「こっからは俺が鹿島と出逢った話だ。簡潔に行くが、少し長くなるかもな⁇」
香取の空軍アカデミーでも、マーカスとアレンはズバ抜けて成績が良かった
そんな中、香取先生の授業の代わりに別講師が教える事になった
「今日から貴方達に戦い方を教える”鹿島”と言います。皆さん、よろしくお願いしますねっ⁇」
「…」
「…マーカス⁇」
俺、無事一目惚れをする
鹿島の授業は楽しかった
隊長を護れる
それに、鹿島に教えて貰える
結構満足していた
ある事を除いては…
「先生、そいつは違うな」
「あら、どうしてです⁇」
「後方に回った方が早い」
今日も鹿島に食って掛かる、高山と言う男
正直、授業の邪魔をして欲しく無かった
人の楽しみの時間を奪いやがって‼︎
「よし、高山。俺と模擬戦だ‼︎俺は鹿島の教え、高山は我流で来い」
「いいだろう」
「ちょ、ちょっと‼︎」
「一つ約束してくれ」
「何だ⁇」
「もし俺が負けたら、俺がお前に頭を下げる。だから、先生に頭を下げさせるな。いいか⁇」
「…いいだろう」
「マーカス君…」
高山との模擬戦は、何回もやる事があった
俺が勝つ事も勿論あったし、高山が勝つ事もあった
鹿島に食って掛かる高山は嫌いだったが、戦っている高山は好きだった
それは向こうも同じだったと思う
そんな模擬戦が何回か繰り返されたある日、俺は普通に帰って来た
「マーカス君」
格納庫に戻って来ると、鹿島が待っていた
「へっ、負けちまったぜ…」
「何でいつも私を庇ってくれるんです⁇」
「好きだからさ」
「えっ⁉︎その…」
「隊長に教えて貰ったんだ。空は広いって。俺は隊長から貰った空が好きだ」
「あ…」
「悪かったな、負けちまって」
「あ…いえ…」
その時、格納庫の陰から噂話が聞こえた
「鹿島教官も罪な人だよな…許嫁がいるのに、生徒を堕として…」
その話を聞き、鹿島の方を振り返ると、途轍もなく悲しそうな顔をした鹿島がいた
「テメェら‼︎噂話してんなら仕事しやがれ‼︎」
「あ⁇テメェ階級なんだよ、あ⁉︎」
「大尉です。マーカス大尉」
「え⁉︎」
そう言ったのは鹿島だった
「し、失礼しました‼︎」
噂話をしていた整備兵は職務に戻って行った
「教官、大尉ってどういう…」
「マーカス君はこれからブラック・アリス隊に入るんです。高級階級の人間ばかりの中、その階級なら恥ずかしくないでしょ⁇」
「にしても、大尉は…」
「じゃあこうしましょう‼︎教官である私を庇ってくれた…何回かニ階級特進した、そう言う事にしましょう⁇ねっ⁇」
「まぁ…教官が良いなら…」
「それに貴方なら、私を救ってくれる気がします」
「何だって⁇」
「何でもないです‼︎行きましょう‼︎」
俺はその日から、少し鹿島を避ける様になった
許嫁がいるなら、俺の入る隙は無いと感じたからだ
だが、陰でフォローするのは変わらずにやっていた
そして、卒業の日
「おめでとう、マーカス君‼︎」
「ありがとうございます」
香取先生から卒業証書を各人貰い、パーティーが開かれた
「おめでとう、マーカス‼︎」
「隊長‼︎ありがとうございます‼︎」
「バカ‼︎敬語何か使うな‼︎お前はフランクが一番だ‼︎」
「へへへ…ありがとう」
「隊長さんっ、彼、少しお借りしてもいいですか⁇」
「どうぞどうぞ‼︎」
鹿島に連れられ、パーティー会場を出た
「マーカス君、おめでとう‼︎」
「あ、ありがとう…」
