「間宮のタダ券をやろう」
「提督のデザートの方が美味しいのでいいです」
言われてみればそうだ
「じゃあ…」
「スティングレイが来てくれればそれでいいです‼︎」
「嫌だ‼︎」
蒼龍の要望を全否定する
もし蒼龍の所に行けば、俺はどうなるか分からない
「じゃあ北上さんも引き受けないですねぇ」
「オーケー…分かった。今度バーベキューに誘ってやろうと思ったが、無かった事にしよう」
「バーベキュー⁉︎提督の焼くお肉の方が絶対美味しいんでいいです‼︎」
後が無くなった…
「う…」
みんなの視線が痛い…
「あ〜も〜仕方無い‼︎俺が行きゃ良いんだろ⁉︎」
「奥さんいるのに私の所に来るんですかぁ⁇」
「テメェが来いって言ったんだろうが‼︎」
「ホントに来てくれるんですかぁ⁉︎」
「行くよ。その代わり、北上を頼むぞ⁇」
「心配ありません‼︎二人共美味しく食べます‼︎」
蒼龍の口からジュルリと涎が垂れた
「レイ…頑張れよ⁇」
アレンの視線が辛い
「じゃ、行きましょうか‼︎」
いつの間にか紐でグルグル巻きにされている‼︎
「え⁉︎嘘‼︎ちょっと‼︎」
「良い奴だったよ…」
「残念です…」
隊長とラバウルさんでさえ、手に負えない蒼龍
彼女に掴まってしまえば最後だ
1日後…
「た…たらいま…」
「かえってきた‼︎」
たいほうがレイの帰還に気付き、迎えに行った
遅れて私、鹿島が出迎える
「大丈夫だったか⁇」
「ほぼ丸一日、空戦のレクチャーと飯の世話だった…もう行かない。二度とだ‼︎」
ヘトヘトに見えるレイだが、至る所に咬み傷やキスマークがある
…満更でも無かった様だ
「あ、レイ⁇そう言えば送られた犯罪者の方々はどうなってるんです⁉︎」
「やめろ‼︎聞くんじゃない‼︎ションベンチビって気絶すっぞ‼︎」
鹿島が言った言葉に、レイは激しく反応した
執務室に入り、トラック泊地の様子を聞いてみる事にした
「蒼龍の部屋の至る所、骨だらけだった…ありゃ食われてるな…」
「まぁ、死刑囚ばかりだからな…」
「普通食うか⁉︎あいつはヤバい‼︎マジでイカれてる‼︎てか、トラックさんも食おうとしてた‼︎」
「あの人なら大丈夫さ。ちゃんと蒼龍を手懐けてる」
「まぁ…飯は最高に美味かったな…あ、後コレ」
レイから電報みたいな物を預かり、封を開けた
”犯罪者達は許可を得て、公平な裁判の末、蒼龍が独断と偏見で執行しています
またいつでもいらして下さい
新作のスイーツもあります
P.S.
お子さんが怖がるかと思われますので、その際は蒼龍は奥へ引っ込んで貰います”
「新作スイーツ食ったか⁇」
「食った‼︎激ウマだった‼︎しかも入ってる物を事前に説明してくれて、嫌いな物は抜いてくれるシステムなんだ‼︎」
「根っからのパティシエだな…」
現在のトラック泊地は、刑が執行されていると噂されている中で、知る人ぞ知る激ウマスイーツがある場所でもある
訪れる艦娘達に快くスイーツを出すトラックさんは、今では反対派の艦娘達の人気者になった
当の本人も現在の立ち位置を気に入っているらしい…
え⁇北上⁇
食われてないから心配しないで欲しい
ラバウル基地…
自室で一人落ち込む健吾
そんな彼の前に、一枚の紙切れを置いた大和
「これは⁇」
「貴方がヘルハウンド隊から離れる直前の、北上隊長のブラックボックスの音声データです」
「…」
嫌々ながら、健吾はそれを見た
大和なりに見易く仕上げている
”健吾、あんたいらないわ”
”じゃあね〜”
ここから先の文章に、健吾は目を疑った
”エドガー、あんたに健吾を任せるよ。あの子はここにいちゃ駄目だ”
”愛してるよ、健吾…”
「キャプテン⁇」
「これはお返しします…」
大和はケッコン指輪を健吾に返した
「大和、俺はホントに君を愛してる。それだけは間違いない‼︎」
