艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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今回のお話は、ようやく完成した長鯨の屋台のお話です

夜になると、砂浜近くでおでんの屋台を出す長鯨

お昼は出前の配達をします

その出前で一波乱起きます 笑


339話 長鯨さん、おでんを始める

長鯨が横須賀に来てから数日後の夕方…

 

「うぁう〜」

 

「あぅ〜」

 

「ヒトミ、イヨ、ありがとうございます」

 

「えいしゃん、きょ〜あ、よこしゅかいってた」

 

「すぱいとしゃん、あにたえう??」

 

その日マーカスは横須賀で泊まり掛けの作業、もとい診察

 

私とヒトミとイヨも横須賀に来ていたが、晩御飯は横須賀で食べると言って来たので何か口にしたい所

 

「あえみて!!」

 

「おでん!!」

 

私の横を歩いていたヒトミとイヨが赤いチョーチンを見付ける

 

数日前に出来上がったとマーカスが言っていた屋台だ

 

「オデンは美味しいのですか??」

 

「おいち〜!!」

 

「す〜ぴぁ〜ま〜けっろにうってた!!」

 

ヒトミとイヨ曰く、スーぴゃ〜マーケットに売っていたのを食べた事があるらしい

 

「行ってみましょう!!」

 

3人はのれんを捲る…

 

「いらっしゃいませ!!」

 

「見ない顔ね、私はウォースパイト。マーカスの母です」

 

「お医者さんの!!これはこれは!!私は長鯨です!!最近ここに来ました!!」

 

「ひとみ!!」

 

「いよ!!」

 

「んふっ!!可愛いでちね〜!!これ、メニューになります!!」

 

「Thank you」

 

私がメニューを受け取り、ヒトミとイヨがサイドに来る

 

メニューと長鯨の手元を見て、美味しそうなおでんの実物を見る…

 

「この"ディーコン"を下さい」

 

「でぃ〜こん」

 

「りぃ〜こん」

 

「畏まりました〜!!」

 

3人の前にお皿に盛ったディーコンが置かれる

 

汁が染みていて実に美味しそうだ

 

「後はそうね…コンニャックと、ハンペンを。二人はどうします??」

 

「ためぃご〜くだしゃい!!」

 

「ちくあくらしゃい!!」

 

「はいっ、どうぞ!!」

 

「いたあきあす!!」

 

「いただきあす!!」

 

「ふふっ…頂くわ!!」

 

オハチを割り、まずはディーコンを口にする…

 

「あっつ…美味しい!!これがおでん…」

 

「はふはふ…」

 

「はふはふ…」

 

たどたどしい持ち方のオハチで、ヒトミとイヨはおでんを食べている

 

「ここにカラシもありますよ!!」

 

「すぱいとしゃんつけう??」

 

「ではここに少し下さい」

 

ヒトミにお皿の片隅にカラシを置いて貰う

 

「こ〜あって、ちぉっとらけつけうの」

 

「こうですか??」

 

「うん!!たえて!!」

 

「はむっ…」

 

カラシを付けたチクワを頂く

 

「おいち??」

 

「美味ひいわ…んっ、これ気に入りました!!」

 

チクワを飲み込み、他のオデンも頂く

 

「おもちかえいできあすか??」

 

「出来ますよ!!何にします??」

 

「えいしゃん、でぃ〜こんしゅき??」

 

「えぇ!!きっと好きよ!!」

 

「でぃ〜こんいちつくだしゃい」

 

「ちくあもいえといてくらしゃい」

 

「そうね、あと"タメィゴ"も一つ入れて置いて欲しいわ!!」

 

「畏まりました〜!!」

 

長鯨の手元で、プラスチックの器にディーコンとチクワ、それとオデンエッグが入って蓋がされる

 

「はいっ、どうぞ〜!!」

 

「Thank you」

 

ビニール袋に入れて、私の前に置いてくれた

 

「ごちそうさあでちた!!」

 

「おいちかったれす!!」

 

「ごちそうさま。お幾らかしら??」

 

「900円です!!」

 

「ここに置いておくわ。お釣りは貰っておいて!!」

 

机に千円を置き、いざ工廠に行こうとした

 

「またのお越しを〜…あっ、待って待って!!はいこれ!!」

 

長鯨が屋台から出て来て、ヒトミとイヨにジュースを渡す

 

「折角だから持って行って!!」

 

「もあっていいれすか??」

 

「さいだー!!」

 

ちゃんとヒトミとイヨは私に貰って良いかどうか聞いてくれる

 

「えぇ!!勿論よ!!」

 

「また来て下さいね〜!!」

 

オデン、とっても美味しかったわ!!