「これ、私からのプレゼント」
手渡された紙袋を開けると、黒い革ジャンが出て来た
俺が未だに来てる、チョットボロってきたアレだ
「ありがとう。大事にするよ。教官も、許嫁と元気でな」
「その許嫁の人もパイロットなの。いつかマーカス君と会うかもね⁇」
「味方である事を祈るよ」
照れ隠しの為、この頃始めたタバコを咥えると、鹿島は火を点けてくれた
「す、すまん…」
「私、下の名前”まゆ”って言うの。マーカス君は⁇」
「マーカスが名前だ。苗字は無い」
「なら”スティングレイ”はどうですか⁉︎」
「スティングレイ〜⁉︎」
「マーカス君、いつもチョットだけ尖ってるでしょ⁇」
スティングレイと言う名は、鹿島が付けたのだ
俺は今でもこの名前に誇りを持っている
「でも、いつだって私を護ってくれる…」
鹿島は俺の肩に頭を置いた
「絶対、帰って来てね⁇」
「…分かった」
数日後、俺達は出撃になった
敵航空部隊の迎撃
隊長等歴戦の猛者ならば、簡単な任務だった
俺も爆撃機やボロい戦闘機を撃ち落とし、隊長をビビらせたのを今でも覚えてる
空域の敵勢力排除の通信を受け、いざいざ帰ろうとした時、エース部隊が現れた
相手は五機編成のMig-31
機動力の高いSu-37なら、何とか勝てる相手だ
隊長達はあっと言う間に四機を撃墜
俺は一機にモタモタしていた
それも仕方無いと言えば仕方無かった
隊長機だったからな
「よしっ‼︎撃墜した‼︎」
隊長と一緒に乗った時、背後にミサイルを撃てるのを思い出し、事無きを得た
《良くやった‼︎これでエースの仲間入りだな‼︎》
「へへへ…やったね」
横須賀の基地に帰ると、俺達を讃える人がワンサカといた
完璧な攻撃
完璧な作戦
そして無傷
素晴らしい結果だった
ただ、一つだけマズかった
「鹿島教官は⁇」
とにかく、エースの仲間入りを果たした事を鹿島に報告しようとした
「それが…」
「嘘だろ…」
俺が墜とした機体に乗っていたパイロット
鹿島の許嫁だったらしい
「ちょっと行って来る」
小走りで鹿島の部屋に向かい、部屋をノックする
「…開いてます」
「鹿島」
「あ…マーカス君。お帰りなさい…今、お茶でも淹れますね⁇」
鹿島の目は真っ赤だった
お茶を淹れようとした鹿島はフラついており、何とか受け止めた
「鹿島、もういい」
「マーカス君…あたし…」
「すまない…知らないとはいえ、マズかったな…」
「うわぁぁぁぁん‼︎」
鹿島を抱き締め、しばらく泣かせた
これ位しか出来ない自分が情けない
「俺が護ってやる。でも、好きにはなるな」
「どうしてです⁇」
「俺は鹿島の許嫁を殺した。あんたの憎むべき相手だ」
「貴方も…私から離れて行くのね⁇」
「これからも、陰から護っているよ」
「バカ‼︎バカバカバカ‼︎」
「もっと良い男見付けろよ⁇」
鹿島の額にキスをし、そのまま部屋を出た
それから、鹿島と会う事も無かった
数年後に、俺は反抗作戦で撃墜され、公式では死亡している
その時、鹿島は許嫁が死んだ時より大泣きしたらしい
それを後々聞いて、俺はケッコンを決意した
こいつを護ってやれるのは、俺しかいない、と
「と、まぁこんな感じだな。簡潔にしか説明しなかったが、大体分かったろ⁇」
「うんっ。昔からレイは口悪いね‼︎」
「なんと‼︎」
紆余曲折のある人生だが、今は幸せだ
子供達が居て…
好きな人の傍にいれて…
大切な部下が居て…
今は、それでいいと思う…