艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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332話が終わりました

今回のお話は、普段のマーカスのお仕事がどれだけ大変かのお話になります

治療をしたり、送り迎えをしたり、調査に行ったり…

戦闘をしていない日でも彼は大忙し

そんな忙しい彼と、その裏は一体どうなっているのか?と言うのが垣間見えるお話です


333話 スイカと請求書

「自衛隊から入電??繋げてくれ」

 

工廠で診察をしていると、ジェミニから通信が入り、自衛隊からの通信だと言う

 

繋げて貰い、スピーカーにする

 

《コレット大尉でしょうか!!》

 

「違います!!じゃあね!!」

 

《待って!!待って下さい大尉!!》

 

「出て貰って構いませんよ。嫌いな方であれば鳥海が仕留めて来ます」

 

診察していた鳥海に言われ、本格的に通信の相手をする

 

「分かった、すまん…何の用だ??」

 

《現在、そちらから教官が教鞭に当たっているのですが、このままでは死人が出ます!!》

 

「戦争ってのはそんなもんだ。じゃあね!!」

 

《お願いですから待って下さい!!大変なんですよこっちは!!》

 

「俺も診察で忙しいんだ!!他当たれ!!」

 

《暴れ回って抑えられないんです!!》

 

「レンジャーめ…分かった、行ってやる。その代わり、診察が終わったらな??」

 

《はっ!!感謝します!!》

 

通信が終わり、鳥海に向き直す

 

「多少筋肉疲労が出てる。これを3日、夕食後に飲んで良く寝てくれ。最近夜に運動したり、夜戦に出た事は??」

 

「…はい、あります」

 

鳥海の頬が赤くなる…

 

「それ以上は聞かない。夜の12時には寝る事、いいね??」

 

「はいっ‼ありがとうございます、大尉!!」

 

「よしっ。んじゃ、俺も行きますかね!!」

 

白衣を脱ぎ、革ジャンに着替える

 

「大尉、ちょっと…」

 

鳥海に手招きされ、前に立つ

 

ピシッと革ジャンを整えて、タンクトップも肩に掛け直してくれた

 

「これでよしっ!!」

 

「いつもトラックさんにしてるのか??」

 

「えぇ。身嗜みを整えて事に及んで欲しいので!!」

 

「惚れた理由が分かるよ。ありがとう!!」

 

「行ってらっしゃい!!」

 

見送られるのは気分が良いな!!

 

通信先である自衛隊の基地に向けて離陸する…

 

 

 

離陸した後の工廠…

 

「ひとみさん、いよさん!!」

 

「ちぉ〜かいしゃん!!」

 

「しんしゃつおわいまちたか??」

 

鳥海はひとみといよと仲が良い

 

面倒見の良い性格の鳥海なので、横須賀で軽くピクニックをしている最中に時々顔を見せるひとみといよの二人に、自身が作った料理を食べさせてくれたりしている

 

なのでひとみといよはあの日、鳥海を助けた

 

「えいしゃんのかあいれす!!」

 

「でんわにでんわ!!」

 

ひとみといよはお菓子を持って、いつもマーカスが座っているデスクの通信機の前でシートを敷いて食べ始めた

 

「ちぉ〜かいしゃんも!!」

 

「あいっ!!」

 

「ありがとうございますっ!!」

 

鳥海はちゃんと靴を脱ぎ、シートの上に座ってお菓子を食べ始める

 

すると、通信が入る

 

「あいっ。よこしゅかきちのこ〜しぉ〜れす!!」

 

《ひとみちゃんか!!マーカスはいるかい!?》

 

相手はヴィンセントだ

 

「いましぇん!!ぴ〜っていったあ、ようけんをいってくらしゃい。ぴ〜!!」

 

《海上で中破した艦娘を回収して来た。そちらで治療を頼みたい》

 

「あいっ。よこしゅかしゃんにつたえときあす!!」

 

《すまない!!頼んだ!!》

 

通信を切ると、すぐにひとみは通信機のボタンを押す

 

「もちもち、こ〜しぉ〜れす」

 

《あらひとみ!!どうしたの??》

 

「りちぁ〜ろのおともらちかあ!!ちぅ〜はのかんむしゅしゃんいう!!」

 

《分かったわ!!こっちで受けるわ、ありがと!!》

 

通信機を置き、ひとみはまたお菓子を食べる

 

意外にちゃんと通信を伝えている…

 

すると、また通信が入り、今度はいよが取る

 

「あいっ、よこしゅかきちのこ〜しぉ〜です!!」

 

《いよちゃんか!!レイはいるか??》

 

「いうかちがいます!!あほかいね!!」

 