 

さて、これをマーカスの所に持って行きましょう!!

 

膝の上に置いたテイクアウトオデンをマーカスに届ける為、工廠に向かう

 

 

 

 

「よしっ!!診察おしまいっ!!明日と明後日はお休みして、体を休めるんだぞ??」

 

「ありがとうございました、マーカス先生!!」

 

丁度一人の艦娘の子が出て来た

 

「マーカス!!」

 

「おぉ、母さん!!飯食ったか??」

 

「えぇ!!今そこでヒトミとイヨと一緒に食べて来たの!!とっても美味しかったから、マーカスにも持って来たの!!」

 

「どれどれ…ちょっと休憩にするかっ!!」

 

マーカスにテイクアウトオデンを渡す

 

「おでんか…どうだった??」

 

「とっても美味しかったわ!!私ね、ディーコンとチクワが気に入ったの!!」

 

「ディーコン…」

 

マーカスが蓋を開ける…

 

「ふ…ディーコンな…どれどれ…」

 

マーカスは何故か真剣そうな顔をしてディーコンにかぶり付く

 

「はふっはふっ…」

 

「どうかしら??」

 

「うんっ!!美味い!!俺、長鯨の屋台の実食まだだったんだ。丁度っ、良かったよっ!!」

 

マーカスは美味しそうにオデンを食べて行く

 

「母さんはっ…これから基地に帰るのか??」

 

「てぃーほうと映画を見る約束をしてるの!!」

 

「そっかっ…んんっ!!ありがとな??」

 

「後で行ってみるといいわ!!とっても美味しかったから!!」

 

「現地で実食も大事だしな??」

 

「ヒトミ!!イヨ!!帰りましょうか!!」

 

「いきあしょ!!」

 

「はよかえってこいお〜」

 

母さんはひとみといよを連れて基地に帰って行った

 

俺も着替えて長鯨の屋台へと向かう準備をする

 

《あら、今日の診察はおしまい??》

 

PCが急に動き、ヘラの声がした

 

「そっ。後は急患位だ。今からおでん食うけど、来るか??」

 

《やめとくわ。それより、アンタの恋人が来るわよ??》

 

「あ!!レイ君いたいた!!長鯨ちゃんのおでん食べに行こうよ!!」

 

本当に大淀が来た

 

《行ってらっしゃいな》

 

「何言ってんのさ!!ヘラちゃんも来んの!!さ、出た出た!!」

 

《アタシは人の恋路邪魔する趣味ないの!!さ、行った行った!!アタシはカルテの整理とかしたいの‼じゃあね!!》

 

「お、おいヘラ…」

 

勝手にシステムが落ち、文字が打ち出される

 

KONNYAKU

TAMEIGO

HANPEN

DIEKON

KARASHI

 

「んふふ!!やっぱレイ君の子だ!!」

 

「ヘラ…D、A、Iだ…」

 

何処となく申し訳無さそうにカーソルが動き、DIEKONがDAIKONに変わる

 

「分かったよっ…」

 

「じゃ、行ってくるね!!」

 

大淀は本当は「そこじゃないんだけどなぁ…」と言おうとしたが、面白いので黙っておく事にした…

 

 

 

「がーっはっはっはっは!!まぁ呑んで下さいよ中将殿‼」

 

「はっはっはっは!!こりゃあ済まないな中将殿!!」

 

長鯨のおでん屋台は見付けた…

 

だが、今は近付きたくない…

 

「いやはや!!イントレさんには困ったもんですなぁ!!」

 

「レンジャーさんがいない事が救いですなぁ!!」

 

「「あっはっはっはっは!!」」

 

大の大人が盛大に酔っ払い、普段言えない愚痴を零しながらいちいち乾杯しては爆笑している…

 

