艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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331話が終わりました

今回のお話はみんなの宝物のお話になります

それぞれに宝物があり、自慢であったり、かっこよかったり、はたまた想い出が詰まっていたり…

そんな中、マーカスの宝物が気になる所から物語が動きます

少し長いお話なので、前編後編で分けようと思います


332話 尊い宝物

「あら??何してるの??」

 

巡回代わりの基地内の散歩をしていると、広場で雷電姉妹がシートを敷いて何かを見せ合っている

 

「電の宝物なのです!!」

 

「私はこれ!!」

 

電の手には着せ替え人形

 

雷の手にはシール帳がある

 

「ジェミニさんにも宝物はあるのです??」

 

「そうね…銀こ」

 

「通帳以外なのです!!」

 

「カードもダメよ!!」

 

「う…わ、分かったわよ…」

 

銀行通帳、クレジットカードを先手で止められ、ちょっと考える…

 

「そうね…貴方達が宝物かしら??」

 

「そう言うのいいのです!!ちゃんとした物にしろなのです!!」

 

「物よ物!!」

 

「わ、分かったわ…」

 

そう言われてまた考える…

 

私の宝物…ね…

 

「これと…これね??」

 

そう言って髪を上げて、二人にイヤリングを見せる

 

「綺麗なイヤリングなのです…」

 

「赤いイヤリングだわ‼」

 

「これはね…レイが買ってくれたの。アタシ、人からプレゼント貰ったのあんまり無くて…だから、凄く嬉しくて今でも着けてるの」

 

「そういえばレイさんの宝物はなんなのです??」

 

「確かに知らないわね…何なのかしら…」

 

「きっとあれだわ!!凄い薬を作る機械とか!!」

 

この子達はホントレイの話をすると目がキラキラするわね…

 

「そうだ‼ジュースでも飲もっか!!」

 

「うんっ!!」

 

「喉乾いたわ!!」

 

二人はすぐに片付けて、私と手を繋いで自販機に向かった…

 

 

 

 

その日の夕方…

 

「親潮の宝物…ですか??」

 

「そっ。何かある??」

 

「ありますよ!!これです!!」

 

親潮はすぐに引き出しからUSBメモリを取り出した

 

「ここに皆さんの写真が詰まっているんです。親潮が電子の海に行った時も…これを見て、またここに帰りたいと思うんです」

 

「そっかそっか!!朝霜は何かある??」

 

「アタイか??そだな…やっぱアレだなっ!!」

 

朝霜は私のデスクの近くに保管されてるバットを指差す

 

「清霜はある??」

 

「きーちゃんはね!!貴子さんから貰ったフライパン!!」

 

やっぱり皆それぞれ宝物がある

 

「ただいま…戻りましたっ…」

 

「良い風呂だったぞ!!」

 

早霜とガングートがお風呂から戻って来た

 

「ね!!早霜とガングートにも宝物ってあるかしら!!」

 

「早霜は…これっ…!!」

 

早霜は言われてすぐに白いリボンを解き、私に見せてくれた

 

「お父様がくれたの…とっても大事っ…」

 

「私はこれだなっ…」

 

ガングートは掛けてある帽子を持ってこっちに見せてくれる

 

「これはここに来る時、ライコビッチが自身の物を私に被せてくれた物だ」

 

「やっぱり皆思い出あんだな…」

 

「そう言えばライコビッチはいたかしら??」

 

「う…うむ…」

 

急にガングートは目線をずらす

 

「ライコビッチさん…お風呂で浮いてた…」

 

「のぼせたんじゃないの!?」

 

「そ、その、だな…"げんしゅいかっか"…」

 

ガングートは焦っているのか、急にアタシを元帥閣下と言い、帽子を被って半分顔を隠しながらカミカミで話す

 

「ら、ライコビッチはその…通常運転と言うか…」

 

「そ、そうだったわね…」

 

「今ヒトミとイヨが担架で運んで、脱衣所で仰いでくれている…その…なんかすまない…」

 

「想像出来るからいいわ…」

 

とは言うものの、少し心配なので様子を見る為に脱衣所に向かう

 

脱衣所に着くと、イクが出て来た

 

「提督さん!!ライコビッチさんが倒れちゃったのね!!」

 

「聞いたわ。イク、私とライコビッチ…ひとみといよとイクの分のアイス、これで買って来てくれる??」

 

「分かったの!!」

 

イクに1000円札を渡すと、ピョンピョン跳ねてアイスを買いに向かった

 

脱衣所に入ると、ライコビッチの周りにひとみといよがいた

 

「くーうだうん!!」

 