いよはバンッ!!と通信機を置き、通信を切った…

 

間髪入れずにまた通信が来た

 

《すまんすまん‼レイはいるかな??》

 

「いましぇん!!」

 

《そっかそっか、レイの好きそうなグラビアが手に入ったからな!!届けてやろうと思って!!》

 

「もってきてくだしゃい、そ〜きぅ〜にだ!!」

 

《はっはっは!!了解了解!!》

 

今度はゆっくり通信機を置く

 

通信先はアレンだ

 

アレンはそうは言ってはいるが、代わりに診療を受け持ってくれる口実だ

 

数分もしない内にアレンが来た

 

「おっ、鳥海もいるのか。ちょっとそこでジュースでも買って来るよ!!ひとみちゃん、いよちゃん!!ほれっ!!」

 

「とりあしたっ!!」

 

「あいがと!!」

 

本が入った紙袋を渡され、二人が雑に破ると、中からは本当にエッチな本が出て来た

 

「ちぉ〜かいしゃんもみう??」

 

「ど、どんなのでしょうか…」

 

ひとみといよの後ろからこっそり本を見る…

 

「「「おぉ〜」」」

 

貴子さんに良く似た絵に描いた健康体女性や、イントレの外見に似た女性のグラビアが載っている

 

ひとみといよはたま〜に大人の本を見ている

 

基地でも工廠でも時々見かける

 

ただ、二人は憧れとして見ている

 

こうでありたい、こうなりたい

 

しかし、鳥海は違う

 

「なるほど…こうすればもっと司令官さんが…」

 

鳥海は今後の参考の為、勉強の為に食い気味に見ている

 

「めっちゃ見てるな…」

 

ジュースを買って戻って来たアレンは、三人が既に雑誌に釘付けになっているのを目の当たりにする

 

「えいしゃん、たかこしゃんしゅき??」

 

「好きだろうなぁ…でもっ、尊敬の好きだと思うな??」

 

アレンはジュースを配りながら、マーカスがいつも座っている椅子に座る

 

「大尉は巨乳の人が好きですからね…」

 

「めがねおちちでかくない!!」

 

「大淀博士は特別さっ。アイツにっ…愛を教えた人だからな??」

 

ひとみといよが差し出したジュースを開けながらアレンは語る…

 

「大淀博士はな。レイに色々教えた人なんだ。研究、愛、そして女…」

 

「医療は違うのですか??」

 

「医療はウィリアム大佐からなんだ。ウィリアム大佐がキッカケをくれて、大淀が教えた…そんな所だ」

 

「あい…」

 

「あえんしゃんのむしゅめ??」

 

「アイちゃんじゃないぞ!?レイは人を助けたいっていつも思ってるだろ??」

 

「だいじぉ〜ぶ!!」

 

「しんぱいしゅるあ!!」

 

マーカスの口癖であろう言葉をひとみといよがマネする

 

患者を安心させるには、その2大言葉が一番使い易いからだ

 

「大尉の口癖ですね…確かにそれを言う時、とても優しい目をしています」

 

「それを教えたのも大淀だ」

 

「めがねいうか??」

 

「わからん」

 

ひとみといよが久々に悩んでいた最中、通信が入る

 

「横須賀基地、工廠だ」

 

アレンが通信に出てくれた

 

《マーカス大尉はいらっしゃいますか!!》

 

「今不在だ。どうした」

 

《急患が1名!!そちらで受け持って欲しい!!頼めないか!!》

 

「了解した、工廠に搬送してくれ」

 

《すまない!!恩に着る!!》

 

アレンは通信を切り、別の場所の番号を押す

 

「まぁ見てな…アレンだ。すまない、手を貸してくれないか??」

 

通信先の主はすぐに出た

 

《アレン君、どうしたんだい??》

 

だが、声のトーンがほんの少し低い

 

工廠からの通信=マーカスと思っていたのだろう…

 

「急患が1人来る。手伝って欲しい、レイが出払ってるんだ」

 

《オッケー!!すぐ行く!!》

 

レイとの名前が出るとすぐにいつもの声色に変わり、通信が終わる

 

「そこで待っててくれ」

 

「わかりあちた!!」

 

「こえみてあす!!」

 

「あ、あのっ!!鳥海に出来る事があれば!!」

 

「レイの患者さんだろ??使ったら怒られる。はは!!まぁ大丈夫さっ!!」

 

アレンは白衣に着替える…

 

数分後、大淀が工廠に来た

 

「ひとみちゃんいよちゃん!!あ、鳥海ちゃん!!ちょ〜っと大淀さん、お仕事して来るね??」

 