「レンジャー!!レンジャレンジャ!!レーーーンジャーーー!!あーーーっはっはっはっはーーー!!」

 

「「うひっ…」」

 

俺と大淀は"何故か身の危険を感じ"ピストルに手を置く…

 

酒瓶を片手に持ち、高速でグルグル回っているレンジャーが向かって来た

 

「あ〜っ!!イケメンみ〜っけっ!!」

 

俺を見かけるなり、レンジャースピンアタックがピタッと止まる…

 

「ダメだよ!!レイ君は大淀さんとジェミニちゃんの!!」

 

「ちょ〜っとつまみ食いしても〜、いいですかぁ??」

 

「あっだめだわ」

 

思い出したっ!!

 

酔っ払いのレンジャーは尋常じゃないパワーだ!!

 

「あっちにリチャードがいるよ!!」

 

「リチャード!!まぁしゅてき!!リチャード!!チューしましょー!!チュー!!」

 

大淀の一言でレンジャーは再びスピンアタックで屋台に向かって行き、大急ぎで逃げる親父達が見えた

 

しかし、タイミング悪く反対側からは騒ぎを聞き付けたのか、肩で風を切りながら満面の笑みで向かって来るイントレが来た

 

「ボッシュウー!!」

 

「おしおきするぞぉー!!」

 

「だーーーっ!!メーデーメーデーメーデー!!」

 

「降伏する!!降伏するからやめて下さい!!」

 

「お部屋で楽しい事しましょうね、ヴィンセント??」

 

「リチャードしゅきしゅき!!チュッチュッ!!」

 

「「ぎゃーーーー!!」」

 

そのまま親父達はお持ち帰りされた…

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜!!」

 

嵐のように全員いなくなった所で、俺と大淀は暖簾をくぐる…

 

「二人だ」

 

「どぞどぞ〜!!」

 

「レイ君と屋台、久し振りだなぁ〜」

 

「ラーメン以来か??」

 

「うんっ!!あ、大根ちょ〜だい!!」

 

「俺も同じのと…後大淀にもチクワを!!」

 

「は〜いっ!!」

 

長鯨がおでんを盛るのを眺める

 

「何飲みます??」

 

「大淀さんビールにしよっかな??レイ君は??」

 

「ひとみといよが持ってたサイダーあるか??」

 

「ありますよ!!はいっ、どうぞ!!」

 

チラッと見えたひとみといよが持っていたのは、見た事がないサイダーだった

 

大淀の前に瓶ビールが置かれ、俺の前にはあの謎サイダーの缶が置かれる

 

「うっ…」

 

クジラの絵が描かれていて、コッチを見ている…

 

「…」

 

長鯨がおでんを入れながらコッチを見ている…

 

「い、いただきます…」

 

缶を開け、サイダーを飲む…

 

飲み口がちょっとスッキリする位の、至って普通のグレープのサイダーだ…

 

「ぷはぁ!!」

 

横では大淀が瓶のままビールを飲んでいる

 

「大根とチクワ、サービスの昆布巻きです!!」

 

「ありがと!!頂きます!!」

 

「頂きますっ…」

 

何故かは分からないが、何となく不安が過ったまま、俺も大淀も大根をお箸で切って口に運ぶ…

 

「んん〜!!美味しいね、レイ君!!」

 

「んんっ!!美味いなっ!!」

 

おでんは普通に美味しい

 

大根も芯まで味が染みている

 

「ん??」

 

あぁ…なるほど分かった

 

この缶のクジラの視線だな

 

コイツに見られてる気がして、何か不安だったんだ

 

俺は缶のクジラの絵を後ろに向ける…

 

「タマゴと、そうだな…牛スジを」

 

「はいっ、どうぞ〜!!」

 

「大淀さん、はんぺんともち巾着!!」

 

「はいっ、はんぺんともち巾着で〜す!!」

 

おでんを食べる箸が進む…

 

「ね〜…レイ君さ??大淀さんの事好き〜??」

 

「…聞かなくても分かるだろ??」

 

「あっ!!照れてるって事は〜、当たってるんだね〜んっふふふっ!!大淀さんもレイ君だ〜い好きっ!!」

 

ダメだ、出来上がってる…

 

