自分の中では、5話は少し長く書きたかったので、6話はパパのちょっとした過去のお話です
今日も基地に夜の帳が下りる…
「りんご、ばなな、おれんじ」
「これは何だ⁇」
「あおいんこ︎!!」
「惜しいな、青”りんご”だ」
ベッドに横になりながら私は、たいほうに絵本を読んでいた
「うさぎ、ぱんだ、ねこ」
「これは何だ⁇」
「りす︎!!」
「惜しいな、これはネズミだ。でも、形は似てるな」
「提督よ。貴方は本当に子煩悩だな」
「そうかな⁇」
「たいほうよ、これは何だ⁇」
武蔵の持っていたお盆の上には、うさぎのりんごが何個か載っていた
「うさぎのりんご︎!!」
「良く出来た︎偉いぞ︎」
たいほうを褒めた後、彼女の口にうさぎのりんごを放り込んだ
「さ、もうおやすみ…」
たいほうに布団を被せると、武蔵と私の手を取った
「パパもむさしも、ここにいる⁇」
「あぁ、たいほうの近くにいるよ」
「私が寝てやろう」
武蔵がたいほうの横に入り、私は部屋の電気を消した
私も眠ろう…
ここ最近は平和だな
武蔵もいるし、万が一も万全だ…
「隊長…貴方と一緒に飛べて、光栄でした︎」
「チクショー︎ここまで…か…」
「空が狭い…なぁ、隊長…」
「逝くな︎お前ら︎」
目の前で、仲間が火を吹いて落ちて行く…
残弾無し、燃料無し
だが、弾なら…
弾なら、まだ一発残っていた
多分、これが最後の燃料だ
「うわぁぁぁぁあ︎」
そう、特攻
敵の深海凄艦に当たる直前、私は目を閉じた
「空に…還るのか…私に、一番近い場所に…還るのか」
「提督︎提督よ︎大丈夫か︎」
「はぁ…はぁ…」
夢か…
にしては、随分恐ろしい夢だったな…
「かなりうなされていたぞ」
「あ…あぁ…昔の夢を見たんだ」
「仕方無い…」
武蔵は私を思い切り抱き寄せた
柔らかい胸に顔が埋まり、息がしにくい
あ。そういう意味か
窒息させて、気絶されるつもりだな…
と、思いきや、急に胸から外れた
「今日は一緒に寝てやろう。たいほうの代わりの湯たんぽだな」
「うん…」
その晩、私は武蔵に抱かれたまま眠りについた
人肌に触れながら眠るのは、とても幸せだと気が付いた
「パパ、むさし︎」
「たいほうか…おはよう」
「むさしとねたの⁇」
「うん…武蔵と一緒に寝るとすぐ寝れるな」
「むさしはやさしいね」
「ふっ」
静かに寝息を立てている武蔵の頭を撫で、そっと布団を被せた
「もうちょっと寝かせてあげよう。きっと疲れてるんだ」
「うん。たいほうはえんせいにいってくるね︎」
「あんまり遠くに行くんじゃないぞ︎」
「いってきます︎」
最近のたいほうは元気だ
それも、彼女のおかげかな⁇
「おはよう、提督。もう大丈夫か⁇」
「おはよう。ありがとうな」
「その…激しいのだな、男と言うのは」
「やっぱ…何かしちゃったか⁇」
「ずっと泣いていたと思えば、私の胸を何度か揉んだ後、すぐに寝息を立てたぞ」
「ご、ごめんな…」
「かまわん。減るもんじゃない」
「お詫びに、少し話をしてやろう。あまり楽しい話じゃないけどね…」
「む…聞いてみよう」
「私がまだパイロットだった時の話だ…」
それからしばらく、昔の話をした
幾度の空中戦…
唯一の自慢だった僚機の損失無しのレコード…
大陸を跨いだ戦争…
全てが覆されたあの日の…
「ほぅ…そんな過去が…」
「今となっては、未練と思い出しか残らないけどね」
「それでも、空に帰りたいのか⁇」
「そう願うね。だが、今となってはもう遅い」
「今からでも遅くないはずだ」
「無理だ」
「提督よ…」
「武蔵」
武蔵の手を取り、私の左足に当てた
「これが分かるか︎」
「足だ」
「めくってみろ」
何の抵抗も無く、武蔵は私の左足のズボンをあげた
「分かったか⁇」
「隠していたのか、今の今まで」
「なるべく知って欲しく無かったんだ。これを知ってるのは、私と武蔵だけだ」
武蔵が沈黙する
普段は全く気にしないのに、この時ばかりは、波がうるさく聞こえた…
「こんな体で、私を助けに来てくれたのか⁇」
「まぁな」
「やはり、貴方に付いて間違いは無かったようだ」
「そうか⁇」
「あぁ。私の提督は自慢の提督だ」
そう言って、武蔵は何度か私の頬を撫でた
「大佐、定時報告です」
「ん、あぁ」
急いで左脚を隠し、扉を開けた
「あ…申し訳ありません。入るべきでは…」
何かを察し、横須賀君は部屋を出ようとした
「いいんだ。で、今日はどうした⁇」
「貴方に、休暇の命令が下りました」
6話はこれでおしまいです
次のお話は、パパの長い休暇のお話です
個人的に気に入ってるお話なので、早めに貼ります