挨拶も程々に、大淀も白衣を纏う…

 

「アレンさん!!到着しました!!」

 

表でたまたまいた涼平に案内され、連れて来られた患者が到着する

 

「そこに寝かせてくれ」

 

「了解ですっ、1.2.3よいしょっ!!」

 

「よ〜しっ!!もう大丈夫、心配しないで!!」

 

大淀がそう患者に言った瞬間、アレンが一瞬3人を見た…

 

「めがねいった…」

 

「えいしゃんといっちょ…」

 

「ホントなんですね…」

 

患者はすぐさま治療が施され、1時間もしない間に処置が終わる

 

「迎えの電話を入れとくからね??」

 

「何から何まで申し訳ありません…本当にありがとうございます…」

 

「大淀さんはレイ君と違って高いよ〜??」

 

そうは言う大淀だが、顔は笑っている

 

患者の迎えが来て、ようやく落ち着きを見せる工廠…

 

「そっか、レイ君今日いないんだ」

 

「突発の案件で飛び出して行ってしまいました…」

 

「アレン君、大淀さん今日はレイ君帰って来るまでここにいたげるよ!!」

 

「助かるよ…俺はレイみたいに手が回らない事が多いからな…」

 

「何言ってんのさ!!レイ君、赤ちゃんの時放り出されるでしょ??」

 

「ぽいさえてた!!」

 

「そといけいわえてた!!」

 

「でしょ!?アレン君は赤ちゃん取り出せるから良いのっ!!ねっ??」

 

「…レイが心底惚れてる理由が分かるよ」

 

「確かに…」

 

「鳥海ちゃんはほら、いつもトラックさんを護ってるでしょ??それで何かあった時はさ??レイ君も助けてくれるでしょ??ありがとね、護ってくれて!!」

 

「鳥海も今分かりました…」

 

「ひとみもありゃしあせんか??」

 

「いよも!!」

 

「ひとみちゃんといよちゃんは、いつでもどこでもレイ君の傍にいて、何かあったら今日みたいにこっそり来てくれたりして、レイ君のお手伝いしてくれるよね??大淀さんからありがとうって言わせてね??」

 

「んふ〜」

 

「んふ〜」

 

大淀はマーカスが知っている中で一番褒め上手だ

 

敵と見なした奴以外は良い所を見つけて、必ず褒めてくれる

 

大人でも褒められるとやっぱり嬉しい

 

マーカスはそんな大淀に落ちたのだ

 

「そう言えば、大淀博士は何故大尉に惚れたのですか??」

 

鳥海が核心を突く質問をした

 

それはアレンが舞踏会で本心を聞けなかった事だ

 

「聞きたい??」

 

「「聞きたいです!!」」

 

「「ききたい!!」」

 

アレン、鳥海、ひとみといよが食い気味で大淀に迫る

 

「おぉ…めちゃ食い気味だね…」

 

「長年謎だったんだ!!」

 

「やっと知れます!!」

 

「めがねふぇち!?」

 

「るぉ〜まっ!!」

 

「そうだね…じゃ、ちょっとだけ語ろっか!!」

 

何故か全員シートの上に正座し、PCの前の椅子に座っている大淀の話を聞く体制に入る

 

「大淀さんはね…レイ君の真剣な時の横顔が好きなんだ…あれたまんないよね??」

 

「分かりますっ…カッコいいですから…」

 

「だよね!!何かもう、絶対助ける!!みたいなあの感じ!!」

 

鳥海から見ても真剣な時のマーカスの横顔はカッコいいらしい

 

「それとね…レイ君は一人で抱えちゃう癖があるんだ…その時にね、ギュッ…ってしてあげたくなるんだ…」

 

「母性か…」

 

大淀の目がアレンに向く…

 

「…今、何て言った??」

 

「え…母性か…って…」

 

大淀は少し目を見開いた後、瞳が輝いた

 

「そっか、そっかそっか!!大淀さんもレイ君にしっかり感化されてたんだ!!」

 

「どういう事だ??」

 

「いや〜ほら!!大淀さん論文書いたの!!レイ君の傍にいると、母性本能が発達するのが早いって。合ってんじゃん!!やった〜!!」

 

大淀は照れ臭そうに後頭部を掻く…

 

彼女が愛した医者と同じ癖だ…

 

「それとね??これはジェミニちゃんも同じなんだけど、レイ君の傍にいると時間が経つのめっちゃ早いんだ!!」

 

「大尉と話して、一番面白かったお話ってありますか??」

 

「あるよ!!あ、それも話そっか…」

 

大淀はポケットから2つ玉を取り出す

 

