「美味しかったわね」
「中々だったな」
チェーン店ではあるが、丼物の店に入り、親子丼を食べた
「おまけのカードも可愛いわ…グヘヘ」
俺の隣で横須賀は、貰ったカードを見て顔をとろけさせていた
「まだ余裕あるな…」
時計を見ると、まだ昼の12時を過ぎた所
バイクで片道30分の街だから、まだ余裕はある
「ね、レイ。あれ何⁇」
横須賀が指をさしたのは、巨大なボウリングのピンの看板
「ボウリングだ。知らないか⁇」
「知らないわ…何する所⁇」
「行きゃ分かるさ」
ボウリングならいい感じに時間を潰せると思い、ボウリング場に入った
「二人だ」
バイトだろうか
霞位のちんちくりんな身長の子が受付をしている
しかも愛想が無い
「何ゲームしますか⁇」
「3ゲーム。それと靴を」
「畏まりました。靴のサイズは⁇」
「27.5と…お前は⁇」
「25」
「では此方を。三番レーンをお使い下さい」
ドカドカっと靴がカウンターに置かれた
「…怒ってるのか⁇」
「怒ってなんかないです」
「そ、そうか…」
愛想の無い受付嬢とは裏腹に、ボウリング場は混んでいた
「さっきの看板みたいのがいっぱいあるわ‼︎」
「あれを倒すのさ。まずは球選びからだ」
丁度良さそうな球を選んでいると、横須賀は一番重い球を両手で持って来た
「これで…行くわ…」
「お前はバカか⁉︎腕力に合う奴を選ぶんだ。そうだな…これと…か…」
「よい…しょ…よっこら‼︎」
えっちらおっちら歩きながら、横須賀はレーンに向かって行き、球をドーン‼︎と”落とした”
球は真っ直ぐ転がって行き、なんとそのままピンを全部倒してしまった
「やったわ‼︎」
「ストライクの景品。置いとく」
受付嬢が棒付きの飴を机の上に置いた
「どんどんストライク出して。飴玉も増えるよ」
「お…おぉ…」
受付嬢はおそらく、感情を露わにするのがヘタクソなのだろう
「なるほど…本来はスピードを出してぶつけてこかす遊びなのね⁇」
「そっ。見てろよ…」
俺は軽快なフォームを決め、ストライクを出す
「見たか‼︎」
俺がドヤ顔を決めている真ん前で受付嬢が飴玉を置いて行く
「私と勝負なさい。そうね…勝者は最終的に集まった飴玉でどう⁉︎」
「乗った‼︎」
2ゲーム先に取った方が勝ちとなるシンプルなルール
賭けもそんなに重くない
俺は勝ちを確信していた
あんな投げ…もとい落とし方で勝てる訳が無い‼︎
だが…
「ぬんっ‼︎」
横須賀の落とす球は不思議な力でもかけてあるかの様に真っ直ぐ転がり続け、ストライクを出しまくっていた
謎の女が謎の倒し方でストライクを出し続けている三番レーンは、あっと言う間にギャラリーでごった返した
「う〜…りゃっ‼︎」
これで3ゲーム全部ストライク
俺の負けはとおに確定している
横須賀はストライクを出す度に拍手が起こり、照れ臭そうにしている
そして俺がストライクを出すと、男性客からブーイングが起きていた
「なんっ…」
「お〜っほっほっほ‼︎ねぇねぇ、今どんな気持ち〜⁇初心者の適当投げに負けて〜どぉんな気持ち〜⁇ん〜っ⁇」
満面の笑みで嫌味を言う横須賀の顔がドアップで映った
「ぐっ…参り…ました…」
俺は膝から落ちた
隊長やらラバウルの連中にも負けた事が無かったこの俺が、こんな初心者の適当投げに負けるだと⁇
ならん
そんな事あってはならん
「ぼ、ボウリングは負けを認めよう‼︎だがな‼︎あれでは負けん‼︎」
指差すはビリヤード
「あれは基地にあるわ⁇」
「うぐっ…」
「まぁいいわ。今度は違うので勝負しましょう⁇」
「そっか、時間か‼︎」
「ふふっ。帰るわよ」
俺をコテンパンにしたのでご機嫌な横須賀は、スキップしながら受付を目指した
「十回ストライク出したから、そこの棚から好きなの持って行っていいよ」
棚にはぬいぐるみやボウリンググッズがある
「これにするわ‼︎弥生ちゃんぬいぐるみ‼︎」
横須賀が選んだのはやはりぬいぐるみ
「それは私をモデルにしたぬいぐるみ」
「気に入ったわ。これを見る度、アンタをコテンパンにしたの思い出そ〜っと‼︎うふふ〜‼︎」
受付の前で、横須賀はぬいぐるみを抱いてクルクル回る
「いい彼女」
「あれでも可愛い気はあるんだ…はぁ…」
愛想が無いと思っていたが、お世辞は言える様だ
横須賀がご満悦なまま、俺達はボウリング場を後にした
バイクのケースに飴玉とぬいぐるみを詰め、バイクに跨った
「ね、レイ」
「ん⁇」
サイドミラー越しに映る横須賀の顔を見る
「楽しかったわ‼︎ありがとう‼︎」
