艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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特別編 ドイツの魔女(4)

「やっぱりレイでいいや‼︎うんっ‼︎レイにする‼︎でも…」

 

「ん⁇」

 

「たまには、呼んでも…いい⁇」

 

「いいぞ」

 

「私は何と呼べば…」

 

「レイでいいよ。俺も短い方がいい」

 

「分かった」

 

間宮の暖簾を分け、俺としおいはいきなり注文をする

 

「生で‼︎」

 

「栗で‼︎」

 

「なんだろ…何か卑猥…」

 

席に座り、プリンツにメニューを渡した

 

「プリンツはどれにする⁇」

 

「え〜と…このオレンジ色のケーキで‼︎」

 

「ニンジンケーキ一つ‼︎」

 

「かしこまりました〜」

 

霞が居ないと、何だか物足りない

 

「ちょっとだけ待ってて。すぐ帰る」

 

席を離れ、間宮の所に行く

 

「チョコケーキ、追加しといてくれ」

 

「かしこまりました〜」

 

間宮を出て、人混みに戻る

 

海上に艦娘の姿は無い

 

どうやら準備時間らしい

 

そんな中、準備している艦娘の中に霞がいた

 

「霞」

 

「スティングレイ⁉︎どうしたの⁇」

 

「来い」

 

「あ‼︎ちょっと‼︎」

 

霞の手を引き、間宮に戻る

 

「座れ座れ‼︎」

 

全員の前にそれぞれのケーキが置かれ、霞の前にチョコケーキが置かれた

 

「私、今日何もしてないわ⁇」

 

「いいか。鹿島には内緒だぞ⁇」

 

「分かった‼︎」

 

「言わない‼︎」

 

「言わないわ」

 

「よし、食おう‼︎頂きます‼︎」

 

それぞれがケーキを口に運ぶ

 

俺は俺で中々忙しかった

 

しおいの口を拭いたり、霞の口を拭いたり…

 

まるで父親がやる様な事を、両サイドに座った少女に施す

 

「美味しいか⁇」

 

「美味しいわ‼︎やっぱり間宮ね‼︎」

 

「美味しい‼︎」

 

「んぅ〜っ‼︎ここのプリンはすっごく甘いです‼︎」

 

「あぁ、プリンもオススメだったな…はっ‼︎」

 

プリンツの横で、いつの間にか鹿島がプリンアラモードを突いていた

 

「い、いつの間に⁉︎」

 

「今です」

 

「あ…あはは…」

 

「何を怯えてるんです⁇」

 

子供達にお菓子を食わせていた事がバレた

 

逃げるか…⁇

 

いや、こいつらを置いて行く訳にはいかない

 

「一回や二回で怒りませんっ。でも、食べ過ぎはいけませんよ⁇」

 

「分かった‼︎」

 

しおいが潔く返事をした

 

たいほうと同じで、しおいにも若干幼さが残っている

 

普段過ごしていて、案外出来そうで出来ない事がある

 

簡単な事…何かを持って来て欲しいだとか、誰かの傍に居ろだとか…そんな事は聞ける

 

だが、少し難しい事…普段使っている魚雷の説明だとか、難しい漢字が読めなかったりする

 

それに、服を引っ張る癖…

 

あれは、子供が誰かに甘える仕草だ

 

ま、それでこそ可愛げがあるんだがな…

 

「ごちそうさま‼︎」

 

「ふっふっふ…いいストレス解消になった‼︎」

 

武蔵達が帰って来た

 

演習も終わったみたいだ

 

「たいほうよ。何がたべたい⁇」

 

「おもちとあずきのすーぷ‼︎」

 

「では、それを二つだ‼︎」

 

武蔵はお汁粉を二つ頼み、俺達の横に座った

 

「さ、出よう。間宮‼︎」

 

「お会計は此方になります」

 

「あの二人の汁粉の分も追加で頼む」

 

「あ…かしこまりました‼︎」

 

結局、鹿島の分も払った

 

「じゃあな、お二人さん。良く頑張ったな」

 

「うぬ‼︎私とたいほうのこんびは最強だ‼︎」

 

「さいきょう⁉︎」

 

口の周りに小豆の汁をいっぱい付けたたいほうが此方を向いた

 

「ふっ…ごちそうさま」

 

「またのご来店を‼︎」

 

間宮から出ると、しおいと霞は鹿島と共に、工廠の見学に向かった

 

「プリンツはどうする⁇俺と来るか⁇」

 

