今回のお話は、レイと横須賀の間に産まれた双子の子供の片方が基地にやって来ます
果たしてレイは自分の娘に懐いて貰えるのか⁉︎
俺と横須賀の子供が産まれてから一週間
二人の成長は本当に早かった
2日目位で乳離れをし、離乳食開始
3日目には歩き回り、離乳食卒業
4日目には走り回り、5日目には会話が可能に
ただ、知能的にも身長的にもたいほうと照月と同じ位に留まっている
そして今日、初めてどちらかが基地に来る
「来た来た‼︎」
高速艇が来た
「あっ‼︎イカさんだぁ‼︎お〜い‼︎」
照月がイカさんに手を振ると、イカさんも手を振り返す
高速艇が停泊すると、明石が長い黒髪の子を抱いて降りて来た
来たのは磯風の方だ
「さっ、磯風ちゃん。着いたよ〜」
「いやら‼︎」
磯風を降ろすが、磯風はすぐに明石の足に抱き着く
磯風はまだ舌ったらずな喋り方だが、もう自分の意思はしっかりと持っている様に見えた
「おいで‼︎」
「ほらほら、お父さんが抱っこさせて〜って‼︎」
明石が軽く背中を押すが、磯風は一向に来ず、明石の足にベッタリ着いている
「いーちゃんオトンきあい‼︎」
「がっ…‼︎」
産まれた時と同じく全否定
俺は白眼をむいて、口を開けて固まる
「いーちゃん、あのおじちゃんがいい‼︎」
磯風が指差す先には隊長がいる
「よしよし。おいで」
隊長に抱っこされ、磯風は中に入って行った
「レイさ〜ん。駄目だ。固まってる」
明石が目の前で手を振るが、俺はショックで固まっている
「レイ‼︎レイってば‼︎」
「オトンは嫌い…だと…俺は…磯風にメチャ嫌われてる…どうすれば…‼︎」
「その為の一週間じゃん。大丈夫だよ」
きそにそう言われ、少し目が覚めた
「では、私は横須賀に戻ります‼︎ちゃんと仲良くなって下さいよ⁉︎」
「あ、はい」
明石が横須賀に戻り、すぐに考える
とりあえず、俺は磯風にメチャクチャ嫌われている
どうすれば好かれるだろうか…
「てな訳で、作戦会議をします」
「さくせんかいぎ‼︎」
たいほう達の子供部屋に一時的に避難して来た
食堂にいると磯風が邪険に扱って来るので、とにかく味方が多いここに来た
磯風はとりあえず隊長と貴子さんに預けてある
「たいほう、いいものあるよ‼︎じゃん‼︎」
たいほうが取り出したのは、たいほうがいつも食べているビスケット
「すてぃんぐれいがね、いーちゃんにびすけっとあげるの。そしたら、いーちゃんは”すてぃんぐれいだいすき‼︎”ってなるよ⁇」
「よし、やってみよう‼︎」
第1作戦…ビスケット作戦
食堂に戻って来た
「い…磯風‼︎」
「なんら」
「お、お父さん、良い物持ってるんだ〜…じゃん‼︎」
後ろ手に持っていたビスケットを、磯風の前に出した
磯風は俺の手から一瞬でビスケットを取り、口に放り込んだ
「美味しいか⁇」
磯風の頭を撫でようとした瞬間、手に思いっきり噛み付かれた‼︎
「いででででで‼︎悪かった‼︎」
「さわるにゃ‼︎むこういけ‼︎」
「コラコラ。ちゃんとお父さんにありがとうは⁇」
「やらっ‼︎」
第1作戦…失敗
負傷箇所…右手の平(咬み傷)
「第2作戦‼︎」
「はっちゃんの絵本を貸してあげます」
はっちゃんから絵本を受け取り、中を見てみる
「たいほうちゃんと照月ちゃんを使って、テレビの前に座って読んでみて下さい」
「なるほど。直接行くからダメなのか」
第2作戦…オペレーション絵本
「さぁ、今日は何を読んで欲しい⁇」
「がーがーさんのやつ‼︎」
「照月もガーガーさんがいいなぁ‼︎」
