似てイケメンではありそうです!!探してみますね!!」

 

「あ!!ちょいちょい!!これはどうすんだ!?」

 

「べー!!だ!!行きましょうミスター!!」

 

俺はレンジャーに手を引かれ、パイロット寮を後にした

 

 

 

「あの人が来るとはなぁ…」

 

「ヤバい、ヴィンセント…」

 

「何だ??」

 

親父もヴィンセントも、走り去る俺達を見つめる…

 

「あの、べー!!は破壊力MAXだろ…」

 

「まぁ…」

 

「しゅき!!」

 

「イントレ〜!!」

 

「あ!!朝ごはん食べてこよ!!バイバ~イ!!」

 

仕留められる前に親父はパイロット寮から猛ダッシュで去った

 

「行っちゃったの??」

 

「逃げ足だけは速いからな…」

 

「ベランダから走って来たのに…」

 

 

 

 

俺とレンジャーは繁華街に来た

 

「ん〜…若い男性が少ないですね…」

 

「…」

 

俺は黙ったまま、少し下を向きながらレンジャーの顔を横目で見る

 

「リチャードの息子さんは、ここにいるのですか??」

 

「いるよ」

 

「息子さんのご職業は何をされているのですか??」

 

この質問は毎回困る

 

俺は果たしてパイロットになるのか、それとも医者か、エンジニアか…

 

ここは1つ言っておこう

 

「医者だ。艦娘のな」

 

「では治療室に行きましょう!!」

 

俺は普段工廠の一角で治療をしている

 

治療室に行くのは赤ちゃんであったり、俺が手が回らない時に小さな怪我をした際に行く

 

 

 

治療室に行くと、明石がいた

 

「あ!!大尉!!どうされました!?」

 

「こんにちは!!リチャードのご子息を探しているのですが…」

 

「治療じゃないですか!!ここで何か買いますか??」

 

明石は日用品の販売もしている

 

駅の一角にある売店を想像したら早いだろう、あんな感じだ

 

俺には必要な情報をいつでもくれるが、レンジャーは初にお目にかかる

 

情報を渡すとしても、客や患者でないなら言わないのが明石だ

 

「では、その…」

 

「チョコバーを2つと、ビスケットくれるか??」

 

「はーい!!」

 

明石はレジの横にあったチョコバーを2つ取り、レジに通す

 

「はいっ、どうぞ!!」

 

「それで、リチャードのご子息は…」

 

「えっと〜…」

 

明石は頬を指で掻きながら、俺に視線を送る

 

俺はレンジャーに見えない様に明石にピストルをチラつかせる

 

「は、繁華街の方に行きましたよ!!大尉、案内して貰えますか!?」

 

「オーケー、行こう!!捨てておいてくれ!!」

 

「わっかりました!!」

 

ビスケットを食べ、明石にゴミを渡すついでに千円を渡す

 

 

 

 

「ん〜…ご飯でも食べているのでしょうか…」

 

先程よく探査していなかった繁華街に戻って来た

 

「隊長〜!!」

 

涼平が紙袋を抱えてこっちに来た

 

「おっ!!涼平!!今日はこっちか??」

 

「はいっ!!今日は此方で休暇です!!はじめまして、自分は綾辻涼平と言います!!」

 

「レンジャーです。リチャード中将のご子息を探しているのですが…」

 

涼平は俺の事を知っている為、チラッと俺を見る

 

俺は半笑いで頭を横に振る

 

「自分は分かりません…あ、ですが!!彼はパイロットをしているので、飛行場にいるのでは!?」

 

「あらミスター、貴方医者だと…」

 

「パイロットと医者をしています。とても立派な方ですよ!!」

 

「まぁ!!リチャードと違って素敵!!」

 

「えぇ!!自分も尊敬しています!!では、自分はこれで!!」

 

涼平が話の分かる奴で本当に良かった

 

もう少しだけ素性を隠して、彼女の事を知りたい…

 

親父と一体どんな関係にあったのか…

 

涼平と別れて飛行場を目指す道中、レンジャーは安心したため息を吐いた

 

「良かった…」

 

「どうしてだ??」

 

「リチャードの様な女たらしでしたら、どうしようかと…」

 

「そんなにおや…彼の事が??」

 

「それはもう…彼はずっと、私の憧れですっ…」

 

レンジャーが親父を語る顔…

 

その顔は一人の少女であり、一人の女の顔をしていた…

 

 

 

 

飛行場が見えるベンチで腰を降ろし、さっき買ったチョコレートバーを渡す

 

「ありがとうございますっ!!」

 

俺もレンジャーもチョコレートバーを食べながら、飛行場で来るはずのない息子を待つ…

 

「まぁ!!美味しいっ!!」

 

「それがこの基地の名物さっ」

 

本当は携行性と栄養成分を考えた非常食の代わりになるチョコレートバー

 

俺が考えて、大淀が製品化して、いつの間にかライセンスを横須賀に買収され、売店に置かれている…

 

ひとみといよが遭難者の救助の為に一人2本ずつ常に持っているらしい

 

「とっても美味しいですっ!!」

 

「はっ…」

 

こっちを向いたレンジャーを見て、親父がレンジャーを好いていた理由が分かった

 

チョコレートバーを食べて、口周りがドロドロになっている

 

母さんも物を食べたら口周りがすぐ汚れる

 

「こっち向いて、ほら」

 

「んっ…」

 

「これじゃっ…美人が台無しだっ、ほらっ!!」

 

「ありがとう…ございます…」

 

レンジャーはジッ…と俺の顔を覗く様に見る

 

俺は照れを隠す様に、視線を右下にズラす

 

すると、レンジャーの足に傷があるのが見えた

 

「怪我してるじゃないか」

 

「あぁ…大丈夫ですよ!!降りる時に鞄の角で打っただけですっ!!」

 

「ジッとして…」

 

レンジャーの前に屈み、足を出させる

 

ストッキングかと思ったていたが、ストッキングみたいなソックスだ

 

スネ辺りの一部が伝線して、肌が見えている

 

そこに高速修復剤を調合したスプレーを吹きかけ、バンドエイドを貼る

 