サイダーを流し込もうとした時、ふと気付く…

 

「うっ…」

 

クジラの絵がコッチを向いている…

 

さっき後ろに向けたハズなのに…

 

「気付いてしまいましたか…」

 

「な、何だ…」

 

急に長鯨の様子がおかしくなる…

 

「それは鯨一族にしか作れない美味しいサイダー…グレープ、マスカット、レモン…この3つがあります」

 

「缶が動いてる…それも鯨一族の力か!?」

 

「あっ。私が新しいの置いたからです」

 

「あっ…そう…」

 

大淀と話している隙に、長鯨が新しいのを置いてくれたらしい…

 

いやぁ、ビビったビビった…

 

「大尉、サイダー好きでちか??」

 

「まぁなっ…診察の合間にも飲めるし、それなりにカロリーも採れる」

 

「なるほどなるほど…では、帰りにこの鯨一族のサイダーをお土産にどうぞ!!」

 

「待ってくれ。持ち帰りを頼みたい」

 

「何入れます??」

 

「コンニャク、タマゴ、はんぺん、大根…後、カラシを付けてくれ」

 

「少々お待ちを〜」

 

「大淀、帰るぞ…」

 

「んん〜…抱っこ〜…」

 

大淀は既に酔い潰れている

 

「おんぶしてやるから…ほらっ、起きろっ…」

 

「ここに入れておきますね」

 

「すまん。幾らだ??」

 

「おでんが全部で800円と…ビールが300円…」

 

ここで生唾を飲む…

 

もしかしてこの鯨一族のサイダー…めちゃくちゃ高いんじゃねぇのか…??

 

「グレープクジラサイダーが50円で、1150円です!!」

 

「釣りはいい。ごちそうさま!!また来る!!」

 

「ありがとございました!!」

 

財布から1000円札2枚を出し、テイクアウトおでんとサイダー3本が入ったビニール袋を受け取る

 

「大淀っ…帰るぞっ!!」

 

「抱っこ〜…」

 

「そらよっ!!」

 

大淀をおんぶし、帰路に着く…

 

「レイ君の背中あったか〜い…」

 

「そうか??」

 

大淀は俺の左肩に顎を置き、頭を寄せている

 

「たまには大淀さんも見て欲しいなぁ〜」

 

「いつだって見てるよ」

 

「ホント??」

 

「ホントだっ…」

 

大淀の甘い髪の匂いが鼻をくすぐる…

 

久し振りだ、この匂い…この感覚…

 

「また二人で何処か行こ〜ね??」

 

「何処に行きたい??」

 

「君が何もかも忘れられる所っ…」

 

「…そうだなっ。いつかっ…二人で行ってみたいなっ…よいしょっ!!」

 

「戦争も、お医者さんも、研究も、ぜ〜んぶ忘れて、い〜っぱい遊ぶんだ!!」

 

背中の大淀の話は尽きない…

 

工廠に着き、大淀を診察台に寝かせてとりあえず革ジャンを被せておく

 

テイクアウトして来たおでんをカプセルの近くに置き、PCの前に座ってタバコに火を点ける…

 

「ありがとっ」

 

ライターをデスクに置いたタイミングで、カプセルから少し離れた位置で叢雲がおでんを食べ始めた

 

「美味いか??」

 

「えぇ。中々ね…はむっ…」

 

叢雲の姿を見ながら、PCでカルテのまとめをして、そのまま俺も少し休む事にした…

 

 

 

 

次の日の朝…

 

「おはようレイ君。昨日はありがとうね??」

 

「ん…んぁ…もう朝かっ…」

 

椅子で背伸びをし、朝日を浴びる為に工廠のシャッターを開ける…

 

「ふぁ〜…」

 

「革ジャンありがとう、はいっ!!」

 

大淀に革ジャンを着せて貰い、目が覚める

 

「大淀さん、顔洗って研究室に戻るよ!!また行こうね!!」

 

「大淀。次はそろそろパフェだな??」

 

「そうだよ!!ホント食べないとね!!」

 

大淀は研究室に戻って行った…

 

デスクに戻り、今日の予定を確かめる

 

「え〜と…休暇…ん、基地内の視察か…」

 

俺も顔を洗って、視察に出掛ける事にした…

 