テレビの前に座り、たいほうと照月を脇に置く
はっちゃんから貸して貰った絵本を開くと、みにくいアヒルの子が映し出された
普段はっちゃんが持っているこの本は、実は本に見えて本じゃない
はっちゃんがアイリスの時に知り得た知識が入っている電子機器だ
「アヒルの子は、みんなから嫌われたって気にしません」
「がーがーさん…」
「かわいそう…」
たいほうと照月が絵本に魅入っている最中、背後からジリジリと近寄る人影が…
「磯風も一緒に見…どぼぁ‼︎」
振り返った瞬間、磯風は下唇を噛み締めながら、無言で渾身の右ストレートが鼻に入り、俺は開いていた窓の向こうへ吹っ飛んだ
「いーちゃんによこしぇ‼︎」
「あっ‼︎」
磯風ははっちゃんの絵本を奪い、食堂から逃げ去った
「だっ、大丈夫か⁉︎」
「何つ〜パワーだ…いてて…」
隊長に手を貸して貰い、何とか立ち上がる
「磯風は⁇」
「子供部屋に向かった」
第2作戦…失敗
負傷箇所…鼻骨折及び全身打撲
「これはいーちゃんのしゅきなぱんら」
子供部屋では、案外大人しくはっちゃんの絵本を見ている磯風がいた
「これはカレーパン。いーちゃんはカレーパン好き⁇」
きその膝の上に乗り、色んなパンの種類を見ている
「うん。きのういしぇでたえた」
ケーキバイキング伊勢の事だろう
あそこはパンも食べられる
俺はそんな二人の様子を、ドアの隙間からコッソリ見ていた
「いーちゃんはお父さん嫌い⁇」
「きあい。でも、おじしゃんとおばしゃんと”きしょ”はしゅき」
「あれ。僕の名前知ってるの⁇」
教えていないハズなのに、磯風はきその名前を知っていた
「おかあしゃんいってた。きしょはおねえたんだって」
「へへへ…そっかぁ〜」
きそは嬉しそうな顔をしている
横須賀はちゃんと約束を守ってくれていた
以前、きそは俺達の間に子供が産まれたら、自分は何処かに追いやられるのかと不安を抱いていた
横須賀はその時の約束を忘れず、磯風に教えてくれていた
「でも、オトンはきあい」
「レイは良いお父さんだよ⁇」
「らって、いっちゅもいーちゃんのところにいにゃいもん」
「あ…」
「いーちゃん、おかあしゃんがしゅき。おかあしゃん、いっぱいいっぱい、いーちゃんほめてくれるにょ」
「レイもいっぱい褒めてくれるよ⁇」
「オトンはいーちゃんのこときあいらもん。らから、いーちゃんと”あーちゃん”をおかあしゃんのところにおいて、ここにいるんら」
「あーちゃん⁇」
「あーちゃん‼︎あーちゃんはいーちゃんのおねえたんなんら‼︎」
…朝霜の事だろう
「いーちゃん。お父さんとお話ししてみない⁇」
「やら」
即否定
本当に俺の事が嫌いな様だ…
自分の娘にここまで否定されるとかなり傷付くな…
「分かった。でもいーちゃん⁇叩いたりしちゃダメだよ⁇」
「なんれ⁇」
「いーちゃんも叩かれたら痛いでしょう⁇レイも同じなんだ。叩かれたら痛いんだよ⁇」
「…あかった。こえ、かえす」
磯風はきそにはっちゃんの絵本を返し、子供部屋を出た
「レイ。もう大丈夫だよ」
きそにはバレていた様だ
「磯風はレイが普段一緒に居てくれないのを不満に思ってるんだ」
「こればっかはなぁ…」
「無理に近付こうとしても、ダメな時はダメだよ。こっちから行ってダメなら、向こうから来るのを待ってみたら⁇」
「それが一番かもな」
俺は磯風と少しだけ距離を置く事にした
とりあえず工廠にこもり、いつも通りパソコンの前に座り、顔を抑えながら軽く後ろにもたれる
《お困りのようね⁇》