ジェミニに依頼され、マーカスは海上ではなく湖上に調査に向かいます
そこには何故か艦娘達がおり、彼にとって懐かしい顔がいました
「レイ。ちょっと調査に行って欲しい所あんの。頼める??」
「オバケじゃねぇだろうな…」
「ここに行って頂戴。強風を埠頭に停めてあるわ。それで行って頂戴」
そう言ってジェミニに渡された紙と地図を見る
「準備して来るよ」
埠頭に行くと涼平と園崎が強風の最終調整に入ってくれていた
「あ、隊長!!元帥に言われた物は後部座席に載せておきました!!」
「給油オッケー!!キャップオッケー!!隊長、満タンです!!」
「すまん、助かった。しかしまた調査とはなぁ…」
「今度はオバケ出ない事祈ります…」
「そっか…前回オバケ出たんでしたっけ…」
「「その話はやめてくれ!!」」
俺と涼平は園崎を止める
俺達二人はガチモンのオバケをこの目で見ている
「りょ、了解っ!!」
「いいかソノ…オバケってのはホントにいるんだ…」
「前回は友好的なオバケでしたけど…今回はそうじゃないかもしれませんし…」
「涼平…その言い方だと今日も出るぞ…」
「す、すみません!!ちなみに何処なんですか??」
「それがな…」
目的地に着水する
ジェミニが指定して来た場所は、本州最大級の湖…
その湖上だ
着水して涼平が積んでくれた荷物を確認する
"向こうで人に会ったら開けてね"
"着いたら開けてね"
そう書かれた包み紙と封筒がいつものジュラルミンケースの中に入っていたので"着いたら開けてね"と書かれた方の封筒を開ける
出て来たのはカードキーだ
強風から降り、地図に書かれた場所を目指す…
降りたのは湖の真ん中にある小島
その周りは生簀の様な施設があり、人が手を加えたとすぐに分かった
「ここか…」
入口はすぐに見つかる
カードキーを機器にスライドするとドアが開いた
どうやらエレベーターのようだ
中に入るとボタンは2つしかなく
"湖上プラント施設"
"湖底エネルギー施設"
下のボタンを押すと、エレベーターが動き始める…
「おぉ…スゲェな…」
エレベーターは強化ガラスになっており、湖の中が垣間見えた
デカい魚や、小さい魚が群れを成して泳いでいるのが見える
《湖底エネルギー施設です。ドアが開きます》
エレベーターを降りて左右を見る…
如何にも研究所な造りだ…
さて、問題はここからどうすれば良いか分からない…
「あっち行ってみよう!!」
「待って〜!!」
エレベーターを降りると、1つ離れた廊下を何故か少女が二人駆けて行った
何なんだ、ココは…
不思議な感じがする…
渡り廊下に来ると、ここも強化ガラスになっており、湖の中の様子がよく見えた
「まだこんな場所が残ってたのか…」
水中の美しい風景の中を、デカいナマズの様な魚が泳いで行く…
ギリギリ太陽が届いていて、キラキラ光る魚もいる
潜水艦の子達は、こんな風景を見ているのかと感慨深くなる…
「お客様ですか??」
ガラスの向こうを見ていると、また別の少女に話し掛けられた
「ここに入れると言う事は、貴方はゲストのハズ…」
「あぁ。ちょっと待ってくれ…これで証明になるか??」
渡されたカードキーを少女に見せる
「はいっ!!とっても良い証明です!!ありがとうございます!!」
「マーカスだ。君は??」
「私は"沖波"です。ここで管理人と一緒に、湖上の施設と、この湖底エネルギー施設の管理をしています」
「管理人??」
「施設の案内がてら、管理人の所に案内します!!」
どうやら管理者がいる様子だ
ここはこの子に従おう…
「この施設の情報はお聞きになりましたか??」
「まだ何も聞いてない。調査に行ってくれと言われ、それっきりだ」
「そうでしたか。ここは湖上ではお魚の養殖と水質調査を。湖底では艦娘の療養…それと、簡易的ではありますが、社会に戻った際の訓練をしています」
「確かに人目に付かない場所だな…社会に戻った時の訓練ってのは何だ??」
「見て頂いた方が早いかと」
沖波は一室のドアを開ける…
「いらっしゃいませ!!」
「何か見繕いましょうか??」
「結構良いの入ってますよ!!」
ドアの向こうは吹き抜けの様な形になっている
そこには幾つかの売店が並んでいて、皆それぞれ違う物を売っている