「おきお〜!!う〜にぁ〜!!」

 

ひとみといよがライコビッチのクールダウンの為に必死にうちわで仰いでいる

 

ひとみは一生懸命応援しているけど、ただ可愛い応援になっている

 

「あ!!よこしゅかしゃん!!」

 

「らいこびちたおえた!!」

 

「ありがとっ。何回か起きたかしら??」

 

「おきた!!」

 

「いもうと!!むほほ!!ばたーんてなた!!」

 

「無限ループじゃない…」

 

戦場を任せると誰一人として死者を出さない指揮をする超が付く有能な指揮官が、小さい女の子や男の子を見るとこうなる…

 

…血は抗えないのね

 

「ライコビッチ、大丈夫??」

 

「う、う〜ん…」

 

「おきた!!」

 

「ふんちきへもぐおびん!!」

 

「可愛い声援が聞こえてな…ふふふ…冥府の入口から舞い戻って来た!!」

 

「つまり死にかけてたと…鼻からヘモグロビン大噴射して??」

 

「うむ…妹達の前で醜態を晒してしまった…お姉ちゃん失格だ…」

 

「良いじゃない…分かるわその気持ちっ!!」

 

私はライコビッチの手を握る

 

「可愛いわよね!!みんな!!」

 

「う、うむ!!横須賀に来て本当に良かった!!」

 

「買って来たなの!!」

 

「あいす!!」

 

「いよにもくだしゃい!!」

 

イクが帰って来たので、5人で外でアイスを食べる事にする

 

ひとみといよはカップのアイス

 

私とライコビッチ、イクは棒のアイスを食べる

 

「ね。ライコビッチの宝物ってなに??」

 

「弟と妹以外でか??」

 

「そうね」

 

「なら、これだな」

 

ライコビッチは胸ポケットから箱の様な物を取り出す

 

「先の戦いで壊れてしまったんだがな…オルゴールなんだ」

 

「あら…」

 

ライコビッチに渡され、開けてみる

 

音は鳴らないが、私には考えがある

 

「それは小さな弟と妹がグズってしまった時、枕の近くに置くと必ず眠りにつくんだ」

 

「どこで手に入れたの??」

 

「私は元々軍人ではなく、小さな弟と妹の教育を任されていた時に近くにあった店で買った物だ。今はその店はもう無い…」

 

「あら…そうだったの…」

 

「日本語で"ホボチャン"と言うらしい」

 

「保母の経験があるの!?」

 

「意外とは思わないけど結構爆弾発言なのね!!」

 

「そ、そこなら!!ご、合法的に弟と妹の世話が出来るからなっ!?」

 

「もう一回やりたい??」

 

「そうだな。私は弟達の命を握ってしまうより、平和の為の命を育てたい…しかしな、ジェミニ…私はヘモグロビン大噴射の癖があってな…」

 

「ウチに可愛い子いるの。ちょっと会ってみない??」

 

「いいのか!?」

 

「今度時間が会ったら連れてってあげるわ??イクは宝物あるかしら??」

 

「イクは…そうなのね…」

 

イクは少し考えた後、何かを思い出して言った

 

「お部屋にあるコップなのね!!」

 

「どんなの??」

 

「カエルさんのコップで、形もカエルさんなの!!」

 

「あら、イクカエル好き??」

 

「カエルさんはフツーなの…でも、うっすらマーカスさんに買って貰ったって記憶がぼんやりあるなの…」

 

「そっか…ひとみといよはある??宝物っ!!」

 

「きんぴかしゃいこお!!」

 

「はげのかーど!!」

 

ひとみもいよも何処からともなく、純金のサイコロと坊主チョコのオマケのカードを取り出す

 

「みんなやっぱりあんのね…」

 

「そう言えばマーカスさんはなんなの??」

 

「言われてみればそうだな。聞いた事がない」

 

「明日会ったら聞いてみるわ??」

 

アイスを食べ終え、皆それぞれの家へと戻る…

 

 

 

 

次の日…

 

「おかえり、レイ」

 

「ただいま。これ報告書だ」

 

お昼前、演習から帰って来たレイが報告書を出しに来た

 

今日は涼平、園崎、櫻井の三人がレイ相手に背後を取る訓練だ

 

「どれどれ…あら、今日は櫻井が強かったのね??」

 

「涼平と園崎に追い付きたいんだと。少しずつ、みんな強くなってる」

 

「分かった、ありがと。あ、そうだレイ」

 

「なんだ??」

 

「アンタの宝物ってなに??」

 

「お前と子供達さ」

 

「そう言うのじゃないの。物よ物」

 

そう言うと、レイは私を見た後後頭部を掻き、目を逸らした

 

「…お前にはゼッテー教えねぇ」

 

「な、なんですって!?」

 

「誰にも教えねぇ!!じゃあな!!」

 

そう言ってレイは出て行ってしまった

 

最後の方は何故か照れている気もしたが…

 

もしかしてイントレピッドのナニかとか、私のナニかとかかしら??