これ位なら、今晩風呂に入るまでに治るだろう

 

「手際が良いですね…ミスター??」

 

「訓練したからなっ。よしっ、出来た!!」

 

「ふふっ…」

 

「いでっ」

 

母さんと同じく、処置が終わると弱蹴りを放つ

 

見れば見るほど、話せば話すほど、母さんに似ている…

 

俺も最初、ゲルダと勘違いした位だ…

 

「ミスター、貴方の名前を聞いていませんでした!!」

 

「マーカスだ」

 

「フルネームを…」

 

「マーカス・スティングレイだ」

 

「そう…ですか…」

 

「俺が親父の息子と??」

 

「えぇ…」

 

今物凄くヒントをやったのだが、レンジャーは気付いていない

 

もしかしたら相当天然なのかも知れないな…

 

横に座り直し、レンジャーの話を聞く…

 

「彼のどこに惚れたんだ??」

 

「全てです…勇猛果敢に空を行き、地に足降ろせば優しさに満ち溢れたあの姿…私は心を持っていかれました…」

 

やはりだ…

 

レンジャーは親父の話をすると女の顔になり、遠くを見つめる…

 

男に心底惚れている時の、女のする顔だ…

 

「きっと、遅かったのでしょう…それに、私がリチャードの教官だったのも災いして…」

 

「教官だったのか??」

 

「えぇ…彼は私の一番の生徒でした…」

 

何故かは分からないが、冷や汗が出る

 

「俺の教官も、レンジャーみたいな美人だったら良かったよ…」

 

「マーカスの教官はどんな方でした??」

 

「俺か??俺の教官は美人は美人なんだがなぁ…口うるさくて敵わん!!」

 

「大尉??」

 

話をしていれば張本人が来た

 

「あーっと!!レンジャー、あっちに行こう!!」

 

「は、はいっ!!」

 

何の気なしにレンジャーに手を差し伸べる

 

「はっ…!!」

 

何かを言いたそうな顔をしてすぐレンジャーはまた女の顔に戻り、俺の手を握る

 

「待ちなさい大尉!!」

 

「エスコート中だ!!また今度な!!」

 

「もぅ…しっかり案内をお願いしますよー!!」

 

香取から逃げる様に走り、広場に着いた

 

「はぁ!!はぁ!!ははは!!ここならもう大丈、夫…」

 

レンジャーが突然抱き着いて来た

 

何となくだが…今どうすれば正解なのか、分かる気がする…

 

俺は優しく、レンジャーの後頭部を撫でた

 

「貴方ね…リチャードのご子息さんは…」

 

「いかにも」

 

「そうでしたか…こんなに大きくなっていたとは…」

 

レンジャーは身長が小さい

 

俺のみぞおち辺りに頭が来る

 

その身長差でこっちを見られたら、必然的に上目遣いになる

 

あぁ…これだろうな、落ちたのは…

 

母さんも車椅子から親父を見るので、必然的に上目遣いになる

 

息子探しが終わった所で、パイロット寮へと戻る

 

「はっ!!そうだわマーカス!!マーカスとは貴方でしたのね!?あの雷鳥の!!」

 

「そうだっ」

 

「何でしたっけ??ウィービーンみたいな…」

 

「ワイバーンだ…」

 

だめだ、この人だいぶ天然だ…

 

「ここでタバコ吸ってから行く」

 

パイロット寮の前にある灰皿の前でタバコを取り出す

 

親父と二人にした方が良いと思ったのだが…

 

「ならここで待ってますっ!!」

 

タバコに火を点け、レンジャーから少し離れて吸おうとした

 

「ふふっ!!」

 

「危ないぞ…」

 

レンジャーは俺の横に座り、膝辺りに肘をつき、こっちを見て来る…

 

「吸い方まで同じなのですね…不思議です…」

 

「そ、そうかい…」

 

だめだ!!この人のペースに持っていかれる!!

 

「煙草を咥えたまま話す癖…もっ!!こっち見て!!」

 

「うっ…!!」

 

急に顔を持たれ、タバコを取られる

 

「ふふっ…」

 

レンジャーは俺のタバコを咥え、一度吹かす

 

「どうしましたマーカス…攻められるのはお嫌い??」

 

「い、いや…嫌いじゃ、ない!!」

 

「ホント…よく見ると…フーッ、リチャードと似てるわ…」

 

「うっ…」

 

紫煙を吐きながら、俺にゆっくり顔を近付ける…

 

いつの間にかベンチに押し倒され、俺の腹の上にレンジャーが乗っている状態になっている

 

「あ!!レイ君!!」

 

「博士っ!!レンジャー、ちょっとすまん!!」

 

「むっ…」

 

タイミング良く大淀博士が来てくれた

 

「お??お邪魔だったかな??」

 

「そんな事ない!!あぁそうだ、この人はレンジャーだ!!」

 

「レンジャーです!!」

 

「そっか。ちょっとレイ君借りるね!!行こっ!!」

 

大淀がうまくレンジャーから引き剥がしてくれた

 

「ジュース飲もっか!!大淀さん喉乾いちゃった!!」

 

「ちょっと待っててくれ」

 

自販機でオレンジジュースを買い、大淀と埠頭に座って飲む

 

「レイ君も大変だねぇ??」

 

「あの人は親父の恋人だったらしい…」

 

「だと思った。あの人が君を見てる目は、別の男を見てる目だった」

 

「う〜ん…」

 

無意識の内に右手で後頭部を掻く

 

「ちょっと照れてるかい??」

 

「まぁな…あれだけ近寄られりゃ、誰だって照れもする…良く分かったな??」

 

「んふふ!!大淀さんは何でもお見通しだよ!!」

 

いつもの大淀に、いつもの笑顔を送る

 

「あ、レイ君。麻酔銃いるかい??ちょっと分量間違えて致死量しか入ってないけど!!」

 

「だ、駄菓子感覚で致死量言うな!!」

 

「良かった、いつものレイ君で!!大淀さん、研究に戻るね!!あ、また一緒にお散歩してくれるかい??」

 

「いつでもっ!!」

 

レンジャーには見透かされて

 

