今回のお話ですが、かなり重要なお話です
最後に重大な伏線回収があります
今回のお話は、クイーンの何気無い一言で始まります
何度も言いますが、重大な伏線回収があります
一話しかありませんが、少し心してお読み下さい
《パパさん》
「なんだ⁇」
クイーンの中でモニターの操作を覚える為に色々弄っていると、彼女が話し掛けて来た
《パパさんは武蔵さんと夫婦なのですか⁇》
「そうだよ」
《昔恋仲だったと皆さん噂しています》
「そうだ。武蔵って名前でも無かった」
《少しお聞かせ願えませんか⁇》
クイーンがそう言い、手が止まる
逃げる様にクイーンから出ようとしたが、シートベルトを締められ、キャノピーが締められた
「何のつもりだ」
《言うまでここから出しません》
「くっ…」
《私だって知りたい事もあります》
「はぁ…」
どうやら話すしか無さそうだ…
「どこまで知ってる⁇」
《武蔵さんが”シャボン玉”が嫌いな所までです》
「はぁ…仕方無い。じゃあ、お前も話すんだぞ⁇」
《畏まりました》
「じゃあ、まずは私から…何で武蔵がシャボン玉が嫌いか知ってるんだ⁇」
《子供達がシャボン玉をしている時、悲しみの感情が強く感じ取られました》
「なるほど…それが全てを語ってるんだけどな…」
《話して下さい》
「…仕方無い。あれは、武蔵がまだ艦娘になる前の話だ」
10年位前だったかな
私はしばらくの間、日本に帰って来ていた
あぁ、そうだ
レイが新世界に住み始めた頃だ
私は今の艦娘居住区から少し離れた場所にあったアパートで暮らしていた
そう、あのアパートだ
チャイムを鳴らすと、中から女性が出て来た
「お帰りなさい。ご飯出来てるよ」
彼女は当時、髪を下ろしていた
それに、眼鏡もしていなかったし、性格も今より遥かに大人しかった
だが、体型はそのままだ
私達はそこで二人で暮らしていた
結婚はしていないが、彼女は天涯孤独の身だった為、私のアパートで日々を過ごしていた
私は傭兵でそこそこの戦果を上げていたので、そこそこの生活は出来るはずだが、あの時はこれで十分幸せだった
雪の降る、寒い夜
二人で突く鍋は美味しかった
「貴子」
「ん〜⁇」
言い忘れたが、武蔵の本当の名は”貴子”だ
小さい時から顔見知りで、今ではこうして恋仲になっている
「次で最後にするよ、傭兵」
「ほんと⁇」
「あぁ。傭兵やめたら、どっか旅行に行こう。そんで籍入れて、俺は何か平和な仕事をするよ。セスナのインストラクターの依頼が来たんだ」
「うんうん‼︎」
幸せな時間だった
今思い返せば、あの時が一番幸せだったのかも知れない
一ヶ月後…
私は傭兵を辞めた
レイを引き連れて、セスナのインストラクターをするつもりだった
横須賀は司令官に
グラーフは香取の空軍アカデミーでアグレッサーをする事になっていた
そんな中、もう一ついいニュースがあった
「お腹にね、赤ちゃんいるの」
「ホントか⁉︎」
「聞いて…」
貴子のお腹に耳を当てると、小さな鼓動が聞こえた
命がある証だ
「名前は何にするんだ⁇」
「そうね…貴方が決めて⁇」
「んっ、考えとくよ‼︎」
だが運命と言うのは残酷だ
貴子の体が、艦隊化計画のベースに適任だとの封書が来た
勿論断るつもりだったが、国はそんな事を言ってられなかった
私達の意見は無視され、貴子は艦隊化計画の手術を受けざるを得なかった
私は国に何度も抗議した
”お腹に子供がいる”
”貴子がやるなら、私が変わる”
全て跳ね除けられた
”お腹の子は諦めろ”
”お前がベースになっても仕方が無い”
地獄だった
アパートに帰れば、落ち込んだ貴子がいる
「たか…」
「シャ〜ボンだ〜ま〜」
貴子はお腹をさすりながら、歌を歌っていた
「貴子…」
「ん…お帰りなさい」
私には無理矢理でも笑顔を見せてくれた
「赤ちゃん、女の子だって」
「…貴子」
見るからに弱っていた
所詮、日本はこの程度の国か…
赤ちゃんや母親の命の保護なんざしてくれない…
護られるのは、老人や富裕層の人間ばかりだ
この頃から逆恨みの様に老人が嫌いになったのを覚えている
「名前、決まった⁇」
「あ…あぁ‼︎決まったぞ‼︎」
「教えて⁇」
この頃から、貴子はストレスからか文字があまり読めなくなっていた
私は貴子の手を取り、チラシの裏に平仮名で名前を書いた
「た…い…ほ…う…たいほうだ」
「たいほう⁇」
「そうだ。希望の鳥の名前だ。産まれて来る子には、希望を持って欲しい。戦いの、争いの無い世界を…」
「いい名前‼︎良いパパの所に産まれて来たわね〜…」
そう言って、またお腹をさする
「貴子、逃げよう。昔世話になった国が俺達を引き受けてくれるんだ‼︎」
忘れもしない、あの街
そう、夜間戦闘中に灯火管制が一斉に解除になったあの街だ
あの国の大使館が連絡を受け、私達を受け入れてくれる事になったのだ
「赤ちゃんも一緒に⁇」
「そうだ。そこで一から始めよう‼︎」
「それは出来ないな」
「‼︎」
突然土足で入って来た男性に、怯えた貴子が私にしがみ付いた
