特別編とはいえ、この後のストーリーにもプリンツはスティングレイの艦隊に居ます
今回のお話は、リクエストが多かった”たいほうがメインのお話”です
横須賀で行なわれる観艦式に参加する為に横須賀鎮守府に訪れた、隊長、武蔵、たいほう
隊長と武蔵が観艦式を見ている中、たいほうは一人、横須賀鎮守府に散歩に向かいます
横須賀から召集がかかった
最近多い気がする
”旗艦と随伴艦とで、三人で来て下さい”
留守番をスティングレイに任せ、基地から出た
高速艇に乗っているのは、私とたいほう。そして武蔵
後は操縦者だ
「観艦式らしいですよ。外国艦のね」
「どこの国だ⁇」
「書類によると…イタリアですね」
「イタリアか…」
イタリアと聞くと、若干不安になる
「パパ、いたりあって、すぱげっちのくに⁇」
武蔵の膝の上で折り紙をしていたたいほうが興味を持った
「そうだ。ローマの産まれた国だ」
「ろーまのすぱげっちはおいしいね‼︎」
たいほうの頭を撫で、窓の外を眺める
余程の式なのか、窓の外には長門がいる
反対側には島風
「提督よ。あれはなんだ⁇ふぃりっぷとは違うな…」
武蔵の目線の先には、F-35が編隊飛行をしている
「F-35ライトニングⅡ。新型のステルス艦載機だ」
「すてるすとはなんだ⁇」
「簡単に言えば、レーダーに映らない戦闘機さ。最近の主流は、みんなあれさ…」
「パパはのったことある⁇」
「あるよ。でも、出来ればあれは載りたくないかな…」
「なんで⁇」
まさか墜ちたとは言えまい
そんな時、武蔵がフォローに入ってくれた
「あ…た、たいほうよ‼︎向こうに着いたら、何が食べたい⁇」
「かに」
「蟹かぁ…繁華街に行けばあるか⁇」
「かにはつよいよ。はさみでちょんぎるんだよ‼︎」
そう言うたいほうの手には、かにの折り紙がある
「おおっ‼︎ついに折れる様になったのか‼︎偉いぞ‼︎」
最近、たいほうに折り紙の本を買ってやった
確かその本の中でも”かに”は難易度が高い折り方だったと思う
「ちょっきんちょっきんちょっきんな〜」
私の膝の上に蟹の折り紙を置き、遊び始める
「蟹とクワガタはどっちが強いんだ⁇」
「くわがた‼︎」
腰のポシェットから折り紙をもう一枚取り出し、何かを折り始めた
私と武蔵はたいほうの手元を見た
下を向き、口を尖らせて折り紙を折るたいほうは、見ていて飽きなかった
しばらくすると、蟹を持った逆の手に違う折り紙が現れた
「おぉっ…」
かなり精巧なクワガタの折り紙がそこにあった
「くわがたはね、かにをもちあげてぽいするの」
そして私の膝の上に置く
薄眼で見ると、結構リアルで怖い
「着きましたよ」
「ありがとう」
二つの折り紙をポケットに仕舞い、高速艇から降りた
「ばいば〜い」
武蔵の肩車の上で、たいほうが手を振る
高速艇は再び、別の基地へと迎えに行く
「たいほう、これ忘れたぞ」
「ありがと‼︎よこすかさんにあげるの‼︎」
折り紙をたいほうに返すと、それをポシェットに仕舞った
既に周りには提督が集まっていた
横須賀はテントの下で書類を書いていた
「隊長‼︎御足労ありがとうございます‼︎」
久方ぶりの敬礼を交わす
「観艦式だって⁇」
「えぇ。イタリアの艦娘です」
「お披露目って訳か…」
「こちらの名簿の自分の欄に丸を」
名簿を渡され、自分の名前に丸を付ける
「よこすかさん、これあげる‼︎」
たいほうは先程の折り紙を横須賀に渡した
「これは…蟹とクワガタね⁇」
「たいほうがおったんだよ‼︎うまい⁉︎」
