艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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42話 青い楽園(3)

「国会はスカイラグーン反対…はぁ…」

 

「だから言ったろ⁇老人は頭が硬いって」

 

目の前では、スティングレイが呑気にタバコを吸っている

 

「こう言う時はだなぁ…」

 

 

 

数時間後…

 

「総理大臣…召し取ったりぃぃぃぃい‼︎」

 

スティングレイが総理大臣を連れて、スカイラグーンにやって来た

 

「オォォォオ‼︎」

 

スカイラグーンで歓声が上がる

 

「き、貴様‼︎何のつもりだ‼︎」

 

「ル級さん、お願いしま〜す‼︎」

 

「ナニニスル⁇」

 

「いらぬ‼︎早く元の場所へ返せ‼︎」

 

「ま、片意地張らずに楽しむこったな‼︎」

 

完全能天気なスティングレイ

 

「レイ…やる事はやるんだな…」

 

「百聞は一見に如かず、だ」

 

武装は勿論ない

 

だが、私を含め、ラバウル航空戦隊三人、トラックさんは常に臨戦態勢

 

理由はただ一つ

 

ようやく出来た、友好関係を壊す訳には行かないからだ

 

「じゃあ…キャラメルマキアートを…」

 

「カシコマッタ」

 

ル級さんが作っている最中、バッカスが総理大臣にタバコを差し出した

 

「愛煙家の様で…」

 

「…すまない」

 

「礼なら彼女に」

 

バッカスの背後には、名札に”ヲ級”と書かれた女の子がいる

 

しかし、頭の装備や武装諸々は、勿論全て外してある

 

「ソウリ、タバコスキッテシッテタ」

 

「そ…そうか…」

 

「キャラメルマキアートダ」

 

相変わらずコップは二つ

 

「ありがとう」

 

「カンパイ」

 

「…ふん」

 

嫌々乾杯をするが、ちょっと満更でも無くなって来たみたいだ

 

ヲ級が話す言葉にしばらく相槌を打ち、互いに飲み物を飲み干すと、それを見ていたスティングレイは総理大臣の背中を押し、温泉へと連れて行った

 

「これは…」

 

「流行りのインフィニティ温泉だ。癒されるぞ〜⁇」

 

絶景に言葉を失う総理大臣より先に、スティングレイが入る

 

「心配すんなよ。良い成分だぜ、ここは」

 

「う…うむ…」

 

総理大臣は恐る恐る足を入れ、肩まで浸かる

 

「おぉ…」

 

「どうよ⁇」

 

「良いな…」

 

互いに無言のまま、数分が流れる

 

沈黙を破ったのは、スティングレイだった

 

「ときに総理大臣」

 

「ん⁇」

 

「ここをどう思われます⁇」

 

「本当に非武装地帯なのか⁇」

 

「えぇ。ここにいる間は、私であれ、総理であれ、客の一人に変わりありません」

 

「法外な金を取ったりは…」

 

「ここは料金を取りません。ここのコンセプトは”補給基地”…ですが、人間の心の補給も出来ます」

 

「なるほどな…」

 

「この場所は我々…いや、私の隊長達が、ようやく手に入れた互いの友好関係の証です。安易に…」

 

「それとこれとは話が別だ」

 

「そうですか…」

 

「もう上がる」

 

一人温泉に取り残されたスティングレイは、優しい顔をしていた

 

スティングレイも上がり、みんなのいる所に戻って来た

 

「来たな。では、私の結論を出す」

 

全員が息を飲む

 

「我々が敵対関係である事に変わりは無い」

 

全員からため息が漏れる

 

「だが、その…なんだ。温泉やら飲み物は…気に入った。」

 

「総理‼︎」

 

「あ…あぁ‼︎気に入った‼︎気に入ったよ‼︎本当に楽しかったし、癒された‼︎その…何だ。また来て…良いか⁇」

 

「モチロンダ‼︎ワタシタチハイツデモオーケーダ‼︎」

 

そこにいた全員から歓声が上がった

 

「あぁ、それとな。皆勘違いしている様だが、私は反対していた訳では無い。賛成も反対もしていないだけだ。だが、今回の内部調査で、賛成に加担させて貰う」

 

「流石総理大臣だぜ‼︎」

 

「あ‼︎後君‼︎スティングレイだったか⁉︎君は敬語を使うな。君とは対等に話せそうだ」

 

「有難き幸せ…さ、サンキュー‼︎」

 

「そう。それでいい」

 

「じゃ、帰るか‼︎」

 

「んっ‼︎また来るからな‼︎」

 

「イッテラッシャイ‼︎」

 

ドアを開け、外に出ようとした時、総理大臣が振り返った

 

「あぁ、そうだ。一つ言い忘れた。サンダーバード隊の各員、元ラバウル航空戦隊の方々。艦隊計画の心配は、もうしなくていい。私が白紙撤回した」

 

「貴方になら着いてもいいと、今思いましたよ」

 

「国家や国は嫌いだが…あんたは気に入ったよ」

 

総理大臣は、笑顔のままスカイラグーンを出た

 

「でだ、スティングレイ」

 

「ん⁇」

 

「どうやって連れて来た⁇」

 

「あ…いや‼︎その…‼︎」

 

「ん⁇別に怒ってないぞ⁇」

 

「や…闇討ち⁇あ、あはは…」

 

スティングレイの得意分野だ

 

「まぁ、総理大臣は味方だって良く分かったよ」

 

 

 

そして、数日後の朝刊で…

 

「総理、スカイラグーン賛成‼︎”友好関係の架け橋として、一度は訪れたい場所”」

 

「いい総理だな。珍しい」

 

「今までが最悪だったんだよ。俺は気に入った‼︎」

 

スティングレイが他人を信用するのは珍しい

 

私も信じていい…今はそう思う

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