「うん」

 

プリンツと共に、横須賀の基地内を歩く

 

「あれが噂の…」

 

「元傭兵だって…」

 

「あんな奴が…」

 

周りからヒソヒソと話し声が聞こえてくる

 

「あ…あの…」

 

「気にすんな。今に始まった事じゃない。それに、元傭兵ってのは事実だ」

 

周りに聞こえる位の声で言ったためか、声が一瞬止んだ

 

「あの海外の重巡洋艦…」

 

「やはり、規格外の設計…」

 

「先程の連撃は…」

 

「…」

 

俺はこう言った噂話しは気にしないが、プリンツは慣れていない

 

少し泣きそうになっているのが、俯いていても分かった

 

「ほら」

 

プリンツに手を差し出した

 

「お前に負けた奴らの遠吠えなんて聞くな。所詮は俺達に勝てないヘボヘボ提督達の戯言だ」

 

「辛いよ…私。こんな風に思われてたなんて…」

 

「そらっ‼︎」

 

プリンツの手を握り、その場から駆け足で離れた

 

「はっはっは‼︎愛の逃避行みたいでいいな‼︎」

 

「…うんっ‼︎」

 

提督の群れから随分離れた所で手を離し、足を止めた

 

目の前には海岸に続く階段があり、

二人共そこに腰を下ろした

 

「嬉しかった…です」

 

「そうか⁇」

 

「私、こんな事されたの初めてで…どう言ったらいいか…」

 

「ダンケシェーン、だ」

 

「え⁇」

 

「日本語で”ありがとう”って意味だろ⁇」

 

「そうだけど…」

 

「少しは知ってるんだぞ⁉︎俺も馬鹿じゃない‼︎このマーカス・スティングレイ、実は天才なのだ‼︎はっはっは‼︎」

 

立ち上がって拳を突き上げる俺の横で、プリンツは顔を赤らめて一言呟いた

 

「イッヒリーベ…スティングレイ」

 

「⁇」

 

「あはは。分からなくていいですよ」

 

「”愛してる”か…鹿島から言われて、どう答えを返していいか迷うんだ…」

 

「な、何で…」

 

「プリンツはドイツの出身だったな⁇よいしょ」

 

再びプリンツの横に座った

 

「は、はい」

 

「ドイツには、随分世話になった人がいるんだ…」

 

 

 

数年前…ドイツ郊外にて

 

隊長と俺は、二人で哨戒任務に当たっていたが、悪天候の為、民間の滑走路に降りた

 

猛吹雪の中じゃ、戦闘機は何も出来なかった

 

しかも俺は軽い凍傷に見舞われていた

 

俺は小さな病院に運ばれ、しばらく入院する事となった

 

満足に看護婦もいない病院…

 

粗末な治療…

 

正直、嫌気がさした

 

そんな時、一人の娘街が看病をしてくれた

 

俺達が降りるのを見て、パイロットを一目見たかっただけだったのが、怪我をしていたので看病しない訳にはいかないと思ってくれたらしい

 

帰る前に、娘と約束をした

 

「また、会いに来てくれますよね⁉︎」

 

「そうだな…平和になったら、今度は君から会いに来てくれ。日本はとてもいい所だ‼︎」

 

「行きます‼︎絶対‼︎」

 

 

 

「と、まぁ、その時にドイツ語は少し学んだ」

 

「はぇ〜…」

 

プリンツは少し驚いた顔をしている

 

「ま‼︎約束は果たされたけどな‼︎」

 

「可愛い子ですか⁇」

 

「可愛いさ‼︎ま、ちょっと素直じゃない所もあるが、そこがまたいいもんだ‼︎」

 

「好きですか⁇その子の事」

 

「好きさ。勿論」

 

プリンツはため息を吐いた

 

「鹿島さんはどうするんです⁇」

 

「それを言われると敵わないな…どっちも好きなんだ…」

 

「早く選ばないと、他の人が取っちゃいますよ⁇」

 

「そうだなぁ…でも、こればっかりは焦ったらダメだとも思う」

 

「私は…その中に入ってますか⁇」

 

勇気のいる質問だと思う

 

だが、俺の答えは決まっていた

 

「入ってるよ、勿論。鹿島を選ぶか…その子にするか…う〜ん…」

 

プリンツに背を向け、悩む振りをする

 

だが、心の中ではこう思っていた

 

”早く気付け”

 

俺を看病したのはお前だ‼︎

 

正直、声を大にして言いたかった

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