何の変哲もない、ただの玉だ

 

「この2つの玉は同じ質量、同じ形だ。この2つの玉が同じスピードでぶつかった時…左の玉か、右の玉、どっちが壊れると思う??」

 

「どっちだろう…」

 

「両方同じタイミングで破壊されるのでは…」

 

「ひらい??」

 

「みぎ??」

 

「答えは"分からない"なんだ」

 

「「「「はぇ〜…」」」」

 

4人は感心する

 

答えが"分からない"のが答え

 

全部が正解であり、全部が間違い

 

そんな説がこの世界には存在する

 

「面白いでしょ??世の中には分からないが答えの説があるんだ!!帰って来たらレイ君に聞いてみると良いよ!!」

 

珍しいメンツで集まった工廠での話は尽きない…

 

 

 

 

一方その頃、通信があった自衛隊基地…

 

「大尉!!ありがとうございます!!」

 

「レンジャーは何処にいる??」

 

「レンジャー…ですか??」

 

自衛隊の奴が口ごもる

 

どうもレンジャーではないらしい

 

「レンジャーじゃねぇだと…」

 

「香取教官です…もう大変で…」

 

「だろうな…何処行きゃ良い??」

 

「案内します!!」

 

案内された所は武道場

 

「ぎゃー!!」

 

「いでぇ!!」

 

「くっ…」

 

入る前から悲鳴が聞こえて、もう帰りたくなる…

 

「この香取でさえ倒せないと…ははは!!もう少し鍛錬が必要では!?」

 

「止められますか…」

 

「…仕方ない」

 

武道場の扉が開けられ、中へと入る…

 

「おや大尉…大尉も鍛錬ですか??」

 

「暴れん坊のシンデレラを迎えに来ただけだ。帰るぞ」

 

「し、ししし!!シンデレラ!!あぁっ…」

 

香取は身震いする

 

「し、死神だと…」

 

「ど、どうしてここに…」

 

「大尉。どうしても私を連れ帰りたいなら、先生を倒してから…どうです??」

 

「分かったっ…」

 

呆れ半分に構えに入る…

 

「良く見ておけ…」

 

「は、はいっ…」

 

「け、見学させて貰いますっ…」

 

向かって来る香取の腕を掴む

 

背後に回った後、左手で後頭部を抑えつつ、右手で香取の片方の腕を掴み、半ばお姫様抱っこの様な体勢になる

 

「相手によっちゃ、こういう戦い方もある」

 

「た!!たたた大尉!!」

 

香取は顔を真っ赤にして焦っている

 

「黙ってろ」

 

「…ふぁい」

 

上ずった声で返答を返される

 

周りからは拍手が起こっている

 

「大尉、離して下さい…このままでは…絶頂してしまいそうですっ…」

 

「うっ…」

 

香取を離し、服を整える

 

「手ほどきして欲しけりゃしてやる」

 

「私が行こう。宜しく頼むよ」

 

体格の良い男が前に立つ

 

「大尉。帯を見て下さい。黒帯です、相当な手練れですよ」

 

「殺す気で来い」

 

「あっ…ダメです!!ストップストップ!!」

 

何かに気付いた香取が止めに入るが、向こうは既に向かって来ている

 

勝負は一瞬

 

「あらぁーーー!!」

 

投げ飛ばされた黒帯の男が畳の上に落ちた

 

「柔道だったか??こういう時何て言うんだ??」

 

「い、一本だっ…ありがとう…」

 

手を貸して立ち上がる黒帯の男

 

「流石は死神…いや、マーカス大尉です…」

 

「こうでもしないと生きられなかった。こちらこそありがとう」

 

互いに礼をし、黒帯の男は一歩下がる

 

「香取」

 

「は、はい!!何でしょう大尉!!」

 

「…あれ全部やったのか」

 

「手ほどきをしろと言われたので…」

 

武道場の端っこの方には雑に積まれた、香取にコテンパンにやられた隊員が5〜6人いた

 

「…はぁ。しばらく帰れねぇな」

 

「お手伝いしますので…」

 

先程の黒帯の男の方を見る

 

「すぐに治療する。武道場借りるぞ」

 

「はっ!!」

 

「香取、俺がキット持って来るまでの間並ばせて置いてくれ」

 

「分かりました!!」

 

俺はグリフォンに医療キットを取りに戻る…

 

「香取教官」

 

「何でしょう」

 

「つかぬ事をお聞きしますが…香取教官は大尉を…」

 

それを聞き、香取は彼を見る

 

「貴方達は彼を何と呼んでいますか」

 

「死神…と…」

 

「死神が奪って行くのは、魂だけでは無いのですよ…」

 