 

たまたま手に入って、男の子なら好きそうよね…

 

こういう時は派遣部隊を送りましょう…

 

「もしもし秋雲??良いネタがありそうなの、ちょっと来て!!」

 

秋雲にそう連絡を入れると、数十秒で執務室に来た

 

「良いネタですか提督ぅ!!」

 

「レイの宝物の謎よ!!レイ、宝物は何って聞くと隠したのよ!!」

 

「むむむ…それは確かに気になる…ちょっと聞き込みに行って来ます!!」

 

「頼んだわよ!!」

 

ふふふ…秋雲にネタにされて醜態を暴かれると良いわ、レイ…

 

数十分後…

 

「ふーっ!!あ、そうだ!!足柄さんの所でアイス食べましょうよ!!」

 

「良いな!!何食おっかな…」

 

「俺サイダーの奴にしようかな!!」

 

「自分はナッツの…え"っ!?」

 

演習から戻って来たお弁当チームの三人である

涼平、園崎、櫻井…

 

彼等が何かを見つける…

 

「秋雲さん!?」

 

秋雲が執務室に行こうとしていたのか、階段の近くで倒れていた

 

辺りは血溜まりが出来ている…

 

「"また"秋雲さんが死んでおられるぞ!!」

 

「隊長呼んで来る!!」

 

園崎に"また"と言われているのは、今回が初ではないためだ

 

過去に数回、ナニかを見て非業の尊死を遂げているからだ

 

「秋雲さん!!しっかり!!"今度"は何見たんですか!!」

 

真面目で人懐っこいとの評価が付いている涼平ですら、秋雲の扱いが同じ…

 

「てぇてぇ…マジてぇてぇ…うっ…」

 

幸せそうな顔をして、秋雲は涼平の胸で力尽きた

 

涼平は秋雲の鼻血を拭き、抱き上げて医務室に向かう…

 

「相当尊いモン見たんだろうな…」

 

「志半ばで倒れてましたからね…」

 

「涼平!!ソノ!!隊長が不在だから、アレンさんが診てくれるって!!」

 

「「ありがとう!!」」

 

涼平の横に園崎が付き、医務室へと運ぶ…

 

「若いパイロット三人に無理矢理…これはこれで…」

 

いつの間にか目を覚ました秋雲がボソッと呟いた

 

「…さっきの所に置いときますか??」

 

「…元帥に許可取って、一発海に放り込むか」

 

「悪かったってば!!でも…もうちょっとこのまま〜…」

 

「貧血は起こしてますから運びますよっ」

 

「お礼は漫画で頼む!!」

 

「勿論!!」

 

「さっ…着きましたよっ…」

 

「ありがとう。後は任された」

 

診察ベッドに寝かされ、アレンに代わる

 

「何でまた尊死した??」

 

「それは言えません…」

 

「いつもなら教えてくれるのにか??」

 

「今回ばっかはちょっと〜…」

 

秋雲の目は本気だ

 

これは絶対に言っちゃいけない事を目にしたんだ

 

誰かと誰かのカップリングじゃないな…

 

「よしっ…後はこれ飲んだら帰っていいぞ」

 

「聞きたいのならマーカスさん本人に聞いて下さい。秋雲からはちょっと…あぁ!!思い出しただけでもまた!!」

 

「レイか…」

 

「隊長で尊死って…何か気になりますね…」

 

「秋雲せんせ…さんがやられるレベルか…」

 

「「ソノ??」」

 

「い、いやいや…な、何でもないない…はは…」

 

最近櫻井も園崎の扱いが分かって来たみたいだ

 

「そう言えばさっきも秋雲さんに漫画って…」

 

「よし!!隊長の所行ってみよう!!わーっはっはっは!!さぁ!!行くぞぉっ!!」

 

園崎は涼平と櫻井を肩で抱えて医務室を出て行った…

 

「面白…不安だから俺も行って来る…」

 

「あ!!ありがとうございました!!」

 

もう心配ない秋雲を置いて、4人はレイの部屋を目指す…

 

 

 

数十分後…

 

「ど、どうしたのです!!」

 

レイの部屋の前で口を抑えて咽び泣く4人のパイロットを見付けた香取

 

「うぅっ…疑った俺が悪かったレイ…」

 

