「部屋で待ってるからね」
先に柏木が出て、大和だけがお風呂に残る
しばらく湯船で考えた後、大和も出た
大和がようやく厨房に立った時、柏木は鍵の付いた引き出しの中身を全部出していた
「…よし‼︎」
いつも物を焼いているドラム缶が工廠の裏にある
柏木はそこの前に立ち、ライターでドラム缶の中の木材に着火
そして、その中に一枚、また一枚と資料を放り込んで行く
終始無言のまま…だが、何処と無く嬉しそうな表情をしている
そして、最後に残った写真…
しばらく見つめた後、数秒愛おしそうに胸に抱いた
「さよなら…」
そう言い、柏木は過去と決別した
「ギュゲス‼︎よくやったな‼︎」
「偉いぞ‼︎」
隊長とアレンが抱き着いて来た
「大和にプロポーズしようと思ったんだ‼︎だから、過去とはお別れだ‼︎」
満面の笑みで、彼は笑う
二人は初めて彼の明るい笑顔を見た
「明るい…明るいよ‼︎」
待ちに待った、ギュゲスの明るい表情と言葉
二人は嬉しくてたまらなかった
一番年下なのに、一番壮絶な経験をした彼を、二人はいつも心配していた
二人にとって、彼は弟のような存在だった
「今日は大和とご飯食べるんだ‼︎」
「そうかそうか‼︎」
「遅れないようにね‼︎」
「あ、そうだ隊長」
「ん⁇」
「帝國ホテルのカレー、また連れて行って下さい‼︎また食べたい‼︎」
「え…えぇ…」
ラバウルさんの目から涙が零れた
「アレン‼︎またゲーム教えてね‼︎」
「お…おぅ…」
アレンも涙する
二人共まさか、あんなに子供っぽかったとは思っていなかった
隊長に至っては、帝國ホテルの一件をまだ覚えていたのかと感動していた
基地に走っていく柏木を、二人はしばらく見つめていた
「子供らしさが爆発しましたね」
「良かった…大和にプロポーズですってね‼︎」
「そっか…プロポーズですか…」
数秒置いた後、二人は事の重大さに気付く
「「プロポーズだと⁉︎」」
部屋に戻り、大和を待つ
「出来ましたよ」
「ありがとう。食べよっか⁇」
「⁇」
何と無く明るくなったとは思ったが、大和はまだ確信を持てなかった
「やっぱり美味しいな、大和のカレーは」
「何かありましたか⁇」
「無いよ、何にも」
だが、柏木の笑顔は止む事を知らない
「そう、ですか」
「…大和」
「はい」
互いにカレーを食べる手が止まる
「俺、家族とかって、あんまりよく知らないんだ」
「はぁ…」
「家庭の味とか、全然分からなくって…でも、これがそうなんだろうな」
「…」
唐突に始まった家族の話に、大和は着いて行けないでいた
「本当はね、あの写真の人と結婚しようかなって、思ってた。でも、彼女は俺を捨てた」
「大和は捨てませんよ‼︎絶対‼︎」
大和はスプーンを置き、また柏木の後ろから抱き着いた
「置いて行ったりしません…絶対」
「…大和。俺はそれを形にしたい」
「えっ⁉︎」
いつの間に取り出したやら、指輪の入った箱が机の上に置かれている
「大和が良いなら、俺とケッコンして欲しい」
他の連中と違い、柏木は結構アッサリとプロポーズをした
「喜んで‼︎ありがとうございます、柏木様‼︎」
「イヤッフゥゥゥゥゥウ‼︎‼︎‼︎」
「やりましたね‼︎」
テンションの可笑しくなった二人がいきなり入って来た
暁と愛宕とおおいは、ドンドンパフパフと音の鳴る楽器を鳴らしていた
「見てた⁇」
「一部始終はな」
「ギュゲスもついにケッコンですか…」
柏木の横で、大和は幸せそうな表情をしている
この日、ラバウル基地は色んな意味で幸せな1日を迎えた
「おいおいおい‼︎ラバウル基地がケッコンラッシュだぞ‼︎」
2日後に各基地に届いた情報誌を、またレイが見ている
「残ってるのは…ちょっとショタ気味の子、でしたっけ⁇」
鹿島は覚えていた
幼そうな顔立ちなのに、周りの人と全く違う異様な雰囲気を漂わせていた子だ
鹿島から見ても、まだ若い様だ
「ショタって言っても、20そこそこだったはずだ。ホレ」
柏木健吾(21)
大和(5)
「…」
「…」
「…5歳」
「ロリコン⁇」
「ロリってのは、たいほうみたいな事を言うんだ」
「ろり⁇」
テレビの前で遊んでいたたいほうが反応する
「ロリってのは、小さい女の子の事を言うんだ」
「あかつきもろり⁇」
「う、うん。あの人は…まぁ仕方ない」
「あかつきなんさい⁇」
言われてみれば気になり、何ヶ月か前の情報誌を引っ張り出した
「おぉ、あったあった」
”ラバウル基地隊長兼提督のエドガー大佐、ケッコン‼︎お相手は駆逐艦”暁”‼︎”
エドガー・ラバウル(35)
ラバウルさんは名前を変えた際、苗字を”ラバウル”に変えた
下の名前はそのままらしい
そして問題の暁は…
「…」
「…」
「わぁ…」
「「「うわぁぉぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」」」
情報誌を元に戻し、三人とも見なかった事にした
後にたいほうはこう語る
「あかつきって…すごいね…」