「御世辞抜きで上手いわ…部屋に飾ってもいい⁇」
「うんっ‼︎」
たいほうは嬉しそうだ
「まぁ、まだまだ時間はあります。昼食を済ませて下さい」
「分かった」
「あ。レイのケッコン、おめでとうございます」
「…本人に言ってやってくれ」
繁華街に着くと、早速蟹料理の看板が見えて来た
「パパ‼︎かにだよかに‼︎」
「蟹食べるか⁇」
「かにたべる‼︎」
「武蔵も…」
視線を武蔵に下げると、既に涎を垂らしていた
「武蔵」
「はっ‼︎か、蟹がいいな‼︎うぬ‼︎」
余程お腹が空いていたみたいだ
たいほうを降ろし、店に入る
「いらっしゃい。蟹料理”瑞雲”へよく来た」
「ぬ…」
武蔵の顔付きがちょっと変わった
「こちらの席になる」
結構賑やかな店内に案内され、席に座ると、メニューを手渡された
「この店のメニューは一つだ。蟹鍋だけだ」
「これ一つで何人前だよ…」
「18人前だ」
ドヤ顔の店員が渡したメニューには、どエライ量の蟹鍋の写真が一枚だけ掲載されている
「これを一つだ」
「うけたまわった」
武蔵が注文し、鍋が来るまで待つ
たいほうは蟹の水槽の所に行った
「奴は元艦娘だ」
武蔵が顔付きを変えたのは、自分と同じ戦艦だったからだ
「日向だな…あいつ、ここで働いてたのか…」
「しかし”蟹料理”瑞雲””という、ねーみんぐせんすはどうだ…」
「仕方無い…あいつは瑞雲マニアらしいからな…」
「待たせたな」
「お…」
「きた⁇」
たいほうも帰って来て、三人の前に受け皿が置かれ、メインの鍋が置かれた
「で…デカいな…」
「うぬ‼︎これでこそ戦艦の作る料理だ‼︎」
「かに」
既に最初の蟹が食べ頃を迎えた鍋が目の前に来た
「さぁ‼︎食ってくれ‼︎」
「「「いただきます‼︎」」」
朝ごはんを抜いてきた三人は鍋を突き始めた
だが、私と武蔵はやる事が同じ
「ほい」
「いっぱい食うんだぞ‼︎」
互いにたいほうの受け皿に、剥いた蟹を置いて行く
「おいしい‼︎」
「そうか‼︎良かったな‼︎」
「いっぱい食って、大きくなるんだぞ‼︎」
こう見えて、たいほうはかなり食べる
そして、それ以上に武蔵も食べる
二人が食べ終わった後に残る量でも、私は充分だ…
とは思ったが、予想以上に減るのが早い‼︎
私も一つ位は食っておかなければ‼︎
半時間もしない内に、鍋や追加の蟹も全部無くなってしまった
「な…何とか食えた…」
こんな高速で無くなるとは…
だが私も充分過ぎる程、蟹を堪能出来た
「おなかいっぱいになった‼︎」
「うぬ‼︎たいほうが満足ならそれでいい‼︎」
たいほうも武蔵も満足そうだ
「お会計お願い‼︎」
店員を呼ぶと、再び日向が出て来た
「幾ら⁇」
「いらぬ」
「え⁉︎」
「ここは横須賀鎮守府直営の店だ。提督や艦娘には、全員無料で提供している」
「あいつやるな…」
「逆に金銭を貰うと困る。だから、その食いっぷりを金銭とする‼︎」
「ふっ…いいだろう‼︎ご馳走様だ‼︎」
「また来い。今度は全員連れてな」
「ごちそうさま‼︎かにはおいしいね‼︎」
いつの間に貰ったのか、お土産の蟹のぬいぐるみを抱いて、再び武蔵の肩に乗る
「いつでも来い。お腹いっぱい食わせてやる」
「うんっ‼︎」
「日向、あの刀は…だな…」
「構わん。どうせいつかは捨てなければならなかったんだ。それより私は、包丁を握っている方が幸せだ」
「そう言って貰うと助かる」
「そろそろ観艦式だ。行って来い」
「また来る」
繁華街を後にし、観艦式の会場に戻った