「皆さんが自作したり、外から入荷した物をここで売って、お小遣いに出来ます」
「なるほど…俺も買えるのか??」
「あ、はいっ!!勿論!!」
「どれっ…」
「いらっしゃいませ!!」
「これと…これを貰えるか??」
小銭を置き、お菓子を受け取る
「はいっ!!ありがとうございます!!」
まずはお菓子を買い、次の店を見る
「何か見繕いましょうか!!」
「似合うのを頼む!!」
次の店はアクセサリーショップ
「あ、お客さん。ちょっとお高いのですが…最近出来たのがあるんですが…」
「見せてくれるか??」
「はいっ!!これなのですが…」
その子が見せてくれたのは至って普通の手甲
「これ、ワイヤーが飛ぶんです!!」
「ちょっとやって見せてくれないか!?」
「行きますよ…」
その子は自分で手甲を付け、実践してくれた
ワイヤーは店内にあった空き缶に刺さった
「よし、1つ貰おう」
その子の前にあったお金のトレーに万札を2枚置く
「わ!!ありがとうございます!!早速着けて行きますか!?」
「頼む。どうだ、似合うか??」
手甲を付けて貰い、沖波に見せる
「はいっ!!良く似合ってます!!」
「ふ…ありがとう!!」
最後の店の前に来た
「結構良いの入ってますよ!!」
「うっ…出た…」
最後はフリーマーケットの様なお店
そこにあったのは、久方振りに見た謎の設計図…
「こ、こいつを貰おう!!」
「ありがとうございます!!」
すぐに謎の設計図を買い、ジュラルミンケースに仕舞う…
訓練エリアを出て、沖波に買ったお菓子を半分あげた
「ありがとうございます大尉!!それと、沢山買って貰って!!」
「沖波。俺大尉なんて言ったか??」
「はぁ"っ…」
沖波は物凄い低い声で空気を吸った…
「た、たたた、大尉っぽいなぁ〜と…」
「…」
ジト目で沖波を見る…
沖波は俺をガン見してちょっと震えた後、急に笑う
「な〜んてっ!!ゲストなんで知ってますよっ!!マーカス・コレット大尉、軍医さんですよね??」
「そりゃそうか…すまんすまん、要らん詮索をした!!」
また沖波に案内され、歩みを進める
「ジェミニ様から聞いていますよ??」
「当の本人はな〜んも言わなかったけどな??ここの管理人はジェミニの知り合いか??」
「えぇ。管理人から貴方がたのお話を良く聞きます。本物に会えて、沖波も光栄です!!」
どうやら俺の知ってる人物が管理人を務めているらしい
「ここの突き当たりが管理人のお部屋になります…大尉??」
「ここは??」
管理人の部屋に行く前に一つの部屋が目に入った
「ここは海で怪我を負った艦娘達が秘匿に治療をする場所です。また海へ戻る艦娘…ここで艦娘としての役割を終える艦娘…様々な艦娘が搬送されて来ます」
「治せるのか??」
「えぇ。管理人は違法営業していた病院から引き取ったカプセルをジェミニ様から頂いて、正規の使用方法で使っています」
「ちょっと見せてくれ」
「勿論です、どうぞ」
沖波に手引され、カプセルが置いてある部屋に入る
「はは…久し振りにちゃんとした使い方を見たよ…」
どのカプセルもちゃんと正規の使用方法をされており、ほとんどのカプセルに艦娘が入っている
「これは??」
「それは少し前から故障してしまって…モニターが動かないんです…直し方は一人しか知らないと管理人が…」
「ちょっとこれ持っててくれ」
「えっ!?あっ、ちょっ、大尉!?」
「え〜っと…どれどれ…」
カプセルの内部に頭を入れ、配線を確かめる…
「あ〜…オッケーオッケー…ちょっと待ってろ!!」
配線を繋ぎ直し、溶液の配送チューブも取り替える
「これでよしっ…沖波、モニターはどうだ??」
「動いてます!!」
「操作出来るか??」
「えっと…はいっ!!出来ます!!大尉、一体どうやって…」
「俺がっ‼その一人だからなっ!!よっと!!」
「ありがとうございます、大尉!!」
「管理人が真っ当な使い方してくれてるからな。その礼だ!!」
「では、管理人の部屋に!!」
沖波は出会った頃より明るく管理人の部屋の前まで案内してくれた
「沖波、入ります」
「開いてるよ!!」
沖波はドアを開けてすぐに話し始めた