 

 

 

「おはよう、レイ」

 

執務室に入り、ジェミニに報告書を出す

 

「おはよう。これ、昨日長鯨のおでん食べた報告書だ。特に問題は見当たらない、中々美味かった」

 

「屋台はオッケーね…ありがと」

 

「屋台は、って何だ??」

 

何か含みのある言い方だ…

 

「一応ね??申請は通したのだけど…」

 

ジェミニから話を聞き、今日は非番である二人の所に向かう…

 

 

 

「涼平、園崎!!」

 

「あっ!!隊長、おはようございます!!」

 

「おはようございます!!」

 

非番なのは涼平と園崎

 

パイロット寮のエントランスで新聞やら雑誌を見ていた

 

この二人と一緒に、その長鯨の謎の商売の実験をしろとのお達しだ

 

「あ、隊長。聞きました??長鯨さん、デリバリー始めたんですって!!」

 

「その件で来たんだ…食って調査しろだとよ」

 

「丁度ここにチラシがありますよ」

 

園崎が持って来たのは、長鯨が始めたデリバリーサービス

 

ジェミニの話によると、昼はデリバリー、夜はおでん屋台をするらしい

 

 

 

チョーゲーイーツはじめました!!

 

速い!!安い!!美味しい!!

 

裏にメニューがあります!!

 

無線番号940

 

↓にクーポン券があるよ!!

 

 

 

チラシの下にはちぎって使うクーポン券があり

 

"サイダー1本無料!!(ご注文の際には先んじてお申し付け下さい)"

 

とのクーポンがある…

 

裏を向けると

 

 

 

・からあげ…30円

・メンマ…30円

・八宝菜…50円

・チャーハン…300円

・サイダー…50円

 

 

 

と、少ないながらメニューが写真付きで書いてあった

 

気になるのはその安さだ…

 

「何だこの安さは…」

 

「一応売り文句に安い!!とはありますが…」

 

「な…何かヤベェ肉とか…」

 

「一回注文してみるか…涼平、奢るから注文してくれ!!」

 

「了解ですっ!!」

 

涼平が無線番号を押し、通信を繋げる

 

《はいっ!!チョーゲーイーツです!!》

 

「綾辻です。えっと、全部3つずつ下さい!!クーポン3枚使います!!」

 

《は〜いっ!!少々お待ち下さいね!!》

 

無線が切れる…

 

「涼平、場所何処か言っ」

 

「チョーゲーイーツでーす!!」

 

「「「えっ」」」

 

今無線を切った所なのに、もう長鯨が来た

 

ちゃんとそれらしきおかもちを持っている…

 

このスピードだ、たまたま近くに居て今から作るんだろう

 

そう言えば長鯨はパイロット寮に一室借りている状態だしな!!

 

そうに違い…

 

「からあげ、メンマ、八宝菜、チャーハンに…サイダーがそれぞれ3つですね!!1230円です!!」

 

「あぁ…分かった…」

 

「ありがとうございま〜す!!」

 

俺達の目の前に小皿が置かれて行く…

 

「「「えぇ…」」」

 

「早い!!って書いてあるじゃないですかぁ!!」

 

「ま、まぁな??」

 

「早すぎませんか!?」

 

「それに、何の材料使ってんだ…」

 

「からあげもメンマもきくらげもちゃんと安全な国産のを使ってます!!お米は岐阜県産の"くじぴりか"です!!」

 

「くじぴりかって何!!」

 

「よくぞ聞いてくれました!!くじぴりかはですね、揖斐川の清らかな水ですくすく育てた無農薬のお米で、岐阜県でも一部の地域でしか採れない貴重なお米なんです!!」

 

「へぇ…」

 

「食べてみたら分かりますってぇ!!」

 

長鯨がプレゼンしてくれたので、俺達はチャーハンを口に運ぶ…

 

「…うまっ」

 

「美味しいですね…」

 

「こりゃあイケる!!」

 

この速さ、この安さなので一抹の不安を抱えていたが、チャーハンは本当に美味い

 

味もしっかり濃い目で、長鯨の言った通り、お米がとにかく美味い

 

…量が少ないのがネックか

 

残りの料理にも目をやる

 

 

 

からあげ…小皿に1個

 

メンマ…爪楊枝みたいな細っそいのが一皿3本

 

八宝菜…何故か小皿にきくらげが数枚

 

 

 

そう言えば長鯨、八宝菜と言わずにきくらげって紹介してたな!?

