「ここで待ってるんだ。もうじき迎えが来る」
「あたし、たすかる⁉︎」
「助けてやるさ。約束だ」
「わかった。まってる」
とにかく情報は得られた
その後、しばらく牢の探索を続けたが、殆どが中毒症状を起こしていたり、既に冷たくなっている者もいた
互いに怒り心頭している状態で扉の前に立った
「隊長…この扉を開ける前に一つだけ…」
「なんだ⁇」
「恐らく、生存の確率があるのは、ふみちゅきと、この扉の先にいる霞だけだ…他は…もう…」
珍しくスティングレイが涙を見せた
「スティングレイ…」
「なんのために今までやって来たか…少し分からなくなった」
「大丈夫だ。横須賀がいる。何とかなるさ」
「でもよ…一つだけ言えるよ」
「ん⁇」
「隊長に着いて、本当に良かったってなぁ‼︎」
スティングレイは勇ましく扉を蹴破った
「霞‼︎」
銃と包丁を構えながら、中を探索する
「ひっく…」
「霞⁉︎」
部屋の隅で小さくなって泣いている少女が1人
そこには、ボロボロになった霞がいた
「霞‼︎大丈夫か⁉︎助けに…」
スティングレイが手を伸ばすが、それを弾く
「イヤァァァ‼︎来ないで下さい‼︎来ないで下さい‼︎」
異様なまでに怯える霞
あの日の威勢は、既に無かった
「霞…俺だ。スティングレイだ」
「へ…⁇」
霞が恐る恐る目を開けると、視線の先にはスティングレイがいた
「来い。助けてやる」
スティングレイが再び手を伸ばすと、霞は安心したのか、大泣きして彼に抱き着いた
「うわぁぁぁぁあん‼︎」
「怖かったな…よしよし…」
余程怖い思いをしたのか、スティングレイの腕の中で震えている
「遅いわよ‼︎バカ‼︎」
「すまん…」
「スティングレイ…霞とふみちゅきを連れて行け」
「隊長⁇」
「もう一つ、仕事が残ってた」
「分かった。死ぬなよ」
スティングレイが部屋を出た後、ライフルの撃鉄を落とした
「…パラオの提督を何処にやった」
「殺したよ」
私の背後から、1人の男が忍び寄る
「ここで何してた」
「麻薬の製造…そして投薬実験さ」
手に力が篭る
カタカタとライフルが音を立て、包丁の刃が小刻みに震える
「あんな小さな子を使ってか」
「そうさ。大方中毒症状を起こして死んだがね。私に使って貰えるだけありがたく…」
銃声が響いた
「隊長‼︎」
二人を抱えて外まで来ていたスティングレイが銃声に反応した
「ちょっと…何よコレ…」
「やだやだ、こわいこわい‼︎」
二人がスティングレイの腕を強く握る
三人の前には、恐らく中毒症状のまま放置された艦娘達が此方に向かって来ていた
銃声に反応して、地下に向かおうとしている
「テメェら‼︎助かりたけりゃ俺の前に来い‼︎」
「…」
聞こえていないのか、全く足を止めずに此方に向かって来る
「提督は偉大なり」
「提督は偉大なり」
「提督は偉大なり」
全員同じ言葉を繰り返している
「あっ‼︎やだやだ‼︎たすけて〜‼︎」
とうとうふみちゅきの服に手を掛けた
「…しかたねぇ。お前達、俺がいいって言うまで目を閉じてろ」
「わ、分かったわ」
「と、とじた〜‼︎」
「…」
スティングレイは目を閉じた
「仕方無い…イクゾ‼︎」
再び目を開けた時、スティングレイの目は赤く輝いていた…
地下では、隊長の足元に先程の男が転がっていた
「因果応報だ…」
転がっているのは、偽の提督
麻薬の製造や違法な実験を繰り返し、多くの犠牲を出した
唯一助かった事と言えば、霞はボロボロだったが、腕に注射痕が無かった事
とにかく、後は横須賀に任せよう
施設を出て外に出ると、出口付近で霞とふみちゅきがいた
「二人共、スティングレイはどうした⁇」
「いいっていうまで、めをあけちゃだめっていわれたの」
その時、壁に誰かが叩き付けられ大きな音がした
「ハァ…ハァ…」
「スティング…レイ⁇」
赤く光る眼は、いつもの彼とは明らかに違う雰囲気を醸し出していた
「今のでラストだ…」
「お前…」
今の今まで忘れていたが、スティングレイは一度深海棲艦になっている
深海化しても、何らおかしくはない
「体力メッチャ消耗するから嫌なんだよ、コレ‼︎」
しかも私のように寝込まなくても済むときた
「スティングレイ‼︎隊長‼︎」
ようやく二式大艇が来た
機体のドアを開けて、横須賀がメガホンを握っているのが見えた
「お前達、もう大丈夫だ」
「ん…」
「わぁ〜‼︎」
二式大艇を見て、目を輝かせる二人
「医療班、二人を保護して‼︎」
「おっせぇんだよ…ったく…」
「よっと」
余程力を使ったのか、よろついたスティングレイを抱えた
私を安心させる為なのか、スティングレイは笑顔で此方に親指を立てた
「麻薬の密造、違法実験…最悪ね…」
「まだ、生存者が中にいる…助けてやってくれ…」
「偽の提督も、地下の一番奥で気絶してる」
「分かったわ。二人共お疲れ様。横須賀にみんなを集めてあるから、みんなで何か食べて下さい」
「おい、横須賀…」
「何⁇」
「あの子達を…救ってやってくれ…」
「えぇ、助けるわ。レイ、貴方知らないから言っておくけどね、艦娘は麻薬位で死なないわ。冷たくなっているのは、遭難した時とかに無駄に動かないよう、自己防衛の為に体温を下げてるだけ。貴方の心配する事は無いわ」
「ヨッシャア‼︎」
私を振り解き、雄叫びをあげるスティングレイ
「お、おい…」
「隊長‼︎帰って焼肉食おうぜ‼︎」
全員助かると分かった瞬間、一気にスティングレイの活気が戻った
ま、今回は奢ってやるか…
数時間後、横須賀鎮守府の医務室
「ふみちゅきの様子はどう⁇」
「もう大丈夫です‼︎後は栄養を補給していれば、数日で健康体になります‼︎」
ローマと明石が二人の処置をしている
他の艦娘達は、数時間の入渠と少しの薬の投与で顔に血色が戻った
ふみちゅきも何とかなりそうだ
問題は霞だった
「外部裂傷多数…内蔵損傷…散々ね…」
「あ…後、体内から別の人間の体液を検出しました」
「はぁ…PTSDになるのも納得だわ…」
霞だけ麻薬を打たれていなかった為か、ハッキリする意識の中で度重なる暴行を受けていた
トラウマにならない方がおかしい