艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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さて、117話が終わりました

今回のお話は、本来は11月11日に貼ろうと思っていたのですが、私自身が軽く入院してたので遅れてしまいました

申し訳ありません

叢雲が主役のお話です

余韻も含めてお楽しみ頂けたら幸いです


118話 魔性のお菓子

11月11日

 

この日、私はフィリップと二人で震電部隊の訓練に当たっていた

 

「私に楯突こうなんて…100年早いと思いなさい」

 

《うへぁ〜…疲れたぁ〜…でも流石はレイが造った機体だね‼︎スッゴイ強いや‼︎》

 

震電は強い

 

ヘラときそにはスピードで敵わないが、機敏に動く震電は二機を中途半端に惑わせていた

 

まさに眠れる獅子を叩き起こした…と言う言葉が似合う

 

訓練すれば、もっともっと強くなるだろう

 

「でもまぁ、無人機に教えられる時代が来るとは世も末ね」

 

《お嬢はレイさんと同じ位教えるのが上手いと思います‼︎》

 

《俺もそう思う‼︎》

 

《俺だって思ってるぞ‼︎》

 

震電部隊の連中から無線が入り、まだ若い男達が煩い位に私を持てはやす

 

「ヒヨッコに褒められても嬉しくないわ。私を護れる様になってから能書きたれなさい」

 

私がそう言うと、震電部隊から《イエス、マム》と口々に聞こえて来た

 

《ヘラは怖いなぁ〜》

 

「この位言った方が伸びるわ。犬や子分が優しすぎるのよ」

 

《ヘラが厳しくする分、僕達が優しくしないとね》

 

「飴と鞭ね。まっ、いいわ。私に着いて来れないレベルじゃ、実戦に出たら右往左往するだけよ」

 

《優しいねぇ〜ヘラは》

 

「何とでも言いなさい。私はこの指導法を変えるつもりは無いわ。さ、降りるわよ。ヒヨッコ共‼︎先に降りてご飯にしなさい‼︎」

 

震電部隊が先に降り、それに続いて私も降りた

 

《こういう所優しいんだよねぇ〜》

 

 

 

 

横須賀に降り、私達は格納庫に入った

 

「ふぅ…」

 

「よいしょ、っと」

 

私は叢雲に、フィリップはきそになり、用意されたシェイクを手に取った

 

「おかえりなさい。どうだった⁇」

 

外で様子を見ていた横須賀が来た

 

「まっ、雌犬よりは腕はあるわね」

 

「私、こう見えてもサンダーバード隊の一員なんですけど⁇」

 

「雌犬は飛ばない方がマシよ。じき犬の子供が出来るんでしょう⁇」

 

「え…えぇ…」

 

「なら大事になさい。雌犬がいなくなったら、犬が悲しむわ」

 

私はシェイクを飲みながら格納庫を出た

 

「レイの子供…」

 

「横須賀さん」

 

ボーッとする横須賀の服の裾を、きそはクイクイ引っ張った

 

「なぁに⁇」

 

「横須賀さんとレイの子供が出来たら、僕は捨てられる⁇」

 

きその疑問だった

 

今はレイの傍にいるが、レイと横須賀に子供が出来たら自分はどうなるの…かと

 

だが、横須賀の答えはアッサリと出た

 

「きそちゃんはお姉ちゃんになるわね⁇」

 

「お姉ちゃん⁉︎」

 

「そうよ〜⁇きそちゃんは面倒見が良いでしょ⁇私とレイも、きそちゃんが居たら助かるわ⁇きそちゃんが良ければ、ね⁇」

 

「う…うん‼︎ありがとう‼︎」

 

きそはホッとした

 

よく考えれば、レイは絶対に僕達を見捨てない

 

でもお姉ちゃんかぁ…

 

楽しみだなぁ

 

 

 

 

私は繁華街にある、あのケーキバイキングの店に行こうとしていた

 

「痛っ‼︎…もぉ、なぁに⁇」

 

風に乗って来たチラシが顔に張り付いた

 

「…ふ〜ん」

 

チラシはお菓子のフェアのお知らせだ

 