「確かに秋雲さんがやられますっ…」

 

「こんな事があっていいのかっ…」

 

「絶対…隊長だけは護らなきゃ…」

 

櫻井がそう言うと、いつもマーカスをおちょくりまくってはいるが大の親友であり、この三人の上官であるアレンでさえ頷いている

 

「皆さん何を…」

 

「レイに聞くといいさっ…」

 

「自分達はそろそろアイス食べに行きますっ…」

 

「よしよしっ…レイの代わりに奢ってやろうっ…」

 

4人はそのまま足柄の駄菓子屋に向かって行った…

 

「中で一体何が…」

 

香取が考えていると、マーカスが出て来た

 

「香取か。どうした??」

 

「あ…いえ…アレン大尉達の様子がおかしかったので…」

 

「…」

 

「…」

 

数秒、無言の見つめ合いが続く…

 

マーカスの目線が痛い…

 

「そんなに見つめないで下さい…濡れてしまいます…」

 

「うっ…まぁいい…アンタなら大丈夫だろ、来いよ」

 

「はいっ!!喜んで!!」

 

久々にマーカスの部屋に入り、ベッドの縁に座る

 

「アレン達は何て言ってた??」

 

「秋雲さんがやられたと…」

 

「そっか…アイツ等は俺の宝物が何か聞きに来たらしい」

 

「言われてみれば…マーカスの宝物は何ですか??」

 

すると、マーカスは厳重そうな引き出しを開け、一冊のファイルを私の近くに置いた

 

「それが俺の宝物だ」

 

マーカスの目は本気…というより、何か愛おしそうな目をしている

 

…私に向けられている訳では無い

 

ファイルと言う事は、何かのレシピであったり、研究の成果と私は予測した

 

しかし…皆さんが尊死するレベル…

 

この中には一体何が…

 

「どれどれ…」

 

眼鏡を上げ、ファイルの中を見る…

 

 

 

数十分後…

 

「元帥!!香取先生がやられました!!」

 

「何ですって!?秋雲、アレン、涼平達三人に続いて香取先生まで…」

 

巡回していた兵がレイの部屋付近で倒れていた香取を見つけ、医務室に搬送されたとの報告だ

 

「香取の容態は??」

 

「命に別状はありません。ですが、うわ言のように「てぇてぇ…てぇてぇ…」と…」

 

「なんかみんなそうなってんのよ…何見たのかしら…」

 

「おしゃ!!アタイが突撃カマして来んぜ!!」

 

啖呵を切らした朝霜が立ち上がった!!

 

「気を付けなさいよ!?相手は強敵よ!!」

 

「任せな!!そんじょそこらでブッ倒れるアタイじゃねぇよ!!」

 

 

 

数十分後…

 

「報告します!!朝霜さんがやられました!!」

 

「くっ…朝霜まで…」

 

意気揚々と向かった朝霜までやられてしまった…

 

「やはり朝霜さんも「てぇてぇ…」と…」

 

「てぇてぇって…ホント何見たのかしら…」

 

「何やら人が結構やられてますね…」

 

異変を聞き付けたエドガーが来てくれた

 

「私が参りましょう。御心配なく。私が皆さんの様になる事はありせんよ」

 

「頼んだわよ!!レイは正体不明の物を持ってるわ!!」

 

「ふむ…なるほど。マーカスなら何が出て来ても驚きませんね…分かりました、私にお任せを!!」

 

 

 

 

数十分後…

 

「伝令!!エドガー大佐、緊急搬送!!」

 

「どうなってんのよ!!」

 

「アレン大尉によると、死因はキュン死だそうです!!」

 

「キュン死って…エドガーは自他共に認める生粋のロリコンよ!?」

 

「ライコビッチさんを向かわせては如何でしょうか!!」

 

「ダメよ。これ以上やられると基地として機能しないわ…あぁもう!!何かその辺に行かせても大丈夫なのいないかしら!!」

 

「マーカス殿はおられるか!!」

 

タイミングが良いのか悪いのか、自衛隊の人間が面談に来た

 

時々ここに来てはレイに艦娘の産み出し方を教えろと言ってくる

 

…そっか、今日はキチンとアポイントがあったわね

 

騒ぎで忘れてたわ…

 

…そうだわ!!

