「あ、ねぇ、おじさん暇︎??」
「まぁな…二週間休暇だとよ」
「ふふふ…じゃ、行こっか︎??」
「ど、どこに︎」
「いいから︎ほら立って︎」
彼女に無理矢理手を引かれ、繁華街に連れて行かれた
「これこれ︎一人じゃやり辛いのよ」
「プリクラか」
「いや⁇」
「ううん。撮ろう」
青春を取り戻してるのよ…
彼女と過ごしている間、ずっとその言葉が頭の中を渦巻いていた
プリクラ撮って
クレープ食べて
またベンチで話す
本当に、他愛の無い時間…
「パイロットさん」
ようやく呼び方が変わった
「ん⁇」
「明日も逢おう⁇ね⁇」
「うん」
「じゃあ、今日はこれで。楽しかったよ︎」
待ち合わせ場所も、時間の指定も無い
だけど、なんとなく分かっていた
それから数日間、夕方の4時になると彼女は最初に出逢ったベンチに現れた
彼女の名前は”みほ”と言った
名前を聞くのも忘れる程、私は心底楽しんでいた
彼女といれば、何もかも忘れられた
パイロットの事も…
提督の事も…
何の変哲も無い時間が、二人の間に流れて行った
「じゃあね、また明日」
「あ…その、み、みほ︎」
「…初めて名前呼んでくれたね」
「明日、祭があるんだ。良かったら一緒に…」
「うん、分かった」
そして、また一人になる
彼女と逢えるまでの時間が、物凄く長く感じた
あぁ、そうか…
これが、恋…
私も、青春を取り戻してるのか…
ホテルの布団の中で、彼女の事ばかり考えていた
次の日、夕方4時
「パイロットさんっ」
「あ…」
うたた寝していたのか、彼女の顔がアップで映り、目が覚めた
「待った⁇」
「いや…待ってない。浴衣着て来たのか」
「うん、雰囲気から入らないとね」
「行こう」
「あ、ちょっと…」
彼女の腕が、私の腕と絡む
「行きましょ⁇」
数十年前、何度も行ったはずのお祭りの風景は、相変わらず似たような物だった
だが、まさか隣に異性がいるとは思いもしなかった
「何食べる⁇」
「焼きそばと…なんだこれ⁇」
「いらっしゃい、いらっしゃい︎出し巻き卵美味しいよ〜︎」
目の前で売られていたのは、出し巻き卵の屋台だった
しかもちっさい女の子が焼いている
「美味しそうね、一つ買う⁇」
「そうだな、じゃあ一つください」
「私、隣で焼きそば買ってくる」
「うん」
「おじさん、ちょっとだけ、たべりゅ⁇」
「どれ…」
あ、なるほど…
酒のつまみになりそうな、いやしかしおかずにもなるな…
味もしっかりしていて美味しい
「万能な味だな」
「あ〜︎瑞鳳ちゃんだ〜︎!!」
「へっ︎な、なにっ︎!?」
「はいっ、ど〜ぞっ︎!!」
瑞鳳と呼ばれた女の子は、何のためらいも無く、風船を持った少女に出し巻き卵を食べさせていた