「なるほど…」

 

「さぁ!!1列に並んで下さい!!」

 

しばらくすると医療キットを持った俺が戻り、診察が始まる…

 

 

 

「ありがとうございます、大尉殿!!」

 

「い〜え、どういたしまして!!よしっ!!これで全員だな!!」

 

「コレット大尉、香取教官!!」

 

恐らく高官の奴が挨拶に来た

 

「呼ばれてんぞ」

 

「大尉もですよ!!」

 

「あっ…すまんすまん…」

 

未だにコレット呼びは慣れないな…

 

「教鞭及び治療して頂き、ありがとうございました!!」

 

「礼はいい。仕事をしたまでだ」

 

医療キットで使った物をメモし、パックを閉じる

 

「大尉、もう少しお話を…」

 

「お食事を御用意致しました、此方へ!!」

 

「結構だ。おかわりしたらシバかれる飯じゃなくて、レストランで食いたい。行くぞ」

 

「あ、大尉!!」

 

お腹も空いた事だし、そろそろ帰ろうとした

 

「おかわりして良いですから!!」

 

「…本当だろうな」

 

「本当です」

 

 

 

 

「美味い!!」

 

「美味しいですね大尉!!」

 

食堂の席に座るとデカい肉を出された

 

今の自衛隊の飯は美味いと聞いたが本当だ

 

ご飯も大釜で炊いていて美味い

 

付け合わせの玉ねぎの何かも美味い

 

このデカい肉もめちゃ美味い

 

「めっちゃ美味そうに食うな…」

 

「何か…思ってた人と違う…」

 

「大尉。いい加減フォークの使い方覚えてくれませんか??」

 

「んぁ??」

 

香取は思う…

 

スパイトさんがマナーのプロなのに、どうして息子はこんなにガサツでテーブルマナーのマの字も無いのか…

 

リチャードの方と思ったが、リチャードはあんな性格だがマナーはピカ1だ

 

その息子はナイフで肉をギコギコ切り、デカいままフォークで口に運ぶ

 

挙句の果てにはスプーンでご飯を食べている…

 

「大尉。ジュースはどうですか??」

 

「んぉ、すまん。淹れてくれ!!」

 

香取は俺が肉に突き刺したフォークを取り、手元に置く

 

「ジュースもっ…美味いなっ!!」

 

「…」

 

「なんだよ…」

 

「先生、マナー教えませんでした??」

 

「忘えた!!」

 

「大尉。チキンボールです」

 

「おっ!!サンキュー!!ここに入れてくれ!!」

 

香取はまた肉に突き刺したフォークを俺の前に置く…

 

「大尉。朝霜さんに笑われますよ??」

 

「朝霜は俺と一緒だろ??」

 

「朝霜さんは妹さんの為にテーブルマナーをしっかりと学んでいます」

 

「朝霜がぁ!?」

 

朝霜がテーブルマナーを守っている姿が想像出来ない…

 

「少なくとも、お肉にフォークを突き刺す様な真似は絶対しません…」

 

「わ、分かったよ…」

 

「すみません…彼、食事になるとちょっと野生児になるので…」

 

「失礼な奴だ!!あ、おかあり!!」

 

「おかわり下さい!!」

 

「おかわり下さい!!」

 

「ふふっ…はいっ」

 

自衛隊の連中から笑いが込み上げる…

 

「大尉。いつの日か航空演習をさせて下さい」

 

一人の若いパイロットがようやく話し掛けてくれた

 

「お、いいな。ズズズ…コテンパンにしてやるよ!!」

 

「スープは音を立てない!!もっと丁寧な言葉を使いなさい!!」

 

「うひっ!!こ、コテンパンにしてあげましてよ!!」

 

「…大尉??」

 

香取の肩が震えている…

 

「もっと〜、お上品に??」

 

「…」

 

上目遣いで睨む香取が頷く

 

「ぶ…ぶっ殺しあそばせ…」

 

「是非お相手願います」

 

「是非お相手願います!!」

 

「こちらこそ!!宜しくお願い致します!!」

 

若いパイロットが席を立ち、目で追い終わると香取が小声で話し掛けて来た

 

「なんですっ…ぶっ殺しあそばせとは…」

 

「…俺にだって嫌な思い出の一つや二つある」

 

「そういう事は早く言って下さい…」

 

ご飯を食べ終え、俺達は基地へと戻る…

 

 

 

 

レイ君が帰って来た

 

「あ!!おかえりレイ君!!」

 

「ただいまっ!!よいしょっ!!」

 

グリフォンから降りて来て、医療キットの使った分の補充をするレイ君の横に座って、今日の事を聞く

 

「自衛隊のご飯美味しかった??」

 

机に頬杖をつきながら、大淀さんはレイ君の横顔を見る

 

「昔と比べてウンと美味くなってたよ!!」

 

「昔は美味しくなかったもんね??」

 

「味があるだけっ、レーションよりはっ、マシだったレベルだったなっ!!」

 

今日も沢山救って来たんだね…

 

包帯でしょ??軟膏でしょ??