大淀には見抜かれる

 

ジェミニには押し切られる

 

隊長が年下の押しに弱ければ、俺は年上の押しに弱いと言われていたのは、あながち間違いではないな…

 

 

 

 

夜、パイロット寮ではレンジャーの歓迎会が行われていた

 

「あ、レイ!!飲んで飲んで!!」

 

「お、おぉ!!」

 

顔を真っ赤にしたジェミニが、満面の笑みで俺にジョッキを渡し、そこにビールを注ぐ

 

「ぜ〜んぶ飲んだら、お姉ちゃんがチューしたげるからっ…ねっ??」

 

「はいはい、分かりましたよ〜」

 

ジェミニの前でジョッキのビールを飲み干す

 

「わ〜!!レイ凄い凄い!!ん〜んっ!!さっ!!楽しんで来なさい!!」

 

ちゃんと頬にキスしてくれた…

 

…やっぱり嬉しい

 

「おっ、ワシントン!!」

 

「ぱぴ〜」

 

ワシントンはせっせこせっせこ料理を運んでいる

 

「お手伝いしてくれてるのか??」

 

「びんせんとさんと、これたべる」

 

「そっかそっか、行っておいで!!」

 

「びんせんとさ」

 

「ワシントン!!よっと!!」

 

ワシントンはヴィンセントを見つけると料理を机に置き、すぐに彼に飛び付く

 

「あっはっはっは〜!!レ〜イ君〜!!飲んでるぅ〜!?」

 

左腕を握られ、体を寄せられる

 

「ちょっと寒くてさ〜、ちょっとレイ君で暖まらせて〜!!」

 

左手を握られたまま、俺のコートのポケットに突っ込まれた

 

「はは!!大淀もはっちゃけてるな!!」

 

「…いいよ、思いっきり握って。あ!!このワインちょ〜だい!!」

 

耳元でそう言われ、大淀がシラフと気付いたと同時に、大淀の手を強く握る

 

「どうぞ大淀博士!!」

 

「こ〜ら〜涼平くぅん??大淀さんでしょ〜??」

 

「は、はい!!大淀さん!!」

 

涼平はワインを注いで回っている

 

ちょくちょくベテランのパイロットから口に何か放り込んで貰っているので、腹は満たされているみたいだ

 

「…もう大丈夫かい??」

 

「すまん…助かった…」

 

「大丈夫、大丈夫だよ…あ!!ほら!!レンジャーさんの歓迎会だからね!!レイ君も改めて挨拶しなきゃ!!ほらっ!!」

 

「ありがとう」

 

レンジャーの前に出された

 

出されたのはいいが…

 

「あははははは!!グラスが開いてる〜!!ね!?飲んでっ!!は~いっ!!乾杯〜!!」

 

「フレッチャー!!フレッチャー助けて!!ママーッ!!」

 

「ダメですよリチャード!!ちゃぁんとエスコートして下さいっ!!」

 

レンジャーの横には親父

 

親父は何杯も注がれる酒に、フレッチャーに助けを求める

 

「エスコートして下さ〜い!!ギューッ!!」

 

レンジャーはとっくに出来上がっており、親父に超が付くベッタリ状態

 

「私はここにしますねリチャード!!」

 

親父の膝の上にフレッチャーが座る

 

「リチャードモテてるわね!!はい、あ〜んっ!!」

 

「助けてって言ってんの!!あむっ…」

 

レンジャーの反対側にイントレさんが座り、親父の口にチキンを放り込む

 

その光景を見て、何故か分からないがホッとする

 

当時の親父を今、垣間見てるのかも知れないからだ

 

「創造主様。お時間宜しいですか??」

 

食べ物ではなく、タブレットを片手にした親潮が来た

 

「どうした??」

 

「レンジャーさんのお部屋なのですが…」

 

親潮にタブレットを見せて貰い、レンジャーに振り当てられた部屋の場所を見る

 

「片付けが済んでいません。このままでは一旦創造主様の部屋に放り込むしか道はないとジェミニ様が…」

 

「俺が行こう。それはマズイ」

 

「親潮も行きます」

 

親潮に先導して貰い、まずは俺の部屋に来た

 

「やはり情報機器が??」

 

「それよかヤバい!!」

 

「そんな機密事項が…」

 

俺は引き出しを開ける

 

中には大した物は入っていない

 

「特に機密事項は見当たりません」

 

親潮はそう言うが引き出しの中にはペンがあり、それを手に取る

 

「マーカス。マーカス・スティングレイ」

 

ペンに付けられたマイクにそう言うと、別の引き出しの鍵が開く音がした

 

「本が出て来ました」

 

「よし。これをこっちに移動するからな」

 

「畏まりました」

 

こんな厳重に鍵を掛けてある場所に仕舞ってある本…

 

つまりは…

 

「イントレピッドさんにそっくりな方が裸になっています…はぇ〜…こっちは貴子様にそっくりな方が…」

 

「シッ!!ここで見た事は機密事項にするんだ…」

 

「か、畏まりました…しかし創造主様…犬系褐色人妻とは…むぐっ‼」

 

急いで親潮の口を手で抑える

 

「いいか…この事は誰にも言うな…俺だって男の子だ…」

 

「ふ、ふぁい…かひこまりまひた…」

 

親潮の口から手を離す…

 

「こんな事は言いたくないが、今見た記憶はロックするんだ…」

 

「現時刻の記憶をロックしました」

 

親潮の記憶をロックさせたと同時に、タブレットに通信が入る

 

「俺だ。どうした」

 

《創造主は巨乳が好きなんでちな。このタナトスはよーーーく覚えたでち!!》

 

通信先はタナトス

 

煽られている最中、部屋のカメラに目をやる

 

チクショウ!!こっち向いてんじゃねーか!!