「次は違う所行こうな」
「うんっ‼︎」
ったく…
普段からこう素直だと、ホント可愛いのにな…
文句を飲み込んだ後、俺達は横須賀へと帰った
「着いたぞ」
「ふうっ…ありがとっ」
ヘルメットを外し、二人で学校の前へと向かう
「照月が給食バカ食いしてなきゃいいが…」
「心配⁇」
「まぁなっ…こうして子供達を待ってると、隊長の気持ちが少し分かる気がする」
「アンタも大人びた事言うのね」
「…そのワガママで暴君な口を塞ぐにはどうしたらいい⁇」
「キスでもしたらどうかしら⁇」
「ったく…」
少し日が落ちかかった横須賀基地のほぼほぼど真ん中で、俺達は口付けを交わした
それも長い奴だ
「ちょっと…」
誰かの声が聞こえ、互いに離れる
「うわっ‼︎霞⁉︎」
「何してんのよ…ホンットバカね‼︎学校の真ん前よ⁉︎」
「すてぃんぐれいちゅーしてる‼︎」
「あっ‼︎飴ちゃん‼︎」
三人に思いっきりバレたが、照月だけは横須賀の手元にある飴玉に夢中だ
「あ、あげるわ‼︎」
焦った横須賀は、照月に飴玉を全部渡した
「じゃあ、ね⁇」
「おう。またな」
最後の最後で、横須賀は飛び切り女の顔を見せた
「すてぃんぐれいのおよめさん」
「そうだぞたいほう。俺の大切な人だ」
いつの間にか俺の頭に登っていたたいほうは、俺の目の前に紙をチラつかせた
「きょうはあんまりまちがえてないよ‼︎」
「どれっ…」
今日はどうやら分野は沢山ある問題だ
・たぬきが1匹、きつねが2匹、犬が3匹
あわせて何匹いるでしょう⁇
・リンゴが5つあります。1つ食べたらいくつになるでしょう⁇
・ねこ、たぬき、いぬ、くわがた
仲間はずれはどれでしょう⁇
たいほうの答え
・6ぴき
・4つ
・みんなともだち
最後の問題に至っては、花まるを頂戴している
なんともたいほうらしい答えだ
「わたしのも見なさい」
霞は美術問題
・海をかきましょう
・好きな食べ物をかきましょう
たいほうと一緒に書いたのだろうか⁇
所々にたいほうが書いたらしき魚が描かれている
二枚目の絵には、プリンが描かれていた
「おっ…」
真ん中にプリンがあり、両サイドに霞と俺がいる
「あ…アンタと食べるのが一番好きなの…」
「嬉しい事言ってくれるじゃないか」
年相応の可愛らしい絵だが、今の俺にとってはどんな有名絵画より価値のある絵に変わっていた
隊長…
隊長は、ずっとこんな気持ちだったのか⁇
今、また少し分かったよ…
「照月はこれ‼︎」
照月は身体測定の様だ
身長…134.2cm
体重…168kg
握力…右・81kg
左・90kg
その他ズラーッと並び、一つ気になる事項があった
50m走…5.8秒
「足速いな…」
「照月、かけっこ好きなんだぁ〜‼︎」
体重がこれだけあるのに、足はこんなに速い
握力もこのボディでは破格の数値だ
「さぁ、帰ろう」
高速艇に乗り、俺達は帰路に着いた
「ふっ…」
工廠の片隅の椅子に腰掛け、ふと笑みが漏れる
俺は、今まで子供達が描いた絵を眺めていた
たいほう、照月、れーべ、まっくす、しおい、きそ…
そして今日の霞の絵…
俺は一枚一枚の絵を見ながら紫煙を吐いていく
「へぇ〜っ。この頃から持ってるんだなぁ…」
聞き覚えのある声がした
「ギザギザ丸か‼︎」
「そうだ‼︎作者が出さないと言ってたけど、とある人が気に入ってくれたのと、未来の技術でまた来た‼︎」
「おまっ…霞みたいな言動を…」
「まっ、未来はちゃ〜んと訂正されたから心配すんな」
意味は全く分からないが、心配すんなと言われた以上は心配しないでおこう
「でだ。意味分からないとは思うけど、お父さんである事は変わりないし⁇逆に助かったし⁇何かご褒美をあげようと思って、今回来たんだ‼︎」
「何が出来るんだ⁇」
「設計図はこの前渡したしな〜…う〜ん…」
「未来の事、教えてくれないか⁇」
「それはダメだ。未来が狂う」
ギザギザ丸は頑なに未来の事を話そうとしない
「あっ‼︎そ〜だ‼︎過去に連れてってやんよ‼︎」
「過去〜⁉︎」
「そう。あっ、でも第二次世界大戦はダメだぞ⁇お父さんは歴史を覆しちまう可能性がある」
一撃で行きたい時代が潰された
「じゃあ…」
俺はとある場所と時代を言った
「オーケー。それなら大丈夫だ。さっ、壁に手ェ付きな‼︎」
言われるがまま壁に手を付くと、ギザギザ丸は背中に挿していた長い棒を構えた
「ちょっ、ちょっと待て‼︎過去に行くにはケツバットなのか⁉︎」
「ゴチャゴチャ言うな‼︎行くぜ〜…おりゃ‼︎」
ケツバットされる瞬間、俺は目を閉じた…