 

あ、簡易石膏も無いや…

 

「大淀さんのとどっちが美味しい??」

 

「ブッチギリで大淀のが美味い」

 

「わー、すっごい真顔〜…」

 

物凄い真顔で大淀さんを流し目で見てる…

 

「おかわりしたらシバかれる時点で終わってんだよ。飯に縛りなんて入れたら美味くなくなるだろ…」

 

「まぁね…」

 

レイ君、良く動き回るし、食べられる時に食べておかないと本当に次いつ食べられるか分かんないもんね…

 

大淀さんはレイ君にいっぱい食べて欲しい

 

ご飯を食べるたった10分も取れない日もいっぱいある

 

大淀さんがレイ君にたまにカツサンドとか片手で食べられるのを作るのはそう言う事

 

ちゃんと栄養も考えて作ってあるよ

 

…レイ君、多分ご飯を縛りプレイするのが物凄い嫌なんじゃないかな

 

「レイ君、足柄ちゃんのアイス食べに行かない??」

 

「おっ!!食いに行くか!!これでよしっ!!行こう!!」

 

「うんっ!!」

 

久々にレイ君とデートする事にした

 

 

 

 

「そういや涼平達が言ってたな…足柄さんの所にあるアイスは美味いって」

 

「大淀さんも食べた事ないんだ!!」

 

足柄ちゃんは駄菓子屋さんのはず…

 

そこでアイスって事は、冷凍庫にでも入ってるのかな…

 

「ここか…??」

 

「無いね…」

 

着いたはいいけどアイス屋さんなんて見当たらない

 

「あ!!えいしゃん!!」

 

「おかえい!!」

 

タイミング良くひとみちゃんといよちゃんがいた

 

「こえ、ちぉ〜かいしゃんにかってもあった!!」

 

「おいち〜あいす!!」

 

ひとみちゃんといよちゃんの手にはアイスが乗ったコーンが握られている

 

「何処にあるんだ!?」

 

「こっち!!」

 

二人に案内されたのは足柄ちゃんの駄菓子屋さんの横の道…

 

そこを抜けると開けた所に出た

 

「いらっしゃいなのじゃ!!」

 

「ここか!!」

 

「いらっしゃませ、大尉と博士!!」

 

「隠れ家みたいでいいね!!」

 

ツインテールの艦娘と、ロングヘアーの艦娘がそこにいた

 

チャイナドレスみたいな服を互いに着てるから姉妹なのかな…

 

「吾輩は利根!!こっちは筑摩!!」

 

筑摩と呼ばれた女性は頭を下げてる

 

「俺はマーカス。そうだな…このナッツの奴を!!」

 

「大淀さんはこのイチゴにする!!」

 

「ちょっと待っててくれ!!」

 

ひとみちゃんの見てたらイチゴが食べたくなって来た

 

「ほれ!!」

 

何故かレイ君は横に避けた

 

「何故避ける!!」

 

「すまん…つい反射でな…はは…ありがとう!!」

 

「涼月ちゃんじゃないから投げないよ!!」

 

「そうだな…はは!!」

 

青いプラスチックのベンチに座ってアイスを舐める

 

いつの間にかひとみちゃんといよちゃんも大淀さんとレイ君の横にそれぞれ座っている

 

「うんまい!!」

 

「ど〜じゃ!!吾輩が作ったアイスは!!」

 

「コイツはイケる!!これか!!涼平達が言ってたアイスは!!」

 

「少尉の事ですか??」

 

「そそ。たまに来るのか??」

 

「そうじゃのう。1週間に2回くらいは顔を見せるの??」

 

「ほっか…しかひうみゃいな…」

 

「うみゃいうみゃい!!」

 

「おいちぃおいちぃ!!」

 

レイ君もひとみちゃんもいよちゃんも、美味しそうにアイスを舐めてる

 

「いってきますえ!!」

 

「ごちそうさあでちた!!」

 

「気を付けてな!!」

 

「気を付けてね!!」

 

ひとみちゃんとといよちゃんはアイスを食べて何処かに行った

 

「しっかし暑いのぉ…」

 

「もう少し忙しく成りそうですね…」

 

「とね!!あいすくらしゃい!!」

 