 

「野郎…遠隔でやりやがったな!?」

 

《タナトスにそんな事言って良いんでちか!?もう音声データやらないでち》

 

「大変申し訳ございませんでした!!どうか!!どうかこの事は御内密に!!」

 

カメラの前でそれはもう情けなく頭を垂れる

 

《次逆らったら音声データ全部ライコビッチの奴にしてやるでち》

 

「二度と逆らいません…申し訳ございません…」

 

《分かれば良いんでち。親潮、創造主はこういう趣味でちが…まぁその…これは軍の機密より大事な事案でち。ジェミニには絶対内緒にするでち》

 

「はいっ。畏まりました!!」

 

「へぇ〜??イントレピッドに貴子さん、それとボスねぇ??」

 

「かひゅっ…」

 

「ひうっ…」

 

俺も親潮も変な声が出る…

 

後ろから現状一番聞きたくない声が聞こえた気がする…

 

「あら、こっちは陸奥にそっくり…ふ〜ん??」

 

「じぇ…ジェミニさん…」

 

「なぁに??」

 

「そ、そういうの…よくないとおもいます…」

 

「そうね。アンタもこういうの必要よね」

 

凄い殺気を感じる…

 

「お、親潮は何も見ていません…」

 

「親潮は良い子だもの。見てないわよね〜」

 

「男の子はこうでなくっちゃ!!」

 

もう一つ声が聞こえた…

 

「なっ‼レンジャー!?」

 

流石に振り返る

 

そこにはやっぱりレンジャーがいる

 

そして手にはイントレピッドに良く似た女性が表紙の薄っすい本がある

 

「レンジャー先生が二人っきりでお話があるみたい。じゃ、おやすみ〜!!」

 

「待て!!待ってお願い!!堂々と浮気だぞおい!!」

 

「さ、親潮はアタシとアイス食べましょうね〜!!」

 

「ジェミニ!!」

 

そう言うとジェミニは俺の胸倉を引き寄せ、近付ける

 

「ホントに話があるらしいの、いい??アタシとアンタの沽券に関わるかも知れないの…話位は聞いてあげてよ…」

 

「そういう事なら早く言えよ…」

 

「エロ本バラ撒かれたくないでしょ??」

 

「誠心誠意努めさせて頂きます…はい…」

 

俺がそう言うとジェミニは離してくれた

 

「じゃ!!おやすみ〜!!ばいば〜い!!」

 

無情にも扉は閉められた

 

「…タナトス」

 

《あぁっ!!良い子は寝る時間でち!!創造主様!!おやすみなさいでち!!ばいば〜いでち!!》

 

「待て!!くおぉっ!!」

 

ここに来てようやく頭を抱える

 

チクショウ…この酔っ払いのネーチャンと一晩一緒とかどう考えてもヤバいだろ…

 

「さて…マーカス…」

 

俺の秋雲コレクションが入っている引き出しが閉められる…

 

「はぁ…まぁいい。それでっ??話とは??」

 

ベッドに座り、レンジャーの方を見る

 

「ふふっ…分かってるのでしょう??」

 

「うっ!!」

 

急に悪い顔をして、俺の肩を押してベッドに押し倒す

 

流石は艦娘…パワーが桁違いだ…

 

「さっきの続きですよ、マーカス??」

 

「酒臭い女とはゴメンだ!!」

 

「まぁそう言わずに!!」

 

手をしっかりホールドされる

 

「マーカス??この間ロシアに艦隊を手配してあげたのは誰だと思います??」

 

「ジェミニじゃ…ねぇのかっ!!」

 

「ジェミニ元帥なら可能でしょうね。ただ、アメリカに掛け合ったのは誰だと思います??」

 

「…アンタだってのか??」

 

「そうです。私が空母三隻を手配しました」

 

先程ジェミニが言っていたのはどうやら本当の様だ…

 

「だったら話は違う。ありがとう」

 

「まぁ!!素直な良い子!!素直な子にはご褒美をあげないといけませんね!!」

 

ここは身を任せよう…

 

言うて美人だしな…

 

「マーカスは何が好きです??やはり先程の本のような…」

 

「なら、それを…」

 

「ふふっ…」

 

…違うな

 

確かにレンジャーは美人で可愛い

 

ただ…レンジャーは俺が好きな訳じゃない

 

俺に親父を重ねているだけだ…

 

「レンジャー」

 

「身を任せてマーカス…私に全部…」

 

「やっぱり駄目だ…」

 

「どうしてです!?」

 

「アンタがこうしたいのは俺じゃないだろ」

 

「そんな事!!」

 

「艦隊を手配してくれたのは本当にありがたい…ただな、レンジャー…アンタの人生をフイにしてまでこんな事しなくても良いだろ??」

 

「やめて下さいマーカス…止め方までリチャードと同じだなんて…」

 

「それが答えだ、レンジャー」

 

レンジャーはシュンとしてしまい、力が抜ける

 

その隙に俺はレンジャーの手の拘束から逃れる

 

「私…今からマーカスにとても酷い事を言います…」

 

「死んでくれ以外で頼むぞ??」

 

「そんな事言いません!!ただ…今日だけ…今日だけ、リチャードの代わりでいて頂けませんか??」

 

「…分かった」

 

結局、レンジャーを胸元で抱っこしたまま眠る事になる

 

先に眠ったのは俺の方

 

レンジャーの甘い香りを嗅いでいると、その内まぶたが落ちて来た…

 

なるほど…

 

親父が落ちたのは…そういう事…か…

 

 

 

 

次の日の朝…

 

「ん〜っ‼おはようございますマーカス!!」

 

「おはよう…」

 

体が重い…そして痛い…

 

そういや、レンジャーが酔っ払っていたのを忘れていた…

 

寝相は悪いわ、体は柔らかいわ…

何回も俺を蹴るわ、体は柔らかいわ…

 

挙げ句の果てには俺が起きると信じられないパワーで引き寄せて来るわ…

 

とてもじゃないが良い朝ではない…

 

可愛い顔してとんでもない寝相だったな…

 

「マーカスはもう少し休んでいて下さい。私がジェミニに言っておきますから」

 

「ん…」

 

「…ありがとうございます、マーカス」

 

「こちらこそ…」

 

レンジャーが部屋から出る

 

とはいえ、もう目も覚めている

 

…シャワーでも浴びるか

 

 

 

 

まだ早朝だ、シャワールームには誰もいない

 

ついでに風呂にも誰もいない

 