「いいえ。貴方の心はあの方に…」
「いい加減にしろ‼︎」
産まれて初めて、健吾は怒鳴った
「お前だけは味方だろ⁇違うのか⁇」
「大和は…」
「少し頭を冷やせ」
「はい…」
命令したのも、産まれて初めて
大和を部屋に残し、向かったのはキャプテンの執務室
「キャプテン、健吾です」
「どうぞ〜」
煙草を吸いながら、書類仕事をしていたラバウルさんに、先程の書類を見せた
「とうとうこの日が来ましたか…」
「何故もっと早く言ってくれなかったんです‼︎」
「いつか君が彼女を恨まなくなる日が来たら言おうと思っていましたが…大和が先でしたか」
「キャプテン。真実を話して下さい」
「分かった。頃合いでしょう」
あの日、健吾は確かにヘルハウンド隊から切り離された
ヘルハウンド隊はその時、核を搭載した爆撃機の護衛任務に就いていた
北上はそれを早々に駄目な事だと気付いてはいたが、表沙汰では逆らえなかった
そして北上は当時、仲が悪かったSS隊の隊長…ラバウルさんに頭を下げ、健吾を任せる事にし、表沙汰では健吾は撃墜され死亡している事にした
本人は反旗を翻し、爆撃機を撃墜。近くの国に亡命し、最近まで行方不明になっていた
「そんなバカな…じゃあ、俺が今迄隊長を恨んでいたのは何だったんだ…」
「これを聞いて、北上と私を恨みますか⁇」
「…」
健吾は下を向き、少し黙った後、顔を上げて一粒だけ涙を流した
「感謝しかありません‼︎」
ラバウルさんは、それを見て微笑んだ
「じゃあ、北上を好きになる事をもう一つ教えてあげよう‼︎私も調べたんだ‼︎」
ラバウルさんは引き出しから書類を出した
そこには、北上が攻撃した船舶のデータがあった
…全部、横流しされた違法の武器を積載している
「隊長はどうなるんです⁇」
「ふふふ…助けに行きますか⁇」
「これを見て今、自分が生きてる意味が分かりました」
「助ける方法は簡単です。電話すればいい」
ラバウルさんはトラック泊地に電話をかけた
「北上の処分を此方で請け負います。はい、お願いします。はい、おしまい‼︎」
「キャプテン、最後に一つだけ聞かせて下さい」
「何かな⁇」
「俺を隊に入れて、後悔してませんか⁇」
健吾がそう言うと、ラバウルさんは高笑いした
「ははははは‼︎後悔⁉︎感謝しかしてませんよ‼︎私に着いて来てくれて、本当にありがとう、って‼︎」
「キャプテン…」
「早く大和の所に行きなさい‼︎これは流石に命令です‼︎」
「はっ‼︎」
健吾は執務室を去った
「北上がここに来ますか…今度は、味方同士、ですね」
「大和‼︎」
「健吾さん」
「北上がラバウルに来る」
「そうですか…良かったですね」
大和の顔は浮かばれない
だけど、大和はそれで良かった
自分の好きな人の為に、少しでも役に立つ事が出来たのだから…
「大和」
椅子に座っている大和の前に、健吾が屈んだ
大和の左手を取り、指輪をはめる
「ここまで来れたのは、君のお陰だ。俺は別れるつもりなんてない。いいね⁇」
「本当に私で良いので⁇」
「な、何回も言わせるな…は、恥ずかしいんだぞ⁇」
恥ずかしがる健吾の顔を見て、大和はホッとした
あぁ、自分が着いて行くのは、やはりこの人なんだと
「もう言いません。貴方に着いて行きます‼︎」
「頼んだよ」
「はいっ‼︎」
こうして、所属不明機の一件は幕を閉じた
トラック泊地からラバウル基地に、北上が移送されて来ます‼︎
北上…三つ編み女パイロット
元ヘルハウンド隊隊長であり、健吾の昔の思い人
健吾を切り離した真相を彼に伝えずにいたが、ついにバレ、ラバウル基地で面倒を見てもらう事になった
一見、口では軽そうに見えるが子供好きで、愛宕以外で唯一アイちゃんを手懐けている
本作品では、もう裏切る様な真似はしない
いい女を目指すらしい