「ヘラか」
《犬も挫折するのねぇ》
「今回ばっかは流石にヘコむさ…」
心配してくれてるのかと思い、ヘラの感情メーターを見てみた
”愉悦”
「ん⁇」
目を擦り、もう一度見る
”愉悦”
何度見てもヘラの感情は愉悦だ
《犬が挫折するの見るの、私好きなの》
ヘラの感情メーターの”愉悦”が更に上がる
「ぐっ…お…もっ、もういい‼︎俺は拗ねる‼︎年甲斐も無く拗ねてやるからな‼︎見てろ‼︎」
《はいはい。言ってなさい》
俺は試作段階だったFlakシリーズの改良型の設計図を書き始めた
書き始めて数秒後…
《ねぇ》
ヘラは待てない子だ
ずっと話していると、それはすぐに分かる
「なんだ⁇」
《犬は何があっても私達の話を聞いてくれるわね》
「無視して何が面白いってんだ。何でも話し合いからスタートだよ」
《犬》
「ん⁇」
《犬は良い所は沢山あるわ。私は知ってる。心配は要らないわ。今にあの子は、犬を好いてくれる…私には分かるわ》
「からかいやがって‼︎どうせまたメーターは愉悦だろ⁉︎」
そう言ってパソコンでヘラの感情メーターをもう一度見る
”母性”
《犬》
「…なんだ」
《私が犬の心配をしない時があると思ってるの⁇》
「…ありがとう」
《言ってたら来たわよ》
ゆっくり振り返えると、真後ろに磯風が立っていた
「どうした⁇」
「たらいてあるかった」
「もう叩いちゃダメだぞ⁇」
「さわるにゃ‼︎」
頭を撫でようとするが、物凄い眼力で俺を睨まれた為、手を引っ込めた
「オトンのしごろはこえか」
「そっ。新しい武器とかを造ったり実験したりするんだ」
「おかあしゃんは、オトンは”ぱいろっろ”といってら」
「そっ。お父さんはパイロットだ」
「あえがオトンのせんろうきか」
「そうだぞ。ちょっと乗って見るか⁇」
「らっこ」
磯風は手を広げて待っている
「噛まないか⁇」
「かまにゃい。きしょとやくしょくした」
「んっ。分かった…よっと」
どうやら俺から触れるのはダメだが、磯風が頼めば良いらしい
磯風を抱き上げ、タラップを登り、フィリップの中に入った
「ピカピカしてりゅぞ」
「生きてるんだ。戦闘機もな…」
磯風を膝の上に座らせ、操縦席に座る
「おかあしゃんのにおいがしゅる…」
「お母さんも乗った事あるんだぞ⁇」
「おかあしゃんもぱいろっろ⁇」
磯風は横須賀の話をすると嬉しそうにする
「そっ。お父さんはお母さんの部下だったんだ」
「おかあしゃん、オトンとあのおじしゃんと”ぐらふー”とぱいろっろしてらっていってら」
「そっ。世界を回ったんだ…懐かしいな…」
少しだけ目を閉じ、傭兵だった頃を思い出す
「せんしょうがにゃつかしぃらと⁉︎」
「嫌な思い出もあるさ。でも、良い思い出もある」
「らからいまれもぶきちゅくってりゅにょか」
「そうかもな…戦争を無くす兵器を、いつかは造りたい」
「オトンは”かくへいき”のほゆうしゃろいっしょらな」
「そんな言葉何処で覚えたんだ⁇」
「いーちゃんはしんぶんみるのしゅきら。オトンはへいきがあれあ、せんしょうがにゃくにゃるとおもっれる」
「そこまで言うなら見せてやろう」
電子機器を弄り、全方位モニターを映し出す
「わぁ〜…」
「まずはこの空にしようか」
これまでに何度かあった、大規模な空戦の中の一つを映像で流す
巨龍事件の空戦だ
「ひこうきら‼︎」
「お父さんがどうするか見てろ」
磯風と俺の目の前で、映像は猛スピードを出しながら敵航空機を墜としていく
「おちう‼︎」
急降下した瞬間、磯風は目を閉じた
その時に、俺は映像を変えた
「大丈夫。目開けてみな」
「ん…おぉ〜‼︎」
映し出したのは、横須賀で演習中の平和な空だ
「きえい…」
磯風は太陽に照らされた海面を眺めてウットリしている
「磯風はどっちが好きだ⁇人がい〜っぱい死ぬ空か、今みたいな平和な空か…」
「いーちゃんはこっちがいいにゃ…」
「お父さんは、こんな風な平和な空をいつか取り戻したいんだ。だから、今は戦う。せめて、磯風と朝霜が大きくなる前にこうなる様に…なっ⁇」
「オトンはいーちゃんのころがきあいれおかあしゃんのとこりょりおいてありゅわけじゃにゃいにょか⁇」
「それは絶対に違う。好きだからこそ、お父さんは今戦うんだ」
「じゃあ…オトンはいーちゃんもあーちゃんもしゅきか⁇」
「当たり前だ‼︎何処の誰が自分の娘を嫌うか‼︎」
「…しょっか」