よし、湯船に浸かろう

 

体を洗っていると、ドアが開く…

 

「ここにいましたか!!」

 

「グッモーニンマーカス!!」

 

「ちょっと待ってくれ!!すぐに出る!!」

 

声的に大人の連中だ

 

頭を洗っているのですぐに流す

 

「いいのですマーカス。今はどちらでもない時間です」

 

「んっふふっ…ちゃんとゴシゴシしましょうね??」

 

両脇にその女性二人が座る…

 

嫌な予感がして、急いで顔を流す

 

「レ、レンジャーとイントレか…」

 

「も、もう出る!!」

 

「まぁそう言わずに!!」

 

「うぐぁぁぁあ!!」

 

レンジャーに腕を掴まれ、そのまま湯船に放り投げられる

 

二人が湯船に入る水音が聞こえる…

 

「フェアリーズ!!マーカスにドリンクを!!」

 

イントレがそう言うと、いつもの穴からお盆に乗ったサイダーが出て来た

 

「注いであげるわ!!」

 

「一人で飲めるよ…」

 

「湯船で溺れるか、私達に溺れるか…選んで下さい」

 

「うっ…」

 

どう考えても後者の方が幸せな死に方なので、コップをイントレの前に差し出す…

 

「んふふっ…マーカスはあまりお酒を飲まないのですか??」

 

「そ、そうだな!!レンジャーさん、当たってますけど!!」

 

左腕にはレンジャーの結構立派な奴が当たってる

 

「当ててるんですよ何言ってるんですか!!」

 

「はーい、マーカス!!」

 

「ありがとう…」

 

「フェアリーズ!!このレンジャーにもドリンクを!!」

 

《何出したらえぇんや!!》

 

《マーカスさんはサイダーやろ??サイダーやったらアカンか??》

 

《分からん!!朝やけどこれでえぇやろ!!行け!!》

 

妖精達は散々迷った挙げ句、お盆にビールを乗せて流して来た

 

「これですこれです…」

 

スポンと音がした後、レンジャーは瓶ごとビールを飲み始める

 

「マーカス…レンジャーはね??ず〜っとリチャードが好きなの」

 

「何となく分かるよ…」

 

「…スパイトさんとちょっと似てるわよね??」

 

「母さんとか…」

 

初対面の時、若い時の母さんと間違えたとは言えない…

 

「あ〜っ!!イケメンみ〜っけっ!!」

 

「うっ…」

 

「こっちに来なさいっ!!」

 

フルパワーでレンジャーの方に引き寄せられる

 

「イントレのおっきいのもいいですけど、レンジャーのもわりゅくはないでしょ??」

 

「ヤバいっ…」

 

相当酒が回ってるな、こりゃ…

 

「あ、アレンとかはどうだ!?アイツもイケメンだぜ!?」

 

「マーカスがいいですっ!!」

 

「ここはイケメン多いわよレンジャー??」

 

「んふふっ!!この子はレンジャーが貰いますっ!!ぎゅ〜っ!!」

 

胸に顔を埋められる…

 

「あら…おかしいですね…こうすると妖精になるはずですが…」

 

「マーカスは専属決まってるわよ??」

 

「そんな…この子欲しいですっ!!」

 

「それと、やり方が違うわよ??」

 

「胸に抱き寄せるのではないのですか!?」

 

「マーカス!!」

 

イントレが俺の頭を撫でた

 

俺の体が小さくなり、レンジャーの手から抜け出せた

 

「ぷはぁ!!はぁ…はぁ…一番幸せな死に方する所だった…」

 

「マーカスは頭を撫でるの!!」

 

「そうでしたか…どれどれ…」

 

グワァ!!とレンジャーの右手が襲い掛かる!!

 

身構えた直後、人差し指と中指で頭を撫でられる…

 

「元に戻った…」

 

「マーカス程のパイロットを射止める空母とは一体…」

 

レンジャーは悩み始める

 

「きっと巨乳で母性が溢れる空母の方でしょう…つまり!!ちょっと説得してお願いしてみましょう!!」

 

ザバァ!!とレンジャーが湯船から立ち上がる

 

「思い立ったが吉日ですっ!!では!!」

 

そのままレンジャーは大浴場から出て行った

 

「行っちゃったぞ??」

 

「見つけられると良いわね??」

 

イントレは楽観的だ…

 

果たしてレンジャーは見つけられるのだろうか…

 

 

 

 

「むむむ…ジュンヨーもサラトガも巨乳で母性もありますがマーカスの専属ではない…」

 

ベンチに座ってビール瓶を横に置き、リストアップした空母艦娘を見直す

 

巨乳で母性が強い空母艦娘を片っ端から当たっている

 

「みて、あさからおさけ」

 

「ホントですね…赤城さん、ありがとうございますっ!!」

 

そこに鳳翔とそのお手伝いをしている赤城達が通りかかる

 

「もし!!そこのお二方!!空母の方では!?」

 

「あかぎ」

 

「鳳翔です。貴方は…」

 

「私はレンジャー!!今マーカスの専属の艦娘を探しているのです!!」

 

「あかぎちがう」

 

「私も違います…でも確かに大尉は欲しいですよね…」

 

言われて鳳翔も悩みだす…

 

「そうでしょう!!あの様な立派なパイロット、久々に出逢いました!!」

 

「でかいおちちすき」

 

「やっぱり巨乳の艦娘ですか…ありがとうございます!!」

 

レンジャーはダッシュでその場を去る

 

「嵐の様な御方ですね…」

 

「わるいひとちがう」

 

「ふふっ‼そうですねっ!!」

 

赤城も鳳翔もレンジャーを見て微笑む…

 

 

 

 

「蒼龍さんは巨乳ですが人を食べる傾向が…飛龍さんは別の方が好き…」

 

またもや悩むレンジャー

 

「まさかイントレでは!?いいえ…確かにマーカスを妖精に出来ましたが、専属ではないですね…」

 

「なんだこの小さい姫みたいなのは」

 

「ぼっちゃんの事言ってたパース!!」

 

「おい貴様!!マーカスを探しているのか!!」

 