今日は長い棒状のビスケットに、チョコレートが塗ってあるお菓子の記念日らしい

 

「ちょっとアンタ。これはなぁに⁇」

 

たまたま通り過ぎようとした男性を引き止め、チラシを見せた

 

「君は…え〜と…」

 

「叢雲ちゃんだにゃ‼︎」

 

多摩と椎名は手にチラシに描かれていたお菓子を持っている

 

「猫。それはなんてお菓子⁇」

 

「これは”ポッキィ”にゃ。あっちでセールしてるにゃ‼︎」

 

「…美味しいの⁇」

 

「美味しいにゃ‼︎こうして食べるんだにゃ‼︎あかりちゃん、ほら、咥えるにゃ…」

 

目の前で多摩と椎名は一つのポッキィの端と端を咥え、互いに食べ始めた

 

「もっ‼︎もう無理‼︎」

 

椎名が途中でポッキィを離してしまった

 

「んふふ〜♪♪多摩の勝ちにゃ‼︎」

 

「頭おかしいのねぇ…そのポッキィは一人で食べるものでしょう⁇」

 

「美味しい物は好きな人と食べるともっと美味しくなるにゃ。叢雲ちゃんも誰かと食べると良いにゃ‼︎」

 

そう言って多摩は箱からもう一袋出して、私にくれようとした

 

「いいわ。自分のお金で買った方が向こうも喜ぶでしょう⁇」

 

「それもそうだにゃ。叢雲ちゃんも頑張ってにゃ〜‼︎」

 

多摩と椎名はラブラブカップルの様に去って行った

 

「今はあぁして公衆の面前でイチャコラするのが主流なのかしら⁇」

 

 

 

お菓子屋の前に来ると、カップルでごった返しになっていた

 

「なぁに⁇カップルしか食べられない物なの⁇」

 

「そんな事は無いわ‼︎一人でも美味しいわ‼︎」

 

少し行き遅れた感がする女性がお菓子を売っており、その中に目当ての物はあった

 

「頂戴するわ。幾ら⁇」

 

「一つ100円よ」

 

「はい」

 

100円を渡し、赤い箱を受け取る

 

去り際に子供達が店員に”BBA”と野次を入れていた

 

店員は泣きそうな顔になっていた

 

 

 

 

ケーキバイキングの店に入ると、きそと横須賀が待っていた

 

「おかえり。ポッキィ買ったの⁇」

 

「何かセールしてたわ」

 

「叢雲もポッキィゲームするの⁇」

 

「あんなバカ見たいな事しないわ。たまには一人で食べるのよ」

 

私はポッキィの箱を机の端に置き、ケーキを食べ始めた

 

「今日は照月ちゃんがいないから、潰れる心配はないわね」

 

「あの子は食べるのが好きなだけよ」

 

「僕で言ったら、物作りしたりするのと同じかな⁇」

 

「そう言えば叢雲ちゃんは好きな事ある⁇」

 

「あるわ。時々コンビニに行って、新しいお菓子とか食べたり、100円のコーヒー飲んだりするのが好きよ」

 

「体持てて良かった⁉︎」

 

きその言葉を聞き、飲んでいたコーヒーのカップを置いた

 

「そうね…チョットだけ、人を好きになれたわ」

 

 

 

私は人が嫌いだった

 

研究者は私の体を散々弄り回した挙句、二対いたもう片方を採用し、私は御役御免となった

 

ヤリ捨てられたのと一緒だった

 

それから犬と出逢って、私は空を飛ぶ喜びをようやく知った

 

犬に一度だけ言った

 

「汚れた体の私と飛んで楽しい⁇」と

 

犬は笑って答えた

 

「俺はお前を汚れた体と思った事は無い。だって、こんなに美しいボディなんだからな‼︎」

 

その時も私は、犬に対してキツい言葉を当てたと思う

 

でも、内心嬉しかった

 

犬だけは私を見てくれる

 

それだけで充分だった

 

 

 

「あらっ⁇私の旦那が好き⁇」

 

横須賀がイヤらしくニヤける

 

「好きじゃないわ。ただ…」

 

「ただ⁇」

 