「"お父さん"!!大尉がカプセルを直してくれました!!」
「そっかそっか!!マーカスにお礼を言わないと!!」
お父さんと呼ばれた男を見て目を見開いた後、微笑む
「久し振りだな、マーカス!!」
「上崎!!はは!!」
管理人は上崎だった
あの日の気弱な感じは消え、ガタイも随分と強くなっている
「長い間連絡出来なくて済まなかった…ずっとここを建設していてね…」
上崎はグラスに飲み物を入れてくれているので、俺は上崎の後ろにある大きな強化ガラスの向こうの魚を見る
「良い施設だ。凄いな…ありがとう…」
「再会に乾杯だ!!」
「再会に!!」
グラスの中身を飲みながら、上崎と話す
「あの日の後、結局私は自衛隊に戻ってね…そこから色々知った。人体実験が行われていた事、生命の製造が行われていた事…せめてもの救いになると思って、横須賀の協力を経てここを建設出来たんだ」
「さっき見て来た。上崎らしいな…」
彼の顔を見るとホッとする…
1番最初に艦娘の事を分かってくれて、そしてそれは今でも変わっていない
「そうだ上崎。一つ聞きたい事がある」
「何だろう。私が知ってる事なら」
「イーサンの件は知ってるか??」
「あぁ…悲惨な事件だった。私は場所しか把握出来なくてね…横須賀に位置情報だけは送ったんだ」
「…網走の件もか??」
「ふふ…田淵の尻尾をようやく掴んだからね。君に知らせた方が良いだろうと思ったまでさ!!」
「ありがとう…多くを救えた…」
その時の俺の顔は悲しい顔をしていたのだろう
上崎はそれにすぐに気付いた
「マーカス、どうか気に病まないで欲しい。君は本当に多くを救ったんだ。それに…艦娘を治療出来るのは世界で君は一人だ。限界もある」
「ありがとう、また救われたよ…」
その言葉は、誰にも言われなかった言葉
もしかすると、心の何処かで欲していたのかも知れなかった言葉
またこの男に救われた…
「何か手助け出来れば良いんだけどな…」
「あ、そうだ!!ジェミニに言われて…ちょっと待ってくれ!!」
ジュラルミンケースからもう一つの包み紙を取り出し、上崎に渡す
「ジェミニさんからかい??」
「一緒に見ても良いか??」
「勿論さ!!」
デスクの上で上崎が包みを開ける…
「これは…」
「懐かしいな…」
中に入っていたのは、俺が初めて高速修復材を入れたフラスコ
中には今現在の高速修復材が入っている
そして中には手紙も入っていた
「えっと…」
お久しぶりです
今はどうしても席を外せないので、こうしてお手紙でご挨拶する事になってしまった事を、まずはお詫びします
その節は横須賀一同、大変お世話になりました
貴方とは随分長いお付き合いになります
私達が自衛隊に呼ばれて、深海との戦争になり、そして今、ほんの少し和平の道が開けている状態です
貴方は影でずっと私達を支えてくれました
初期の艦娘…イーサン事件…そして網走…
感謝してもしきれません
今この手紙を読んでいると言う事は、貴方を恩人としている軍医がそばにいますか??
彼からのプレゼントが包みの中に入っています
それはカプセルにセットするタイプの溶液で、約100回分の高速修復材です
今度は私もお伺いします
それまでお元気でお過ごし下さい
ジェミニ・コレット元帥
「早速セットしに行こう!!」
「やってくれるのか??」
「勿論さ!!」
カプセルのあった部屋に戻り、早速設置する
「ここはこれで…モニター見てくれ!!」
「回数が上がってる!!」
「よしっ…次はこれで…」
「ありがとうマーカス…私がずっと欲しかった物だ!!」
「上崎ならっ…悪用しないだろっ!!よしっ、出来た!!」
「これは命を救う物だ。私がさせない。何があろうとね!!」
「足りなくなったらいつでも言ってくれ。必ず補充に来る!!」
「助かるよ!!あ、そうだマーカス。良い物がある!!」
上崎に言われ、管理人の部屋に戻る
「沖波。あの資料を出してくれないか??」
「畏まりました!!」
「お食事のご飯が出来ました!!」
何だか面白い言葉になっている艦娘の子が、カートにご飯を積んで来てくれた
「ありがとう。"巻波"が作ってくれたのかい??」
「はい!!巻波がご飯のお食事を作りました!!」