 

「長鯨…その…八宝菜は??」

 

「これですよぉ」

 

長鯨が指差す方向にはやっぱりきくらげ

 

「これきくらげですね」

 

「八宝菜っていやぁ、白菜やら何やらが…」

 

「食べてみたら分かりますってぇ!!」

 

これも三人ほぼ同時に口に運ぶ…

 

「…八宝菜、だな??」

 

「八宝菜ですね…」

 

「コイツも中々っ…」

 

きくらげのコリコリ感はしっかりとあり、噛めば噛む程何故か八宝菜の味が出て来る…

 

その後にからあげとメンマも口にする

 

からあげもジューシーで美味い。至ってフツーのからあげだが、値段が値段なので十二分に納得出来る

 

メンマはどうかと思ったが、これまた味が濃い

 

ちゃんと食感もあり、3本程度でも十分に堪能出来る

 

最初はこの提供スピードと値段設定なので思いっきり不安だったが、思っていたより遥かに堪能出来た…

 

「お皿は玄関に置いておいて下さい!!」

 

長鯨はそのままどっかに行った…

 

「隊長…ホントに何処でもあの早さで来るんですかね…」

 

「よし…試してみるか…」

 

涼平の疑問により、チョーゲーイーツの速度実証実験が始まる…

 

 

 

 

「最初は農場でどうです??」

 

「よし、呼ぶぞ…」

 

無線番号を入れ、チョーゲーイーツに繋げる…

 

「サイダー2つ!!」

 

《畏まりました!!少々お待ち下さい!!》

 

今度は場所も名前も言っていない

 

「来るんですかね…」

 

「名前も場所も言っ」

 

「チョーゲーイーツでーす!!サイダー2つですね!!」

 

「…」

 

長鯨をジト目で見ながら、無言で100円玉を出すと、俺と涼平の手にサイダーを握らせて来た

 

「はいっ、どうぞ〜。ありがとうございま〜す!!」

 

一旦サイダーを開けて飲む…

 

「ぷはっ…ヤバいですって!!」

 

「ぷはぁ!!次行くぞ次!!」

 

 

 

 

「ジープの発着場なんかどうです??」

 

次は園崎が提案

 

無線番号を押し、再びチョーゲーイーツを呼ぶ

 

「サイダー2つ!!」

 

繋がった直後にそれだけ言い、すぐに無線を切る

 

「よしっ。これで絶対来ない」

 

「これで来たらいよいよヤバいですよ…」

 

「いくら早いからって流石…」

 

「チョーゲーイーツでーす!!サイダー2つお持ちしました!!」

 

長鯨の方を見て、発着場の受付をしている二人の方を指差す

 

「100円になります!!」

 

「…」

 

再度ジト目で100円玉を渡す…

 

いよいよ怖くなって来た…

 

 

 

 

3回目はたまたまその辺にいた櫻井の提案

 

「表の公園はどうでしょう??」

 

「名案だ。距離も離れてるし、基地の外だしな。よし…」

 

無線番号を打ち込み、耳に当てる…

 

「からあげ!!」

 

からあげとだけ言い、すぐに切る

 

「流石に来ませんって!!」

 

「名前も言ってないですし、場所も言ってないですし!!」

 

「基地の外ですし、流石に管轄が…」

 

「チョーゲーイーツでーす!!からあげお持ちしました!!」

 

「な、なぁ長鯨??」

 

「はい??なんでちか??」

 

「出前が早いのは素晴らしい…何で場所分かるんだ??」

 

「企業秘密ですよぉ〜。からあげ、30円になりま〜す!!」

 

「釣りは取っておいてくれ…」

 

長鯨の手に100円玉を落とす…

 

「ありがとうございます!!またのご注文をお待ちしてます!!」

 

 

 

報告の為に執務室に向かう…

 

「俺だ」

 

「開いてるけど、今日アンタ休日よ??」

 

ノックをするとドアの向こうからジェミニの声がした

 