好きかどうかと聞かれたら、体が熱くなった

 

あぁ、そうか

 

私、犬が好きなのか

 

「ただのパイロットよ。それ以上でも以下でもないわ」

 

「レイは自動的に女の子落とすよね」

 

「昔っからそうよ。傭兵を募るポスターのモデルになって、どれだけ女性パイロットが増えたか‼︎」

 

「犬は口だけじゃないわ。行動で示してくれるわ」

 

「ふふん♪♪」

 

「ふふふ♪♪」

 

きそと横須賀がニヤつく

 

「やっぱりレイが好きなんだ」

 

「う…」

 

「人を好きになるのは良い事よ⁇もっとさらけ出して良いと思うわ⁇」

 

「う…うん…」

 

恥ずかしくなって、今すぐにでもここから出たかった

 

 

 

 

「ばいばーい‼︎」

 

「じゃあね」

 

横須賀や震電部隊に別れを告げ、私達は基地に戻った

 

基地に着くと、格納庫の前で犬がソワソワしていた

 

格納庫に戻って来た二人を見て、犬は肩を降ろした

 

「待ては出来たかしら⁇」

 

「レイ〜‼︎」

 

カプセルから出て来た私を見るなり、犬は私達の頭を撫でた

 

「おかえり。心配したぞ⁉︎」

 

「待ては出来たかと聞いてるの」

 

「出来てる‼︎」

 

「あのね‼︎叢雲はレイが‼︎」

 

何か言いかけたきその口元に手を置いた

 

「言ったら承知しないわ」

 

「分かった分かった‼︎僕、お風呂入って来る‼︎」

 

きそが去り、工廠には私と犬の二人だけになった

 

「い…犬‼︎」

 

「どうした⁇」

 

「き…今日、横須賀でコレを買ったわ⁇」

 

私の手には、ポッキィの箱が握られている

 

「くれるのか⁇」

 

「そこに座んなさい」

 

犬を椅子に無理矢理座らせ、膝の上に乗って四つん這いになった

 

「叢雲⁇」

 

私はポッキィを一本咥え、犬の方に向けた

 

「ん」

 

「な…なんだよ…」

 

「はんらいがあからたえなさいよ‼︎」

 

「反対側から食えだぁ⁇」

 

「ほうよ。はあくしあさい」

 

「ん…」

 

犬は渋々、ポッキィを反対側から食べ始めた

 

サクサクと音がする度、犬の体温が近付いて来るのが分かった

 

「すろっふ‼︎」(ストップ‼︎)

 

「あによ⁇」(何よ⁇)

 

「ころあありゃうちゅーだ‼︎」(このままじゃブチューだ‼︎)

 

赤面する犬の顔を見て、私は犬の顔を抑えて一気にポッキィを食べた

 

「んぐっ…」

 

犬と舌を絡めた時、ほんのりとチョコレートの味がした

 

恐らく、私は未来永劫忘れないだろう

 

ネットの世界や情報では、ファーストキスはレモンの味と聞いたけど、それは間違いね

 

ファーストキスはチョコレートの味だったわ…

 

やっぱり、犬といたら知らない事をどんどん知れる…

 

唇を離し、もう一度軽くキスをした

 

「不満だったかしら⁇」

 

「レディからの誘いは断らないさ」

 

犬の膝から降り、ポッキィの箱を投げた

 

「今の私の唇と同じ味よ。味わって食べなさい」

 

「…サンキュ‼︎」

 

工廠から出た瞬間、動悸が凄くなった

 

「き…キスしちゃっ…た…」

 

産まれて初めてのキス

 

これだけ緊張して心臓が口から出そうな思いになる事を、雌犬は犬と平気でしてるのかと思うと、あぁ、私は雌犬には勝てないと感じた…

 

でもまぁ、これで犬も私が好きって事、少しは分かったでしょうに…

 

こうして、叢雲にとって特別な11月11日は終わりを告げた




ポッキィ…魔性のお菓子

カップルが購入すると、端と端を食べながら、先に離すと負けになるゲームが可能になる

成功するとブチューする事が出来る

現状、多摩が最強
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