貴子さん達がタウイタウイモールに行った次の日
今回はたいほうはおらず、きそとしおいが学校に行く為、横須賀まで送りに来た
「レイは横須賀さんとデート⁇」
「そうだ」
「たまには横須賀さんの言う事、全部聞いてみたら⁇多分面白いよ⁇」
「アイツの言う事ポンポン聞いてたら、3つ目位に”世界が欲しい”とか言い出しそうで怖いんだけどな…まっ、分かった」
「行ってきまーす‼︎」
「きそ‼︎フィリップ借りるぞ⁉︎」
「擦ったら直してね〜‼︎」
二人が校舎に入るまで、俺は校門の前に立っていた
「誰が世界が欲しいですって⁇」
「うひっ‼︎」
いつの間にか横須賀が背後に立っていた
今日はゆったりめの服を着ているが、やはり胸は主張をしている
「レイ、お願いがあるんだけど」
「世界以外だぞ⁇」
「違うわよバカ‼︎タウイタウイモールに行きたいんだけど…いい⁇」
「そのつもりでフィリップ借りた。行くぞ」
「やったね‼︎」
早速フィリップに乗り、インカムを付ける
「アイリス。出番だぞ」
マイクに向かってそう言うと、電子機器が起動した
《おはようございます。スティングレイ様》
「あらっ⁉︎きそちゃんは今日学校でしょ⁇」
横に座った横須賀が驚いている
いつもフィリップのAIを担当しているのはきそのハズ
なのに、知らないAIが俺と話しているからだろうな
「自己紹介しなきゃな⁇」
《初めまして、ジェミニ・コレット様。私は”IRIS”と申します。そのままアイリスとお呼び下さいませ》
「礼儀正しい子ね」
「アイリス、タウイタウイモールに行きたい。場所は分かるな⁇」
《畏まりました。現地へ向かいます》
自動操縦で、フィリップが横須賀から飛び立つ
空に上がっても、横須賀の頭には疑問が残る
「アイリスはきそちゃんじゃないの⁇」
「違う。アイリスはFlak 1に入っていたAIだ。アイリスはネットワークを行き来して無人機から無人機に出入り出来るAIなんだ」
「じゃあ、フィリップをハッキングした訳⁇」
《違います。普段、フィリップ様やヘラお嬢様、スペンサー様にはプロテクトがかけられており、入る事は許されていません。ですが、フィリップ様に限り、本日の様にきそ様として地に足を運ぶ際は、時折こうして入る許可を頂いております》
「はぇ〜…」
驚きっぱなしの横須賀を余所に、俺はリクライニングを倒し、後頭部の後ろに両手を回し、リラックスしながらアイリスに話し掛けた
「アイリス⁇横須賀は俺の何だった⁇」
《大切な人。若しくは妻と記憶しています》
「案外まともね…チョット貸して‼︎」
インカムを渡し、横須賀は更にアイリスと会話する
「レイの事好き⁇」
《父として認識しています。これが好き、と言う感情なら、私はスティングレイ様を好きなのだと思います》
「私の事はどう思う⁉︎」
《包容力と女子力が高そうとお見受けします。レイ様から料理が下手と教えられました》
「うぐっ…」
《スキャンデータによると、焼いたりする等、簡単な調理方法は可能になった様とお見受けします》
「そっ、そうよ‼︎火は便利よ‼︎」
「早く煮たり出来る様に頑張ろうな⁇」
《到着しました》
いつの間にかタウイタウイに着いた
《タウイタウイ管制室に連絡を入れておきました。提督がお待ちしております》
「了解。留守番頼むぞ」
《畏まりました》
フィリップから降りると、男衆が道を作り、その先に白い軍服を着た、如何にも提督な人物が立っていた
「何かしらね…」
「さぁな。照月が食い荒らした一件で、バッチバチに叱られりかも知れないな」
不安を抱きながら、その人物の元へと向かう