何度か抗議に行っていた人物だから覚えている
頭頂部の禿げた、いけ好かない顔をした男だ
「土足とは良い度胸だな」
「”被験体を回収”しろ‼︎」
「待てよ…」
男の言葉に怒りが爆発した
「人の嫁を無理矢理連れて行くわ、物扱いだわ…はは、勘弁してくれよ…」
「通知は渡したはずだ。拒否権は無いんだよ。勿論、君達が亡命する権利もね」
「ふざける…な…」
後頭部を殴られ、気を失った
気を失う直前、レイが暴れているのが目に入った
すまない、貴子…レイ…
私は…
気が付けば、研究所にいた
内部は既にボロボロ
後からレイに聞いた話によれば、多少私も破壊したらしいが、記憶がスッポリ抜けている
「ん…何があった」
「隊長、大丈夫か⁉︎」
レイに起こされ、何とか立ち上がる
「た…貴子は⁇」
「…逃げた。ここを破壊してな」
「貴子がか⁉︎」
「隊長、落ち着いて聞いてくれ。貴子さんはもう貴子さんじゃない」
「レイ…流石に怒るぞ⁇」
「ホントさ…国が、法律が…俺達を変えちまったんだよ…」
それを聞いて、ようやく涙が出て来た
「隊長、今は泣いていいぜ…痛い位分かるからさ…」
貴子に隠していた全ての涙が、レイの胸で出た
数十分泣き続け、ようやく落ち着いた所でレイに話し掛けた
「レイ…俺はもう、国には従わん」
「あぁ…俺は隊長に着いて行くよ」
「ありがとう…」
ここから、私は国に従わなくなった
だが、今の総理は別だ
いい人だ
互いに助け助けられで、理想の総理だと思う
「まぁ、こんな感じだ」
《なるほど…色んな事があったんですね…》
「他の奴に話すなよ⁇」
《畏まりました。情報をロックします》
ようやくキャノピーが開き、外に出る
「それとな、クイーン」
《はい》
「私は今、幸せだぞ⁇」
《ふふっ、そう言うと思ってました‼︎それでこそ貴方です‼︎》
こうして、二人の内緒の会話は終わりを迎えた
実は、この話には続きがある
研究所から出たその日の深夜…
「よいしょ…っと」
レイは、とある基地に内緒で建造装置を造っていた
それは違法に造られた物で、初っ端から”大型建造”が出来る様に仕組まれた物だ
レイはそこの中心に液体で浸したカプセルを置き、腕に抱えていた何かを中に入れた
カプセルの小窓から見えたのは、女の子の赤ちゃんだった
レイはその子を愛おしそうに見つめ、機械を弄り始めた
実は、貴子のお腹にいた赤ちゃんはまだ生きていたのだ
強制的に産まれて来た赤ちゃんは、勿論未熟なまま、この世に生を受けた
レイはその子をなんとか保護し、人目のつかない場所に連れて来たのだ
本当なら、隊長と貴子さんに一目見せてやりたかった…
だが、放っておけば研究員に殺されるか、そのまま衰弱するしかなかったのだ
ならばせめて、人目のつかない場所で保護してやるしかなかった
ここならば安全だし、ゆっくりとだが、成長もする
俺が今隊長に返せる恩と言えば、これ位しかなかった
「心配すんな…この中にいれば、誰かが起こすまでゆっくり眠れる…争いの無い世界でな…」
聞こえるはずの無い声を、カプセルの中の赤ちゃんにあてる
「記録から抹消されようが、俺だけは覚えておいてやる‼︎だから‼︎だから…ゆっくり夢を見な…」
最後に愛おしそうにカプセルの中を見て、レイは機械の中心にカプセルを仕舞った
そして、レイは機械にロックを掛けた
3000/3000/3000/6000/20
この数字を並べれば、赤ちゃんは”艦娘”として、新しい人生を歩む事になる
そして、レイは何度も振り返りながら、名も無き基地を後にした…
誰も居なくなった、基地の中で眠る赤ちゃん
そのカプセルの外のプレートには、
名前が彫られてある
その名前は隊長の家の机の上に置いてあった、平仮名4文字から作られた名前だった…
”大鳳”
これまでのお話の中で、色々伏線が張ってあったのをお気付きでしょうか⁇
パパの建造は勿論…
レイが妖精から戻り、たいほうを抱き上げた時のセリフ…
まだアウトローのプリンツと戦わせる時、何故あれ程の艦載機や艤装を知っていたのか…
何故たいほうだけにアクティブ防御機銃を真っ先に装備させたのか…
鹿島の薬を飲んだたいほうがレイに冷たくした時、彼は何故あれ程落ち込んでいたのか…
たいほうとレイが関わるシーンは、ここでは言えない程沢山あります
レイはずっとこの事を隠しています
パパの口癖である
”空軍は嘘をつかない”
に、反する事は、彼も重々承知の上です
ただ、これを明かしてしまうと、今の武蔵がどうなるか分からないので黙っているだけです
作者的には、今回のお話を見た後
”海鷲から雷鳥へ…”
のお話で、レイがたいほうを抱き上げた時のセリフが一番胸に来ました
自分で書いておきながら、若干ウルッと来ました 笑
と、まぁ、パパのちょっとした過去をサラッと紹介し、短文ながらあまりにも重大な伏線回収の回でした
ちなみに、たいほうとレイの関係を書く際、ベースにした曲は
サイレンスがいっぱい/杉山清貴
レイがたいほうに送る感情のベース曲にしました