たまたまご飯を食べに来ていたアークとパース

 

昼間からお酒を飲みながら自身達の坊っちゃんを探し回っている不審人物極まりない

 

「むむっ!!貴方空母では!!」

 

「そうだが…」

 

そこでレンジャーは視線を落とす

 

視線の先にはアークの胸がある

 

「しかし…違いますね!!」

 

「何処を見てそう思った貴様!!」

 

「ななななんでもないです!!では!!」

 

レンジャーはまたしてもダッシュで逃げる

 

「逃げ足は速い奴め…」

 

「空母の子を探してたパース」

 

 

 

 

「お酒が切れて来ました…」

 

レンジャーが向かったのはスーぴゃ〜マーケット

 

チューハイを3本位買い、レジに向かう

 

「いらっしゃいませ!!」

 

「貴方も艦娘ですか??」

 

「矢矧がですか??はいっ、軽巡の矢矧ですっ!!」

 

「美人で巨乳…マーカスの専属空母の方を探しているのですが、知りませんか??」

 

「せん…マーカス大尉は立派なお方です。まだ貴方を良く知らないので…ごめんなさい…」

 

「マーカスは立派なお方ですよね…」

 

「この矢矧を救ってくれました…なので、2度目の人生はこうして戦いの無い場で…」

 

「うびゃー!!」

 

酒匂の悲鳴が聞こえた直後、何かが倒れる音がした

 

「ああっ、もうっ!!すみません!!ありがとうございました!!」

 

「マーカスを護ろうとしている…やはり、マーカスは立派ですね…ますます気になって来ました!!」

 

レンジャーはチューハイの缶を開けながら再び探し始める…

 

 

 

「こんにちは!!」

 

「いらっしゃい!!貴方がレンジャーさんね!!」

 

レンジャーが訪れたのは空母寮

 

ここにも巨乳で母性が強い空母艦娘がいる

 

「貴方が千代田と千歳ね!!」

 

「そうよ!!」

 

「そうです。よろしくお願いしますね??」

 

「むむむ…」

 

レンジャーは顎の下に手を置き、二人をマジマジと見る…

 

「何方かがマーカスの専属の可能性が…」

 

「私は違うわ??」

 

「私も違います…」

 

速攻違うと言われる

 

千歳はまだしも、千代田にはちゃんと専属がいる

 

「他にいるのでしょうか…」

 

「そういえば大尉って、金髪の人好きよね??」

 

「言ってたわね!!金髪の方を当たってみてはどうですか??」

 

「レンジャーも金髪なのですが…何かが足りないと…むむむ…ありがとうございます!!」

 

レンジャーは空母寮から出る…

 

「…朝からお酒飲んでたわね??」

 

「もしかしてジュースと間違えてるんじゃない…」

 

 

 

 

「金髪、巨乳、母性…つまりこのレンジャー!!」

 

「違うと思うぞ…」

 

またベンチに座ってブツブツ言っていたレンジャーの横にアレンが座る

 

「貴方はマクレガー大尉!!」

 

「アレン!!来たよ!!」

 

「ママ!!」

 

待ち合わせていたガンビアが来た

 

「金髪!!巨乳!!ママと言う事は母性!!もし!!貴方マーカスの専属空母では!!」

 

「無理無理無理!!マーカスが扱えるのはもっと強い人じゃないと!!私には扱い切れないよぉ…」

 

「もっと強い人…」

 

今度はブツブツ言いながら何処かへ行ってしまった…

 

 

 

 

「レイの専属空母は見つかった??」

 

「いえ…」

 

執務室に一旦行き、チューハイの缶を置いてジェミニと話す

 

「こういう時はね、逆を探してみるの!!」

 

「逆、ですか??貧乳で甘えん坊な子を??」

 

「そっ」

 

「なるほど…見つからないにしても、何かヒントはあるかも知れませんね!!行って来ます!!」

 

レンジャーは執務室から出た

 

「昼間っから酒飲んでたぜ??」

 

「チューハイをお昼から浴びる様に…」

 

「多分ガソリンみたいなものよ…」

 

 

 

 

レンジャーは学校の前に来た

 

「ちょいちょいちょいちょい…」

 

「なになに??」

 

「あれ見ろよ…」

 

巡回の番が当たっていた涼平と園崎が、学校の柵をよじ登ろうとしていたレンジャーを見つける

 

「「コラーーーッ!!」」

 

「キャッ!!」

 

ドサッと尻もちを付くレンジャー

 

「なぁ〜にやってんのかなぁ〜美人さん??」

 

「ここは学校ですよ〜??」

 

「あはは…」

 

二人の気迫に負けるレンジャー

 

「…この二人も相当強いパイロット」

 

「自分は専属がいますよ…」

 

「この人か!!報告にあったのは!!」

 

「そんな酷い!!レンジャーが不審者みたいな!!」

 

「学校のフェンス登ってる時点で不審者だろ〜が!!」

 

「連行しよう、ソノ」

 

「よっしゃ!!そうこなくっちゃな!!」

 

「くぅ…こ、こうなったら!!えいっ!!」

 

レンジャーはパワーを使い、二人を引き寄せた後、胸元に埋めて頭を撫でる

 

「しまっ…!!」

 

「はなっ…せ!!おぉっ!?」

 

「んっふっふっふ〜」

 

右手に涼平、左手にソノが乗っている

 

「レンジャーは不審者ではありません。マーカスの専属空母を探しているのです」

 

「元に戻せー!!」

 

「なんだこのちっせぇのは!!」

 

「ちょっと吸っておきましょうか…ふふふ…」

 

「「ぎゃーーー!!」」

 

「だめだよ!!りょうへいくんとそのざきさんすったら!!」

 

「たいほうちゃん!!」

 

「たいほうちゃん!!助けて!!」

 

タイミング良くたいほうが下校して来た

 

「たいほうにかして??」

 

「どうするのです??」

 

「よしよし…」

 

たいほうが頭を撫でると、二人は元に戻った

 

「はぁ…はぁ…たいほうちゃん、ありがとう…」

 

「ありがとうたいほうちゃん…」

 