「ちくあ!!このちぉこえ〜とのくだしゃい!!」

 

またひとみちゃんといよちゃんが戻って来た

 

「お〜お〜、任せろ任せろ!!」

 

「いしょいれくらしゃい!!」

 

「どうかしたのか??」

 

「ばたんしてうひという!!」

 

「分かった、行こう。何処にだ??」

 

「あかん!!えいしゃん、お〜よろしゃんとれ〜と!!」

 

「じっとしててくだしゃい!!」

 

「ほれ!!持ってけ!!金は要らんぞ!!」

 

「あいあと!!」

 

「またきあす!!」

 

ひとみちゃんといよちゃんはアイスを抱えてまた行く

 

「流石に気になるな…」

 

「ちょっと行ってみよっか。ごちそうさま!!ありがと!!」

 

「今度お礼も兼ねて来る!!」

 

「おぉ、すまんのぉ!!」

 

「またのお越しを!!」

 

レイ君と一緒に、二人を追い掛ける…

 

 

 

 

「あいっ!!こえなめててくらしゃい!!」

 

「すみません…」

 

「けっと〜ち!!」

 

「ありがとうごさいます…」

 

繁華街で視察に来ていた自衛隊の連中が二人、熱中症で倒れている

 

その周りでひとみといよはせっせこせっせこ動いている

 

「こおいもってきあした!!」

 

「ひえっひえです!!」

 

ちゃんとワキの下に氷を入れた袋を入れている

 

「こえものんれくらしゃい!!」

 

「のめうか??」

 

ペットボトルの水を飲ませ、アイスも舐めさせている

 

これで血糖値も大丈夫だな…

 

「ありがとう…ありがとう…」

 

「ひとみ、いよ、ありがとう。後は任せろ。よ〜し、もう大丈夫だ!!」

 

「れ〜とあ??」

 

「大淀とのデートはいつだって出来るさっ。だけどっ…この人は今しか救えないっ!!」

 

「高く付くよ〜??」

 

「ぼったくいだ!!」

 

「工廠まで運んでくれるか??」

 

「いきあす!!」

 

「いくで!!」

 

ひとみといよに1人を任せ、工廠に運ぶ

 

 

 

「救助頂き、ありがとうごさいます!!」

 

1時間もすると、彼等の上司が迎えに来た

 

「自衛隊は水を飲まないのは知ってる」

 

「あれは救助者に…」

 

「助ける奴が飲まないでどうする??いいか、俺達助ける側の人間が倒れたら終いだ。助けられる者も助けられん。よく考えろ、俺達は救う側だ」

 

「しかし…」

 

「お前等の命なんざ、俺が幾らでも救ってやれる」

 

言葉が響いたのかどうかは分からない

 

だけど、彼等の上司の肩が上がった

 

「だけどな、ここまで連れて来るのはいつだってお前達だ。絶対忘れるな」

 

「了解です、大尉殿…久々に人に会った気がします…」

 

「お得意の反論はしないのか??」

 

「真っ当な意見です。我々が倒れたら終わり…ですね??」

 

「そうだ」

 

「肝に銘じますっ」

 

「後、この二人にはしっかり水分補給と休養を与えてくれ。筋肉疲労、脱水症状、それと過労が診られる」

 

「ど、どうすれば…」

 

「休暇が一番の薬だ。3日休ませろ、命令だぞ??」

 

「はっ!!」

 

診断書を渡し、彼等を引き取って貰った

 

「ひとみ、いよ、ありがとうな??」

 

「お〜よろしゃんとれ〜と…」

 

「またできう??」

 

ひとみといよはずっと気に掛けてくれている

 

俺と大淀は仕事上中々二人で会う事もままならない

 

やっと時間が取れたと思えば今日の様な有り様だ

 

…正直、もっと話したい事もある

 

ジェミニに言えない事もある…

 

「いつでも出来るさっ!!」

 

「よかった!!」

 

「ほなじぅんびしあす!!」

 

「どこ行くんだ??」

 

「よこしゅかしゃんとおれかけ!!」

 

「そのまえにはたけ!!」

 

ひとみといよは畑に向かった…

 

 

 

夜…

 

レイが朝方行っていた基地…

 

ここの基地から来ていた隊員が熱中症を起こしたのでお話に来た

 

「ま、魔女が直接訪問だと!?」

 

「魔女とか言ったらダメですって!!」

 

外からもアタシの事を言っているのが聞こえる…

 

もうちょっと壁しっかりなさいよ…

 

「あ、開いている。入りたまえ」

 

「失礼するわ??」

 

アタシが入ると高官が椅子を下げ、その部下が壁に後退る

 

