「でだ。浦風よ」
グルグル巻きになった浦風が、食堂のテレビの前で座っている
「ここにグラーフが買って来た小麦粉が大量にある。早く焼くのだ‼︎」
武蔵は段ボールを浦風の前に置いた
中には、上質な小麦粉が大量に入っている
「そんなん…すぐには無理じゃて…」
「武蔵、もうその辺に…」
「ローマも。もうやめとけ。広島の人は怒らせると怖えぞ⁇」
「腹が減ってるんだ‼︎」
「まだ満腹じゃないわ‼︎」
「「ゔっ…」」
凄い眼力で語る二人に、逆らう事は出来ない…
「すまない、浦風…」
「俺達は…ここまでみたいだ…」
私達は膝を落とした
幾ら何でも、戦艦には敵わない…
「う、嘘じゃろ⁉︎」
「さ。焼いて貰おうか…ふはははは‼︎」
30分後、再び鉄板の前に”立たされた”浦風
「広島焼き‼︎広島焼き‼︎広島焼き‼︎」
「早く‼︎早く‼︎早く‼︎」
「うぅっ…」
半泣きで広島焼きを焼いて行く
俺達は二人に逆らわない様に、工廠閉じ込められていた
出入り口には、長10cm砲ちゃんを携えた秋月と照月が監視しながら巡回している為、下手に出たらゴム弾で撃たれる
「軟禁された‼︎」
「すまん、レイ。女の食欲を甘く見た…」
地べたにあぐらをかいて座り、珍しく子供の前でタバコに火を点けた
「ぶろっく」
「何作るの⁇」
「たいほうのおうちつくるの」
たいほうの相手をしているきそは、何だか眠たそうだ
「あそこに通気口がある」
「相手は防空駆逐艦だ。上には敵無しだぞ」
現に豆撒きの際に超神秘的新秘技、スクリプト☆ジャンプをしたら滅多打ちにされた
「くっ…チェックメイトか…」
二人で悩んでいると、きそが俺のズボンを握っていた
「どうした⁇眠たいのか⁇」
「うん…」
きそはズボンを握っている逆の手で目を擦っていた
「ハンモック行くか⁇」
「うん…」
工廠の端っこに架けられたハンモックに、きそを寝かせた
「たいほうもねんねする…」
「おいで。僕とネンネしよう⁇」
たいほうもハンモックに入れ、上から鹿島が使っている膝掛けを被せた
大人一人が充分寝れるハンモックなので、子供二人が寝ても大丈夫だ
きそはたいほうを抱っこしたまま、目を閉じた
こうなれば、放っておいてもたいほうは寝る
「最近きそがたいほうの面倒見てくれるから助かるよ」
「きそからしたら、たいほうは初めての友達だからな…」
「でだ。脱出方法だな」
「よし、俺が何とかする‼︎」
作戦その1、缶詰を投げる
「ここに非常用のレーションがある」
「よし。秋月は任せろ」
「作戦開始だ‼︎」
レーションの缶詰を持ち、秋月と照月の後ろから転がした
「秋月ねぇ‼︎缶詰だよ⁉︎」
「取って取って‼︎」
やはり缶詰に釣られた‼︎
「今だ‼︎突破ぁ‼︎」
「うぉぉぉぉお‼︎」
時間にして、約0.3秒
出入り口に足を踏み出した瞬間、四基の長10cm砲ちゃんが此方を向き、一斉にゴム弾を掃射して来た
「いででででで‼︎」
「あだだだだだ‼︎」
しまった‼︎コイツ等の存在を忘れてた‼︎
「「はっ‼︎」」
倒れた俺達を発見した二人は、俺達をズリズリ引き摺りながら工廠に戻した
「隊長、もう少しの辛抱です。お願いですから静かにしてて下さい」
「お兄ちゃん⁇もうチョットそこから出たらダメだよ⁇」
「いててて…大ダメージだぜ…」
「あの二人の守りは最強だな…」
「よし、次だ‼︎」
作戦その2、裏に出れる足元の通気口から出る
「もそもそ作戦開始だ‼︎」
匍匐前進の体勢をしながら、通気口の蓋を外す
「パカッと」
「よし、レイから先に行くんだ」
「どれ、チョックラ外の様子を…」
首を出した瞬間、誰かの足が見えた
「うびゃ‼︎」
「レイさん⁇ここで何してるんです⁇踏みますよ⁇」
目線を上げると、秋月が腕を組んでいた
「は…発見された‼︎撤退‼︎」
急いで工廠に戻る
「ハァ…ハァ…」
「守りが固すぎる…」
「こうなりゃ最終手段だ‼︎」
作戦その3、地下道から入渠ドックに出る