酒飲み美人の目の前で、少女の足にしがみついて怯える白鳥と恐れられるパイロットと、最強のボクサー…

 

非常に貴重な構図だが、本人二人はそれどころではない

 

「マーカスの専属空母を知っていますか??」

 

「うん!!」

 

「まぁ!!そうでしたか!!その方は何方に!?」

 

「おっ!!たいほう!!今日は学校終わりか??」

 

「すてぃんぐれい!!よいしょっ…よいしょっ…」

 

「待って!!見捨てないで下さい!!」

 

「置いてかないで下さいたいほうさん!!」

 

たいほうは両足に二人を付けたままこっちに来た

 

「だいじょうぶだよ…たいほうにまかせて!!」

 

「何やってんだ…」

 

「妖精にして来るんです!!」

 

「たいほうさんがいないと対抗出来なくて!!」

 

「そういう事か…」

 

「すてぃんぐれい、いい??」

 

「ん…いいよ…」

 

たいほうの前に頭を出すと、撫でてくれた

 

みるみる内に俺の体が小さくなる…

 

「まぁ…まぁまぁまぁ!!貴方がマーカスの専属空母!!」

 

「たいほうのぱいろっとなんだよ!!」

 

「そうでしたかそうでしたか…てぃーほう、物は相談ですが…半永久的にマーカスを貸してくれませんか??」

 

「だめ!!」

 

「では四半世紀!!」

 

「やだ!!」

 

「では10年程!!」

 

「いや!!」

 

「何ヶ月ならいいですか!!」

 

「たいほうの!!」

 

「ここでなら見つかりますって!!」

 

「腕の立つパイロットだらけですって!!」

 

涼平とソノが必死の説得に入る

 

「マーカスを超える人材がいるとでも…」

 

「そりゃ…」

 

「まぁな…」

 

「ほらぁ!!やっぱりいないんじゃないですかぁ!!うえ〜ん!!嘘つきぃ〜!!」

 

レンジャーは泣き出してしまう…

 

「すてぃんぐれいもどる??」

 

「そうだな…戻してくれるか??」

 

たいほうに頭を撫でて貰い、元の姿に戻る

 

「今だ!!」

 

「「「あっ!!」」」

 

一瞬の隙を突いて、俺はレンジャーに引き寄せられる

 

「いっただきぃ〜だもんねぇ〜!!ぷぁ!!」

 

そのまま逃走しようとしたレンジャーの頭に雑誌ハリセンが当たる

 

「コラ!!子供から物取っちゃダメでしょ!!ごめんなさいねてぃーほう…」

 

「ありがとういんとれさん!!」

 

「こっちへ来なさい!!オシオキよ!!」

 

「ヤダヤダヤダヤダー!!マーカス欲しい!!マーカス欲しい!!」

 

レンジャーはイントレのワキに抱えられてパイロット寮に連行された…

 

「たいほうさん、ありがとうございました!!」

 

「ホント助かりました!!」

 

「またあそんでね!!」

 

二人は巡回に戻る

 

「ありがとな、たいほう」

 

「すてぃんぐれいのおともだちだもん!!」

 

「ふふ…お菓子買って帰るか!!」

 

「うんっ!!」

 

たいほうを頭に乗せたまま、駄菓子屋に行って、基地へと送る…

 

 

 

 

「うぉぉぉぉおん!!うぉんうぉんうぉん!!マーガズほぢぃぃぃい!!」

 

パイロット寮のホールで獣みたいな泣き方をして、机に突っ伏しているレンジャー

 

その横にはウィスキーを注いでる私がいる

 

「なんちゅう泣き方してんだ…ほら、飲め!!」

 

「わぁっ!!ありがとうございますリチャード!!」

 

「現金な奴め…」

 

「マーカスが欲しいのは分かるわ…あの子、何でも出来ちゃうものね…」

 

正面に座っているのは、あの後特にオシオキをせずに背中を擦っていたイントレがいる

 

「イントレもそう思いますか!?」

 

「分かるわ!!」

 

「ったく…人の息子を何だと思ってんだ…」

 

「ほらぁ〜、リチャーロ!!ここに注ぎなしゃい!!」

 

「分かった分かった…」

 

しばらくすると飲み干したウィスキーの瓶とグラスが机に残り、レンジャーはようやく寝息を立てた

 

「そうすると可愛いわね??」

 

私の肩に頭を置いて、大人しく寝息を立てるレンジャー

 

こうしていると美人で可愛い女の子なんだが…

 

「ずっとこうしていてくれたら…いや、何でもないっ…」

 

「ふふっ…」

 

「なぁ、イントレ…」

 

「なぁに??」

 

イントレが微笑み、私が見つめる、一瞬の静かな時間…

 

互いに言う事は分かっていた…

 

「…コイツ何本開けた」

 

「50本は行ったわよ…」

 

「かぁ〜っ!!寝させるのにこんな掛かんのか!!」

 

机の上にはウィスキーの瓶やらビールの瓶、挙句の果てには日本酒の空き瓶まである

 

「教官時代からかなり酒飲みだったでしょ!?悪化してるんじゃない!?」

 

「何とかならんのか…」

 

「お酒で動いてる所あるからね、レンジャー…ね、もしかして別れた原因って…」

 

「この惨状が答えだ…」

 

流石の私もこの量の酒飲みには耐えられずに、過去レンジャーと別れてしまった

 

それでも諦めきれず、私の背中を追って来る所を見ると、悪い様に言えば諦めが悪い…良い様に言えば何十年も前からゾッコンでいてくれる…

 

多少イントレは若い時のレンジャーを知ってはいたものの、ここまでとは思っていなかったらしい

 

「あはは…片付けるわね??」

 

「すまん…今度また何か手伝う」

 

「いいのっ!!ジッとしてて??」

 

イントレに片付けを任せ、私はレンジャーの寝顔を見て昔を思い出す…

 

 

 

酔っ払って上官の頭を瓶で殴り…

 

バーで酔っ払って客の頭を瓶で殴り…

 

自室で宅飲みをしていて私の頭を瓶で殴り…

 

介抱してくれた部下をセクハラ扱いして頭を瓶で殴り…

 

