艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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115話 救われた命のミライ(3)

「…隊長⁇」

 

「ソックリだな…」

 

車から降りて来た男性は、隊長にソックリだった

 

「娘を助けて頂き、ありがとうございます。私はこういう者です」

 

名刺を渡され、俺は理解した

 

 

 

”伊太利亜大使館

 

アラン・ヴィットリオ”

 

 

 

 

「リヒターです」

 

「アタイはギザギザ丸だ‼︎」

 

「お父様‼︎お屋敷にお誘いしても宜しくて⁇」

 

「そうだな。お二方共、どうぞお車へ」

 

アランさんに言われるがまま、俺達は車に乗った

 

 

 

 

「さぁ、着きましたわ‼︎」

 

「おぉ〜‼︎」

 

「スゲェな…」

 

案内された屋敷は立派な造りをしていた

 

この時代に車を所有、この家…

 

そしてあの職業…

 

どうやら相当な金持ちだ

 

「アタイは神風と遊んでっから、アランさんとゆっくりな‼︎」

 

「行きましょ‼︎」

 

ギザギザ丸と神風が別の部屋に行き、俺はアランさんと二人きりになった

 

「まま、飲んで下さい」

 

「ありがとう」

 

グラスにウィスキーが注がれ、二人は乾杯して、それを口にする

 

「この度は娘を救って頂き、本当にありがとうございます」

 

「いえいえ。お…私も必死だったモノで」

 

「ふふ…無理して敬語は使って頂かなくて結構ですよ」

 

「あ…分かった」

 

やはり、何処と無く隊長に似ている

 

「リヒターさん。貴方がたは珍しい服装をしていますね…外国のファッションですか⁇」

 

「あっ‼︎いや‼︎ま、まぁ、そんなモンだ‼︎あ、あはは‼︎」

 

「そうですか…⁇」

 

まさか未来から来たとは言えまい

 

「神風は貴方の…」

 

「あの子…神風は私の実の子ではないんですよ」

 

「何か事情がお有りで⁇」

 

「神風はアメリカの孤児施設で出逢った子でしてね。出生は不明ですが、日系のアメリカ人である事は確かです」

 

「それで赤髪だったのか…」

 

「テキサスの子ですよ。気が弱い所はありますが、ガッツはあります」

 

「確かに」

 

「お父さん」

 

ギザギザ丸が来た

 

「神風寝ちゃったぜ⁇」

 

「そっか…俺達も帰ろうか」

 

「あっ‼︎少々お待ちを‼︎」

 

アランさんは金庫を開け、桐の箱を持って来た

 

「これは私がアメリカに行った時、最新式の拳銃の試作品を頂戴した物です」

 

「いいモノだ…」

 

当時としては大変珍しい、オートマチック式の拳銃だ

 

グリップが木で出来ており、デザインにも凝っている

 

「どうぞお受け取り下さい」

 

「でもコレは…」

 

「娘の命には変えられません。それに、貴方は軍人とお見受けします」

 

人を見る目は、代々継がれるのな…

 

「分かった。有難く頂戴する」

 

桐の箱を受け取り、最後に子供部屋で神風の顔を見に行った

 

畳の床で、神風はスヤスヤ寝ていた

 

「…」

 

神風に革ジャンを被せ、たいほう達にしている様に髪を掻き上げ、寝顔を見た

 

「…未来で待ってるぞ」

 

神風の頭を撫で、俺達は部屋を出た

 

「…んじゃ行くぜ‼︎」

 

「あだっ‼︎」

 

部屋を出た瞬間、ギザギザ丸にケツを叩かれた

 

 

 

 

 

 

目を開けると、工廠の中に戻っていた

 

手元には、ちゃんとセルロイドの人形と桐の箱がある

 

「ったく…お父さんは凄いな」

 

ギザギザ丸もちゃんと帰って来ていた

 

「なんだ⁇未来が変わったか⁇」

 

「いんや。お父さんが助けたら未来はそのまま動き出した」

 

「ダメな方向にか⁇」

 

「自分の目で確かめるこったな。まっ、アタイが存在するって事は、大きくは変化してないから、心配すんな。じゃあな‼︎」

 

そう言い残すと、ギザギザ丸は帰った

 

「さてっ…」

 

 

 

 

 

 

表に出ると朝になっていた

 

「マーカス君‼︎ご飯よ‼︎」

 

貴子さんの作る朝食の匂いがする

 

「いただきます‼︎」

 

ササッと朝食を済ませ、グラーフに近付いた

 

「レイ。どうしたの。おっぱいなら横須賀さんの方がおっきいよ⁇」

 

「バカ。ほらよ」

 

グラーフにセルロイド人形を渡した

 

セルロイド人形を欲しがっていたのはグラーフだ

 

前々から着せ替え人形の服を作りたいと言っており、グラーフからしたらセルロイド人形の大きさがベストらしい

 

だから欲しかったんだ

 

「くれるの⁇グラーフに⁇」

 

「子供達の服作ってくれてる礼だ」

 

「ありがと…嬉しい」

 

相変わらず感情の起伏は小さいが、喜んではくれてるみたいだ

 

「隊長、俺ちょっと横須賀に用があるから行ってくるわ」

 

「気を付けてな」

 

一度工廠に戻り、机の上にあった新しい設計図を手に取った

 

そして、桐の箱の中にあったピストルを腰に挿し、フィリップに乗った

 

《レイ、そのピストルどうしたの⁇》

 

フィリップがすぐに気付いた

 

「貰いモンだ。綺麗だろ⁇」

 

《随分古いね》

 

「アンティークも良いモンさ」

 

 

 

 

 

横須賀に着き、執務室の扉を蹴破った

 

「頼まれてた設計図だ」

 

「ありがとっ。助かるわぁ〜」

 

横須賀はいつもと違い、上から何か羽織っている

 

「お前何で革ジャン着てんだ⁇珍しいな⁇」

 

「最近寒いでしょ⁇ちょっと羽織ったのよ」

 

「何処で買ったんだ⁇」

 

「これ⁉︎これは曾祖母の時代からずっとある物よ。凄く質が良いから何世代も着てるのよ」

 

「へぇ〜…」

 

しかし、何処かで見た革ジャンだ…

 

「その曾祖母ってよ、赤い髪の毛か⁇」

 

「そうね。テキサスの孤児だったらしいわ」

 

「…神風って名前か⁇」

 

「そうよ〜。何でアンタが知ってんのよ」

 

「さぁな〜。裏の刺繍見たら分かんじゃないのか」

 

分からぬ素振りを見せながら、俺は部屋を出た

 

 

 

 

俺が出た後、横須賀は革ジャンの刺繍を見てみた

 

金色の糸で縫われた文字は明らかに彼の名前だった

 

「もう…世代を超えても、好きな人は一緒なのね…」

 

横須賀は革ジャンを愛おしそうに頬擦りし、ハンガー掛け、しばらく見詰めていた…

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