「ま…ジェミニさん…言って頂ければ此方から出向きますのに…」

 

「すいかれす!!」

 

「せ〜きぅ〜しぉです!!」

 

ひとみが高級そうな箱にいれたスイカを渡し、いよが請求書を渡している

 

「ど、どうも…」

 

「…高額なのでは」

 

「…」

 

高官は恐る恐る請求書を開ける…

 

「…」

 

何度も請求書を見直して、こめかみを掻いている

 

「値段…間違ってないか??」

 

「いいえ??正規の料金ですが??一応此方の基地は未だ中立…なのでその様な料金形態になります」

 

「しかしだ!!」

 

「ウチの軍医は優!!秀!!なので!!水分もしっかり摂らせますし??部下や上官におかわりだって勧めます。体調管理は…そちらよりバッチリかと!!」

 

「だからこそこの値段はなんだと聞いてるんだ!!」

 

「あら!?払えないとでも!?自衛隊さんはそ〜んなにお金にお困りの様で。何なら少し融資致しましょうか??おほほほ!!」

 

散々煽り散らかして、ちょっと遊んであげる

 

ひとみといよは既に部下の男とスイカを食べている

 

「本当にこの値段なんだな!?」

 

「えぇ、そうです。一桁も間違ってませんとも。私、お金にうるさいのはご存知でしょう??」

 

「だったらもう少し取っても良いと思うんだが…」

 

「当の本人がその値段を提示したので、今回はその料金形態です」

 

 

 

請求書にはこう書かれている

 

治療費200万円也

 

但し、下記の約束事を守る場合、二人合わせて3000円とする

 

1、水分補給をさせる事

 

2、栄養を摂らせる事

 

3、休息を摂らせる事

 

4、上記を護った上で国を守る事

 

5、多分そこに行く艦娘は補助をしてくれたので小遣いをあげる事

 

 

 

レイらしい請求書ね

 

「その二人が気付いて応急処置を施した上で、ウチの軍医が処置を施しました」

 

「よ、よし…い、幾ら欲しい!!」

 

「たかいれ??」

 

「ぼったくいきんがく!!」

 

高官が生唾を飲んだ…

 

この二人はアタシのミームに若干感化されて来てる

 

ボッタクるのよ、ひとみっ、いよっ!!

 

「しぇんえんにしとく??」

 

「しぇんえんにしとく!!」

 

「よ、よしよし!!すぐやろう!!ちょっ待っててくれ!!」

 

その場にいた3人の大人が微笑む

 

高官の男性は一旦部屋を出た

 

多分会計に行くのだろう

 

「ジェミニ元帥。改めて私からもお礼を」

 

「あら、魔女じゃなくて??」

 

「も、申し訳ございません!!」

 

「よしっ!!失礼ですがジェミニ元帥、このお二人はひとみさんといよさんで…」

 

「そうよね??」

 

「ひとみ!!」

 

「いよ!!」

 

高官の男性はキチンとひとみといよの目線に合わせる為にその場でしゃがんでくれた

 

「ではひとみちゃん、いよちゃん。本日は私の部下を救ってくれて、どうもありがとうございました!!はいっ!!」

 

「あいあと!!」

 

「ちぉ〜だいしあす!!」

 

ひとみといよはお金の入った封筒を受け取った

 

「ジェミニ元帥。此方、治療費になります」

 

「確かに受け取りました。また今度ゆっくりお話しましょう??」

 

「今度は此方からお伺いさせて頂きます!!」

 

「じゃあね??」

 

お金もすぐ払ってくれたので、自衛隊の基地を離れる…

 

「お!!か!!ね!!」

 

「しぇんえん!!」

 

帰りの二式大艇の中で、二人は嬉しそうに封筒を振り回している

 

「開けないの??」

 

「あけてい??」

 

「おしゃいふにいえう!!」

 

「二人のお金よ??開けて良いわ??」

 

二人はアタシの許可をちゃんと得てから封筒を開けた

 

「みて!!」

 

「ごしぇんえん!!」

 

「あらっ!!良かったわね!!良い事したら、ちゃんと帰って来たわね!!」

 

「やった〜!!」

 

「おかちかう!!」

 

…後でお礼の連絡を入れておこう

 

気を遣ってくれたのだわ…

 

それにあの基地は言っている間に傘下に入る

 

これから長い付き合いが始まる…

 

長い付き合いだからこそ、こうした小さな礼儀が必要になって来るわ…

 

 

 

後日、本当にあの基地は傘下に入った

 

決定打はやっぱりレイの治療だった

 

レイの健康状態もしっかりさせないと!!

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