横須賀は、普段捻くれた事を言う割に、こう言う時はガッチリ腕を掴んで来ている
男衆は俺達が前を通る度にお辞儀をし、敬意を払う
どうやら、怒ってはいないみたいだ
「ようこそお越し下さいました‼︎」
「マーカス・スティングレイだ」
互いに握手を交わし、手を離した途端、彼は頭を下げた
「先日は部下が大変申し訳無い事を…」
「先日…」
「…新型機の事よ」
横須賀が言うまで忘れていた
「あぁ‼︎気にして無い。俺もデータが取れて良かったよ」
「これからは貴方がたの傘下に入ります。大した事は出来ませんが、御入用の際は何なりとお申し付け下さい」
「分かった。え〜と…」
「これは失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私はストラットと申します」
「了解、ストラットさん」
ストラットは終始申し訳無さそうな顔をしていた
一応、あの一件からタウイタウイには監視の目が来ている
呉とトラックの二基地だ
何か不穏な動きがあればすぐに青葉と蒼龍が動く為、もうやる事は無いだろう…
ストラットと別れ、タウイタウイモールに来た
「もう大丈夫だろ⁇離してくれ」
タウイタウイモールに入っても、横須賀は腕を離さなかった
「嫌よ。はぐれたら大変じゃない」
言い返そうとしたが、今朝きそに言われた事を思い出した
「それもそうだな。しっかり握ってろ」
「あ…う、うんっ‼︎」
横須賀は満面の笑みを見せた
どうやら、きその言っている事も少しは当たっているみたいだ
「ゲームセンターが死ぬ程安くて、死ぬ程広いらしいわ‼︎」
「行ってみるか」
タウイタウイモールは屋上含め、四階建てになっている
一階は食料品売り場
二階はおもちゃや本等、諸々の雑貨売り場
三階は全部ゲームセンター
四階は屋上で、軽食と小さい屋外遊園地がある
俺達は三階のゲームセンターに来た
「ひっれ〜…」
階数丸々ゲームセンターともなると、その広さは圧巻だ
「あれしたいわ‼︎」
《金を寄越すDON‼︎》
横須賀が指差すのは、タイミング良く太鼓を叩いて音楽を奏でるゲームだ
「い、一回10円だと⁉︎」
「死ぬ程安いわね…これ最新機よ⁇」
横須賀がポンポン叩くその筐体は二台並んでおり、片方は女の子がやっていた
横須賀は10円を入れ、ゲームを始めた
「一番難しいので行くわ」
「無理すんなよ〜」
後ろにあったクレーンゲームでガムを取り、それを口に放り込みながら横須賀のゲームを眺める事にした
《難易度は”無慈悲”で行くDON‼︎》
「来なさい‼︎」
曲が始まり、横須賀は流れてくるマークに合わせて太鼓を叩く
見ている限り中々上手い
そんな中、ふと隣の女の子に目をやった
《難易度は”舐め腐り”で行くDON‼︎》
このゲームは”舐め腐り”が一番難易度が低く”無慈悲”が一番難しいらしい
女の子は曲を選ぶ画面で手を止め、横須賀の画面をジーッと見ていた
《パーフェクトだDON‼︎》
「やったわ‼︎」
俺は後ろでガムを膨らませながら、年甲斐も無くはしゃぐ横須賀を見ていた
「お嬢ちゃん⁇しないの⁇」
「あ…」
女の子は我に返った様に、自分の画面へと目を戻した
「お前が無茶苦茶するからやり難くなったんだよ‼︎」
「アンタもすれば⁇結構楽しいわよ⁇」
「どれっ…」
10円を入れ、スティックを握る
《男の癖に”舐め腐り”で行くDON⁇》
「なっ‼︎」
どうやらカメラがあり、プレイヤーの顔を認識出来る様だ
「舐め腐りでいい‼︎」
《彼女に良い所見せられないDON‼︎それでもいいDON⁇》
「叩き割るぞ」
《舐wwwめwwwくwwwさwwwりwwwで行くDON‼︎》