休暇扱いなので今日は業務はするなと言いたいのだろうが、アレはどうしても報告したい

 

「なら遊びに来た」

 

「うっ…こっち来なさいな…」

 

一瞬声が詰まったジェミニだが、執務室に入る事にした

 

「チョーゲーイーツを頼んでみたんだ」

 

「あら。アタシまだなの。どうだった??」

 

「それが…」

 

事の顛末をジェミニに説明する

 

「んなわけ無いでしょ!?」

 

「ホントなんだって!!なら頼んでみろよ!!」

 

「ふ〜ん??」

 

ジェミニはチラシを取り出し、チョーゲーイーツに無線を繋げる…

 

「チラシに載ってんの全部2つずつ頂戴」

 

《畏まりました〜!!少々お待ち下さい!!》

 

「創造主様の言っているスピードで来るのでしょうか…」

 

「そんな訳無いでしょ??逆にそんなスピー…」

 

「チョーゲーイーツでーす!!ご注文の品をお持ちしました!!」

 

ジェミニは無言で立ち上がり、何故か壁際に寄る

 

親潮はそのまま座って長鯨を見つめる…

 

「何処に置きましょう!!」

 

「そ、そこの机の空きスペースに置いて頂戴!!」

 

「畏まりました〜!!」

 

長鯨はおかもちから注文の品を取り出しては置いて行く…

 

「ゴミを置かないで下さい」

 

真顔で親潮が長鯨に言う

 

「な!!ゴミではありませんよぉ!!」

 

「なんですかこのカスは。食べさしをジェミニ様に出すとはどういう神経ですか」

 

「ちゃんとした料理ですってばぁ!!」

 

親潮からすれば確かに誰かの食いさしを出されたと思うだろう…

 

だが、長鯨の料理が美味しいのは確認済み

 

「親潮。味は確かなんだ…」

 

「食べさしではないと…コレが??」

 

「言いたい事は分かる…」

 

「食べてみたら分かりますってばぁ〜‼」

 

「お、親潮!!アンタ食べてみなさい!!」

 

「ジェミニ様まで…分かりました…」

 

長鯨から割り箸を貰い、親潮曰く見た目がカスみたいなきくらげを口にする…

 

「…長鯨さん」

 

「どうですか??」

 

「前言撤回したいです…申し訳ございません、ゴミやらカスやら言ってしまって…これは美味しい…」

 

「でしょ!?」

 

「どれどれ…」

 

親潮に様子を見させていたジェミニも割り箸を受け取り、きくらげを口に運ぶ…

 

「あらホント…美味しいわコレ!!」

 

舌の肥えているジェミニが舌鼓を打つ位に美味しい長鯨の料理

 

量がどうにかなればいいが…

 

「採用にしとくわ。何も言われなければそのまま提供しても良いわ??」

 

「ありがとうございますっ!!」

 

「ただし。労働時間はちゃんと守って頂戴。良いわね??」

 

「はいっ!!勿論でち!!」

 

 

 

 

次の日…

 

「おはようございます、隊長」

 

「おぉ、高垣、森嶋。おはよう」

 

この二人は普段自衛隊の調査に行っていたり、サラやマークの護衛にいる

 

出番の時は勿論来てくれるし、他の出突っ張りの3人とも普通に仲も良い

 

「隊長…ちょっと此方へ…」

 

「どうした??」

 

「今、涼平、園崎、櫻井が向かっているのですが…」

 

「あれを見て下さい…」

 

森嶋に双眼鏡を渡され、タナトスの方を見る…

 

「長鯨とゴーヤだな…何やってんだ??」

 

タナトスの前でゴーヤが長鯨に威嚇している

 

長鯨はおかもちを構え、中から料理を取り出そうとしている…のか??

