艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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60話 二人の死神(3)

「レイ。これも何かの縁だ」

 

「仕方無い」

 

「隊長は秋月。レイは照月をお願い」

 

「殺されたら承知しねぇからな‼︎」

 

「香典はあげるわ」

 

「くたばれ‼︎」

 

文句を言いながら、俺達は部屋を出た

 

二人が部屋を出た後、横須賀は再び確信していた

 

あの二人なら、どんな子だって、立ち直らせられる、と

 

 

 

「隊長様‼︎今日は宜しくお願いします‼︎」

 

「…」

 

秋月は敬礼をしているが、照月は目を逸らしたままだ

 

「敬礼は無しだ。それに、隊長でいい」

 

「俺はレイ様でいいぞ‼︎」

 

勇ましく親指を立ててウインク

 

「…提督からレイでいいと…」

 

「くっ…」

 

「さ、行くぞ」

 

俺達は格納庫に向かった

 

「大佐‼︎お疲れ様です‼︎」

 

いつかたいほうの相手をしていた男性が隊長に駆け寄る

 

「修理は無理そうか⁇」

 

「えぇ…全体が大破しています。乗り換えた方が早いでしょう」

 

「あ…」

 

四人の前に、青い鳥が横たわっている

 

痛々しいまでに大破しているが、威厳は失っていなかった

 

「秋月」

 

「はっ」

 

隊長はポケットに手を入れ、秋月の方を見ず、ずっとコルセアの方を見ていた

 

「これには人が乗ってる。それを叩き落とすのがお前達”防空駆逐艦”の任務だ」

 

「…」

 

秋月達防空駆逐艦の主な任務は、敵航空機を撃墜する事

 

秋月達は装備された機銃達の力で上空に厚い弾幕を張り、敵航空機を味方艦隊に寄せ付けない様にする

 

「だがな。お前達を沈めるのも、俺達の任務なんだ」

 

「私は…」

 

隊長は秋月の頭を撫でた

 

「戦争ってのは、そんなものだ。殺られる奴がいるなら、殺る奴がいる。誰もが被害者になって、誰もが加害者になる」

 

「隊長…ごめんなさい…」

 

「ありがとうと言ってやってくれ」

 

「え⁉︎」

 

「俺が提督になってから、ずっと付き合ってくれた機体だ。最後位、俺以外の奴に感謝されても良いだろ⁇」

 

「…ありがとう‼︎」

 

秋月はコルセアに頭を下げた

 

隊長はコルセアに手を置いた後、頭を当てた

 

「ありがとう…またな」

 

コルセアを軽く二回叩き、隊長は下を向いたまま、格納庫を出た

 

秋月は憎んでいなかった

 

事故とはいえ、撃墜された事も憎んでいない

 

ただ、愛機であるコルセアと別れる事が、一番辛かった

 

 

 

 

その頃、フィリップの格納庫では…

 

「これが俺の機体だ」

 

《ども〜》

 

目の前でフィリップが補給を受けている

 

「深海の…」

 

「そっ。フィリップって言うんだ」

 

「レイは敵ですか⁇」

 

「敵だったら来る時に落とされてるよ‼︎」

 

「…触ってもいいですか⁇」

 

「いいぞ」

 

恐る恐る照月はフィリップに触れた

 

「…生きてるの⁇」

 

フィリップは時々何処からか空気を抜く

 

その時、機体に触れていれば分かるが、僅かに機体が震える

 

「そっ。みんな生きてる。俺も、フィリップも、照月も」

 

「…私達、航空機を落とすのが任務です」

 

「それに特化された艦娘だからな」

 

俺は照月の後ろで棒付きの飴を咥えた

 

「生きてるんだ…航空機も」

 

「そう。生きてるからこそ、痛みだって感じる。だから不調があったりするんだ」

 

「私達と一緒⁇」

 

「一緒だ。触られて嬉しいと感じるのも、例えば…」

 

俺は照月の腕を取り、フィリップの左翼に触れさせた

 

照月は嫌がらなかった

 

「お前はどう感じる⁇」

 

「しなやかです…硬くて、鋭い…」

 

「そう感じるのも、生きている証拠だ」

 

照月から手を離しても、彼女はまだフィリップに触れていた

 

《君の撫で方は優しいね》

 

「そうですか⁇」

 

《レイも優しいんだよ⁇いつも僕を心配してくれてるんだ》

 

「そっか…いい人に巡り会えたんですね」

 

《君はそうじゃないみたいだね》

 

「…」

 

照月は連装砲ちゃんの様な子を強く抱き締めた

 

「フィリップ。出られるか⁇」

 

《いつでも》

 

「よしっ‼︎じゃあちょっと飛んでみるか‼︎」

 

フィリップの左翼に登り、照月に手を伸ばした

 

「私はいいです」

 

「自分の相手が見ている景色を見るのも経験の内だ‼︎」

 

「…怖くないですか⁇」

 

「大丈夫だ‼︎」

 

意を決して、照月は手を掴んだ

 

「わ〜」

 

連装砲ちゃんみたいな子を抱いたまま、照月はフィリップの内部を不思議そうに見回す

 

フィリップの内部は意外にだだっ広く、色々な電子機器が作動している

 

「シートベルト締めたか⁇」

 

「よいしょ…はい」

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