艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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33話 霧の街(3)

鎮守府を出て、岩場を目指す

 

言う程距離は無いので、歩いて行く

 

岩場に着くと、見え難いが確かに扉がある

 

引いても押しても開かないので、誰かが出てくるまで身を潜めた

 

数十分すると、先程と同じ白衣を着た人が出て来た

 

開いた瞬間を見計らって、中に入り込めた

 

「なんだ…ここは…」

 

物陰でも分かる位、中には立派な設備があった

 

中央には、巨大なカプセルがあり、中に何か入っている

 

「再実験はまだか⁇」

 

「じき可能になります」

 

「実験…⁇」

 

腰の拳銃に手が行く

 

「誰だ‼︎」

 

「‼︎」

 

研究員の一人にバレた

 

仕方ない‼︎

 

拳銃を抜き、研究員に向けた

 

「許可を得た研究か⁇」

 

「い…いや…」

 

「ここで何をしている」

 

「か…艦娘の研究さ‼︎」

 

「許可を得ずにか」

 

「く、くそっ‼︎」

 

研究員が逃げた

 

施設内で赤いランプが点灯し始めた

 

どうやら、警告を出されたみたいだ

 

「おとなしくしろ‼︎」

 

拳銃を構えたまま、カプセルの付近にいた研究員を二人、人質に取った

 

「出ても一緒だ」

 

「あんたは…」

 

一人の研究員が不思議そうな顔をしている

 

「俺を知ってるのか⁇」

 

「いや…人違いだ」

 

「あんたはここの主任か」

 

「そうだ」

 

「過去にここで造られた三人、今は何処にいる⁇」

 

「三人⁇」

 

また不思議そうな顔をする

 

私は、彼が何か知っていると踏んだ

 

「…一人はその場で射殺。もう一人は行方不明。最後の一人が、このカプセルの中身だ」

 

「この子が…」

 

拳銃を向けたまま、カプセルの中身を見た

 

白い髪の女の子が、中に入っている

 

「説明してやるから、銃を降ろしてくれ。おい‼︎警報を切れ‼︎」

 

後ろにいた研究員が警報を切り、赤いランプと警報音が消えた

 

「分かった…」

 

拳銃を降ろすと彼は立ち上がり、説明を始めた

 

「確かにこの研究所では、過去に三人実験体がいた。一人は通称”加古”彼女は暴走した為、その場で射殺するしかなかった…」

 

「もう一人は⁇」

 

「もう一人は通称”武蔵”彼女だけ、研究所から逃げ出した…今も居場所は分からない」

 

「やっぱり…」

 

あの写真に写っていた、私ともう一人の女性

 

その人は、武蔵の様な髪色に、褐色の肌で、眼鏡を掛けていた

 

違うとすれば、髪の毛を降ろしていた位だ

 

「武蔵は、あんたの恋人だったんだよ」

 

「…」

 

「覚えてないか⁇」

 

「どういう意味だ⁇」

 

主任はとんでもない事を言った

 

「あんたはあの日、恋人が艦娘化をする寸前に中止を申し出た。だが、途中で中止する事など出来ず、あんたは機械のショートした電流に巻き込まれたんだ」

 

「覚えてない…」

 

「覚えていなくていい。我々はもう…武蔵には逢えない…」

 

「…」

 

「グアッ‼︎」

 

「‼︎」

 

銃声が数発響いたと思った時には遅かった

 

目の前にいた研究員二人が倒れ、再び赤いランプが光り、警報音が鳴り響く

 

「誰だ‼︎」

 

「ここも…こいつらも…みんな嫌いだ‼︎」

 

「武蔵‼︎」

 

そこに居たのは武蔵だった

 

「ここは何だ⁉︎ここに来てから破壊衝動が収まらない」

 

何も言えなかった…

 

知ってしまった以上、言わなければならないのだが…

 

言った所で、何かが始まる訳でも無い

 

「武蔵、この子を助けたい。出来るか⁉︎」

 

「殺せばいい」

 

「ダメだ‼︎」

 

「そこを退け‼︎生き恥を晒すより、ここで散った方が彼女の為だ‼︎」

 

主砲をカプセルに向けた武蔵に対し、私は初めて手を挙げた

 

「なっ…」

 

乾いた音が、警報音に混じる

 

「助けなきゃいけないのは、みんな同じだ」

 

「提督…そうだったな‼︎よし、私に任せろ‼︎」

 

武蔵は腕を鳴らした後、カプセルに拳を振るった

 

「おりゃあ‼︎」

 

カプセルが割れて溶液が出た後、出て来た彼女を受け止めた

 

「ありがとう。武蔵」

 

「構わん。さぁ、ここから出るぞ‼︎」

 

再び主砲を構えた武蔵は、装置を破壊しながら後退していく

 

私は武蔵より先に施設から出た

 

「や〜‼︎壊した壊した‼︎」

 

満足気な武蔵が出て来た

 

「横須賀、これをやろう。煮るなり焼くなり、好きにするがいい」

 

「すまない…彼等は軍法会議にかけられるだろう…」

 

「そうだ。横須賀、この子を頼む」

 

「畏まりました。お二人は入渠ドックに向かって下さい‼︎明石、提督を案内して。武蔵は私と一緒ね」

 

「ん」

 

彼女を横須賀に預け、私は明石に案内された露天風呂に入った

 

 

 

 

「は〜っ…」

 

湯船で一息ついていると、端の方から何かやって来た

 

”灰皿や‼︎”

 

”葉巻や‼︎”

 

”酒や‼︎”

 

”つまみや‼︎”

 

お盆の上に乗ってやって来たのは、妖精達だ

 

「な、何だ何だ⁉︎」

 

”まま、一服どうぞっ”

 

葉巻を咥えさせられ、火を点けられた

 

”どや”

 

「中々美味いよ。ありがとう」

 

”酒もあるで‼︎ビールや‼︎”

 

”チーズや‼︎”

 

コップにビールが注がれ、爪楊枝にチーズが刺せられた

 

「どれ…」

 

ビールを一口飲み、チーズをつまむ

 

「美味いな‼︎ビールはキンキンだし、チーズもコクがあって上出来だ‼︎」

 

”全部ドイツから輸入したんや”

 

”ウチの提督が、おもてなしせぇって言ったさかいな”

 

「ありがとう。癒されるよ」

 

その後、しばらく他愛のない話を妖精達とした後、露天風呂を出た

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