 

「ちょっと!!そいつ連れて行きなさい!!」

 

「了解です!!来い!!」

 

「何をされるか!!離さんか!!」

 

 

 

数十分後…

 

「元帥、戻って来ました」

 

「ど、どうだった??」

 

「我々はマーカスさんを勘違いしておりました…我々はなんと失礼な事を今までマーカスさんに…」

 

「…何を見たの??」

 

「男と男の約束ですのでっ!!それでは失礼致しますっ!!はっ、そうでした元帥殿」

 

「な、何かしら…」

 

「我々はこれから貴方方の傘下に入ろうと思います。どうか、何なりとお申し付け下さい!!では!!」

 

執務室のドアが閉まる…

 

「…」

 

「…元帥」

 

「分かってる…分かってるわ…」

 

頭を抱える…

 

敵を味方にひっくり返す程の宝物をレイは持ってるって事…??

 

味方は胸を打たれて、敵は我が振り直す…

 

「こうなったら私が行くわ!!」

 

「しかし…大尉は元帥には見せないと…」

 

「意地でも見てやるわ!!こんだけ被害が出てんの!!…まぁ、良い事もあったけど…」

 

「その間は親潮にお任せを!!」

 

「頼んだわよ」

 

執務室を出て、勇み足でレイの部屋に向かう…

 

 

 

 

「ちょっとレイ!!開けなさい!!」

 

「今日は客が多いな…何だよ」

 

「入るわよ!!」

 

「ちょっ…」

 

レイがドアを開けたので勝手に部屋に入る

 

「アンタの宝物って何!!」

 

「お前には見せん!!」

 

「何で!!」

 

「笑うからだ!!」

 

「絶対笑わないから見せなさい!!」

 

「…本当だな??」

 

レイは急に落ち着きを見せた

 

「えぇ。誓って笑わないわ」

 

「…そこに座ってろ」

 

言われた通り、ベッドの縁に座って待つ…

 

レイは厳重そうな引き出しの中から、これまた厳重そうな箱を取り出し、鍵を開けた

 

その中から出て来たのは、一冊のファイルだ…

 

「あら。なぁにコレ」

 

「俺の宝物だっ」

 

レイもソファの縁に座った後、アタシの前にそのファイルを置く

 

あれだけ厳重そうな場所にあったんだから、やっぱり凄い設計図か、研究結果とか、レシピがこのファイルに入ってんのかしら…

 

でも…みんながキュン死するんだから、違う気もする…

 

いざ手にしようとした時、レイは私の手に自分の手を置いた

 

「なぁに??」

 

「もう一度言う。絶対笑うな」

 

「約束する…絶対笑わないわ…」

 

そう言うと、レイは手を離してくれた…

 

心臓の鼓動が速くなる…

 

この中には…一体何が…

 

恐る恐る…ページを捲る…

 

「あらっ…」

 

一番最初のページにファイリングされていたのは、誰かが描いた絵だ

 

「たいほうが描いてくれたんだ」

 

見開きになった次のページも、絵がファイリングされている

 

「あらっ…うふふっ…」

 

「それはれーべとまっくすが描いてくれた」

 

「次のページは…」

 

次のページも、その次のページも、全部絵がファイリングされている

 

「それは霞、それはジャーヴィスが」

 

「これは清霜の??」

 

「そっ。この前描いてくれた」

 

「あら…これは白露が??」

 

「それはフーミーだ」

 

「凄いわね…全部覚えてんの??」

 

「全部覚えてる」

 

レイの宝物…

 

それは"子供達が描いた絵"だった…

 

「これはアトランタね??」

 

「ふふ…そうだっ…」

 

ずっと前にアトランタが描いたピザの絵もここに入っていた

 

「あら、これが最後ね…」

 

「…」

 

まだまだ後ろのページは残っているが、今の所これが最後の一枚…

 

「好きな物を描いてくれって授業だったらしくてな…ふ…グッと来たんだ」

 

「そう…」

 

そこに描かれていたのは、私とレイの真ん中に自分が描かれた絵…

 

好きな物を描いてくれと言われ、私とレイの絵を描いてくれたと言うのはとっても嬉しい事

 

ましてやこの子は…

 

「誰が描いたか分かるか??」

 

「えぇ。曙ね…」

 

紫の髪の毛の女の子が、私達の真ん中で笑っている絵…

 

あぁ…みんながやられたのはこういう事…

 

これは確かに"てぇてぇ"わ…

 

「ありがとっ…返すわね??」

 

「笑わないならいつでも見に来い」

 

「笑わないわ、絶対…後は何が入ってんの??」

 

レイの宝箱に入っていたのは、そのファイルとレコードが数枚

 

どれも昭和の日本の歌ばかりだ…

 

「あら!!私と聞いたのもあるわ!!」

 

ちゃんと大人との思い出もあるのね…

 

「あっ、そうだレイ。アンタ、オルゴールって直せる??」

 

「一回見なきゃ分からん。誰の奴だ??」

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