キリの良い所で映像が終わった
「心配するな。お父さんは、いつだって磯風と朝霜の事を思ってる。だから、磯風も忘れるな⁇」
「あぁった。いーちゃんおぼえた」
「さっ、帰るぞ。もうご飯の時間だ」
フィリップから降りた時には、磯風は俺にベッタリとくっ付いていた
「あらっ。ちゃんと懐いてくれたのね⁇」
「心配して損したよぉ〜」
貴子さんときその声に反応し、磯風は俺の手から離れた
「きしょねぇ‼︎いーちゃんもごあんたえる‼︎」
「んっ。僕と食べよう‼︎」
磯風はきその横に座り、俺はいつもの定位置のたいほうの横に座る
「すてぃんぐれい、もういたくない⁇」
「大丈夫だ。ありがとな⁇」
「うんっ‼︎たいほう、いーちゃんすきだよ‼︎」
たいほうの無邪気な笑みを見て、胸を撫で下ろす
「マーカス。貴方に良く似てるわ」
反対側では母さんが笑う
「磯風。お前のお婆ちゃんだぞ⁇」
「しゅぱいろおばあしゃん⁇」
やはり知っていた
こう見ると、横須賀はしっかり教育しているみたいだ
「そうだ。もう一人のお婆ちゃんには会ったか⁇」
「しゃらとがおばあしゃん‼︎」
「そうだ‼︎偉いぞ‼︎」
「オトンのころ”まーきゅん”っていってら」
「ははは…」
「さぁっ、出来たわ‼︎」
貴子さんとはまかぜが皆の前にカレーライスを置く
「うわ〜…」
磯風の隣に座っている照月のカレーライスの量を見て、磯風はたじろぐ
「照月、これでも少ない方なんだよ⁇」
「いーちゃんもがんあれあ”てるしゃん”みたいにになえるきゃ⁉︎」
それに答えたのは隊長だった
「なれるさ。いーちゃんは出来る子だろう⁇」
「うんっ‼︎いたあきます‼︎」
磯風はたいほうと同じ位の量のカレーライスを食べ始めた
そして、たいほうと同じ様に口の周りにカレーやご飯粒をいっぱい付ける
ご飯を食べ終わると、子供達はお風呂に入る
「いーちゃんもいきゅのきゃ⁇」
「そっ。貴子さんとグラーフと入っておいで」
「ぐらふーがいりゅのきゃ。ん。いってくりゅじょ」
磯風も子供達に混ざり、お風呂に向かう
「磯風はグラーフの言い方面白いな」
「俺も言ってみっかな…」
30分位すると、一斉に上がって来た
隊長も俺もそれぞれ子供達の頭を拭き、温かい牛乳を飲ませる
「オトン。いーちゃんもあがっらろ‼︎」
「んっ。ちゃんとフキフキしような」
磯風からタオルを受け取り、頭を拭く
「ぐらふーがいっれらろ。オトンはつおいぱいろっろらって」
「そうだぞいーちゃん。いーちゃんのお父さんは凄く強いパイロットだ‼︎」
「んふ〜‼︎いーちゃんのオトンはつおいぱいろっろか‼︎」
磯風は自慢気に鼻息を吐いた
”グラフー”の癖が移っている
「上がった」
「磯風も大人しく入ってたもんね」
「うんっ‼︎いーちゃんおふりょしゅき‼︎」
「ありがとう貴子さん、グラフー」
「レイまで言うのか」
「グラフーも温かい牛乳飲め」
「グラフー。ちょっとだけど、お茶菓子もあるわ」
「なんと」
隊長も母さんも”グラフー”とおちょくる
「オトンもねりゅにょか⁇」
「お父さんはもうちょっとしたら寝るよ。磯風は先に寝なさい」
「オトンもはよねりょよ‼︎わかたか‼︎」
「分かった分かった‼︎」
磯風はそう言い残し、子供部屋に向かった
「ったく…な〜んかグラーフに似てるな…」
「子供は話やすい人の真似するんだよ」
「んなモンかねぇ…」
後頭部を掻きながら椅子に座った瞬間、グラーフに両頬を伸ばされた
「いれれれれ‼︎にゃにうぉしゅりゅ‼︎」
「八つ当たり」
「やるあらりらろ⁉︎くっ…」
グラーフの手を振り解くと、グラーフは頬を膨らませていた
「グラフー違う。グラーフ」
「…怒ってるのか⁇」
「何でもない。おやすみ、オトン」
「なっ…」
グラーフは飲んだコップを流しに置き、部屋に戻って行った
「何なんだよ‼︎」
「マーカス⁇」
「うん⁇」
「乙女と言うのは複雑なの。急に欲しくなったり、冷たくしたり…」
「あ…」
グラーフは普段、恋人であるミハイルとは滅多に逢えない
俺は正直に言えば、今からだって逢いに行ける
だから、少し俺に嫉妬しているのかも知れない
「仕方ない。子供達の様子を見た後、グラーフの様子もみっかな…」
「任せていいか⁇」
「あぁ。まだ寝れそうに無いしな。んじゃ、行ってくっか‼︎母さん、流しに置いといてくれ」
「オーケー」
俺は食堂から出て、子供部屋に向かった