 

 

…瓶で殴ってばっかだなコイツ

 

教官としては立派なんだがなぁ…

 

酒癖が終わってんのよなぁ…

 

「リチャード、後任せるわよ??」

 

「おぉ、分かった。おやすみイントレ」

 

「おやすみ、リチャードっ…」

 

子供をあやすかの様に、いつも寝る前のキスを額にしてくれる…

 

「さてさて…」

 

暗くなったホールでテレビを点け、コメディを見る

 

レンジャーをくっつけたままだが、タバコに火を点ける…

 

「…懐かしい匂い」

 

「起きたか、消すよ…」

 

「構いません…どうかこのまま…」

 

「…そうかい」

 

レンジャーはしばらく匂いを堪能していた

 

そう言えば、マーカスも大淀も同じ事を言っていたな…

 

"好きな人のタバコの匂いは記憶に残るんだ…"

 

"レイ君のタバコの匂いだ!!好きな人のタバコの匂いはすぐ分かるよ!!"

 

レンジャーも同じ事を思っているのだろうか…

 

レンジャーが少し動いたと思うと、こっちを見ていた

 

机に置いたタバコの箱から1本取り出し、咥えさせ、火を点ける

 

「フーッ…懐かしい味…貴方と付き合っていた時を思い出します…」

 

私の肩にもたれたまま、今度は背を向けてタバコの煙を吐く

 

「どうしてマーカスが欲しいんだ??」

 

「それは…立派ですから。ドクター、エンジニア、そしてパイロット…あの様な人材、世界を飛び回っても探す事は不可能です…」

 

「どうやって落とすか…教えてやろうか??」

 

「教えて下さい、リチャード」

 

「人材として見るからだ。金でもやり甲斐でも落ちなかった男が、何故落ちたか…」

 

「体ですか??」

 

「んな訳ねぇだろ。愛だ、愛。マーカスを落とすのは簡単だったんだ。愛してやれば良かった…そんな単純な答えだったんだよ…」

 

「私はリチャードを愛しています…」

 

「ならマーカスは??」

 

「マーカスは…私、もしかしてマーカスにとても酷い事を…」

 

「マーカスはそんな男じゃない。父親だから分かる、明日聞いてみろ、怒ってない」

 

「絶対ですか??」

 

「絶対だ…」

 

二人で話していると、静かに涼平が帰って来た

 

「おかえり、涼平」

 

「ただいま戻りました」

 

いつもより小声で話す

 

涼平は巡回から戻って来たが、その後鳳翔の所で軽く食べながらジェミニとマーカスと、今度そこに仕入れる魚の話していたらしい

 

「な、涼平。マーカスは怒ってなかったな??」

 

「はいっ、怒ってませんよ??」

 

「明日、マーカスに謝罪に行きます…」

 

「あ、再現しましょうか??」

 

「一度見てみたかったんだ。形態模写が上手いらしいな??」

 

「へへへ…見てから決めて下さい。では、レンジャーさん。自分を隊長と思って…」

 

「コホン…マーカス、昨日はごめんなさい…私、貴方の事を考えずに…」

 

すると、涼平は優しい目から少し悲しい目に変わる

 

レンジャーが言い終わる前に、ポケットに左手を入れたまま近付き、右手でレンジャーの頭を撫でた

 

「気にするな…それよりっ、涼平達の指導を頼む。俺じゃあ面倒見きれない部分もあるからな??」

 

「上手…」

 

「若干目ぇ逸らしてすぐ戻す所も、後頭部掻く癖も合ってんぞ…」

 

「こんな感じですかね??」

 

私もレンジャーも拍手を送る…

 

「朝一番に工廠に行ってみて下さい」

 

「分かりました。ありがとうございます、涼平…」

 

涼平は階段を上がって自室に戻った

 

「さ、もう寝ろ。起こしてやるから」

 

「ここにいますか??」

 

「ここにいる…」

 

ようやくレンジャーはソファで寝息を…

 

「んがぁ〜…」

 

「ぐっ…」

 

忘れてた…寝相も悪いんだった…

 

結局、レンジャーの横で抱き寄せる形で私も眠りについた…

 

 

 

次の日、朝一番でレンジャーは工廠に向かう

 

「もし、マーカス…」

 

「おぉ、レンジャーか。おはよう」

 

「おはようございます…マーカス私、貴方に酷い事を…」

 

レンジャーはキチンとマーカスの目を見て謝罪をする

 

優しい目から、悲しい目に変わる…

 

レンジャーが言い終わる前に、左手をコートのポケットに入れたまま近付き、右手で頭を撫でる

 

「気にするな…それよりっ、涼平達の指導を頼む。俺じゃあ面倒見きれない部分もあるからな??」

 

少しだけ目を逸らしてまた戻し、右手で後頭部を掻く

 

「はいっ!!レンジャーにお任せを!!」

 

涼平の形態模写通りの結果になった…

 

「朝ごはん食べたか??」

 

「今から食べようと思ってます!!マーカス、奢らせて下さい!!」

 

「酒は無しだぞ??」

 

「そんな酷い!!なんて事を言うんですか!!あれが無いと1日の活力が漲らないんです!!いいですかマーカス!!貴方にとってサイダー!!ウォーター!!私にとってはビールとウィスキーなんです!!それを断てと言うのですか!!殺す気ですか!!」

 

「わわわ分かった分かった!!」

 

「分かってくれたなら良かったですっ!!」

 

この日、リチャードとサンダースの連中が何かの看板を作って各所に置いた

 

「これで奴も反省すんだろ!!」

 

看板にはレンジャーの似顔絵に禁止マークが描かれ、その下にこう書かれていた…

 

"レンジャーに酒類全般を与えないで下さい"

 

"PLEASE DO NOT ALCOHOL THE RANGER"




レンジャー…お姫様系教官

リチャードの元教官で付き合っていた女性

美人で可愛くて仕草も守ってあげたくなる様な女性

エネルギーはカロリーではなくアルコール

アルコールで動いて、アルコールの為に働く

気を付けないとビール瓶で殴って気絶させて部屋に連れて行かれる。すごいね
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