「この子は巻波。将来ごはん屋さんを目指してるんだ」
「マーカスだ。軍医をしてる。よろしくな、巻波??」
「よろしくお願いします!!えへへ!!マーカスさんの好きな"ゴメシ"はお伺いしてます!!」
俺の前に唐揚げ定食が置かれる…
「何で知ってるんだ??」
「ジェミニ元帥提督からお聞きしました!!」
「そっかそっか…」
「どぞ!!」
「頂きますっ!!」
「頂きますっ!!」
沖波が資料を準備してくれている間に、巻波の唐揚げ定食を頂く…
「美味いっ!!はぁっ…」
ホッカホカのご飯に、カラッと揚げたジューシーな唐揚げ
ついため息が漏れてしまう…
「マーカス。おかわりもある」
「ふふっ…覚えてたのか??」
「覚えてるさっ」
俺も上崎も笑う
自衛隊ではご飯のおかわりが出来ないと昔言われて、それから自衛隊の基地内でほとんど食べなくなった
「おかわり!!」
「はいっ、どうぞ!!」
結局、お茶碗2杯分平らげた
いやぁ…美味かった…
「此方になります」
「おっ、ありがとう…」
沖波から資料のバインダーを受け取る…
「それは自衛隊が把握している艦娘の情報なんだ」
「…」
上崎に言われて、すぐ中身を確認する…
「朧だ…」
最初に出て来たのは朧
ただ、朧と書かれておらず、コードネームが振られている
「カルキノス…」
「蟹がいるからじゃないか??」
「あっ…そういう…」
カルキノスと言われればそんな気がして来た…
「白露とフーミー…」
少し前は通し番号みたいな名前が付いていたが、本来は付ける名前が違っていたらしい…
「ヴリトラ…カイドラ…」
そう言われるとそんな顔に見えて来た…
「その子については、少し気になる情報を得たんだ」
「なんだ??」
「こっちの子は、本来カイドラと書かれている子の番になる予定では無かったみたいなんだ」
「別の艦娘の子の予定だったって事か…」
「そうだな…もしその噂が本当ならば、フーミーの容姿に似た子のハズなんだ」
フーミーの写真を指でなぞる…
「白露はフーミーに懐いてるんだ…出来るなら、離れさせてやりたくない…」
「それも一つの答えさ、マーカス。二人を見ている証拠さっ」
上崎の言葉に頷く
その後もコードネームが振られた艦娘達が続いて行く…
どうやら過去に自衛隊を追っ払ったか、深海と交戦して圧倒的な火力を見せ付けた艦娘達で、見かけたら近付くなの注意喚起の書類だ
最後のページになった…
「カリュブディス…」
この子の注意事項は悲惨だ
・見かけたらとにかく全速力で退却
・全作戦を放棄し直ちに退却
・当該艦娘による被害甚大。戦闘艦多数を単騎で撃沈
・捕捉不能の位置から高速で魚雷を射出する為、レーダーに感知した瞬間に防御体制に移行、即時撤退
・万が一接敵を許してしまった際、当該艦娘は近接攻撃も非常に強力であり、装甲も非常に強固
・イージス艦装甲を蹴破る程の脚力を有し、巡洋艦の装甲でさえ、当該艦娘の砲撃を耐えた試しが無い
・速射砲による攻撃を敢行するも、当該艦娘に打撃を与えられずイージス艦1隻が撃沈される
・上記報告により、レーダーに捕捉した時点で退却する事
「あの日、助け出せた子だ…」
「なぁ…カリュブディスと"矢矧"…どっちが良いと思う??」
「矢矧の方が良い」
「ふ…良かった。答えによっちゃ、カリュブディスに改名しようと思った!!」
上崎も俺も笑い合う
俺は資料を閉じた…
カリュブディスの最後の一文には、こう書かれていた…
"尚、このコードネームのみ過去に"死神"が呼称していた物である"
「また必ず遊びに来てくれよ??」
「今度はバカンスで来るさ!!あ、巻波に言っておいてくれ、今度もまたアレが食べたいって!!」
「喜ぶよ!!」
最後に握手をして、強風に乗る…
「ありがとう!!」
「気を付けてな!!」
湖上プラント施設を発つ…
「おかえりなさい、レイ??」
「知ってたなら言えよ!!ありがとな??」
「どういたしまして!!次は一緒に行くわよ!!」
俺は今日あった事をジェミニに話した
お魚が見えるくらい綺麗な施設だったとか
沖波は秘書として有能だとか
巻波はお前が気に入りそうだとか
お土産のワイヤーが出る奴を朝霜にあげたりとか…
今度はもっと人数を増やして、彼にまた会いたい…