 

「ケータリングのスピードにビックリして警戒を解かないんです…」

 

「3人が目の前で食べて警戒を解こうとしてるのですが…」

 

「分かった、俺が行こう」

 

双眼鏡を返し、タナトスへと向かう…

 

「おいし〜でちよ〜!!」

 

「こっち来んなでち!!」

 

「あはは…美味しいですよ??」

 

「絶対怪しいでち!!」

 

タナトスは涼平の後ろに隠れながら長鯨に威嚇している

 

「ほ〜ら、これはメンマでち!!」

 

長鯨はおかもちからメンマを取り出し、アスファルトの上に置く

 

「嫌でち!!返品でち!!」

 

「クジラサイダーはどうでち??」

 

「そ、それも嫌でち!!」

 

「ゴーヤ!!大丈夫だ!!その人は安全な鯨だ!!」

 

「他の鯨がヤバいみたいに言うんじゃね〜でち!!コイツ頼んだ8秒後に来たでち!!」

 

「鯨の一族はそれ位出来るでちよ〜!!」

 

「今まで戦った奴よりヤバいでち!!」

 

「ゴーヤさんがあんなに怯えるなんて…」

 

「そんなに早いんですか??」

 

「ヤバかった…ホントにゴーヤが言ってる様なスピードで来たんだ…」

 

ゴーヤはケータリングサービスを愛している

 

何処へ行ってもその辺にお金を置いて、近場の出前やらに運ばせている

 

そのゴーヤが返品と言ってるレベルなので本当にイカれたスピードで来る

 

仕方ない…奥の手を使うか…

 

「ゴーヤ!!」

 

「何でち!!」

 

「きそも食べたいらしい」

 

「いやぁ〜、美味しそうなメンマでちな!!」

 

「はいっ、どうぞ〜!!」

 

ようやくゴーヤは長鯨からお箸とメンマを貰う

 

「よし、警戒解除!!」

 

「メンマ、チャーハン、後はクジラサイダー!!」

 

「創造主にツケといてくれでち」

 

「すまん長鯨」

 

「ありがとうございます!!では!!」

 

長鯨に代金を払い、レンゲでチャーハンを食べるゴーヤの横に座る

 

「美味しいか??」

 

「中々イケるでち…でもあのスピード怖いでち!!」

 

「早い!!って書いてあったろ??」

 

「早いにも限度が…あるれち…」

 

とは言いつつ、ゴーヤはチャーハンを掻き込んでいる

 

「んで何でち。このほっそいメンマは!!」

 

「味は保証する」

 

「きそが来る前に食って退却でち!!」

 

ほっそいメンマの一本でさえきそにやりたくないのか、すぐに口に入れる

 

「…」

 

「どうだ??」

 

「めっちゃ美味いでち…」

 

体を持ってから味と言う楽しみを持ち、そこから味にうるさいゴーヤを唸らせる程の味ではある

 

「ホントに何処でも迅速に来るんでち??」

 

「どうだろうな…たまたま偶然料理があって、たまたま偶然近場にいただけかもな…」

 

「ゴーヤにいい考えがあるでち!!」

 

俺とゴーヤがタナトスに乗り、そのまま出港する…

 

 

 

「流石にあの鯨もここなら無理でち!!さ、注文注文!!」

 

タナトスが来たのは第三居住区

 

ここで注文を開始する…

 

「からあげとメンマ2つでち!!」

 

《少々お待ち下さい!!》

 

相変わらず場所を言わずに通信を切る

 

「ここは絶対あの早さは無理でち!!」

 

「まぁ流石にな…」

 

「通信です。モニターに出します」

 

ゴーヤの口調からタナトスへと話し方が戻ったのでモニターに座席を向ける

 

《チョーゲーイーツでーす!!ご注文の品をお届けに参りました!!》

 

「「うひぃ!!」」

 

モニターにドアップで長鯨の顔が映る…

 

「ヤベェでちこの鯨…」

 

《ここに置いとくでちよ〜》

 

「俺が取りに行くよ!!」

 

ハッチを開けると、本当に長鯨がいる…

 

代金を払い、長鯨と少しだけ話す

 

「なぁ…何処にでも来るのか??」

 

「何処にでも行くでちよ!!」

 

「いつか地球の裏側から注文してやるよ…」

 

「んっふっふ〜、それで本当に来たらどうするでち??」

 

「その時は何らかの形で謝るよ…」

 

なんかもう、本当に来そうな気がする…

 

この件も一応ジェミニに報告して、一旦は落ち着きを見せる

 

このチョーゲーイーツ

 

とある使い方で物凄く役に立つ事に気付いたのは、また別のお話…

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