艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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105話 ブチギレたいほうとパクパク照月(2)

きそが行きたいと言っていたのは、ずいずいずっころばしの事

 

伊勢から数件離れた場所に、回転寿司の店があった

 

「中はそこそこ混んでるね」

 

「おすし〜♪♪」

 

既に照月はヨダレを垂らしている

 

早めに入った方が身の為だな

 

「いらっしゃ…マーカスさん⁉︎」

 

「僕もいるよ‼︎」

 

「あ、空いてる席にどうぞ‼︎」

 

店内では”マーカスだと⁉︎”と少しザワつき、瑞鶴が俺の名前を叫んだ時には、あがりを吹いてる奴もいた

 

俺は瑞鶴の真ん前のカウンター席に座り、左右にきそと照月を座らせた

 

店内にはテーブル席が少なく、瑞鶴が中心に立ち、その周りをお寿司が回っているシステムだ

 

勿論、瑞鶴に言えば握りたてを出してくれる

 

「この前はごめんなさいね…」

 

「わぁ〜‼︎お寿司がいっぱい〜‼︎」

 

瑞鶴を気にもせず、照月は流れて来るお寿司に目が行っている

 

「約束通り、一番いいのを出すわ‼︎マグロは好き⁉︎」

 

「マグロ好きだよ‼︎」

 

「マグロはお魚さんですよね…じゃあ好きです‼︎」

 

「俺も頼む…ちょい待て‼︎」

 

瑞鶴が握ろうとしていたのは、何処からどう見ても大トロの握りだった

 

「まずは普通のノーマルマグロを頼む」

 

「はっ‼︎そうね‼︎じゃあ赤身‼︎」

 

「お兄ちゃん、取ってもいい⁉︎照月待てないよ⁉︎」

 

「好きなだけ食え」

 

「やった‼︎まずはエビさん‼︎」

 

照月をレールの後側に座らせれば良かったと気付いたのは、それから数分後の事だ

 

「あ…あ、あ…」

 

瑞鶴の手が止まる

 

「いかさんでしょ〜⁇はまちさんでしょ〜⁇あっ、これはイクラだったかなぁ〜⁇」

 

「来ぬっ‼︎」

 

「寿司食わせるずい‼︎」

 

完璧に照月の所で流れが沈黙してしまった

 

俺は完全に諦めムードで腕を組み、きそは机を叩いてずいずい言っている

 

照月以降の席に座って”しまった”俺達含めた客は、照月の食べっぷりに開いた口が塞がらない

 

そんな中、照月は隣の客の皿に目をやる

 

「おねぇさん、どうしてご飯残すの⁇」

 

照月の隣にいた女性は、お寿司のシャリを全部残し、ネタだけ剥がして食べていた

 

「シャリ食べたら太るのっ」

 

「照月はちゃんと食べた方が良いと思うなぁ…」

 

「うっさいわね‼︎私は客よ⁉︎食おうが残そうが勝手でしょ⁉︎」

 

「おねぇさんガリガリだよ⁇もっと食べなきゃ‼︎」

 

「シャリが嫌でしたら、お刺身で出しますが、如何されますか⁇」

 

「…じゃあ、お刺身で」

 

瑞鶴は簡単に”シャリ残したガール”をいなし、簡単な舟盛りを彼女の前に出した

 

「おねぇさん、そのシャリもういらないの⁇」

 

「いらないわよ‼︎アンタバクバク食べてるなら、これも食べなさいよ‼︎」

 

「え⁉︎良いの⁉︎いただきま〜す‼︎」

 

照月は客の残したシャリを食べ始めた

 

「…レイっ、止めなくて良いの⁇」

 

「あいつが幸せならいいんじゃないか⁇止めるのは暴動が起きてからでいい。それよりっ…今の内に食え‼︎」

 

照月がシャリを食べている間、ようやくお寿司が来始めた

 

きそはたまごや鯛を取り、とにかく刺身系を攻めていた

 

「…」

 

レイがイクラを食べる度に、きその皿に何か置かれていく

 

「んまいんまい‼︎」

 

「…レイ」

 

「ん⁇」

 

「前から気になってたんだけどさ…レイってキュウリ嫌い⁇」

 

「嫌い」

 

俺はキュウリが嫌いだ

 

一度キュウリを食べた時に気管が詰まった事があり、それから見向きもしない

 

料理で出た時は、きそかたいほうか鹿島の皿に乗せ変える

 

「…僕も嫌いなんだけど」

 

「きそちゃん、キュウリいらないの⁇」

 

照月の手元は既にスッカラカンになっていた

 

「うん…あんまり好きじゃないんだ…」

 

「あ〜…」

 

照月は口を開け、キュウリを放り込む様に促す

 

「はいっ」

 

きそは照月の口にキュウリを放り込み事無きを得た

 

「ま、マーカスさん…」

 

「どうした⁇…お寿司が回って無い‼︎」

 

「…シャリが切れました‼︎」

 

「なんと…」

 

膝から崩れ落ちた

 

何食った…

 

まずはマグロだったな

 

で、イクラ食べて

 

数の子食って

 

白子軍艦食って

 

ラストにイクラ…

 

まだ…まだ5皿しか食ってねぇ‼︎

 

「こ…これが最後よ‼︎」

 

「ぐっ…お…」

 

ようやく置かれた大トロ握りを、震える手で口に運ぶ

 

「うは〜‼︎何コレ‼︎レイ、スッゴイ美味しいよ‼︎」

 

「ホントだぁ〜‼︎油が乗ってて、食感も凄くいい‼︎」

 

「美味い‼︎」

 

「今朝採れたてのマグロを捌いたの‼︎言ったでしょ⁉︎味は保証するって‼︎」

 

瑞鶴は親指を立てた

 

「…アンタ、ホントよく食べるわね」

 

「お寿司は美味しいよ⁇シャリ食べないのは勿体無いと思うなぁ〜…」

 

「…分かった。次来た時は、ちゃんとシャリも食べるわ。何か、アンタ見てたら元気出て来た‼︎」

 

「うんっ‼︎いっぱい食べる人は強いんだよ⁉︎」

 

「じゃあね⁇」

 

「バイバーイ‼︎」

 

シャリ残したガールは、代金を支払い、店から出た

 

結局、照月が食べた皿を計算するのに半時間程掛かった

 

 

 

〜照月が食べた皿の数〜

 

176枚

 

100円皿…93枚

 

200円皿…52枚

 

300円皿…31枚

 

照月のみの代金で29000円

 

瑞鶴は三人合わせて3万にまけてくれた…

 

どうやら、俺の財布はギリギリ助かった

 

「また来るよ」

 

「次は倍以上、シャリを用意して待ってます‼︎」

 

「ばいばいずい‼︎」

 

「ごちそうさまでした‼︎」

 

照月の食べっぷりを改めて驚愕した一日は、こうして幕を閉じた…

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