「こっ…こいつ…」
《とっとと曲を選ぶDON‼︎》
怒ってはダメだ
正直、握っているスティックで画面を叩き割ってやりたい
「構わないでいいよ…私、このゲーム好きだから」
女の子が口を開いたと同時に、ゲームが始まった
「そう言うな。連れが悪い事したな」
「…気にしてない。凄いね、あの人」
「あれでも妻なん…だっ‼︎」
難易度が一番低い癖に、やたらと難しい
《ずぁ〜んぬぇ〜ん‼︎下手くそすぎだDON‼︎》
「なんだと⁉︎もう一編言ってみろ‼︎」
《貴様はヘ‼︎ボ‼︎だDON‼︎》
その一言でカチンと来た
「よ〜し分かった。見てろよ…」
俺は筐体の鍵をピッキングで開け、基盤を取り出した
《何をするDON‼︎》
「俺に逆らった罰だ‼︎」
店員に気付かれる数分の間に口の悪いナビゲーションを変え、新しいシステムに切り替え、鍵を閉めた
「よし‼︎これでちったぁ反省すっだろ‼︎」
《次の曲を選んで頂きたいDON‼︎》
ナビゲーションの話し方は、完全に下から来ている
「はははは‼︎ざまぁねえな‼︎」
「うわぁ…スッゴイ丁寧」
スティックを握り、曲を選び、ゲーム再開
始まる寸前、チラッと女の子の方を見た
れーべとまっくすと同じ位の身長なのに、スティックを振る度、身長には不釣り合いに膨らんだ小ぶりの胸が振るえている
寡黙そうに見えて、一部分の発育は良いみたいだ
《素晴らしい結果だDON‼︎人間国宝並だDON‼︎》
ゲームが終わっても、ナビゲーションは、こちらが申し訳なくなる程低姿勢でいた
「よし、お前はこのままにしておこう‼︎」
この筐体、後に三階ゲームセンターで、一番人気の筐体となるのであった
「山風〜‼︎ご飯食べるよ〜‼︎」
「おかあさんだ」
ゲームを終えた女の子は、声のした方に振り向いた
山風と呼ばれた女の子を抱き留めた母親には見覚えがあった
「あれっ⁉︎隼鷹⁉︎」
「スティングレイか⁉︎久し振りだなぁ‼︎」
よく見れば、確かに山風と隼鷹は似ていた
特にあのクセの強いボリュームのある髪
色は違えど、間違いなく隼鷹の子供だ
「知り合い⁇」
「そう。お母さんもお父さんもお世話になってる人なんだ」
「山風ちゃ〜ん。抱っこさせて〜⁇いい子だから〜」
仲間内だと分かった途端、横須賀は山風に手を伸ばした
が、山風は隼鷹の背後に隠れ、少し怯えている
「何故よ…何故子供に嫌われるの⁉︎」
「おいでっ‼︎」
俺が手を伸ばすと、山風はすんなり寄って来てくれたので、彼女を抱き上げた
「何でアンタは子供に好かれまくるのよ‼︎」
「包容力の差じゃない⁉︎」
地団駄を踏む横須賀に隼鷹がツッコむ
確かに横須賀は、基地では駆逐艦の子達に邪険に扱われている
だが、それは完全に横須賀が悪い
子供に対して無闇矢鱈に蒼龍の話をしたり、大人でもチビる様な無茶苦茶怖い内容の本を夜中に読み聞かせをするからだ
決定力があったり、相手をリード出来る能力は素晴らしいが、子供の扱いと料理の腕はまだまだだ
「いつ産まれたんだ⁇」
「一か月前さ。旦那に夜中襲われてねぇ…」
「さぁ、山風。これをあげるから、今の話は忘れるんだ」
ガムを二つ渡すと、山風は素直に「うん」と言ってくれた
「今度、学校に連れて行くかも知れない。いいかな⁇」
「勿論‼︎たいほう達も待ってる‼︎」
「誰でも大歓迎よ‼︎」
「へへへ…ありがとう。山風⁇ありがとうは⁇」
「ありがとうございます」
「偉いなぁ山風は‼︎」
山風の頭を撫で、俺達は二人を見送った
「腹減ったな」
「上行って見ましょうよ‼︎」
横須賀に連れられ、屋上に向かう事にした