「工廠の下には、入渠ドックに繋がる配管がある。そこは普段鍵が締められてるんだが、この際仕方ない。そこから進入して、入渠ドックに出た後、浦風を救出する。OK⁇」
「よし、やろう」
工廠の隅に行き、机を退けると床に四角い蓋が出て来た
鍵を開け、蓋を外す
「もっともそもそ作戦、スタートだ‼︎」
俺達は配管を辿り、入渠ドックに出て来た
「出た‼︎隊長‼︎当たりだ‼︎入渠ドックだ‼︎」
「よし、行こう‼︎」
入渠ドックを駆け抜け、最後の難関、食堂に来た
椅子には鹿島としおいが座っている
「よし、俺の部屋の窓から出よう」
「安全策だな」
再び匍匐前進しながら、俺の部屋を目指す
「隊長⁇何してるの⁇」
「訓練⁇」
「し〜っ‼︎」
れーべとまっくすだ
「武蔵とローマを止めるの⁇」
「そうだ。浦風はもう肩で息してる」
「僕達が出してあげる。来て‼︎」
匍匐前進したまま二人に着いて行くと、れーべは俺の部屋のドアを
まっくすは見張りをして助けてくれた
「新しいオモチャ作ってやるからな‼︎」
「今度好きなお菓子買ってやる‼︎」
「ありがとう‼︎さ、早く行って‼︎」
「外国の高いお菓子買う」
窓から出て、ようやく外に出れられた‼︎
もっともそもそ作戦成功だ‼︎
「武蔵‼︎」
「ローマ‼︎」
「ん⁇」
「何⁇」
「あんやん…‼︎」
「もうその辺にしておくんだ‼︎」
「浦風を解放するんだ‼︎」
「そうか…幾ら提督とはいえ、私達は浦風を手放す訳には行かぬ‼︎」
「行くわよ、武蔵‼︎」
「あぁ‼︎」
二人は手を鳴らしながら此方に近づいて来た
「「申し訳ございませんでした‼︎」」
俺達は瞬殺で土下座した‼︎
「ど、どうぞごゆるりと‼︎」
「提督よ。食い物の恨みは恐ろしいのだぞ⁇」
「ご、ごもっともです‼︎」
「レイ。貴方も食べたでしょ⁇」
「は、はい‼︎」
「「そこで黙って見てなさい‼︎」」
「「はい‼︎仰る通りに‼︎」」
俺達は正座して、美味そうに広島焼きを食べる二人を眺めていた
「隊長…」
「ん⁇」
「男って…弱いよな」
「あぁ…非力なもんだ…特に嫁には頭が上がらない」
その後、辺りが暗くなるまで二人は食べ続けた
「も…もう…無理じゃて…ホンマに…」
「そうだなぁ。そろそろ解放してやろうか⁇」
「後生じゃ‼︎解放してぇな‼︎」
浦風は手をスリスリしながら二人に懇願している
「まぁいいわ。お腹もそろそろいっぱいだし、いいわよ。解放してあげる」
「や、やったぁ‼︎」
腹の膨れた二人に反し、浦風はガリガリになっていた
夕方前に来たとはいえ、季節は夏
そんな中、浦風は飲まず食わずで鉄板に向かっていたのだ
「片付けはしておく。せめてもの礼だ。浦風よ、良く頑張った‼︎」
「美味しかったわ」
「ありがとう…チョット救われた」
「まっ、入渠でもしなさい。汗ダクじゃない」
「そ、そうさせて貰おかな…」
「提督よ。浦風を頼んだぞ⁇」
「はい‼︎」
「あんやん…ごめんなぁ…」
「気にするな。ありがとうな」
「一生分焼いたわぁ…」
浦風は俺達に抱えられ、入渠ドックに放り込まれた
こんな時に言うのも何だが、浦風はスタイルが良い
出る所は全部出ていて、汗の匂いと女の子の匂いが混じって、独特の匂いがした
〜浦風〜
入渠時間15:00:00
次の日、浦風は一目散に基地を後にした
満腹になった二人が起きない内に、何とか逃す事が出来た
「ありがとうなぁ〜‼︎今度は横須賀で会おうに‼︎」
「楽しみにしてるぞ‼︎」
「さ‼︎早く行け‼︎」
浦風は水平線の向こうに消えて行った…
数日後…
「提督よ‼︎浦風が店を出したぞ‼︎」
武蔵が嬉しそうにチラシを持って来た
”横須賀繁華街エリアに浦風の広島焼きのお店”おんどりゃあ”が開店‼︎”
”たい焼きもあるよ‼︎”
”美少女の店員がいつでも在中‼︎”
「提督よ‼︎たい焼きとは何だ⁉︎」
「き…休暇あげるから、ローマと行ったら分かるさ…」
「よし‼︎ろーまよ‼︎横須賀に行くぞ‼︎」
「分かったわ‼︎」
意気揚々と二人は基地を出た
次の日、おんどりゃあは一日閉店になった